スマイルプリキュア&時を超える桃太郎   作:紅鮭

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やよいのヒーロー(後編)

【現在】

 

七色パークの広場では、

キュアサニー

キュアマーチ

キュアビューティ

そして、キャンディがウルフルンと対峙していた。

 

 

 

ウルフルン「さて、人数も減った事だし、早速あのサイのアドバイスの通りにするか…」

 

 

 

 

ウルフルンはアカンベェの『つけっパナ』を取り出す。

 

 

 

ウルフルン「いでよ!アカンベェ!!」

 

 

 

近くの海賊船のアトラクションがアカンベェと化す。

 

 

 

海賊船アカンベェ『アッカンベェ~!!』

 

サニー「げっ!青っパナかい!」

 

マーチ「マズイね…」

 

 

 

青っパナのアカンベェはプリキュア全員で放つ『レインボー・ヒーリング』という技でしか破れない。

それか、バッドエナジーを『浄化』ではなく『消滅』させるデンオウの技でなければ倒す事ができない。

 

 

 

ウルフルン「青っパナは全員揃わないか、デンオウでなけりゃ倒せねぇみてーだからな!まず、この場で三人倒してやるぜ」

 

サニー「どないする?」

 

ビューティ「三人が帰ってくるまで、わたくし達でくい止めるしかありません!」

 

マーチ「それしかないね」

 

 

サニー、マーチ、ビューティはアカンベェに向き直る。

 

 

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

 

【十年前 8月4日】

 

 

ちはる「やよいー!!」

 

勇一「やよいーっ!!」

 

 

 

七色パーク内

辺りがパニックを起している中、やよいの両親が大きな声を出して娘の名前を呼ぶ。

 

 

ちはる「あなた…」

 

勇一「心配するな、やよいはきっと無事だ!お前は出入口の辺りで待っていてくれ…」

 

 

勇一はちはるにそう言うと、再びパーク内を探すために回り始めた。

 

 

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

 

 

【七色パーク・中央広場】

 

 

ハナ「みんな頑張って…」

 

 

ハナが見守る中、デンオウ、プリキュア、イマジンの戦いは…

 

 

 

ハッピー「やあぁぁぁぁぁっ!!」

 

ピース「たあぁぁぁぁ!!」

 

デンオウRF「ハァッ!!」

 

 

 

ハッピーとピースとデンオウRFがアームドライノイマジンに各自攻撃を叩き込む。

 

 

 

アームドライノイマジン『はっ、効かねぇよ!!』

 

ハッピー・ピース・デンオウRF

「「「うわぁっ!!」」」

 

 

 

だが、力不足なのかシールドホーンの一振りで払われる。

 

 

 

ハッピー「どこを攻撃しても全く受け付けない」

 

デンオウRF「鎧の部分はもちろんだけど、関節部もやたらと頑丈だね」

 

 

 

デンオウRFがデンガッシャーをクルクルと回しながらアームドライノイマジンと距離を置いて戦っている間、良々は模索しながら対策を考える。

 

 

 

良々『(ウラタロス、敵は鎧の様な身体をしているけど、それは主に上半身のみ、下半身は意外と不釣合いに鎧の面積が少ない。だったら脚を引っ掛けて転ばしちゃわない?)』

 

デンオウRF「(なるほど、確かに…重そうな身体をしてるから、起き上がりにくいだろうね♪)」

 

 

早速作戦開始。

デンオウRFはデンガッシャーを振り上げ、アームドライノイマジンの頭上に何度も振り下ろし、上に注意を逸らす。

 

 

デンオウRF「もらった!!」

 

 

そして、僅かに膝が曲がったその瞬間、指揮者の様に振り下ろしたデンガッシャーを巧みにまわし、渾身の一撃をそのイマジンの膝目掛けて払おうとした。

しかし、

 

 

 

アームドライノイマジン『ふんっ!』

 

デンオウRF「何っ?!」

 

 

 

脚を上げて突き出されたデンガッシャーを避け、踏みつける。

 

 

デンオウRF「えっ?!」

 

アームドライノイマジン『やっぱ脚狙ってきたか…。だが、こんなの先っぽを抑えられたらクソの役にも立たねーよ―――フッ!!』

 

デンオウRF「ぐあああっ!!」

 

 

アームドライノイマジンはデンガッシャーを抑え付けたまま至近距離からシールドホーンのミサイルを連続で喰らわし、吹き飛ばす。

 

 

ハッピー「ウラタロス!」

 

アームドライノイマジン『あー、マジウザい――ハァッッ!!』

 

ハッピー「がふっ!!」

 

 

デンオウRFがやられて、ハッピーが向かって行ったが、アームドライノイマジンはいい加減ウンザリした感じに言い放ち、ハッピーを蹴り飛ばす。

 

 

遠くに蹴り飛ばされたハッピーは人にぶつかり、停止する。

 

 

ハッピー「いたた、すみません。って、じゃなくて…!―――ここは危険ですよ!!早く逃げてください!!」

 

 

ハッピーが逃げる様に促すがその男は辺りをウロウロし、何かを探すそぶりをする。

ハッピーも辺りを見回すと、向こうに光る何かが…。

 

 

ハッピー「もしかして、コレですか?」

 

 

ハッピーが拾ったのは――――懐中時計。

薄茶色のフェルト帽を目深にかぶり、同色の外套を羽織っている男に渡そうとした。

だが、その男の顔を見た時、

 

 

 

ハッピー「(あれ?この人…)」

 

 

 

アームドライノイマジン『見~つけた~』

 

 

 

ハッピーが振り返るとアームドライノイマジンがこちらに歩みよってくる。

 

 

アームドライノイマジン『桜井 侑人ぉ…』

 

 

その『桜井 侑人』と呼ばれた男はハッピーから懐中時計をひったくると一目散にその場から逃げる。

 

 

アームドライノイマジン『逃がすかよ!!』

 

 

それを見るとアームドライノイマジンはその男の後を追おうとした。

 

 

ハッピー「させない!!―――うーっ!…気合いだ!気合いだ!気合いだーっ!!!」

 

 

ハッピーはアームドライノイマジンの真正面に立ちふさがり、スマイルパクトに気合いを込める!!

