スマイルプリキュア&時を超える桃太郎   作:紅鮭

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俺の強さにお前が泣いた(後編)

とある路地で、ある男が一人出歩いていた。

すると突然、その男の目の前に異形の者が現れた。

 

 

 

男「な?!」

 

 

 

男は驚き、後ずさる。

周りにいた人間は悲鳴を上げ、一目散にその場を逃げていく。

全身甲冑で覆われたイマジン――アームドライノイマジン。

 

 

 

アームドライノイマジン『あんた、七色フェアリーズの蟹沢?』

 

蟹沢「そ、そうだ…」

 

 

 

蟹沢という男は恐る恐る答える。

それを聞くとアームドライノイマジンはサムズダウンするとゆっくり告げる。

 

 

 

アームドライノイマジン『あ、そ――じゃあ死んでよ』

 

蟹沢「ひっ、うあああああああああああっっっっ!!」

 

 

 

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

 

 

良々「(まさか…兄さんがイマジンと出会ってたなんて…)」

 

幸一からの話を聞いて少し驚き、戸惑っていたが、思わぬ情報が手に入った。

早速、7人は仮面サンダーのアトラクションショーが開催されている遊園地に出発する事に決めた。

 

 

 

ハナ「幸一さんはたしか…七色ヶ丘スタジアムの隣の遊園地で開催しているって言ってたわね?」

 

あかね「あ、そこならウチ知ってる。前に家族で野球見に行った事あるから」

 

 

みゆき「じゃあ、急ごう!」

 

やよい「……………」

 

れいか「やよいさん?」

 

なお「どうしたの?さっきから…?」

 

 

 

やよいはドキッとしたが、冷静に手を横に振る。

 

 

 

やよい「え?…いや、なんでもないよぉ…」

 

 

 

その様子に良々は気付き、もう少し問答としたその時、

 

 

 

モモタロス『良々!』

 

良々「! どうしたの?」

 

モモタロス『イマジンだ…近いぞ!!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

蟹沢「ぐわっ!!」

 

 

 

蟹沢という男はアームドライノイマジンに殴り飛ばされ、硬いアスファルトの路地に叩きつけられた。

 

 

 

アームドライノイマジン『呆気ないな。おら、ちょっとは抵抗してみろよ』

 

 

 

アームドライノイマジンは楽しむかのように倒れ伏せる蟹沢の腹に何度もけりをくらわせる。

蟹沢は腹を抑えて咳き込む。

 

 

 

M良々「てやあああぁぁぁぁっっ!!」

 

アームドライノイマジン『グッ!?』

 

 

 

その時、モモタロスに憑依されたM良々がアームドライノイマジンを蹴り飛ばした。

アームドライノイマジンは少しフラついたが、すぐにM良々を睨む。

 

 

 

M良々「よぅ…、おっさんをここまで痛めつけるなんて…悪い趣味してんじゃねぇか」

 

アームドライノイマジン『早速、お出ましってわけ?フッ、鼻だけは効くみたいだな』

 

 

アームドライノイマジンはフラついた身体を立て直す。

 

 

みゆき「良々ちゃーん!!」

 

 

 

M良々の後ろからみゆき、ハナ達6人が駆けつける。

みゆき達は満身創痍で転がっている蟹沢に駆け寄る。

 

 

ハナ「大丈夫ですか?!!」

 

れいか「ひどい…」

 

みゆき「こんなになるまで痛めつけるなんて…」

 

アームドライノイマジン『ひどい?他の奴がヌルいだけだろぉ?確実にそいつを機能停止にしとけば契約もスムーズに済むし…。それに――他人の顔が苦痛に歪むさまって結構好きなのよ、俺』

 

 

 

ブチッ――モモタロスは生まれて初めて、心の中で太い綱が切れる音を聞いた。

モモタロスだけじゃない。

良々もみゆき達もその場にいた皆が、怒りに眉を上げる。

 

 

 

M良々「初めてかもな…」

 

アームドライノイマジン『あ?』

 

M良々「ここまで気に食わない上に、今すぐにでもブチのめしてやりたいって思ったイマジンはよ…」

 

 

 

M良々はベルトを取り出すと、それを腰に巻く。

 

 

 

アームドライノイマジン『気に食わない――ねぇ…。俺も同感だ。俺を顎で使うあの犬コロも、俺に楯突くお前らもなぁ…』

 

M良々「そいつはどうも…!!――変身!!」

 

 

 

赤いセレクトボタンを押し、パスをバックルに横切らせる。

 

 

 

<SWORD FORM>

 

 

 

黒いライダースーツにリボンに鉢巻、赤い陣羽織を羽織り、いきなり突進!

