スマイルプリキュア&時を超える桃太郎   作:紅鮭

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やよいのヒーロー(前編)

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キンタロス『とまあ、そんなこんながあって、俺とやよいが出会ったんや』

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

バッドエンド王国

ハロウィッチの部屋

 

今日は非番なハロウィッチは自室で雑誌を読みながらクリームソーダを飲んでだらけきっていた。

 

 

 

ハロウィッチ「あー、非番超最高♪」

 

 

 

雑誌のページを捲ると七夕に流星群が観測できると載っていた。

そのページに目が留まりしばらく読んでいると、テーブルの上に置いてあった携帯に着信音。

 

 

 

ハロウィッチ「おや?」

 

 

 

誰からか確認すると[ウルフルン]。

 

 

 

ハロウィッチ「物凄く珍しい事にワンちゃんからだわ♡吉報だといいんだけど―――もしもし?」

 

ウルフルン「おいコラ!ハロウィッチ!!」

 

 

 

電話に出た途端、いきなり怒鳴ってきたので携帯を耳から離す。

 

 

 

ハロウィッチ「どうしたの~?」

 

ウルフルン「どうしたもこうしたもねぇ!!どういう事だ!!?デンオウ以外にも俺達に敵対するイマジンが現れたぞ!!」

 

ハロウィッチ「どういう事?」

 

 

 

ハロウィッチはウルフルンからキュアピースに取り憑いたイマジンの事を聴いた。

 

 

 

ハロウィッチ「プリキュアに取り憑いたイマジン?…………ああ、ちょっとアンタ達じゃ不安だからさ先に1体あらかじめ送っといたの。

可笑しいわね。プリキュアやデンオウの事はあらかじめ話してある筈なのに…、寝てたのかしら?」

 

ウルフルン「ふざけるな!!これで三度目だぞ!!てめぇはまともなイマジンが作れねぇのか!?」

 

 

 

ウルフルンの物言いに小さく舌打ちし、言い返す。

 

 

 

ハロウィッチ「何?ウルフルン、アンタさっきっから…

―――弱音でも愚痴りにきたの?」

 

ウルフルン「な!?弱音!?」

 

ハロウィッチ「イマジンが一体敵に回ったからってどうってことないでしょ?使えなきゃ消しちゃっていいからさ。愚痴るヒマがあるなら自分の仕事に集中しなさいよ、じゃあね~」

 

ウルフルン「あ、おい!!」

 

 

 

 

携帯を閉じる。

 

 

 

ハロウィッチ「さてと…」

 

 

 

ハロウィッチが向かった先はキタカゼの研究室。

 

 

 

ハロウィッチ「邪魔するよ~」

 

キタカゼ「ハロウィッチ…」

 

 

 

机に向かって作業する白い侍風の男・キタカゼが振り返り返事をした。

 

 

 

ハロウィッチ「私が送り込んだ覚えの無いイマジンが現れたんだけど…」

 

 

 

実はウルフルンに話した事は全くの嘘。

 

 

 

キタカゼ「ほぅ…」

 

 

 

キタカゼは興味深そうに聴くと、こう推測した。

 

 

 

キタカゼ「おそらく“彼”が―――

痺れを切らし、重い腰を上げたのでしょう」

 

ハロウィッチ「アイツか…」

 

 

 

ハロウィッチは忌々しくつぶやく。

ハロウィッチとキタカゼ以外でイマジンを従える者。

あの胸くそ悪く気持ち悪い笑みが頭をよぎった。

 

 

 

ハロウィッチ「キタカゼ、“私の”ベルトの制作は順調?」

 

キタカゼ「ええ、パスケースはレプリカですが、このベルトがあれば―――

あなたの身体に眠るイマジンを制御出来る。以前造ったデンオウのベルトなどとは比べ物にならない」

 

ハロウィッチ「そう…」

 

 

ハロウィッチはその話を聞くとカボチャの被り物の中で嬉しそうに笑う。

 

 

 

ハロウィッチ「それと…あの3人は心配ないけど、ジョーカーには悟られない様にね。色々面倒だから…」

 

 

 

ジョーカーの行動は読めない。

奴は普段軽率な口調に道化の様な立ち振る舞いが目立つが、頭は切れ抜け目が無い。

 

 

 

キタカゼ「分かっていますよ」

 

ハロウィッチ「それとキタカゼ。私との約束…忘れてないでしょうね?」

 

キタカゼ「約束?ああ…しかし、それは我々に協力し、十分な成果を上げた時です。愛しい人を想えば…苦ではありませんよ」

 

 

 

フッフッフッと笑いながら優しく語り掛ける。

ハロウィッチはその後、何も言わず研究室を出た。

 

 

 

ハロウィッチ「誰にも邪魔はさせない…。たとえ誰であろうと、アタシの目的を邪魔するヤツは叩き潰す…!!それがデンオウ――

良々......貴方であろうと……!!」

 

 

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

 

やよいとキンタロスから話を聞いて皆は納得。

モモタロスがこのイマジンの匂いを嗅ぎとれなかったのは やよいのプリキュアとしての力が邪魔をしていたと思えば頷ける。

 

 

 

良々「――――で、やよいちゃんの望みは…えっと、その“黒いヘルメットを被ったヒーロー”を見つける事だから…それを捜してるわけ?」

 

 

 

出会いの回想が一段落し、今度は契約内容の『黒いヘルメットを被ったヒーロー』のに話題を変える。

 

 

 

キンタロス『そやで…、コレや!!』

 