 

 

 

ハッピー「プリキュア!ハッピー…シャワー!!」

 

 

両手でハートを形作り、至近距離からアームドライノイマジン目掛けて放つ!!

 

 

 

アームドライノイマジン『うおっ!!?』

 

 

 

至近距離の渾身の一撃!!

アームドライノイマジンは流石に回避する事が出来ず、吹き飛ぶ。

 

 

アームドライノイマジン『クソが!!』

 

 

だが、それでも倒れない。

四者の一進一退の攻防が続く中、

 

 

 

「えーん、えーん、えーん…」

 

 

 

何処からともなく子供の泣き声が聞こえてきた。

皆が泣き声のする方に向くと、

黄色の髪の女の子が泣きじゃくっていた。

 

 

???「パパァ〜、ママァ〜…」

 

 

プリキュア、デンオウ、ハナはその少女の顔に見覚えが…。

 

 

 

ハッピー「やよいちゃん…?」

 

 

 

その少女は紛れもなく、幼い頃のやよい。

 

 

アームドライノイマジンはその少女を視界に捉えると、ニヤリとほそく笑む。

それを瞬時に理解したハッピーはハナに向かって大きく叫ぶ。

 

 

 

ハッピー「ハナさん!!やよいちゃんを…!!」

 

アームドライノイマジン『遅ぇ…』

 

 

 

アームドライノイマジンはシールドホーンの角を幼いやよいの隣にある建造物に向け、

 

 

 

ハッピー「やめてえぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!」

 

 

 

連射した。

 

 

 

アームドライノイマジン『御愁傷様…』

 

 

 

建物の巨大な瓦礫がやよいに向かって落ちる。

もし、過去のやよいが死ねばそれは現在のやよいの存在が消える事を意味する。

ハナはやよいを助け出そうと、走り出すが間に合わない。

誰もが諦めかけたその時!

 

 

巨大な瓦礫がやよいの頭上に迫ったその時である。

やよいの身体から砂がこぼれた。

 

 

キンタロス『んぬぅ…!!』

 

 

キンタロスが現れ、間一髪その巨大な瓦礫を持ち上げる。

 

 

キンタロス『大丈夫か!?やよい!!』

 

 

キンタロスが脚元のやよいに向かって言った。

その光景を目の当たりにして、ピースは目を見開く。

 

 

ピース「思い出した…」

 

 

 

 

 

皆がホッとする中、面白くないのはアームドライノイマジン。

 

 

 

アームドライノイマジン『また邪魔しやがったな、この裏切り者!!』

 

 

 

業を煮やしたアームドライノイマジンはシールドホーンの角ミサイルをキンタロスの背中目掛けて連射した。

 

 

 

キンタロス『ぐあっ…!!』

 

 

 

そのうちの一本がキンタロスの背中に命中。

キンタロスは串刺しになった。

安心の束の間、皆が再び大きく目を瞠目させる。

 

 

 

ピース「キンタロスーッ!!!」

 

キンタロス『う…ぁ……』

 

 

 

キンタロスは腹と背中から砂をこぼし片膝を付くが、瓦礫を落とさぬ様腕に力を込める。

 

 

 

キンタロス『早よ…、やよい…を…』

 

 

 

キンタロスはハナに向かって、やよいを助ける様に促す。

ハナはショックで気を失った幼いやよいを抱きかかえ、その場を離れる。

 

 

 

アームドライノイマジン『チッ、しぶてぇなぁ…』

 

 

 

再びシールドホーンを向けたが、デンオウRFのデンガッシャーから放たれた釣り糸がそれを絡め取った。

 

 

 

ハッピー「ハァッ!!」

 

アームドライノイマジン『グァッ…!』

 

 

 

そしてすかさず、ハッピーは渾身の蹴りを叩き込む。

それと同時にデンオウRFがアームドライノイマジンを釣り上げ、遠くへ飛ばす。

 

 

 

デンオウRF「ピース…、あの熊くんの所にいってあげなよ」

 

 

 

デンオウRFはピースに向かって言うとピースはキンタロスの元へ向かう。

だがその途端、キンタロスが力尽き、瓦礫の下敷きになってしまった。

 

 

 

ピース「キンタロス!!」

 

ハナ「アナタ…!!」

 

 

 

やよいを無事に避難させたハナも戻ってくる。

 

 

 

キンタロス『…………やよいは…無事か…?』

 

 

 

瓦礫の下敷きになったキンタロスは瀕死となり、今にも身体が砂と化し崩れてしまいそうだった。

そしてキンタロスが吐いた言葉は最後までやよいを案ずる言葉だった。

 

 

 

ハナ「大丈夫…でも、あんた…何で……?」

 

キンタロス『気にすんな…俺らの事嫌いやったんやろ?』

 

 

 

ハナの態度からキンタロスは自虐気味に言う。

 

 

 

ピース「キンタロス!何で!?…何で!?」

 

 

 

ピースは泣きそうな声を絞り出し、どうしてここまで自分の為に尽くしてくれたのか問いただした。

 

 

 

 

 

 

 

キンタロス『――言うたハズや』

 

 

ピース「え?」

 

 

キンタロス『俺を…こないに……こないに必死させたヒーローの正体……。

見つけるって…。

やよいの…ヒーロー、どうしても……見つけるって…』

 

 

 

途切れ途切れに弱々しい声で語る。

 

 

 

キンタロス『一週間…懸命に……捜した。……けど…見つからへんかった。

だから賭けたんや!