 

 

 

デンオウSF『俺、さんじょおおおおおおおおっっっ!!!』

 

アームドライノイマジン『うっ…!?』

 

 

 

蹴りを叩き込みながらデンガッシャーをソードモードに組み上げる。

 

 

 

デンオウSF「今日は特別に前振りナシだ!!行くぜ行くぜ行くぜーっっ!!」

 

 

 

デンオウSFは反撃の隙を与えない。

強力なラッシュを叩き込む。

 

 

 

みゆき「みんな!!」

 

あかね・やよい・なお・れいか

「「「「うん!!」」」」

 

 

 

みゆき達もスマイルパクトを開き、自身のキュアデコルをセットする。

 

 

 

『Ready』

 

「「「「「プリキュア!スマイルチャージ!!」」」」」

 

『Go!GoGoLet’sGo!!』

 

 

 

5人もそれぞれのプリキュアに変身する。

前振りは省略。

5人全員、アームドライノイマジン目掛けて走る。

 

 

 

デンオウSF「てぇぇあ!!!」

 

 

 

デンオウSFがデンガッシャーを振り上げ、何度も何度も斬り掛かる。

プリキュア達もアームドライノイマジンを囲み一斉に攻撃する。

しかし、

 

 

 

アームドライノイマジン『ウザいんだよ!!』

 

プリキュア「「「「「きゃあああああああ!!!」」」」」

 

デンオウSF「おわあぁぁぁっっっ!!?」

 

 

 

弾き返された。

 

 

 

マーチ「何?この硬さ…」

 

 

 

アームドライノイマジンは全身が甲冑の様な鎧に身を包まれており、プリキュアやデンオウSFの攻撃をまるで寄せ付けなかった。

 

 

 

サニー「なら、これでどうや?」

 

 

 

サニーがスマイルパクトに気合いを込め、必殺技を発動させる。

 

 

 

サニー「プリキュア!サニーファイヤー!!」

 

 

 

火の球は一直線にアームドライノイマジン目掛けて飛んで行く。

爆音を響かせ、アームドライノイマジンに直撃。

 

 

 

サニー「やった!!――ッ!?」

 

 

アームドライノイマジン『全然効かないなぁ~』

 

 

 

アームドライノイマジンの西洋甲冑の様なボディには焦げ目すらついておらず、余裕をかます。

 

 

 

アームドライノイマジン『じゃあちょっくらこっちも…』

 

 

 

アームドライノイマジンは左肩を前に構える様にして、姿勢をひくくしての体当たり。

だが、脚に力を入れ体重を前方へ乗せた時、力を入れた脚―――左足がアスファルトに沈み、次の瞬間、車いやコンボイと遜色無しの迫力とその衝撃。

 

 

 

サニー「あああああぁぁぁぁぁっっっ!!!!」

 

 

サニーはその衝撃と肩角で打ち上げられた。

 

 

マーチ「サニー!!」

 

ビューティ「くっ!!」

 

デンオウSF「やろっ!!」

 

 

 

マーチ、ビューティ、デンオウSFがアームドライノイマジンに仕掛けるが、アームドライノイマジンは角付きの盾を構え、三人の攻撃を防ぐ。

そしてすかさずなぎ払い、その甲冑姿からは想像出来ないほど、素早いフットワークで三人を蹴散らす。

 

 

 

デンオウSF「ぐぁっ!!」

 

マーチ「うっ!!」

 

ビューティ「ああっ!!」

 

アームドライノイマジン『はぁっはっはっはっはっはっはっはっ…!!あっけねぇ。もう終わりか?』

 

 

 

両手を広げ、勝ち誇るアームドライノイマジン。

その防御力は凄まじく、プリキュアとデンオウの攻撃を寄せ付けない。

以前戦ったラコーンドックイマジンより遥かに硬い。

 

 

 

ピース「みんな!!」

 

ハッピー「私達も行こう!!」

 

 

 

ハッピーとピースも駆け出す。

 

 

 

アームドライノイマジン『何人来ようがザコはザコなんだよ』

 

 

 

ハッピーとピースはアームドライノイマジンに拳を喰らわすが、5人の中で格闘に向いていないハッピーとピースでは殆ど相手にならなかった。

 

 

 

良々『………』

 

 

 

良々はアームドライノイマジンを見据えながら考えていた。

 