やよい「あっ!それ!!」

 

 

 

キンタロスが懐から取り出したのは、一枚の画用紙。

やよいはそれをみると、慌ててキンタロスの手から取り上げようとするも、キンタロスはその画用紙に描かれているモノを見せた。

 

 

 

みゆき「コレが…そうなの?」

 

モモタロス『下手くそ…』

 

 

ぬいぐるみモモタロスがそう呟くと同時にその場にいた全員からリンチにされたのは言うまでもない。

やよいは少しショックを受けていた。

さっき取り上げようとしたのは恥ずかしかったためだろう。

 

 

 

キンタロス『こら、何言うとんねん!!お前、この絵見て何も感じんのか!?やよいのこのヒーローに憧れる情熱が伝わらんのか?!泣けるで!!』

 

 

 

キンタロスがその絵を突き出し、絶賛する。

それを聞いて嬉しいやら照れるやら、やよいは顔を真っ赤にする。

 

 

 

キンタロス『おお!そや、すっかり忘れてた。やよい、昨日アトラクションショーのチケットが手に入ったんや。今度こそお前の探しとるヒーローに間違いないで。早速見に行こうや』

 

 

 

キンタロスはアトラクションショーのチケットを取り出す。

 

 

 

ハナ「待ちなさい!!」

 

 

 

すると、今度はハナが制止をかける。

 

 

 

ハナ「やよいちゃん、騙されちゃダメよ。ヒーローに会わせるだとか、何とか言うけど――結局イマジンは勝手な解釈で願い事を叶える奴等なのよ。こんなイマジンに付き合う必要はないわ」

 

やよい「え!?」

 

みゆき「ハ、ハナさん!!」

 

 

 

ハナの異議を唱えるような物言いにみゆきや皆は言い過ぎだと思った。

 

 

 

れいか「でもハナさん。確かに、今までのイマジンは悪い者ばかりでしたがモモタロスさんや、ウラタロスさんみたいに いいイマジンもいました。きっと、彼もそんなイマジンなはずです」

 

ハナ「どうだか…」

 

 

 

ハナは忌々しそうにキンタロスを睨む。

 

 

 

キンタロス『他の奴がどうなんか俺は知らん。けどな、俺も興味あんねん――このヒーローに…俺をここまで突き動かして懸命さすこの絵の正体!俺はそれが何か確かめたい!これは契約なんて安っぽいもんや無い。“約束”や!!約束したからには絶対果たす!!!』

 

ハナ「カッコいい事言って何するつもりよ!アンタ達イマジンの自由にはさせない!!」

 

みゆき「ハナさん」

 

 

 

キンタロスとの口論にみゆきが途中から割って入ってきた。

 

 

 

みゆき「ヒーローショーに行かせてあげたら?」

 

ハナ「みゆきちゃん?!」

 

みゆき「やよいちゃんが悪い奴じゃないって言うんだからさ。悪い奴じゃないよ、きっと…」

 

ハナ「みゆきちゃんまで…」

 

良々「そんなに心配なら、ハナさんついて行ってあげたら?」

 

 

 

良々が提案する。

 

 

 

なお「一応、二手に別れる?あのイマジンも気になるし…」

 

あかね「せやな」

 

 

 

なおとあかねが顔を合わせる。

 

 

 

論議の結果、二手に別れてイマジンを追う事にした。

 

 

 

やよいに付いてアトラクションショーを見に行くのは

・みゆき、あかね、ハナ

 

アームドライノイマジンを追うのは

・良々、なお、れいか

 

 

 

に決定した。

 

 

 

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

 

 

 

とある広場では…

 

 

 

???「ほら、こうやってバットを構えて…」

 

 

 

子供達に囲まれて、野球を教えている青年がいた。

彼の名は「花坂 四郎」

七色ヶ丘フェアリーズのレギュラーだ。

 

 

 

男の子「花坂さん、僕のフォームも見てください」

 

花坂「よーし」

 

 

 

花坂が男の子にアドバイスをしようとした時、

 

 

 

アームドライノイマジン『七色ヶ丘フェアリーズの花坂ってお前で間違いないね?』

 

 

 

声のした方を向くと、アームドライノイマジンが花坂の前に現れた。

子供達は驚き、逃げ惑う。

 

 

 

花坂「な、何だ?!お前!!」

 

アームドライノイマジン『消えろよ…』

 

 

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

 

・良々、なお、れいかside

 

三人は今、先程の戦いの場の周辺を嗅ぎ回っていた。――文字通り、モモタロスの鼻を使って。

 

 

 

なお「どう?」

 

れいか「何かわかりました?」

 

モモタロス『今捜してんだ。集中させろ!』

 

 

 

ぬいぐるみに入ったモモタロスは良々のカバンから身を乗り出し、あっちを向いたり、こっちを向いたりして、アームドライノイマジンの匂いを嗅ぎとろうとしている。

 

 

 

良々「頼むわよ。今はモモタロスの鼻が頼りなんだから…」

 

モモタロス『へっ、任しとけ。俺にかかりゃイマジンを見つけるなんて――プールの中でコンタクトレンズを探すようなもんだ』

 

なお「いや、それって難しい事の例えじゃないの?」

 

モモタロス『え?ま…まぁ、細かい事気にすんな』

 

 

 

街に出て詮索してると電気屋の横を通る。その時、れいかが急に立ち止まった。

 

 

 

れいか「二人共、これを!」

 

 

 

れいかは良々となおに電気屋のTVを指さす。

二人はニュースに注目した。

 