過去へ行ったら…やよいが追いかけて来て……あの日やよいが見たヒーローに……会わせられる。

そう…思って賭けたんや。

けど、…結局…見せれん…かったわ。…ゴメンなぁ……やよい』

 

 

ピース「違う!!!」

 

キンタロス『!?』

 

 

 

ピースはキンタロスの言葉を断ち切った。

 

 

ピース「私…、思い出した…。

昔、会ったこのヒーロー

ーーーそれはあなたよ!キンタロス」

 

キンタロス『俺…!?』

 

ピース「私…忘れてた。あなたに助けてもらった事…、ずっと……」

 

 

キンタロスは自分が持っていたやよいの絵を出しそれを見る。

 

 

 

キンタロス『そっか、これ…俺か…。

通りで見つからん筈や…、

ちゅうか…見つけとったんやな…

アホやなぁ……俺……』

 

 

 

そうしてる間に、キンタロスの身体は崩れてゆく。

 

 

 

ハナ「待って!消える事ないでしょ!!」

 

キンタロス『無理言うな……』

 

ハナ「駄目よ!」

 

キンタロス『何でや、俺たちのこと嫌いなんやからええやろ?』

 

 

 

キンタロスの言葉にハナは言葉をつまらせるが、ハナは意を決して自分の内なる思いをぶまける。

 

 

 

ハナ「そうよ、大嫌いよ!!

あんた達イマジンなんかみんな消えちゃえばいいと思ってる。

ーーー私はね、あんた達が時の運行を変えたせいでバッドエンドになった。未来にいたの!

その未来では誰もが生きる希望も持たず、全てを諦めた腐った世界…

私はあんた達イマジンやバッドエンドの住人を根絶やしにするためこの時代に来たの!!」

 

 

 

ハッピーとデンオウRFもアームドライノイマジンを抑えながら、ハナの思いを聴く。

 

 

 

ハナ「でも…私がちょっと待ちなさいって言ってんのよ!待ちなさいよ!!!」

 

 

キンタロス『ーームチャ言うな…』

 

 

 

キンタロスが呟くとまた身体が崩れる。

 

 

 

キンタロス『ウッ!…すまん、やよい。お別れや…』

 

ピース「え?」

 

キンタロス『俺は満足や。やよいを救えた。やよいのヒーローも見つけられた。

もう、思い残す事はない…』

 

ピース「そんな…」

 

 

 

 

 

 

デンオウRF・良々「ふざけんじゃないわよ!!!!!」

 

 

デンオウRFがアームドライノイマジンを投げ飛ばしたその時、

良々の意識が表に出て叫ぶ。

声は同じだが、気迫と口調でハナとハッピーとピースは瞬時に理解した。

 

 

 

 

デンオウRF・良々「何がヒーローよ…。

滑稽ね。笑わせるーーー

女の子を泣かせて、涙の一つも拭いてやれない奴をあんたはヒーローって言うの…。

はっ、ちゃんちゃらおかしいわ」

 

ハッピー「ちょっと!良々ちゃん」

 

デンオウRF・良々「うるさい!!!

ーーー何お別れみたいな言葉吐いてんの?何死んじゃうみたいな台詞言ってんの?

本当にやよいちゃんのヒーローなら、ずっとそばにいて守ってやんなさいよ。

死んだらそれで終りよ。死んだら、二度と会えないのよ!!

こんな…こんな簡単に終わらせないでよ。意地でも…やよいちゃんの為にも…生きなさいよ!!

ーーーもう、あんな思い…二度と…させないで…」

 

 

 

ハッピーがその時見た良々の表情は何処か哀しみが込められていた。

サングラスの越しの目からは涙が溢れていた。

 

 

 

ウラタロス『良々ちゃん、残念だけど、彼は契約完了していてイメージを借りて身体を構成できない…。

もう、どうしようもないよ』

 

 

 

ウラタロスが声を掛け、良々をなだめるが、良々はそれを聞くと涙を拭き、決心して口を開く。

 

 

 

デンオウRF・良々「キンタロス、あなた…やよいちゃんとの契約は完了してるのよね?」

 

ウラタロス『良々ちゃん。まさか…』

 

デンオウRF・良々

「ーーー今度は私と契約して!!」

 

 

ウラタロス『ええ!?』

 

モモタロス『はぁ!!?』

 

ハッピー「え!?」

 

キンタロス『なっ?!』

 

ピース「っ!!」

 

ハナ「良々ちゃん!?」

 

 

 

デンライナー食堂車内にいたモモタロスもコーヒーを吹き出し、ハッピー、ピース、ハナも驚く。

 

 

 

デンオウRF・良々「私と契約して、一緒に戦って!!」

 

モモタロス『待て良々!!もう満員だ!!』

 

 

 

デンオウRF「はぁ…、僕は良々ちゃんのやる事に口出ししないけど、君はどうするの?」

 

 

 

ウラタロスが表に出たデンオウRFはキンタロスの方に目を向け、

 

 

 

 

デンオウRF「女性の誘いを蹴るつもり?君も男なら、垂らした竿を他人に任せるそんな無責任な真似はやめなよ。それに、心残り…あるんじゃないの?」

 

 

 

キンタロスはしばらくの沈黙ののち、口を開く。

 

 

 

キンタロス『心残りか…やっぱ大ありや!!』

 

 

 

キンタロスは光の球となると、デンオウRFの中に入り、PFとなる。

 

 

キンタロス『ホンマにええんか?』

 

デンオウPF「だけど一つ警告しとくわ。

今度私の友達を悲しませたら、その時は容赦無く叩き出す」

 

 

キンタロス『おおきに、ホンマおおきに!!』

 

 

その時、デンオウベルトのセレクトボタンの内、金色のボタンが光る。

それを押すと、煌びやかなメロディが流れ、パスを横切らせる。

 

 

 <AX FORM>

 

 

 

デンオウPFの周りに現れたのは、SFの袖のない長ランの様な陣羽織。

それがデンオウの前にくると、前後逆になり、金色の縁取りの黒い前掛けとなって、ベルトが締まる。

太ももの群青色のラインが金色に変わり、

良々の長い髪が金髪に染まり、前髪は真ん中分け、首後ろで毛糸玉の様なお団子ヘアーに簪が一本刺さる。

そして、何処からともなく現れた「金」と記載された三角巾が頭頂部から首後ろにかけて髪を纏め、さらに頭頂部から一束飛び出た長い銀髪。いわゆるアホ毛が突き出し、デンオウの頭上前方ちょい上から針金の様に直角に曲がり、毛先がデンオウの鼻筋を通る。

瞳は金色に輝き、優しくも力強い目つきになり、前掛けの胸部に「電」とブロックの様な四角い黒文字、ベルトから下の垂れ部分には「王」と黒いブロック文字が記入され、変身完了。

デンオウ・アックスフォーム

 