 

 

デンオウSF「どうした。良々…?」

 

 

 

それに気付き、デンオウSF・モモタロスは問う。

 

 

 

良々『あのイマジン、昨夜出会ったイマジンなのかな?』

 

デンオウSF「あん? どういう事だ?」

 

良々『あのイマジン確かに怪力だけど、粗暴過ぎる。昨夜のはもう少し、おおらかで気さくな感じがした』

 

デンオウSF「そうかぁ…?」

 

 

 

しかし、モモタロスも薄々気付いていた。

昨夜のとは匂いがハッキリとしていて、違う事に。

 

 

たが、こんな事を考えている間にハッピーとピースは投げ飛ばされて、今にもやられそうだった。

ピースは必殺技を放つべく、スマイルパクトに気合いを込める。

 

 

 

ピース「プリキュア!ピースサンダー!!」

 

 

 

ピースの必殺技が炸裂、ピースは相手は電気をよく通す金属を身に纏っている事に目を付け、雷の必殺技をくらわせる。

これなら効果があるだろと思った。

しかし、

 

 

 

アームドライノイマジン『クックックッ!!』

 

ピース「え?」

 

 

アームドライノイマジン『なるほど、金属ならよく電気を通すから雷が有効…だと?浅知恵だな。

―――金属が電気を通すのは表面のみだ。隙間でもない限り電気は内側には届かない。もっとも、俺の鎧の隙間には絶縁体の物質だ。生憎電気は通さない』

 

ピース「そんな…」

 

 

 

ピースは必殺技を放ち、バテバテの状態になる。

 

 

 

ハッピー「だったら、私が…」

 

 

 

今度はハッピーがスマイルパクトに気合いを込める。

 

 

ハッピー「む〜っ!!気合いだ気合いだ気合いだーっ!!」

 

 

 

ハッピーは両手をハートの形にして光線を放つ。

 

 

 

ハッピー「プリキュア!ハッピーシャワー!!」

 

アームドライノイマジン『ぐうっ…!!』

 

ハッピー「やった!!」

 

 

 

ハッピーシャワーがアームドライノイマジンに決まり、ハッピーは勝利を確信する。

しかし、

 

 

 

アームドライノイマジン『おいおい、こんなんじゃ全然もの足りないぜ』

 

ハッピー「え?」

 

 

 

巻き上がった砂埃の中から、ハッピーが突撃し、ハッピーを突き上げた。

 

 

 

ハッピー「ああっ!!」

 

ピース「ハッピー!!」

 

 

 

突き上げられたハッピーの元へ駆け寄る。

だが、相手は待ってはくれない。

 

 

 

今度はピースも突き上げる。

 

 

 

ピース「きゃああああぁぁ!!!」

 

 

突き上げられた二人は地面に叩きつけられ、その場にたおれる。

 

 

 

 

 

 

 

キャンディ「ハッピーとピースが危ないクル!」

 

 

 

キャンディの言葉にハッと気付き、サニー、マーチ、ビューティ、デンオウSFは駆け出す。

 

 

 

アームドライノイマジン『おっと、お前らは後だ。コイツと遊んでろ…』

 

 

 

アームドライノイマジンの鎧が膨らみ、3メートルを越える巨体に鉤爪を併せ持つ犀頭の怪物が姿を見せた。

 

 

 

ゲラス『ヴオオオオオオオオオオオォォォォォォ!!!!』

 

サニー「何や!?この怪物!!」

 

アームドライノイマジン『そいつの名は“ゲラス”。俺の分身体だ

―――やれ!ゲラス!!』

 

ゲラス『ヴオオオオオオオオオオォォォォォォォォォ!!!』

 

 

 

巨大な鉤爪を振り上げ、4人に攻撃を仕掛けるゲラス。

ハッピーとピースの元へ行きたいのは山々だが、この巨体に似合わぬスピード。攻撃も重く、かするだけでもやばそうだ。

 

 

 

アームドライノイマジン『じゃ、弱い奴から片付けちゃうか…。そこで怯えてる黄色ちゃんかな?』

 

 

 

ゆらりとアームドライノイマジンはピースの方を向く。

ハッピーはピースの前に立ち、アームドライノイマジンからピースを庇う様に立ちふさがる。

 

 

 

アームドライノイマジン『んん?何だよ?逃げないのか?』

 

ハッピー「逃げるわけ…ないでしょ!!」

 

ピース「ハッピー!」

 

 

 

ハッピーは強い目で相手を睨み構える。

 