 

 

ニュースキャスター『――――先程病院に搬送された七色ヶ丘フェアリーズの「蟹沢 猿彦」選手に次いで七色ヶ丘フェアリーズの「花坂 四郎」選手が病院に搬送されたとの事です。蟹沢選手と花坂選手は七色ヶ丘フェアリーズの1軍レギュラーであり、七色ヶ丘市内で相次ぎ七色ヶ丘フェアリーズのレギュラー選手が襲われる事件が多発しています。二人の他に…「火地山 泥太(かちやま でいた)」選手、「笠持 蔵之介(かさもち くらのすけ)」選手、「宇佐見 亀吉(うさみ かめきち)」選手など――――』

 

 

なお「これって…」

 

モモタロス『あのサイ野郎の仕業だな』

 

良々「共通点は――プロ野球の選手、それもレギュラーか…」

 

 

 

TVに映っていた蟹沢という選手の顔はあの時アームドライノイマジンにやられていた男だ。

以前斎藤 大輝という少年の事件を思い出していた。

彼は少年サッカーチームのレギュラーに戻りたいとイマジンに願ったことがある。

 

 

 

なお「今回もそうなんじゃない?」

 

良々「レギュラーから2軍に落ちた選手か…。確か、やよいちゃんが行く遊園地のとなりにある七色ヶ丘スタジアムは七色ヶ丘フェアリーズの運営するスタジアムだったわね?」

 

れいか「行ってみましょう」

 

 

 

三人は七色ヶ丘スタジアムへと急いだ。

 

 

 

 

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 

怪人ナマケッキン「グワッファッファッファッファッ!!俺は怪人ナマケッキン様だ。この場にいる子供達を我がアジトに連れて行き、怠け者にしてくれる~!」

 

 

 

???「「「「「そうはさせないぞ、ナマケッキン!!」」」」」

 

ナマケッキン「ぬぅ?何奴!!」

 

「正義の使者、キュアレッド」

 

「正義の使者、キュアブルー」

 

「正義の使者、キュアグリーン」

 

「正義の使者、キュアイエロー」

 

「正義の使者、キュアピンク」

 

 

「「「「「プリティ戦隊!キュアレンジャー!!」」」」」

 

 

 

一方こちらは七色ヶ丘スタジアムの隣にある『七色パーク』。

そのアトラクションステージで『プリティ戦隊 キュアレンジャー』のショーが開催されていた。

 

 

 

Kやよい「“仮面サンダー”は出てこないんか?」

 

みゆき「この後、出てくるんじゃない?」

 

あかね「にしても、最近のショーは気合い入っとるな~。スーツ着てる人暑くないんか?」

 

 

 

ジュース缶を片手にのんびりとショーを楽しんでいた。

 

 

 

ハナ「ちょっと待ちなさいよ!!」

 

 

 

突然ハナが声を出し、Kやよい――キンタロスに呼び掛け。

 

 

 

ハナ「まさかアンタ、こんな大勢人がいる場所で暴れるつもり!?」

 

 

 

それに対しKやよいは

 

 

 

Kやよい「お前アホか…。どうして俺が暴れなあかんのや?」

 

 

 

ハナがキンタロスが怪しい行動をしないか、目を光らせていた。

それを鞄から頭を出し、見ていたキャンディはみゆきとあかねに呼び掛ける。

 

 

 

キャンディ「みゆき、あかね…」

 

あかね「ん?」

 

みゆき「何?キャンディ?」

 

 

キャンディ「ハナ…どうして怒ってるクル?」

 

みゆき「怒ってる?」

 

キャンディ「モモタロスやウラタロス――イマジンの事になるとハナ…怖くなるクル。さっきも何か怖かったクル~」

 

みゆき「言われてみたら――」

 

あかね「確かに…」

 

 

 

ハナを見ていると、イマジンのモモタロスと人間のみゆき達とでは接する温度にかなりの差がある。

現にキンタロスにも猜疑心や敵対心がえらく強い。

そして、ハナのその感情に僅かばかりの憎悪がこもっていた。

 

 

 

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その遊園地に隣接する野球スタジアム――七色ヶ丘スタジアムでは。

 

 

 

良々「ここに契約者がいるのかな?」

 

 

 

正面入口の近くで良々は途中で購入したスポーツ新聞を開く。

そこにはこんな記事が小さく載っていた。

 

 

 

《「加西 鉄郎」選手、2軍落ち》

 

 

 

なお「この加西選手が怪しいね…」

 

 

 

なおが呟く。

何とか中に入って加西選手に事情を聞きたいのは山々だったが、相手は2軍落ちになってもプロ野球選手。

そう安々と会えるものではない。

 

 

 

モモタロス『いや待て、匂いは近いがこの中じゃねぇ』

 

 

 

モモタロスがそう言うと、スタジアムのすぐそばのベンチに一人の少年が座っていた。

少年といっても、年は良々達とあまり変わらない中学生ほどの年。

その身体からは大量の砂。

 

 

 

良々「彼がイマジンの契約者みたい」

 

モモタロス『とりあえず締めてやろうか?』

 

なお「やめなさい」

 

 

 

とっちめようと意気込むモモタロスをなおが止める。

れいかはあの少年の顔をじっと見て口を開いた。

 

 

 

れいか「もしかして彼、“加西 淳一”君ではないでしょうか?」

 

 

 

それを聞いた二人は驚いた。

 

 

 

なお「知り合い?」

 