 

 

デンオウAF「俺の強さにお前が泣いた!!」

 

 

 

デンオウAFは親指で首を鳴らし、決め台詞と共に懐紙吹雪が舞い落ちる。

 

 

 

デンオウAF「涙はこれで拭いとき…」

 

 

アームドライノイマジン『誰が泣くか!!』

 

 

 

アームドライノイマジンはシールドホーンのホーンミサイルを連射するが、デンオウAFは微動だにせずにその全てを体のみで受け止め、跳ね返した。

 

 

アームドライノイマジン『な、何ぃ!?』

 

ピース「す、すごい……」

 

ハッピー「……信じられない」

 

 

 

アームドライノイマジンだけでなく、遠くではピースとハッピーがデンオウAFの恐ろしいまでの頑強さに驚愕していた。

続いてアームドライノイマジンは、ホーンミサイルが効果がないと理解するとシールドホーンを突き出し、デンオウAFに向かって突進する。

肉弾戦に持ち込む気だ!

しかし、デンオウAFはシールドホーンの先端を軽く片手で掴み、

 

 

アームドライノイマジン『止めた!?』

 

 

アームドライノイマジンがシールドホーンを押そうが引っ張ろうがそれはまるで固定されたかの様にしっかりと掴まれて微動だにしない。

防御どころか、大の大人が暴れる幼児を抑える程度の無造作ぶりな余裕に驚きを隠せず、冷や汗を流した。

その時、デンオウAFはゆっくりアームドライノイマジンに問いただす。

 

 

 

デンオウAF「一つ聞く……お前の契約者は、一体どんな望みを言うたんや?」

 

 

 

アームドライノイマジン『あ?……な、何を突然………はっ、他愛のない願いだ。“野球選手の親父が活躍出来る様にしてくれ”だと。

だから一番てっとり早い方法で他の上手い選手を潰す事にした』

 

 

デンオウAF「なんでや!?あいつの望みは、親父さんがヒーローみたく活躍出来る事を願ってたんや!!それがどうして他の選手を潰す結果になるん!?」

 

 

 

アームドライノイマジンのやり方が理解できないデンオウAF、アームドライノイマジンもなぜコイツはそんなことを訊くのだといった感じで続けて言った。

 

 

 

アームドライノイマジン『はぁ?バカかてめえは!なんで俺があんなヘボが活躍出来るまで待ってやらなくちゃなんねぇんだ?そんなガキ共のままごとなんてどうでもいい!!ただあのガキは過去へ繋がるページを開いてくれりゃそれでいいんだよ!!』

 

デンオウAF「……そうか」

 

 

 

デンオウAFの握っていたシールドホーンに力が入り、ピシッと音を立ててヒビがはいる。

 

 

 

アームドライノイマジン『なっ!』

 

 

どうでもいい

 

アームドライノイマジンの言ったこの言葉がデンオウAFの怒りに火をつけた!

掴んだままだったシールドホーンの先端をそのままの状態で力任せに砕いたのだ!!

 

 

デンオウAF「よぅくわかった…お前がやよいやあの女の言うてた、 “ 勝手な解釈で願いを叶える奴 ” の一人っちゅうことやな……?」

 

アームドライノイマジン『な、何言ってやがる!?これが俺らにとっての当然のやり方だろ!?』

 

デンオウAF「当然か…おい、新しい契約者。名前は?」

 

良々『良々』

 

デンオウAF「良々、俺は決めたで!!俺はデンオウになる!そんで、皆の一途な願いを踏みにじるこないな連中を、一人残らず叩き潰したるんや!!!せえい!!」

 

アームドライノイマジン『グワアアァァァッ!』

 

 

 

怒りと決意を込めたツッパリをアームドライノイマジンに叩きつけるデンオウAF!!

見事鳩尾にめり込み、遥か遠くの瓦礫の山に突っ込む。

 

 

デンオウAF「この強さ…お前相手なら、抑える必要ないなぁ」

 

 

こいつだけは許さん!!

 

そのキンタロスの意思と良々の想いが交差し、実現した金色の力。

良々もSFやRFとは比べものにならない力強さを実感している。

 

 

アームドライノイマジン『野郎…、だがそんな即席の付け焼き刃で俺がやられるかぁああああっ!!!』

 

 

アームドライノイマジンの身体が膨らみ、分身体・ゲラスが襲いかかる。

 

 

 

ゲラス『ヴオオオオオオオッッ!!』

 

デンオウAF「こいつはデカくて楽しめそうやな」

 

 

 

首を鳴らし、足元のデンガッシャーを拾い上げ、真ん中から分解。

刃の付いた先端の方を上空へ放り、落下の刹那、持ち手の方をさらに分解。

落下して来た先端の方が持ち手となるデンガッシャーに連結。

側面に刃のあるもう一方は先端に刃のあるデンガッシャーに並行に連結。

すると側面に刃のあるデンガッシャーの刃が大きくなり鉞となってそれを担ぐ。

 

 

ハッピー「き、金太郎だぁ…」

 

 

ハッピーは鉞に前掛け姿のデンオウAFを見て金太郎を思わせた。

 

 

ピース「でも、なんか…料亭の人みたい…」

 

 

ピースの方は前掛けに三角巾で、料亭の料理人にも見えなくもなかった。

 

 

ゲラス『ヴオオオオオオオオオオオオオ!!』

 

 

そうしてる間にゲラスは突進してきた。

自分の身体の2倍以上の体格から岩石の様な硬く巨大な拳(こぶし)を繰り出してくる。

デンオウAFはデンガッシャー・アックスモードを短く持ち、ゲラスの拳を受け流す。

象の様なこの巨体に、カモシカの様な不釣合いの俊敏さ。

デンオウAFは次第に防戦に追い込まれてゆく。

 

 

 

アームドライノイマジン『やれぇ!!ゲラス、そのままぶちのめせーっ!!』

 

 

 

アームドライノイマジンが指示し、ゲラスを使っての猛攻撃にはいる。

 

 

 

ハッピー「はぁっ!!」

 

ピース「やあっ!!」

 

アームドライノイマジン『ぐはぁっ!!?』

 

 

 

だが、その隙を突かれて不意打ちを食らってしまった。

するとその一瞬、ゲラスの動きが鈍った。

その一瞬を良々は見逃さなかった。

 

 

 

アームドライノイマジン『チッ!そういやいたか…、でもテメエらなんかが相手になるかああああああっ!!』

 

 

 

アームドライノイマジンが拳を振り上げ、迫ってくるがピースはそれを避け、電撃を纏った拳をアームドライノイマジンの腹に叩き込む!