 

 

アームドライノイマジン『女の癖して、調子に乗ってんじゃねぇよ…。俺はそうやって弱いのに楯突く奴が一番好かねぇんだ。弱い奴は弱い奴らしく、蹲って震えてりゃいいんだよ』

 

 

 

ハッピーは拳を握りしめアームドライノイマジンを睨む。

コイツだけには負けたくない、と。

 

 

 

アームドライノイマジン『ま、いいや、それじゃあね…。儚い人生だったな、お前ら』

 

 

 

アームドライノイマジンは角付き盾を構え、突撃体制にはいる。

そして、アームドライノイマジンが一気に駆け出し、シールドホーンがハッピーの腹部目掛けて突き出される。

ハッピーは逃げ出さなかった。

自分の友達を守る為、目の前の許せないイマジンを止める為、退く訳にはいかない。

 

その後ろではサニー、マーチ、ビューティ、デンオウがそれに気付き、何か叫んでいた。

 

 

 

 

 

そして遂に、アームドライノイマジンのシールドホーンの先端の角がハッピーの腹部を貫こうとした。

その時、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

???「泣かない…人生?そらちょい寂しいなぁ…」

 

 

ハッピー「ッ?!!」

 

 

 

ハッピーは突如聞こえたその声に目を開ける。

関西弁だから、あかねちゃん・サニーかと思ったが声が違う。

その目の前にはピースがアームドライノイマジンの盾を受け止めていた。

 

 

 

アームドライノイマジン『何だ…?!俺のシールドホーンが…、ピクリともしない…だと?』

 

 

 

ピース「泣かれへんのは…、お前の強さや!!――フンッ!!!!」

 

アームドライノイマジン『ぐあっ!!!』

 

 

 

アームドライノイマジンはピースの張り手で吹き飛ばされた。

そのまま路地をゴロゴロと転がる。

得意気に親指を顎に当て、首を鳴らすピースを見ながら、プリキュアの他のメンバーは驚きを隠せなかった。

ピースは基本身体、能力スペックは5人の中では最も低い。

5人の中で最もパワーのあるサニーを含む3人に加え、デンオウをぶっ飛ばしたイマジンを逆にぶっ飛ばしたのだから、驚かない方がおかしい。

 

 

 

アームドライノイマジン『て…てめぇ、まさか……』

 

 

 

アームドライノイマジンは立ち上がりながらピースを睨む。

そこでデンオウSFもようやく、気付いた。

 

 

 

デンオウSF「おい、お前ら」

 

サニー「何や?」

 

デンオウSF「イマジンだ」

 

 

 

そう言って指をさす。

 

 

 

キャンディ「イマジンならあそこにいるクル」

 

デンオウSF「違う!!ピースだ…あいつにイマジンが取り憑いてやがる」

 

ハッピー・サニー・マーチ・ビューティ

「「「「ええっ!!?」」」」

 

 

 

驚愕の事実。

 

 

 

ピース「俺の強さは泣けるで…」

 

 

 

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

 

 

負傷した蟹沢を病院に搬送していたハナがようやく戻って来た。

 

 

 

ハナ「これって……」

 

ピース「うおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉ!!!」

 

アームドライノイマジン『グウッッ!!』

 

ピース「ハッ!!ハッ!!ハッ!!ハッ!!ハッ!!」

 

 

 

展開は、イマジンの取り憑いたピースがアームドライノイマジンを徐々に押し始めた。

張り手を連打をし、アームドライノイマジンにダメージを与える。

 

 

 

アームドライノイマジン『このっ!!』

 

 

 

アームドライノイマジンのシールドホーンで反撃を試みるが、ピースはその小さな体格を生かし懐へと潜り込む。

 

 

 

ピース「どすこいっっ!!!」

 

アームドライノ『グオアッッ!!!』

 

 

 

渾身の突っ張りが命中!!