れいか「いえ…しかし、彼は七色ヶ丘中学の生徒です。全校生徒の名前と顔を覚えておりますので間違いないかと…」

 

なお「――って言うか“加西”って…」

 

良々「加西選手の息子さんか何か?」

 

れいか「そこまではどうかわかりません」

 

 

 

しかし、契約者である以上何とか事情を聞き出したいがどのように聞き出せばいいのか分からずにいた。

 

 

 

良々は胸をトントンと叩くと、デンライナーのウラタロスに連絡を取る。

 

 

 

良々「――と言う訳、彼からイマジンの情報を聞き出せない?」

 

ウラタロス『男を釣り上げるのは趣味じゃないんだけど、良々ちゃんの頼みじゃ…ねぇ~』

 

 

 

渋々ながらも、仁義を通して良々に憑依し、淳一に接近。

 

 

 

U良々「すみません」

 

 

 

それに気付き、淳一がこちらを向く。

 

 

 

U良々「突然声を掛けて申し訳ありません。私、野上 良々と申します。加西 淳一君ですね?」

 

淳一「? はい…」

 

 

 

淳一は少し警戒するもその問いに答える。

しかし、U良々はフレンドリーな笑みを浮かべながら続ける。

 

 

 

U良々「そんな堅くならず…、少しお話を聞かせてもらいたいだけなのです。そうですね、隣の遊園地でヒーローショーを観ながら…アイスクリームでもどうでしょう?」

 

 

 

ゆっくり時間をかけながら、少しづつ相手の警戒を解いてゆく。

 

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

 

 

U良々「お待たせしました~♡」

 

 

 

七色パークの園内でU良々がアイスクリームを両手に向こうのベンチで待っている加西 淳一の下へ足を運ぶ。

 

 

 

U良々「チョコミントとミックスベリー。どっちがいいです?」

 

淳一「え、いえ…俺は――」

 

 

 

アイスを勧めるも淳一は遠慮しがちだったが、U良々はミックスベリーを差し出した。

 

 

 

U良々「じゃあ、ミックスベリー。私のオススメです」

 

淳一「じゃ…、いただきます」

 

U良々「いただいちゃって下さい♡」

 

 

 

U良々も淳一の隣に座り、チョコミントに口を付けながらおちゃらけ口調から一転、真剣な面目で語りかける。

 

 

 

U良々「加西君、あなたに幾つか訊きたい事があります。…よろしいでしょうか?」

 

 

 

早速、本題にはいる。

 

 

 

淳一「な、何…?」

 

U良々「あなたには少々残酷な事実を突き付けられるかもしれません…」

 

淳一「え?」

 

U良々「今事態は最悪の方向へと進んでいます…あなたの願いを聞いた怪物によって……」

 

淳一「え?!何で…怪物の事を?」

 

 

 

話してもいないイマジンの事を指摘され、少し驚く淳一。

だが、良々は話を続ける。

 

 

 

U良々「池が淀めば、魚は苦しむ。

聞かせてもらえませんか?手遅れになる前に…

―――あなたは怪物に何を望みました?」

 

 

 

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

加西 鉄郎

 

プロ野球チーム「七色ヶ丘フェアリーズ」の選手

努力家である彼は休みの日は、まだ暗い朝早くからバットを振り、雨の日も風の日も血の滲む様な練習を積み重ねてきた。

しかし、現実はそう甘くはない。

彼はいつもベンチを温め、グラウンドの土を踏む事は滅多になかった。

 

それは息子の淳一に後ろ指を指す結果になる。

 

「おい、加西。お前の父ちゃん本当にプロ野球選手なのか?試合で見たことないぞぉ?」

 

「どうせ、下手くそだから試合に出しちゃくれないんだよ」

 

などとクラスメートで言われた。

 

淳一「そんな事ない!!」

 

自分の父親を馬鹿にされて頭にきた淳一はそのクラスメートに掴みかかる。

 

淳一「見てろ!!今夜の試合絶対父さんは絶対ホームランを打つからな!!」

 

淳一はついカッとなりあんな見栄を張ってしまったが、試合に父が出るとは限らない。

その夜、試合は大詰めの9回フェアリーズの攻撃、今夜も出ないと半ば諦めかけたその時。

 

 

 

『おーっと、ここで七色の監督。代打のようです』

 

『笠持に変わりまして、代打 加西 鉄郎ー』

 

 

それを聞き、バッターボックスに立つ自分の父を見て、淳一の表情がぱあっと明るくなる。

これで父さんはホームランを打ってヒーローだ!!

と喜びに浸っていた。

 

しかし、

 

『加西選手ー、送りバントー!』

 

え?

 

途端に淳一の表情が曇る。

 

『送りバント成功ー!加西選手、ランナーをうまく回しました』

 

そこから先の展開は淳一の耳には入らず、淳一の目の前は暗くなった。

 

 

 

翌朝

 

「何だよ。昨日はホームラン打つとか言って、結局セコイ送りバントじゃんか」

 

昨日のクラスメートからは散々と言われるが、淳一は言い返す気力もない。余程ショックだったのだろう。

 

「それに見ろよコレ」

 

もう一人のクラスメートの取りだしたスポーツ新聞をみせる。

 

「お前の父ちゃん、とうとう2軍落ちだってよ」

 

淳一「!!」

 

そこには小さく《「加西 鉄郎」選手 2軍落ち》と記事に載っていた。

 

淳一はその記事が信じられず、スポーツ新聞を取り上げる。

 

「それに比べて蟹沢と花坂のホームラン凄かったよなー?」

 