 

 

 

アームドライノイマジン『はっ!効かねぇよ!!』

 

 

 

拳を振り上げ、振り払おうとするも二人は一斉に離れ、それを避け、ハッピーも同じ場所に拳を叩き込む。

それを何度も繰り返しアームドライノイマジンは次第に苛立っていく。

 

 

 

アームドライノイマジン『チョロチョロウザいんだよ!!』

 

 

 

アームドライノイマジンが二人目掛けて突進してきた時、ピースがまた鳩尾に電撃の拳を叩き込む。

 

 

 

ビリッ!!

アームドライノイマジン『グゥッッ!!』

 

 

 

ビリッとアームドライノイマジンの身体に電撃が走り、アームドライノイマジンは苦悶の声を漏らす。

 

 

 

アームドライノイマジン『痺れた?なぜ…俺に電撃は聞かないハズ…!!』

 

 

 

すると、腹部に違和感を感じとり見ると、わずかにヒビが入っている。

 

 

 

アームドライノイマジン『しまった!ここから漏電したのか!』

 

 

 

そう、金属が電気を伝わるのはその表面のみ。

だがアームドライノイマジンの隙間は絶縁体が敷き詰められており、電気が身体に流れる事はない。

だがハッピーの「ハッピーシャワー」とデンオウAFのツッパリを立て続けにくらい、鎧の腹部にヒビが入っていたのだ。

そのヒビからピースの電撃が漏電し、ダメージを与えたのだ。

 

 

 

電撃が効けばこちらのもの!!

 

 

 

ピース「はぁああっ!!」

 

アームドライノイマジン『んぎぃいいい!!』

 

 

 

ピースはアームドライノイマジンに電撃を纏ったパンチ、キックを次々と叩き込み、ハッピーはアームドライノイマジンの攻撃を防ぎつつピースに道を作る!!

 

キュアピースはプリキュアメンバーの中で能力のパラメータは総合的に高いとは言い切れない。

だが、その爆発力は激しく、瞬間的なアップでは5人の中ではトップクラスである。

そして今、その力が爆発しアームドライノイマジンの力を凌駕するまでいっていた。

 

 

 

 

一方、デンオウAFとゲラスの戦いは…。

ゲラスの動きが鈍り、デンオウAFに流れが傾きはじめた。

 

 

 

デンオウAF「どうした?動きが随分と遅おなったな」

 

 

良々『あの怪物は “ 分身 ” と言うより、敵の “ 離れた身体の一部 ” と言った方がいい。いわば “ 操り人形 ” 』

 

 

デンオウAF「そうか!本体の命令がなかったら、ただのでく人形言う事やな!」

 

 

 

ゲラスは苦し紛れと言わんばかりに力いっぱい両腕を振り回したり、突進したりするが、最早無駄な足掻き。

 

 

デンオウAF「せいっっ!!!」

 

 

デンオウAFがデンガッシャーを力一杯横薙ぎに振り、ゲラスを吹き飛ばす。

 

 

 

 

 

 

 

ピース「やああああああああっ!!!」

 

 

高圧電流を帯びたピースのキックがアームドライノイマジンの腹に打ち込まれた。

 

 

アームドライノイマジン『ぐほあああああぁぁぁぁぁぁっっ!!!』

 

 

蹴られた場所から凄まじい火花を上げて、アームドライノイマジンは蹴り上げられて宙を舞った。

 

 

 

 

そして、アームドライノイマジンもゲラスも満身創痍となり、立つこともやっとのフラフラ状態となる。

デンオウAFはゲラスを目の前に、パスをベルトのバックルに翳す。

 

 

 

 

 <FULL CHARGE>

 

 

 

ピースもスマイルパクトを前方のアームドライノに向けて突き出し、気合いを込める。

 

 

 

 

デンオウAFは上空に向かってデンガシャーを投げ、相撲の見合いの構え。

そして、力を溜めると自身もジャンプし、空中でそれをキャッチ。

そのまま真下にいるゲラスに向けて己の体重とパワー、そして思いを込めた一撃を放つ!!!

 

デンオウAF「でああああああああああっっっ!!!」

 

 

 

ピースもスマイルパクトに気合いを溜め終わると右手をチョキにして上に翳す。

 

 

ピース「プリキュア…」

 

 

 

すると、落雷。

いつもはこの場で少し驚くが今回は驚かず、雷を纏って回転。

そして、チョキにした両手をアームドライノイマジン目掛けて突き出し、放電!!

 

 

ピース「ピース…サンダー!!!」

 

アームドライノイマジン『グゥアアアアアアアアアッッ!!』

 

 

ゲラス『ヴオオ…ォオオォォ……』

 

 

ゲラスも鉞を突き立てられた薪の様にその体を二つ両断され、ゆっくりと左右に崩れ落ちた。

 

 

アームドライノイマジン『ぐ…おぉ…ああぁ……』

 

 

わずかな断末魔を残しながら、アームドライノイマジンは身体をスパークさせ、地面に倒れ伏し、分身体共々爆炎の中に消えていった。

 

 

 

デンオウAF「ダイナミックチョップ……」

 

良々『後で言うんだ』

 

デンオウAF「ヒーローは後で技名を言うんや」

 

 

 

 

 

モモタロス『あの野郎!カッコ付けやがって~』

 

ウラタロス『ま、楽できたからいいんじゃない?』

 

ナオミ「でも、暴走していませんか?」

 

 

デンライナーの中の3人は各々の感想を漏らす中、アームドライノイマジンとゲラスの残骸である砂がギガンデスを形成する。

 

 

 