アームドライノイマジンは後方へとふき飛ばされた。

 

 

 

ピース「はっはっはっ!!まだまだ泣かれへんなぁ、こないな強さじゃあ!!」

 

 

 

 

それを見ていたハッピーにサニー、マーチ、ビューティ、デンオウSFそして、キャンディは唖然としてこの光景を見ていた。

先ほどまで苦戦していたイマジンを相手に優位に戦っているのだから。

 

 

 

アームドライノイマジン『コラァ!!ゲラス!!テメェは犀の置物か!?とっとと加勢しに来い!!』

 

 

 

ゲラスもハッと我に帰り、ヴオオオ!!と吠えるとピース目掛けて走り出した。

 

 

 

ハッピー「あっ!」

 

サニー「あぶない!!ピース!!」

 

ピース「んん!?――どわぁ!!」

 

 

 

サニーの掛け声に気付き、ゲラスの振り下ろした拳を間一髪躱す。

 

 

 

ビューティ「皆さん!とりあえず、ピースを助けましょう!!」

 

サニー「それがええな!!」

 

 

 

そして、他の5人も助太刀に掛けだす。

イマジン同士のイザコザに最初はどうすればいいか戸惑ったが、とりあえず仲間のピースを助ける事にする。

 

 

 

デンオウSF「よっしゃあ!!行くぜぇ!!」

 

 

 

デンオウSFが気を取り直して先陣切って掛け出す。

 

 

 

良々『と、その前にこっちは選手交代!!』

 

デンオウSF「は?」

 

 

 

突拍子もない良々の発言に驚きを隠せないデンオウSFを他所に良々の意思の入った左手は青いセレクトボタンを押し、パスをタッチしていた。

 

 

 

 

<ROD FORM>

 

 

 

 

 

 

赤い特攻服のような陣羽織が裏返り、着物にアロハシャツを組み合わせたような上着にバンダナと黒ぶちオレンジサングラスが装着され、デンオウSFはデンオウRFへと姿を変える。

 

 

 

デンオウRF「やっぱり、適した釣り竿を使わないとね♪」

 

 

 

アームドライノイマジンはピース1人で十分なので、他のメンバーはゲラスを引き受ける事にする。

ゲラスは4人をけちらそうとするがデンオウRFが足を払い、糸を引っ掛けころばせる。

 

 

 

ゲラス『ブオォッ!?』

 

 

ハッピー「はあっ!」

 

サニー「たあっ!!」

 

 

 

ハッピーとサニーのダブルパンチがゲラスを押し倒す。

 

 

 

アームドライノイマジン『チッ、ここは一旦退くか…』

 

 

 

不愉快そうに呟き、ゲラスを取り込んで姿を消した。

 

 

 

デンオウRF「逃げた魚は深追い禁止…だね」

 

ピース「俺の強さにお前が逃げた!ごっつあんです」

 

デンオウRF「………女の子がごっつあんなんて言わないの…」

 

 

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

 

 

 

全員が変身を解いて、近くの公園でやよいに事情を聞く事にした。

ハナもやよいにイマジンが取り憑いた事に驚きを隠せなかった。

 

 

 

あかね「これは…どういう事かな?やよい」

 

 

 

あかねは怒ってはいなかったが困ったようにこめかみをかきながら尋ねた。

 

 

 

やよい「あ…あかねちゃん、みんな!これはね…その…」

 

???『やよい。俺が説明する、外出るで』

 

 

 

テンパるやよいを見て、中のイマジンがやよいに声をかける。

 

 

 

やよい「え?待って!!」

 

???『安心し、お前の友達に手は出さん。立ち会うだけや』

 

 

 

やよいから砂がこぼれ落ち、金色の熊のイマジンが実体化し、姿を見せる。

 

 

 

なお「契約してる…?」

 

 

 

一応、良々が確認する。

 

 

 

良々「あなた、私の顔に見覚えある?」

 

イマジン『ん?………あ、昨日のお嬢ちゃんか?』

 

 

 

やっぱり、昨日のイマジンに間違いない。

そんな事を考えていると、

 

 

 

M良々「おい熊野郎!!昨日はよくもはやってくれやがったなぁ」

 

 

 

モモタロスが取り憑き、熊イマジンを睨む。

 

 

 

イマジン『お前か…その子に取り憑いとったイマジンは…、俺の強さに悔し泣きしとったんちゃうんか?』

 

 

 

熊イマジンの軽口にM良々が青筋を浮かべ、食いかかる。

 

 

 

M良々「誰が泣くか、コラ。昨日投げ飛ばした位でいい気になってんじゃねぇぞ?」

 

熊イマジン『それやったら、もう一度戦ってみるか?まぁ…俺が勝つに決まってるけどなぁ~』

 

M良々「上等だ…。皮剥いで足拭きマットにでもしてやろうか?ん?」

 

 

 

次第にギスギスした一発即発の事態になる。

 

 

 

ハナ「やめなさい!」

 

M良々「って!!」

 

 

 

ハナに引っ叩かれ、収まる。

 

 

 

やよい「キンタロスもやめて!!」

 