「ああ、天才だよ」

 

もはや淳一にクラスメートの言葉は聞こえず大粒の悔し涙を流した。

 

 

 

どうして…どうしてだよ。

父さん、あんなに努力してるのに何で報われないんだ。

鉄郎の2軍落ち記事を思い出しながら暗い部屋でうずくまり、すすり泣いていた。

 

その時である。

淳一の背中から『それ』が入ったのは…。

 

『お前の望みを言いな。どんな望みでも叶えてやるよ。お前の支払う代償はたった一つだ。さぁ望みを言え…』

 

 

 

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

 

 

 

「「「「「うわあぁっ」」」」」

 

ナマケッキン「グワッファッファッファッファッ!!!他愛ないな。キュアレンジャー!!」

 

 

 

一方こちらは七色パーク・ヒーローショー。

ショーはまさにクライマックスを迎えていた。

周りの子供達は

 

「キュアレンジャー!!頑張れー!!」

「負けるなー!!」

 

と声援を送っていた。

 

 

 

みゆき達はと言うと…

 

 

みゆき「頑張れー!!キュアレンジャー!!」

 

Kやよい「気張りやー!!」

 

やよい『頑張れー!!』

 

キャンディ「がんばるクル~!」

 

 

三人と一匹は周りの子供達に溶け込んで応援していた。

 

あかねやハナは最初は子供っぽいな~など思い頬杖を突きながらショーを観ていたが、キュアレンジャーが苦悩したり、懸命に戦う姿など中々見所があり何時の間にか夢中になっていた。

 

 

 

ナマケッキン「グワッファッファッファッファッ!!これでキュアレンジャーの最後だぁー!!」

 

 

 

???「それはどうかな?ナマケッキン」

 

ナマケッキン「んん?!今度は何だ!?」

 

 

 

ナマケッキンがあたりを見回しながら叫ぶ。

 

 

 

???「チェンジ・シフト!!」

 

 

 

颯爽とその場に登場したのは黒い仮面に金色のライダースーツのヒーロー。

 

 

 

仮面サンダー「仮面サンダー、参上!!」

 

 

 

Kやよい「おお!!来たで!!仮面サンダーや!!」

 

 

 

その後、仮面サンダーの参戦で反撃開始。

 

 

 

仮面サンダー「であああああ!!!」

 

キュアレンジャー

「「「「「レインボー・エナジーブレイク!!」」」」」

 

ナマケッキン「グワアアアアアアアア!!!」

 

 

巨大な爆発音がしてナマケッキンは退場。

 

 

仮面サンダー「サンダー…チョップ」

 

 

後から技名を静かに言い戦いは終わった。

 

 

 

 

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

 

 

 

Kやよい「いやー、おもろかったな」

 

みゆき「うん、夢中になっちゃった」

 

 

 

四人は席から立ち上がり、外に出る。

 

 

 

あかね「で、どやった?」

 

Kやよい「ん?」

 

あかね「やよいの探しとたヒーローやったか?」

 

Kやよい「ああ、そやそや!―やよいどやった?」

 

 

 

しばらくしたのちKやよいが残念そうにみゆき達に告げる。

 

 

 

Kやよい「違うやて」

 

 

 

その言葉にみゆきとあかねは表情を曇らせる。

 

 

 

Kやよい「ま~た振り出しか…。しゃあない!また一から探すか」

 

ハナ「何でよ?」

 

Kやよい「あん?」

 

みゆき「ハナさん?」

 

ハナ「どうして…そんなに律儀に捜してるのよ」

 

 

 

ハナは理解できなかった。さっきもそうだが、このイマジンは本来の使命を忘れ、過去へ飛ぶ事よりヒーローショーをみゆき達と楽しんでいた。

今までのイマジンは契約者の意思に関係なく、犯罪の様なマネをして力ずくで願いを叶えている。

しかし、このイマジンは地道にやよいの意思を尊重し、動いている。

 

 

 

Kやよい「どうしてって、願い叶えるんがイマジンの仕事ちゃうんか?」

 

ハナ「あなた達イマジンは過去を変える事が使命なんじゃないの!?」

 

Kやよい「それもそやけどなぁ、そんな今すぐやなくてもええやろ?ま、のんびり行こうや」

 

 

 

ハナは唖然とした。

このイマジンの頭の中では、

「望み」>「時の改ざん」

という方程式が成立している。

まるっきり他のイマジンと逆の思考だ。

だが、本来の使命は忘れてない。

ハナは今のうちに叩いておこうかと思ったその時、

 

 

 

ドォォン!!

 

 

 

と、ここからそう遠くない向こうの方で爆音に似た大きな音が響いた。

 

 

 

みゆき「何?」

 

キャンディ「イマジンクル!」

 

 

 

キャンディがイマジンの気配を感じ取った。

 

 

 

 

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

 

 

 

淳一「そんな…、俺の所為で…」

 

 

 

現状を知らされた淳一は言葉を失った。自分の所為で人が傷付いている事を知ると自分を責めた。

 

 

 

U良々「あなたの所為ではありません。ヤツらがあまりにも身勝手なだけです。それに今は後悔してる場合ではありません。これ以上犠牲者を増やさない為に、まず…怪物を止めないと―――」

 

 

 

そこまで言った時、モモタロスが頭の中で叫ぶ。

 

 

 

モモタロス『カメ!!危ねえ!!避けろ!!』

 

 

 

その言葉の意味を考える間もなく、咄嗟に淳一の手を掴み、その場を離れる。

 

 

 

ドオォォン!!

