バイトクビにされたので異世界で勇者のバイトしてくる。   作:ainex

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一日遅れてすいません。


勇者ランク試験

「ついたわ! ここが試験を行う会場よ!」

 

そう言う金髪碧眼のレクト教官はでかい建物を指さして言う。建物の外観は……そのなんて言うか、ローマっぽい奴。うん、そんな感じ。てかこの世界全体的にパクリ建造物多くね? 俺の気の所為?

 

「なによ、そのなんとも言えない様な目は!」

 

真の達人は目だけで伝えたい事を伝えるという。俺はそれにトライするためにレクト教官に暑い視線を送る。

 

「な、なによ!」

 

「まぁまぁ、とにかくさっさと終わらせよーぜ、蘭だってそう言ってるし」

 

どうやら達人への道はまだまだ険しいようだ。

 

「…………コクリ」

 

「アンタらいつの間に意気投合したの!?」

 

意気投合したのではない、ただ何となく仲良くした方が今後の為にいいと判断して妥協したんですー。勘違いしないで下さい、こんな人と意気投合したら俺も狂戦士になっちゃうから。

 

まぁ、兎にも角にも謎の勇者ランク試験が幕を開けるのであるが……まさかあんな事になるとは……

 

 

×××××××××

 

 

「うがぁぁあああぁぁあ!」

 

「ちょっとタンマ! これ試験用の魔物だよね!?」

 

「アンタ早く逃げて! ソイツは試験用じゃなくて本物よ! なんの手違いか分かんないけど本物の魔物が入り込んだみたい!」

 

「ふざけんな! 死ぬって!?」

 

現在俺は何らかの手違いによって本来試験用の雑魚い魔物と戦うはずが二足歩行の牛みたいな奴から逃げ回っている。二足歩行の牛(以後ミノタウロス)は俺の身長と体格の二倍くらいあって全く持って勝てる気がしない。あ、俺死んだな。

 

「ちょっ待ってて! 今そっちに行くから!」

 

「早く来てくれ! まじでご臨終のお陀仏になっちゃうから!」

 

多分跡形も残らずミノタウロスの排泄物になっちゃうから! ん? ちょっと言ってる意味わかんない。

 

「とりあえず落ち着いて対象しなさい!」

 

「無茶言うな!?」

 

しかし、とりあえず逃げ回っているだけでは拉致が開かないので俺はテートさんから授かった漆黒の剣を構えミノタウロスに立ち向かう。

 

「がァァァァァァ!」

 

前言撤回、逃げなきゃ死ぬ。

 

「ウワァァァァああああ! あ、イテッ! 」

 

なんということでしょう、俺はミノタウロスから逃げる途中で転んでしまいました。サヨウナラ異世界、サヨウナラお母さんお父さん、サヨウナラ現世! 生まれ変わったら本当の超絶イケメン勇者にしてください!

 

「童貞のまま死にたくねぇーよ!」

 

そうしてミノタウロスは俺にゆっくりと近づいてくる。まるでミノタウロスが「お前はもう、死んでいる」とでも言っているかのようだ。いや、言ってないんだけどさ。

そして俺がミノタウロスの強靭な拳に押し潰される瞬間、何者かがミノタウロスの両腕を切り落とす。

 

「…………それが遺言にならなくて良かったね」

 

途端視界に映るは銀色の髪とジャージ姿。

 

「ら、蘭さん!?」

 

なんと俺を助けてくれたのは先程まで全く気配を感じなかった狂戦士蘭さんでした!

 

「ありがとうございます蘭さん! さっきまで人知れず馬鹿にしてた俺をお許し下さい!」

 

「…………気にしないで、私はしたい事をしてるだけだから」

 

そう言うと蘭は俺に親指を立ててキメ顔でスマイル。やべ、不覚にもドキッとしてしまった。蘭にときめくとか俺病気かもしれん。

 

その後の蘭とミノタウロスの戦いは一方的な物になった。ミノタウロスは両腕を切り落とされたまま何も出来ず、次は両足を切り落とされた。さっきまで凶暴だったミノタウロスは、蘭の手によって可愛い可愛いミノタウロス達磨に変貌を遂げた。ミノタウロス達磨、お一つ五百円デース。

 

「大丈夫!? 安心しなさい! この私が来たからにはあんなクソ牛なんて一発、で………………何が起きたの」

 

おっと、来るのがおそすぎでっせ? レクト教官。

 

「アンタが来る前に救世主蘭さんがミノタウロスを倒してくれました」

 

俺がドヤ顔で蘭を指さすと、蘭は案の定興奮状態で気味の悪い笑い声を上げていました。

 

「ウヘヘへへへへへへへ!?!?」

 

「「やばい!? 早く落ち着かせないと!」」

 

その後蘭を何とか落ち着かせ、俺と蘭はレクト教官に案内された個室に移動する事になった。

 

「よし、それじゃあこれから見習い勇者二名の勇者ランクを発表するわ!」

 

「「おー」」

 

パチパチとやる気のない拍手と共に発表された俺達のランク、それは例のように紙に記されて配られた。口頭で言えば良かろうに……

 

平川 優 勇者ランクG

時給七千円勇者

 

うん、なんて言うか、そうだろうと思ったぜ……

 

そして隣の蘭の紙を見るとそこには、

 

市ノ瀬 蘭 勇者ランクB

時給一万五千円勇者

 

「嘘、だろ」

 

こんなにも差が出るものなのか……

 

「アンタも蘭を見習って勇者ランク上げなさい?」

 

「時給一万五千円、だと?」

 

「そっち!?」

 

こうして俺の勇者のバイト初日が終了したのである。




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