 

熊イマジン『向こうが掴みかかって来るんや。しゃあないやろ?』

 

 

 

熊イマジンもやよいに免じて押しとどまる。

 

 

 

みゆき「ん?キンタロス?」

 

 

 

やよいが熊イマジンをそう呼んだのに気が付いた。

 

 

 

やよい「ああ、このイマジンの名前。多分、『金太郎』の熊だから…“キンタロス”」

 

M良々「へ、相っ変わらずセンスねぇな」

 

キンタロス「お前に言われたないわ、モモタロス」

 

M良々「なっ!?テメェ!どっから…『ハイハイそこまで、キリがない』

 

 

 

モモタロスは何か言い返そうとした時、良々はモモタロスを追い出した。

 

 

 

良々「本題に入ろう。みんな…」

 

一同「うん…」

 

 

 

まず、みゆきが尋ねる。

 

 

 

みゆき「じゃあ…、やよいちゃん。いつからあのイマジンが入ってきたの?」

 

やよい「丁度、一週間前…」

 

みゆき「そんなに?!!」

 

なお「何で私達に一声掛けてくれなかったの?」

 

 

 

やよいは叱られる子供のようにビクビク冷や汗を流しながら、答える。

 

 

 

やよい「わ…悪いイマジンじゃ……ないと思ったから」

 

 

 

 

 

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それは丁度一週間前。

夜の事。

 

 

 

いつもの様に宿題を終えたやよいは、寝るまでの間マンガでも読もうと古い本棚から一冊のマンガ本に手を伸ばす。

かなり古いマンガだったが無償にそれが読みたくなった。

やよいが古いマンガをとった時、その本棚から一枚の紙がヒラヒラと落ちてきた。

 

 

 

やよい「ん?――何かしら?」

 

 

 

その紙に気づき、それを広げる。

 

 

 

やよい「わ、懐かしい…」

 

 

 

それはクレヨンで描かれた黒い頭に黄色い身体の人型の何か。横にはカタカナで「ヒーロー」と。

やよいはそれに見覚えがあった。

4歳くらいの頃、この絵を描いた記憶がうっすらと残っている。

 

 

 

やよい「だけど、この絵…何だったんだろう……?」

 

 

 

やよいはこの絵を描いた記憶はあるのだが、この絵の『ヒーロー』と言う物が何なのか…全く覚えがなかった。

少し考えたが、特に気にする事もなくそのまま就寝した。

その時である。

やよいの身体に『それ』がはいったのは…。

 

 

 

 

 

青い空の下。

 

 

 

やよい「ここは……?」

 

 

 

瓦礫が転がる広場の真ん中に立ち尽くしていた。

辺りを見回し、ある事に気付く。

 

 

 

やよい「まさか…、ここって……遊園地?」

 

 

 

その場所にやよいは見覚えがあった。乗り物や、建造物が壊されているが間違いない。

七色ヶ丘スタジアムの隣にある遊園地・七色パーク、そのの広場。

だが、どうしてこれ程までに荒らされている?

まるで、廃墟か何かだ。

そんな事を思っていると、やよいのすぐ隣の建物がこちらに向かって崩れ、瓦礫がやよいの頭上目掛けて降ってきた。

 

 

 

やよい「あ…!!―――あれっ??!」

 

 

 

驚くも、やよいはその場を離れようと駆け出そうとした。

しかし、足が動かない。

ピッタリ地面にくっついているかのようにその場を離れることができなかった。

 

 

 

やよい「そんな…足が……」

 

 

 

足が動かない事に焦り、上を見るが瓦礫は無情にもやよいの頭上目掛け迫ってくる。

 

 

 

やよい「ひっ…いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっっ!!!」

 

 

 

あまりの恐怖に頭を抱え蹲る。

ガラガラと瓦礫がついに降り注ぐ。

しかし、やよいの頭上にはいつまでたっても瓦礫が落ちてこない。

瞼を開き、上を見ると誰かが瓦礫を支え、持ち上げていた。

 

 

『大丈夫か!?やよい!!』

 

 

 

 

 

やよい「―――っ!!」

 

 

 

その時、やよいの夢は終り、目を覚ました。

 

 

 

やよい「夢……?」

 

 

 

やよいは今見ていた夢を思い返す。

 

 

 

やよい「何だろう…――今の夢…?」

 

 

 

やよいはあの夢にどこか既視感を覚えた。

あの最後に出てきて瓦礫を支えた人物は一体誰なのか…。

目をこすり、上半身を起こして布団からでようとする。

だが、その時にジャリっとした感触が、足に伝わる。

 