――むか~しむかし、アフリカの大草原のどまんなかに一頭のサイが住んでおりました。

このサイは乱暴者で他の動物たちは皆このサイを恐れておりました。動物たちは何とかこのサイを追い出そうと試みます。しかし、めっぽう強いサイに恐れをなして誰ひとりとして逆らうものはいませんでした。

動物たちはライオンを議長とした会議を開き、サイの脅威から逃れるいい考えはないものか、相談しました。しかし、これといったいい考えは浮かばず、挙句の果てには自分達が住んでいる草原から出て行こうとする結論に達しまし、大草原にはサイのみが残る結果となってしまいました。

ところが、そんな中で唯一脱出せずに残っていたのが、ウジクイという鳥でした。ウジクイはサイをまったく恐れておらず、逆にみんなを追い払ったサイをこらしめてやろうと考えていました。そこで、一頭残るサイに向かってこんな提案をしました。

「サイさん、サイさん。貴方はこの草原の王様です。どうですか?君の偉さを象徴とする銅像を立てませんか?」

おだてられたサイは、ウジクイの言うことに興味を示し、何が何でも自分の銅像がほしくなりました。ところが、自分やウジクイでは銅像を作ることはできません。追い払って誰一人残っていない今となっては、作ってくれる動物もいません。

「なら、貴方自身が銅像になればいいじゃないですか」

と、ウジクイは提案します。

何やかんやと言いくるめられたサイは、ウジクイの言うことに納得してしまい、自ら銅像そのものになりました。つまり、ある高台にじっと立っている事でした。どんなことがあっても動かず、物も食べず、じっとしていなくてはならなくなりました。

さらにウジクイはサイにこう釘を刺す。

「そうそう、自分が銅像になった以上銅像であることを放棄する事。それは王様の地位を降りることになります。だから、決して降りないでください」

サイはウジクイの言う通り動かず我慢しました。

そして何日の時間が過ぎ、サイはとうとう我慢できなくなり、高台から飛び降りた。

その時である。

何と、サイの硬い鎧がそのまま残ったのです。そして鎧を脱いだサイは仔豚のごとく弱々しいものでしたが、それでもサイは自由になれた事が嬉しかった。

同時にそれまで自分の姿を見ることなどなかっただけに高台に残った自分の銅像をひと目見たいと思い振り向いた。

その時、稲光がピカッと光り、高台に立つサイの銅像が目に入ってきた。それは仔豚同様になった裸のサイには世にも恐ろしい姿であり、仔豚同然のサイは大慌てで逃げるのでした。

そして、いつしか大草原には色々な動物が戻り、かつての世界に戻りました。サイの抜け殻である銅像はというとそのまま残り、動物達は過去の戒めとしたのでした。

 

 

 

 

だが、そのサイの銅像は長い年月を得て魂を宿し、怪物へとその姿を変える――

 

 

残骸の砂が集まり、増大し、犀頭の鎧を着た悪魔の様な銅像の怪物――――

ギガンデス・ガーゴイルとなった。

 

 

ギガンデス・ガーゴイル

『GIGAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!!!!!!!!!!!』

 

 

ハッピー「ぎゃー!?大きくなったーっ!!!」

 

ピース「アカンベエより大きいーっ!!!」

 

 

 

初めて見るギガンデスに驚愕するハッピーとピース。

 

 

 

良々『デンライナーを使って!!』

 

デンオウAF「デンライナー?」

 

 

 

そうしてる間にギガンデスが飛びかかってきた。

間一髪、デンライナー・ゴウカが体当たりし、その隙にデンオウAFは先頭車両の運転席のマシン・デンバードに跨る。

モニターにギガンデス・ガーゴイルを映し、マシン・デンバードのスイッチを押し、操作、ゴウカの先頭車両、5両が『戦闘車両』に変形した。

いきなり小細工無し、問答無用の一斉砲撃!!

だが、鋼鉄の身体を持つギガンデス・ガーゴイルは爆炎は上げるものの怯まず暴れだした。

攻撃がまるで “ 効かんです ” なんて洒落てる場合ではない。

 

 

デンオウAF「逆に蜂の巣突ついたんちゃうか!?」

 

良々『蜂の方が遥かに可愛い!!』

 

 

砲撃しながら躱していると、AFの待機音。

新たなデンライナー『レッコウ』が地中から姿をみせた。

 

 

良々『ついでに!』

 

 

 

レッコウだけではなく、イスルギも現れ、ゴウカに沿って並走しはじめた。

モニターには連結準備完了の文字が映しだされる。

 

 

 <Mode REKKOU>

 <Formation

  REKKOUSEKKA>

 

 

 

 

ミュージックホーンの三重奏を奏でながら、レッコウ、イスルギ、ゴウカの順に連結。

 

デンライナー・烈光石火

 

レッコウのサイドアックスが展開し、イスルギのレドームがせり上がる。

レドームがイスルギから分離、ブレードフィンを出し、丸鋸の様に回転しながらギガンデス・ガーゴイルの周りを飛び回り、何度も何度も斬りつける。

動きが止まったその隙にギガンデス・ガーゴイルの目の前に線路を形成し、レッコウの腹がギガンデス・ガーゴイルに向く形で停車。

 

 

デンオウAF「ぬんっ!!」

 

 

 

デンオウAFがデンバードのハンドルを力一杯振り切ると、

右に2本、左に3本、昆虫の節足を連想させるサイドアックスが左右から相撲の張り手の様にギガンデス・ガーゴイルに襲いかかった!!

鋼鉄をも砕くその攻撃はギガンデス・ガーゴイルに確実にダメージを与えてゆく!!

最後に左右のサイドアックスで挟み込み。

うっちゃり!!

 

ギガンデス・ガーゴイルは宙を舞って転がるが、フラフラになりながらもまだ立ち上がる。

トドメだ!!

