GOD EATER ~桜吹雪~   作:もやしうどん

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まだ何の事件も本格化していない頃の幸せ?なワンシーンです
次回で一気にリンドウ復帰後(ゲームクリア時)まで飛びます


第〇話 「私は生きている」

―――

 

―――――

 

―――――――――

 

 

 

「こちらサクヤ。ポイントJに目標α発見」

「了解。すぐに向かう」

「りょーかい。先に始めてもいいけど無理すんなよぉソーマ」

「テメェもさっさと来やがれ」

「こちらサクラ!ポイントMにて目標βと接触!先に始めとくからねっ!」

「おいおい…つーわけでソーマ,そっちは任せる。まぁ大丈夫だとは思うが…」

「チッ!いいからさっさと行け」

「おー怖。ケガすんなよ二人ともー」

「フン」

「まったく…」

 

 

 

ここはフェンリル極東支部の管轄にある,とある街()()()場所。

馴染みのある人たちからは『贖罪の街』なんて名前で呼ばれているけど,誰が何に対して懺悔しているのか,私は知らない。

そんな場所で楽しげな通信を交わす4人の中の1人こと私,神前(かんざき)サクラはゴッドイーターだ。

詳しい説明は省くけど,簡単に言えば化け物と戦っていて,割と珍しいその素質を持っている人間だ。

 

そう,化け物。

近年,突如出現した『アラガミ』と呼ばれる化け物達が,この世界では我が物顔でウロウロしている。

お陰で人類は住処を追われ,恐怖におびえながら日々を過ごすことになった。

かつては賑わいを見せたであろうこの場所も,今は無残な廃墟の街と化していた。

 

そんな場所で私,橘サクヤ,ソーマ・シックザール,雨宮リンドウ,4人のゴッドイーター達が何をしているのか。

答えは一つ。名の通り「神を喰らう」のだ。

 

 

「サクヤ!フォローを頼む!」

「了解!」

 

ソーマ,サクヤ組が戦っているのは『オウガテイル』という小型のアラガミの群れだ。

小型といえども全長は成人男性をゆうに超え,巨大な尾から繰り出される針は鋭く早い。

しかし,そこは歴戦の神機使い2人。繰り出される攻撃はすべて余裕をもって回避している。

 

「邪魔だ!」

 

巨大な剣の神機を自在に操り,その無慈悲な一撃で次々と獲物を斬り捨てていくソーマ。

素人であればまともに持ち上げることすら不可能あろう巨大な剣の一振りは,確実にアラガミを捕らえ無力化していく。

 

「そこ!」

 

後方から,長い銃身をもつ遠距離攻撃型の神機を操るサクヤは正確無比な射撃でソーマのバックアップにあたる。

ときにはソーマの死角の敵を攻撃したり,まれにソーマが仕留め損ねた獲物にトドメをさしたり。

自身が狙われたときには,こちらに5歩と踏み出す前にその足を止めさせた。

 

オウガテイルは新人の訓練や初陣で課される最初のアラガミであり,決して侮ることはできないが,アラガミの中では弱い種類であり,この2人にとって敵ではなかった。

 

「ふうっ。とりあえず片付いたみたいね」

「周囲に気配はないな…あっちはどうなったか」

 

周囲の気配を探りつつ,二人は遠くから聞こえる戦闘の音を聞いていた。

 

 

「せえええいっ!」

 

小型の剣型神機を縦横無尽に振り回し,蛹のようなアラガミを切り刻んでいくサクラ。ついこの間第一部隊に加入したばかりで,目覚ましい奮闘ぶりだ。

相手のアラガミは『コクーンメイデン』といい,アイアンメイデンのような見た目と共に,時折大人の腕ほどもある太い毒針を体内から突き出し,串刺しにしようとしてくる小型のアラガミである。しかし,奴らは地面に張り付いてその場から移動しないので攻撃も当てやすく,タイミングさえ見極めれば離脱は容易であった。

しかし…

 

「後ろだサクラ!」

「!?」

 

リンドウの注意により,振り切った腕をそのままに体を捻り,真後ろに盾を展開させるサクラ。一寸後,別の個体が放った光弾が襲い掛かった。アイアンメイデンがゴッドイーター達に嫌われる理由である。コクーンメイデンだけならばまだしも,大型のアラガミと交戦中に襲い掛かる追尾性のある光弾はうっとおしいことこの上ない。

 

「あっぶな…」

「おーい!油断すんなよー」

「えへへ…ごめんなっさいっ!」

 

サクラは素直に謝罪する。その間にもまた一体のコクーンメイデンを沈めていた。

 

「ま,頑張ってくれるのは俺が楽でいいけどな」

 

チェーンソーのような歯が付いた,ソーマとサクラの中間サイズの赤い剣型神機を振るうリンドウは気だるげに言った。

彼は普段通り独特のテンションで,しかし振るう神機は確実にアラガミの急所をとらえ,見る見るうちに敵の数を減らしていた。危なげのない戦闘は彼の力量をうかがわせる。

 

「ラストッ!」

「お疲れさん…んじゃ,いっちょいくか」

「うん!」

 

サクラが倒した最後のコクーンメイデンの前に立つ2人。神機を腰だめに構え,捕食形態(プレデター・スタイル)へと変形させる。

 

先ほど盾に変形させたように,剣型の神機には変形機能がある。剣と盾,そしてこの捕食形態だ。

アラガミの口のようなものが手元の制御ユニットから飛び出し,アラガミの死体にかぶりつく。そして,アラガミの死体からアラガミの素材や成分を取得するのだ。彼らがゴッドイーターと呼ばれる所以であり,こうして得た素材は研究の材料だったり神機の強化だったり,様々な用途で使われていく。

 

「こちらリンドウ。こっちは終わったぞ。そっちはどうだ?」

『こちらサクヤ。もうとっくに終わって帰投ポイントで待機してるわよ』

「りょーかい。すぐ向かう。そうだサクヤ,帰ったらビールの配給券と例のトウモロコシ,交換しないか?」

『またその話?嫌って言ったじゃない』

「固いこと言うなよー。頼むって」

『イ・ヤ!』

 

 

 

リンドウさんとサクヤさんが何か言い争いをしてる…相変わらず仲いいなぁ。今日は留守番だけど,同期のコウタくんもとても賑やかな人だから,一緒にいると楽しいんだけど,最近来たばかりのアリサさんとはあまり仲良くないから少し心配だなぁ…

 

そんなことを考えながら歩いていると,視界の端で何かが動いた気がした。

「…?」

何も見当たらない。

気のせいだろうか?

 

「おーいサクラ!はやく帰るぞ」

「…はーい!」

 

まぁ,いっか。

アラガミならまた今度,みんなで来ればいいし。

 

 

楽しいことばかりじゃないけど,辛いことばかりでもない。

今を一生懸命,楽しく生きる。

こんなふうに,神に殺された世界で,私は生きている。


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