 

 

やよい「え?何…!?」

 

 

 

布団の中を見るとそこには大量の砂。

 

 

 

やよい「え?!――これって…!」

 

 

 

やよいは間違いであって欲しいと願ったが、そうはいかない。

砂は上半身下半身を逆に形作る。

イマジンだ。

 

 

 

???『お前の望みを言うてくれ。どんな望みも叶えた…

やよい「イマジン!?」

 

 

やよいがイマジンの決まり文句を遮る。

これがやよいとキンタロスのファーストコンタクトだった。

 

 

 

キンタロス『お、何や何や?俺の事知っとるんか?なら、話は早いな。早よう願い…

やよい「来ないで!!」

キンタロス『ぶお!!?』

 

 

 

やよいが近くにあった通学鞄をキンタロス目掛けて投げる。

今のキンタロスは砂のお城状態なので簡単に砕け散る。

しかし、また再生。

 

 

 

キンタロス『コラ!何するんや!痛かないけどビックリするやろ!!』

 

 

 

声を上げてやよいを叱る。

 

 

 

やよい「あ、ご、ごめんなさい…。じゃなくて!!」

 

 

叱られた事に反射的に謝るも、気を取り直してイマジンに対して身構える。

 

 

やよい「何でイマジンが私に取り憑いてるの!?」

 

キンタロス『何でって…、特に理由ないけど…―――ま、細かい事はええやん。宝くじに当たったようなもんやで』

 

 

 

陽気に言うキンタロスだったが、やよいの方はとんでも無い。

ハズレくじに当たったようなものである。

 

 

 

やよい「とにかく、私の身体から出てって!!」

 

キンタロス『そんな毛嫌いせえへんでもええやろに…。“縁は異なもの味なもの”言うやろ?これも何かの縁や。仲良くし―――ぶべっ!!」

 

 

 

今度は辞書が飛んできた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ちなみに、今日は休み。

やよいは着替えて外に出て、商店街を歩いていた。

 

 

 

キンタロス『なあ、これからどこ行くんや?』

 

やよい「………」

 

 

 

心の中でキンタロスはやよいに話し掛ける。

しかし、返事はなし。

 

 

 

キンタロス『早よう願い言うて貰わんと俺困んねん』

 

やよい「………」

 

キンタロス『もしかして、俺の事嫌い?』

 

やよい「………」

 

 

 

やよいは極力口をきかないようにしていた。

はずみで望みを言ってしまう事を恐れたからだ。

 

 

 

キンタロス『返事ぐらいしてもええやん…』

 

 

 

キンタロスが何かボヤくが無視。

早く、ハナさんや皆に会ってこのイマジンを何とかしてもらおうと思っている時。

 

 

 

「えーん、えーん、えーん!!」

 

やよい「!」

 

 

 

丁度、目の前に母親と娘の一組の親子に気が付いた。

その親子の娘の方は何故か泣いている。

 

 

 

母親「ミヨちゃん…もう諦めましょ」

 

ミヨ「やだやだやだー!!」

 

母親「困ったわ~…」

 

やよい「どうしました?」

 

 

 

やよいは気になり、一応問いただしてみた。

 

 

 

母親「娘の持っていた風船が木に引っかかってしまって…」

 

 

 

すぐそばの木、その上を見ると確かに風船が引っかかってっていた。それもかなり高く。

 

 

 

母親「ミヨちゃん…残念だけど、もう取れないわよ。」

 

ミヨ「そんなぁ~…」

 

やよい「……」

 

 

 

やよいは何とか風船をとってあげたかったが、自分一人ではどうしようもなかった。

すると、その時である。

 

 

 

やよい「ッ!!」

 

 

 

やよいの瞳が金色に光ったかと思うと、カチューシャが落ちて、首後ろ髪がお団子結びになり。簪が一本刺さった髪型へと変化した。

そう、今のやよいにはキンタロスが取り憑いたやよい

―――Kやよいとなった。

 

 

 

Kやよい「よっしゃ。お嬢ちゃん、俺に任しとき」

 

ミヨ「え?」

 

 

 

Kやよいはミヨという子の頭をポンポンと撫でるとその木の隣にある街灯を足場に垂直に登り、風船と同じ高さまで来るとその場で真横にジャンプ!