ギガンデス・ガーゴイルの足元に線路が敷かれ、レッコウ最大の武器・フロントアックスが車体前面に展開し、フリーエネルギーを発し、巨大な刃を形成しながらギガンデス・ガーゴイルの真下を通過。

見事、真っ二つに切り裂かれたギガンデス・ガーゴイルは爆発しながら消滅した。

 

 

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

 

【現代】

 

良々「加西くん」

 

淳一「なんだ…野上か。どうした?」

 

 

 

現代に帰った後、良々は淳一に声を掛けた。

淳一は先ほどのイマジン騒動であまり元気がなかった。

 

 

良々「加西くんのお父さんって、インタビューとか受けた事ある?」

 

 

加西「?―ないよ」

 

 

怪訝そうな顔をし、答える。

すると、良々はスポーツ新聞を一部取り出し、それを淳一に見せる。

 

 

良々「じゃあ、この記事も知らないかな?」

 

 

よく見ると、10年前の古新聞。

赤マルで囲ってる記事があった。

淳一はそれを見ると、「えっ?」と目を見開き、その記事をみる。

 

 

《 加西選手―インタビュー》

 

 

 

 

 

 

 

私は今まで何度も野球を辞めたいと思った事があります。

 

幼い頃からプロ野球選手の夢をみて血の滲むような努力の末、ようやく掴んだプロ野球選手の夢。

 

しかし、その世界は甘くはなく、試合にも中々出れず試合を眺めているだけの日々が続き、野球などやっている意味などないと思う時がありました。

 

それでも、私が野球を諦めなかったのは幼い私の息子が見送りの時、必ず言ってくれる一言。

 

 

「お父さん、がんばって」

 

 

曇りのない笑顔でただそれだけの応援。

 

挫けそうになった時は、何時もその笑顔を思い出し自分を奮い立たせてきました。

 

私が今、プロ野球選手を続けられるのは息子のお陰なのです。

 

 

 

 

 

淳一は知らず知らずの内に父の支えとなっていたのだ。

息子の想いにこたえる為、諦めず毎日毎日努力をし続けていた。

10年もの長い年月。

淳一が10年前から見ている父の練習の影にはそんな想いが込められていたのだ。

 

 

 

淳一「俺、…馬鹿だ。父さんがこんなに頑張っているのに…体裁ばっか…気にして……」

 

 

気付けば淳一は感動と自分を恥じた涙をこぼし、新聞を濡らしていた。

 

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

 

 

【デンライナー・食堂車】

 

 

モモタロス『何だと!?そりゃ本当か!?』

 

あかね「うん、ホンマホンマ!!」

 

 

食堂車では何やら皆が集まって大騒ぎしていた。

 

 

良々「あれ?みんなどうしたの?」

 

 

淳一の所から帰ってきた良々はこの騒ぎに怪訝な顔をする。

モモタロスが新入りのキンタロスに悪態をたれているかと思いきや、皆真剣な顔だ。

 

 

あかね「あ、良々。どこ行ってたんや!」

 

良々「どうしたの?」

 

 

あかねがうろたえながら話し掛ける。

 

 

なお「驚かないで聴いて!!もう一人のデンオウがこの時代に現れたの!!」

 

 

良々「え!?」

 

 

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

 

それはサニー、マーチ、ビューティが現在で青っパナの海賊船アカンベエと戦ってる時。

 

 

 

海賊船アカンベエ『アッカンベェ~』

 

 

 

ドンドンドンドンと、派手な音を鳴らして外壁から大砲を次々と撃つ海賊船アカンベエ。

 

 

 

キャンディ「また来たクル!!」

 

サニー「クッ!!」

 

 

キャンディの叫びにサニー、マーチ、ビューティは一斉にその場を離れる。

撃ち出された大砲の砲弾には青っパナのアカンベエの顔が不気味に舌を出して、「アカンベエ」「アカンベエ」と喋りながら突撃してくる。

サニー、マーチ、ビューティは躱そうと走り出すがアカンベエの砲弾は誘導ミサイルの様に迫ってくる。

 

 

ビューティ「プリキュア!ビューティブリザード!!」

 

 

ビューティが三本の線を描き、強力な冷気を放出する。

冷気を浴びせられた砲弾アカンベエは浄化され消え去ったが、まだ本体が生きている限り次々と砲弾アカンベエが襲いかかってくる。

 

 

サニー「キリがないな」

 

マーチ「これじゃ近づけないよ」

 

ビューティ「何かいい手は…」

 

 

要塞の様なアカンベエを前にどうやって戦えばいいのか考えていたその時、

 

 

~♪♪~♪♪~♪♪~♪♪~♪♪

 

 

独特のミュージックホーンを鳴らし、赤いヘッドの列車がこちらに向かって線路を敷きながら走行してくる。

 

 

マーチ「デンライナーだ!!」

 

 

マーチは良々達が戻って来たと思った。

 

 

 

キャンディ「でも、音が違うクル」

 

 

しかし、キャンディはミュージックホーンがいつもと違うと感じ取った。

まるで機械的なシンセサイザーのミュージックホーン。

よく見ると車両の横にはあるハズのない青い線。

そして、エコーのかかった電子音が辺りに響く。

 

 

 

 

 

 《STRIKE FORM》

 

 

 

そのデンライナーから降り立った男は

藍色でデンオウと同じ形のライダースーツに同色の足袋。

その上から同色の膝丈コートに、四本の線路を連想させる四股燕尾の肩掛け。

首からは太い鎖にデンオウのマークとターンテーブルが合わさった様な薄銅色の大きな懐中時計。

短髪の青髪に、鋭角的な赤いゴーグルと頬の大きな銀色の金属パーツが口のみを残して仮面の様に顔を隠していた。

 

 

 

その男の双眸は目の前のアカンベエとアトラクションの上に立っているウルフルンを無言で見据えていた。

 

 

ウルフルン「何だテメエは…、初めて見る顔だな。

――顔隠してるが…。

何モンだ!!?」

 

 

ウルフルンがこの場にいる皆を代表して問いただす。

その男はこう答えた。

 

 

 

???「私はデンオウ…。新たなデンオウだ!」

 

ウルフルン「何ぃ!?」

 

「「「「ええ!!?」」」」

 

 

その男は自らを『デンオウ』と名乗った。

ウルフルンはともかく、サニー、マーチ、ビューティ、キャンディはそんな唐突な展開に呆気に取られた!!