 

 

 

二人の座っていたベンチの丁度真下、そこから土が盛り上がったかと思うと、ベンチを粉々に粉砕しながら地中から巨大なモノが姿を現した。

辺りにいた客は何事かと思い一斉にこちらを向く。

淳一も訳がわからず、急な展開に目を見開く。

 

 

 

ゲラス『ヴオオオオオオオオォォォ!!!』

 

 

 

そこから出現したのは犀頭の怪物・ゲラス。

コイツが現れたという事は…。

 

 

 

アームドライノイマジン『よう、デンオウとデートとは熱いじゃん』

 

淳一「あんたは…!!」

 

 

 

ゲラスとアームドライノイマジンを目撃すると、辺りにいた客は悲鳴を上げ、一斉に逃げその場を離れる。

アームドライノイマジンはゲラスを取り込み、こちらを向く。

 

 

U良々「とうとう来ちゃったか…。ま、間抜けを釣るのに餌はいらないけどね…」

 

なお「良々ちゃん!!」

 

 

 

すぐ近くに隠れて様子を伺っていた、なお、れいかが駆け寄る。

 

 

 

U良々「さて、竿はまだ足りないけど釣り上げますか…」

 

淳一「待ってくれ。おい、あんた!!」

 

 

 

U良々は淳一を逃がそうとしたその時、淳一はU良々を押しのけ、アームドライノイマジンの前へ出る。

 

 

 

アームドライノイマジン『んん?どうした、契約者』

 

淳一「約束が違うぞ!!俺はあんたに“父さんが試合に出て活躍出来るようにしてくれ”と頼んだ筈だ!!それがどうして他の選手を襲う結果になる!!」

 

アームドライノイマジン『簡単だよ。お前の父ちゃんが試合で活躍出来ないのは他に上手い選手がいるからだろ?だから、その障害を排除しちまえばすぐに活躍出来る』

 

なお「そんなの筋が通ってないよ!!」

 

れいか「それでは、現状何も解決しません!」

 

 

 

 

なおも、れいかも、それを聴いて反論する。

 

 

 

アームドライノイマジン『はっ!確かにな。俺がやっている事はお膳立てに過ぎねぇ。たとえそれで試合に出れたとしても、そいつの親父が活躍出来るとは限らない。何でか分かるかぁ?』

 

 

 

一息置いて、アームドライノイマジンは淳一の胸ぐらを掴み上げ、息がかかるほど顔を近づけ言い放つ。

 

 

 

 

 

 

 

アームドライノイマジン『それはお前の親父が “ヘボい” からだよ』

 

 

 

自分の父がヘボい。

それは淳一が今まで何度も否定してきた言葉。

その言葉を聞いた瞬間、淳一の心に何かが刺さる。

瞳孔が開ききる。

 

 

 

 

アームドライノイマジン『お前の親父の事はお前が良く知ってるだろぉ…?お前の親父の力じゃ活躍出来ない事くらい』

 

淳一「ち…ちが――」

 

 

 

淳一はそれを否定しようとするが、その言葉には最早覇気が込もっていなかった。

 

 

 

アームドライノイマジン『お前すら親父を信じていない。信じていたなら、俺などに願わない。

そうだろ?

―――あんな下手クソ、未来永劫活躍できるワケないんだよ!!』

 

 

 

 

サディスティックな本性がむき出しとなり、淳一に残酷な言葉を突きつける。

その言葉がトドメとなり、淳一は目から大粒の涙をこぼす。

 

 

 

なお「ひどい…!」

 

れいか「なんという冷酷な…!」

 

 

 

非難する中、淳一の身体に時空の裂け目が僅かに開きはじめる。

 

 

 

U良々「まずい!ページが開く!!」

 

 

 

U良々の言葉と同時にアームドライノイマジンは淳一の胸ぐらから手を離し、頭に手を翳す。

 

 

 

アームドライノイマジン『開け、記憶の―――

Kやよい「どりああああああ!!!」

グホッ!!??』

 

 

U良々・なお・れいか

「「「ええっ!!?」」」

 

 

 

突然の乱入に面食らう一同。

 

 

 

なお「やよいちゃん…じゃなくて、キンタロス!?」

 

Kやよい「お前を過去へ行かせる訳にはいかんと、やよいに頼まれた」

 

アームドライノイマジン『チィッ!!何邪魔してんだよ!!裏切り者がぁっ!!』

 

 

 

 

鬱陶しそうににらみ、角付き盾――シールドホーンを取りだし、角の部分をミサイルの様に連射する。

 

 

 

 

U良々・なお・れいか

「「「うわああ!!」」」

 

 

 

三人はこれを何とか避け、キンタロスはやよいから飛び出し、張り手で角を叩き落す。

 

 

 

キンタロス『大丈夫か!?やよい!』

 

やよい「う、うん―――え?」

 

 

 

 

やよいはその言葉に既視感を覚えた。

あれ?前にもこんな事があった様な…。

 

しかし、その一瞬の隙を突き、アームドライノイマジンは淳一の頭に手を翳す。

 

 

 

アームドライノイマジン『さぁ、開け!記憶のページ!!』

 

 

 

 

 

淳一を切り開き、渦の中へ飛び込む。

 

 

 

良々「遅かった…」

 

 

 

良々の意識が表にでる。

 

 

 

みゆき「みんな~!」

 

 

 

遠くから、みゆき、あかね、ハナが遅れて駆け寄ってくる。

 

 

 

あかね「やよい…ちゅうか、キンタロス速過ぎや…ゼェ…ゼェ…」

 

ハナ「イマジンは?」

 

良々「ゴメン、過去に逃げられた」

 

 

 

良々はブランクチケットを取り出すと淳一に翳す。

 

 

 

 

[-10Y/08.04]

 

 

 

 

良々「十年前!?こんな昔に何があったの?」

 

 

 

チケットに記入された日付を確認すると、淳一はゆっくり語る。

 

 

 

淳一「忘れられねーよ…。

その日は、俺が初めて父さんのホームランを見た日だ。

あの日の父さんは、すげぇカッコよかった。

俺のヒーローだったんだ…。

あの日の父さんの勇姿が忘れられなくて…。

でも、幻想だったのかなぁ…?