 

 

 

Kやよい「とあっ!!」

 

 

 

すれ違い様に風船を素早く取る。

そして、もんどりを打って華麗に着地。

周りで見ていた人々は思わず拍手を送り、Kやよいは構わずミヨに風船を差し出す。

 

 

 

Kやよい「今度は手離さんようにな」

 

母親「ありがとうございます」

 

ミヨ「ありがとう、お姉ちゃん」

 

Kやよい「どういたしまして。それと“お兄ちゃん”やで」

 

 

 

お礼を言うミヨに対してキンタロスはニカっと笑い返す。やよいはそのキンタロスの行動を不思議そうに黙って見ていた。

 

 

 

 

 

キンタロス『いやー、ええ事した後は気持ちええな。そう思わん?』

 

やよい「え?う、うん…」

 

 

 

やよいはこのイマジンはもしかしたら、悪いイマジンではないのだろうかと思い始めていた。

あの時、ミヨという女の子の風船を取り頭を撫でている時、彼からは全く邪な下心が感じられなかった。

やよいはもう少しこのイマジンの様子を見る事にした。

 

 

 

しばらく歩いていると、今度は目の前にトラックが道の端に停車していて、運転手と思わしき業者の人が困った顔をしていた。

やよいはこれを利用し、自分に取り憑いたイマジンが悪いイマジンではないのか試してみる事にした。

最悪の事を考慮し、やよいは何時でも変身出来る準備をする。

余り気の進まない事だが、やよいはキンタロスに心の中で話し掛ける。

 

 

 

やよい「ちょっといいかな?」

 

キンタロス『ん?』

 

 

 

話し終わるとキンタロスはやよいに取り憑き、Kやよいになる。

 

 

 

Kやよい「どないしたか?兄ちゃん」

 

業者「ん?」

 

Kやよい「何か困っとるん?」

 

 

 

Kやよいは親し気に話し掛ける。

 

 

 

業者「ん?ああ、ちょっとヘマやらかしちゃってね」

 

Kやよい「ヘマ?」

 

 

 

業者の人が言うにはトラックの前輪が溝に嵌ってしまったらしい。

 

 

 

業者「まだ配達が残っているのに困ったモンだよ」

 

 

 

それを聞いてKやよいは

 

 

 

Kやよい「そなら、俺が持ち上げたろかい?」

 

業者「は?何言ってんの?こんな時に変な冗談はよしてよ。あー、早くレッカー車来ないか――――」

 

Kやよい「あよーいしょ」

 

業者「な…って、―――え?」

 

 

 

まるでちょっと重たい荷物でも持つかの様にトラックを溝から引き上げ、ズシンと軽く置いた。

 

 

 

Kやよい「こんなモンでええか?」

 

業者「あ、……ありがとう…?」

 

 

 

お礼の言葉を聞くと「どういたしまして」と返してその場を去った。

業者の人は今一瞬何が起こったか理解できず、混乱してしまった。

中学生位の女の子がトラックを持ち上げた。

その現象に幻をみたかと思ったが、バンパーにはくっきり手形が残っていた。

 

 

 

 

 

 

次に来たのは公園だった。

休みの日だからか親子の姿が何組か見えた。

やよいはベンチに座り、考え込む。

すると、心の中でキンタロスが話し掛けて来た。

 

 

 

キンタロス『なぁ、お嬢ちゃん。どうしたんや?さっきから黙って…考え事かいな?あ!もしかして、望み考えてんか?』

 

 

 

そのキンタロスの言葉に対して、やよいは

 

 

 

やよい「ねぇ、さっきどうして無条件であの人助けてくれたの?」

 

キンタロス『ん?』

 

 

 

実は、さっきやよいは『あの業者の人を助けて欲しい』とキンタロスに言ったのだ。

適当にこじつければ、『望み』として契約成立できた筈だ。

 

 

 

キンタロス『ああ、そやな。けど、あれはお前の望みとちゃうやろ?俺はお前自身の望みを叶えたいんや』

 

やよい「私の望み?」

 

キンタロス『そや!あれはお前の“頼み”やろ。俺はお前自身の為に契約したいんや』

 

 

 

やよいは何故かキンタロスの話しを黙って聴いていた。

自分の為に―――。

その言葉がやよいの心に強く残った。

 

 

 

キンタロス『願いはゆっくりでええで。俺はもうひと眠りするさかいな』

 

 

 

などとキンタロスがつぶやきながら欠伸をしてると、やよいは立ち上がり言う。

 

 

 

やよい「ねえ…」

 

キンタロス『ん?』

 

やよい「願い事決まったわ」

 


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