確かに、腰には薄銅色だが、デンオウと同じ形のベルトとデンガッシャーがあった。

 

 

 

ウルフルン「あ、新しいデンオウ…だと……!?」

 

NEWデンオウ「だが、君たちの知っているデンオウと私は異なる存在だ。区別する為、私は『NEWデンオウ』と名乗っておこう」

 

 

NEWデンオウは凛とした佇まいに重い口調でウルフルンやプリキュアに宣言する。

 

 

 

 

サニー「ち、ちょ待ってーな!それはともかく…」

 

ビューティ「あなたは…わたくし達の味方なのですか?」

 

 

 

サニーとビューティはとりあえずNEWデンオウが敵か味方か恐る恐る尋ねた。

 

 

NEWデンオウ「君達と敵対するつもりはない。―――ヤツは私が代わりに相手をしよう」

 

 

NEWデンオウはウルフルンと海賊船アカンベエの前に立ち塞がる。

 

 

ウルフルン「チッ!やっぱ敵か!!じゃあ遠慮なく叩き潰せ、アカンベエ!!」

 

 

海賊船アカンベエ『アッカンベェ~!!』

 

 

 

NEWデンオウは落ち着き払って指を二回鳴らす。

 

 

NEWデンオウ「テディ!」

 

テディ『ハッ!』

 

 

登場したのはテディと呼ばれる青鬼イマジン。

 

 

マーチ「イマジン!?」

 

NEWデンオウ「いや、コイツは派遣イマジン―――説明は後だ」

 

 

また指を二回鳴らす。

 

 

NEWデンオウ「テディ!――『マチェーテディ』だ」

 

テディ『了解』

 

 

なんと、テディが宙返りすると、テディは剣となりNEWデンオウの手に収まった。

 

 

 

 

NEWデンオウ「貴様のカウントダウンは……既に始まっている」

 

 

海賊船アカンベエ『アッカンベェ~!!』

 

 

先程と同じ海賊船アカンベエは砲弾アカンベエを撃ち出してきた。

 

 

サニー「来たで!!」

 

 

 

それに対しNEWデンオウはマチェーテディの先端――切っ先を砲弾アカンベエに向ける。

すると、マチェーテディの切っ先の銃口から破壊光弾が発射され、砲弾アカンベエをすべて撃ち落とした!!

 

 

NEWデンオウ「何だ?花火か?ならもっと派手なのを頼む」

 

 

 

余裕の軽口にイラつく、ウルフルンとアカンベエ。

 

 

ウルフルン「調子に乗りやがって~!アカンベエ!!次の攻撃だ!!」

 

海賊船アカンベエ『アッカンベェ~!!』

 

 

今度は海賊船アカンベエの中からゾロゾロと海賊衣装に身を包んだ。骸骨アカンベエが百体ほど這い出て来た。

 

 

 

マーチ「ヒッ!何あれ!?」

 

 

お化け嫌いのマーチはそれを見て青ざめるが、サニーとビューティは別の意味で恐ろしさを感じ取った。

 

 

サニー「おい、この数はマズうないか!?」

 

ビューティ「加勢しましょう!!」

 

 

三人は(マーチは嫌々)加勢しようとした。

 

 

NEWデンオウ「来なくていい。というか、その方がやりやすい」

 

 

 

そう、言い終わると同時に、呆気にとられる皆を他所に、NEWデンオウはマチェーテディを振りかぶり、駆け出した。

マチェーテディの刃が煌めいた瞬間、その光は目の前に立っていた骸骨アカンベエ数体をいともたやすく横一文字に斬り裂いた。

 

 

 

『アッ…!』

 

『……カン…!』

 

『…………ベェ~…!』

 

 

刹那閃く剣の軌跡。

そして疾風の如く唸る閃光。

マチェーテディを振り上げれば、今度は4、5体の骸骨アカンベエが訳も分からず両断され宙を舞う。

台風の如く振り回せば、それにそって何十体もの骸骨アカンベエが木の葉の如く吹き飛ぶ。

その圧倒的な速さの前に、骸骨アカンベエはおろか、それを遠くで見ていたウルフルンやプリキュア達も目に捉える事ができなかった。

それはまさに “ 常識 ” の範疇を超えた現象だったからだ。

そして、百体の骸骨アカンベエは消滅し、残るは海賊船アカンベエ本体。

 

 

NEWデンオウ「テディ、カウントは… “ 8 ” でいい」

 

テディ『了解、カウントは8』

 

 

NEWデンオウはテディにそう告げると、手に余る程の大きさのデカイ懐中時計を操作し、「8」の数字をセットする。

 

 

 

NEWデンオウ「スタート」

 

テディ『8…』

 

 

まず駆け出し、海賊船アカンベエにすれ違いざま横一閃。

海賊船アカンベエは手足を振り回し、NEWデンオウを近づけない様にするが、それを縫う様に回避し、次々と斬撃を入れる。

 

 

テディ『7…、6…』

 

 

少し距離を置いて、NEWデンオウはパスを取り出す。

 

 

テディ『5…』

 

 

 《FULL CHARGE》

 

 

エコーの効いた電子音が海賊船アカンベエに死刑宣告を言い渡す。

 

 

テディ『4…、3…』

 

 

NEWデンオウの首にかかった懐中時計が強く光り輝き、その場から海賊船アカンベエの真上にジャンプ。

マチェーテディを頭上に振りかぶり、エネルギーチャージ!!

 

 

テディ『2…、1…』

 

 

マチェーテディを海賊船アカンベエの青っパナ目掛け振り下ろした!!

 

 

テディ『0!!』

 

 

カウントダウンが終了すると同時にアカンベエの青っパナが両断された。

 

 

NEWデンオウ「カウント・スラッシュ…」

 

海賊船アカンベエ『アッカンベェ~……』

 

 

技名を静かに呟く中、海賊船アカンベエは消滅し、元のアトラクションの乗り物に戻った。

 

 

 

ウルフルン「NEWデンオウだと…、聞いてねぇぞ!!」

 

 

ウルフルンが消えると同時にバッドエンド空間もなくなった。

 

 

 

あかね「ほえー、アッサリ勝ちよった…」

 

キャンディ「あれ?NEWデンオウはクル?どこ行っちゃったクル」

 

れいか「そういえば…、あら…?」

 

なお「何時の間に?」

 

辺りを見回したが、NEWデンオウの姿はどこにも見当たらなかった。


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