淡い…夢だったのかなぁ…。?」

 

 

 

淳一は涙を流す。

 

 

 

やよい「それは幻想でも夢でもないよ」

 

淳一「え?」

 

 

やよいはかがんで、淳一に目線を合わせる。

 

 

 

かつてのやよいも自分自身に自信が持てずにいた。

だが、以前みゆきは自分にこんな事を言ってくれた。

「黄瀬さん、私ね、本で読んだことがあるの。絵は心を映す鏡だって」

「黄瀬さんは確かにちょっぴり泣き虫かもしれないけど、とっても優しくて思い遣りたっぷりで、だから そんなカッコイイヒーローの絵が描けるんだと思う」

つまりみゆきはやよいを肯定していた。

その絵はあなたの心の証しなのだと。

ヒーロ ーなんて子供っぽい、

当時、自分は子供っぽいと思っていたやよいだった。

しかし友達に支えられ、背中を押してくれた事により、その子供っぽさを少しずつ強さと認識し始め、自信が持てる様になった。

 

 

 

やよい「自信を持ってお父さんを最後まで応援してあげようよ。

あなたにとってお父さんは

十年前からのヒーローなんでしょ?」

 

 

やよいの言葉を聞き、淳一はもう一度父の姿を思い出す。

 

 

 

キンタロス『やよい』

 

 

 

今度はキンタロスがやよいに話し掛けてきた。

 

 

 

キンタロス『空気読まへんとこ悪いけどええか?』

 

やよい「何?」

 

 

 

キンタロスはやよいの頭に手を翳す。

 

 

 

 

 

 

キンタロス『開け、記憶のページ』

 

 

皆が呆気に取られる中キンタロスはやよいを切り開き、渦の中へと飛び込む。

 

 

 

やよい「え?キンタロス…?」

 

 

 

閉じたやよいもその場にいる全員が目を見開く。

 

 

 

ハナ「何よ!やっぱり、イマジンはイマジンなのよ」

 

 

 

ハナはそれを見て忌々し気に呟く。

 

 

 

みゆき「でも、どうして?まだやよいちゃんの望みは叶えてないのに…」

 

ハナ「記憶が強く繋がれれば跳べるのよ」

 

 

 

ハナはブランクチケットを取りだし、それを翳す。

 

 

 

[-10Y/08.04]

 

 

ハナ「同じ日付?」

 

 

 

それは偶然にも同じ十年前の8月4日。

 

 

みゆき「やよいちゃんもこの日、何かあったの?」

 

 

みゆきの問いにやよいは記憶を掘り起こす。

十年前、やよいが4歳の頃の夏休み。

 

 

 

勇一『やよいー、来週の4日お父さんお休みだ。七色パークにでも行くか?』

 

やよい『やったー!』

 

 

 

4歳の頃、父・勇一の言葉に喜びながらカレンダーに丸をしたのを覚えている。

しかし、

 

 

 

やよい「ごめん、よく覚えてない…」

 

 

 

詳しく覚えていなかった。

そんな事をしている内に…

 

 

 

 

 

ウルフルン「ようやく行ったかよ…」

 

 

「「「「「「「「ウルフルン!!」」」」」」」

 

 

 

その様子を上空で伺っていたウルフルンは本を開く。

 

 

 

ウルフルン「世界よ!!最悪の結末、バッドエンドに染まれ!!」

 

 

ウルフルンは黒い絵の具のチューブを握りつぶす。

 

 

ウルフルン「白紙の未来を黒く塗りつぶすのだ!!」

 

 

それを白紙のページにベッタリと塗りたくると、辺りは夜の世界へと変わる。

 

 

辺りにいた人々は絶望の色に染まる。

 

 

淳一「やっぱり…頑張っても無駄なんだ」

 

 

 

淳一も元気を失い、うな垂れ、両手をつく。

 

 

 

ウルフルン「ウルッフッフッフッフッフッ、人間共の発したバッドエナジーが、悪の皇帝ピエーロさまを…蘇らせてゆくのだぁ!!」

 

 

時計の針は二つも進む。

 

 

 

みゆき「みんな!!」

 

「「「「「うん!!」」」」」

 

 

みゆきの掛け声であかね、やよい、なお、れいかはスマイルパクトに自身のキュアデコルを嵌めると『Ready』の音声の後一斉に叫ぶ。

 

 

 

「「「「「プリキュア・スマイルチャージ!!」」」」」

 

 

『Go!GoGoLet’sGo!!』

 

 

 

5人はそれぞれ自身のパフを体に当ててゆき、コスチュームと髪形を変えていく。

みゆきは長い髪の束が伸びたツインテールとピンクの衣装コスチューム。

あかねはシニヨン状に束ねられた短髪とオレンジの衣装コスチューム。

やよいは扇形に広がる金髪のポニーテールとイエローの衣装コスチューム。

なおはツインテールとポニーテールのトリプルテールとグリーンの衣装コスチューム。

れいかは髪型が後方に伸び、ブルーの衣装コスチューム。

最後にパフを両頬に当てると変身完了。

 

 

みゆき「キラキラ輝く未来の光、キュアハッピー!」

 

あかね「太陽サンサン熱血パワー!キュアサニー!」

 

やよい「ピカピカぴかりんじゃんけんポン♪キュアピース!」

 

なお「勇気リンリン直球勝負!キュアマーチ!」

 

れいか「しんしんと降り積もる清き心、キュアビューティ!」

 

 

 

「「「「「五つの光が導く未来、輝け!スマイルプリキュア!!」」」」」

 

 

 

良々の方は青いセレクトボタンを押し、パスを横切らせる。

 

 

 <ROD FORM>

 

 

アロハシャツの様な着物を着て、青い髪の上にバンダナで頭を覆い、目尻は下がりおっとりとした感じになり、オレンジレンズのサングラスが顔にかかり、変身完了。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【十年前8月4日】

 

 

 

淳一の母「淳ちゃん、今日はお父さんが試合に出るって」

 

淳一「うん、僕、頑張って応援するんだ!」

 

淳一の母「そう」

 

 

 

七色パークのすぐ隣、七色ヶ丘スタジアムに続く道、当時4歳の淳一は父の試合に胸を高鳴らせていた。

母親もそんな淳一を見てニッコリ微笑む。

 

同時刻、七色パークの出入口では

 

 

 

やよい「パパー、早く太陽マンに会いたいね」

 

勇一「ん?そうだなぁ…」

 

ちはる「やよいがいい子にしてたから、太陽マンも会いに来てくれるわよ」

 

 

 

やよいは父の勇一と母のちはるの手を握りながら、七色パークに入場してゆく。

誰が見ても微笑ましい幸せな時間。

しかし、それは淳一から零れる砂により終わりを告げる。

悪夢の時間が始まる。

 

 

 

淳一「うっ」

 

淳一の母「どうしたの?淳ちゃん」

 

 

 

淳一の身体から砂が噴き出し、アームドライノイマジンが姿を見せる。

 

 

 

淳一の母「き…、きゃああああああああああ!!!」

 

 

 

淳一の母は自分の息子から怪物が現れた事に当然のごとく驚愕する。

 

 

 

アームドライノイマジン『邪魔だ』

 

 

 

アームドライノイマジンは淳一の母を突き飛ばすと七色パークの園内にはいり、高い建物の上に着地し辺りを見回す。

 

 

 

アームドライノイマジン『さて、何処にいるのかなぁ?まあいいや、ここら一帯全部ぶっ壊してやる』

 

 

 

シールドホーンを取りだし、ミサイルの様に発射し辺りを吹き飛ばし始めた。

 

 

 

 

アトラクションや建物が崩壊し、辺りは阿鼻絶叫の嵐に包まれた。

まさに “地獄” と化す。

 

その内、振り子の様な海賊船のアトラクションに目を付け、ホーンミサイルを発射する。

それは海賊船を支えているマストに直撃し、海賊船は空中に投げ出される。

その落下地点にも数名逃げ遅れた人達が…

このままでは海賊船に乗っている人達も落下地点にいる人達もただでは済まない!!

 

 

 

 

 

 

しかし、その次の瞬間。

空間の歪みの中からブレーキ音を鳴らしながら、連結したデンライナー・ゴウカとイスルギが姿を見せた。

 

 

 

デンオウRF「発射準備OK?」

 

ハッピー『ぎゃあああああ!!待って待って待って待ってちょっと待って!!』

 

ピース『無理だよ!!ほんと、無理無理!!』

 

デンオウRF「ホント、良々ちゃんはいつもその場の思いつきで事を進めるねぇ…。まあ、出来るだけソフトに飛ばしてあげるからさぁ」

 

 

 

音声のみで明らかに嫌がるハッピーとピース。

デンオウRFはモニターで海賊船の落下地点に標準をセットする。

 

 

デンオウRF「プリキュア、発射」

 

 

手元のボタンを押すと、モンキーボマーの車両が開き、モンキーボムの代わりにキュアハッピーとキュアピースが投げ出された。

 

 

 

ハッピー・ピース

「ぎあああああああああああああああ!!!」

 

 

 

しかし、ハッピーとピースはなんとか体制を立て直し、勢いを保ったまま海賊船の落下地点にいる人達を抱え、その場を離れる。

落下する海賊船も、レドームの上に乗ったデンオウRFに釣り上げられ、勢いを殺されてゆっくりと降ろされた。

 

 

 

アームドライノイマジン『チッ、もう来やがったか』

 

 

 

アームドライノイマジンは忌々しげに呟くとその場を離れようと踵を返す。

 

 

 

デンオウRF「逃がさないよ!」

 

アームドライノイマジン『うわっ?!』

 

 

 

デンオウRFの振り下ろしたデンガッシャー・ロッドモードの糸に絡め取られ、遊園地の広場に叩き付けた。

 

 

 

デンオウRF「サイの一本釣りてとこかな?さて――」

 

 

 

得物を肩にアームドライノイマジンを見据え、宣言する。

 

 

 

デンオウRF「お前、僕に釣られてみる?」

 

アームドライノイマジン『はぁ?釣られる趣味はねぇよ!!』


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