俺以外の男性IS操縦者が軒並み強いんだが by一夏   作:suryu-

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今回は蓮サイド。あのイギリスさんとの戦いですが、戦闘描写は上手くないので大目に見てください。(迫真)

それでは今回もご歓談を!


五話 蓮視点

インフィニット・ストラトスにおいての試合とは。

インフィニット・ストラトスの試合は練習試合から果ては世界大会までもが開かれているのは周知の事実。それを、国家間の代理戦争と捉える存在もいない訳では無い。

なにしろ、最近のインフィニット・ストラトス。略称ISは第三世代へと以降するために各国の技術は目覚しい進歩をしていて威信も問われるものとなっているのだ。

かくして、新たな第三世代を開拓し始める中、日本の企業。不知火鳳社は規格外の第四世代を開発したのである。その機体は同国の新たな男性操縦者に渡されると言う話が世に出回るのは、そう遅くは無かった。

勿論、女性権利団体は反対するもののその反論は「男のような下賎なものが」等と幼稚たるものの為、簡単に棄却されたのはIS学園に在籍する男性操縦者には知らされることは無い事実である。

彼の心労を心配した、山田真耶教諭と織斑千冬教諭が権利団体に圧力を掛けたのは至極当然の事であった。

それと同時にとある噂が広まる。織斑千冬はその男性操縦者を弟子としたという噂。織斑千冬は否定しない為、その事実は確信ではないかと思われるようになる。

そんな最中にも、学園側の動きが止まることはない。今にもクラス代表決定戦という、学園でいうエキシビションマッチのようなものが開かれるという事で学園内の話題はそれ一色となっていた。

 

そう、今日はその当日。なぜこの話が出たのかと言えば、その件の第四世代機がまだ到着していないからなのである。

 

 

 

■■■

 

 

 

「すいません。蓮君……まだ不知火鳳社さんからISが届いていないんです」

 

「良いですよ、真耶さん。先に一夏の方が届いたんですし」

 

現在、アリーナのピットで蓮の側には真耶がついている。不知火鳳社から受理される筈のISが届いていないという事実は真耶に焦燥を与えているからか、真耶は少し落ち着きがない。

対象に、搭乗者となる男性操縦者こと蓮は見事に落ち着き払っていた。逆の立場の二人がこの様に対比していることから、場に居合わせた一夏は少しクスリと笑う。が、問題がある為にすぐに箒へと向き直った。

 

「なあ箒。俺にISの事を教えてくれるんじゃなかったか?」

 

「……」

 

一夏の問いかけに箒は盛大に目を逸らす。一夏は流石に我慢出来なかった。その理由は……

 

「目を逸らすなよ!? 千冬姉が少しでも教えてくれなきゃ完全に致命的だったんだからな!?」

 

これである。箒はISの事を教えると一夏に豪語したものの、一夏は教えてもらうどころか、箒からは剣道を叩き込まれただけだったのである。

見兼ねた千冬は、流石に何も無い状態よりかはマシであろうと一夏に知識を少しだが教え込んだ。それ以外の時間は三人の男性操縦者の事で女性権利団体への圧力と蓮との訓練。一番の多忙を過ごしたのは彼女ではないかというのは真耶の弁。その千冬本人は今この場所には居なかった。

一夏は箒に問い詰めているが、相変わらず目を逸らすだけで答えはしないようで、蓮は内心呆れ半分苦笑い半分でその光景を眺めている。すると、奥から千冬が現れた。

 

「織斑。お前の専用機が届いたぞ」

 

「っ! ありがとう、千冬ね……じゃなかった。織斑先生!」

 

千冬はカーゴを押してきたようだが、その上には一機のISが中世の騎士のように佇んでいる。

その見た目と言えば白。汚れのない無垢な白だ。洗練されたフォルムは、これでまだ初期設定にもなっていない事から本来の調子ならそれは凄いものとなるのだろうと考えられた。

 

「織斑、どうした。早く乗れ。フォーマットとフィッティングを行う」

 

「は、はい!」

 

一夏は恐らく一瞬だがその白に見惚れていたのだろう。その白に座る一夏を、蓮は眺めていた。すると光が巻き起こり、白は一夏と一体となる。

 

「これが、白式……」

 

「見た目通り、真っ白な機体だね」

 

その姿は騎士そのもの。甲冑という程ではないものの、その姿は強さを醸し出していた。故に、蓮は少し息を飲む。これが専用機のISなのだと。

一夏も何か納得がいった表情を見せると、ピットのカタパルトへと移る。

 

「行ってこい。一夏」

 

「ああ、千冬姉」

 

「……油断と慢心はしないでね。頑張って、一夏」

 

「勿論だ、蓮」

 

千冬と蓮からの言葉を受け取ると、一夏の顔つきが変わる。特に蓮との言葉の応酬は一夏の顔をさらに引き締めた。恐らく、何かを感じ取ったのだろう。

その会話が終わると真耶は箒の様子に気付かずピットから指示を出す。

 

「それでは、織斑君。出撃です!」

 

「織斑一夏。白式。出る!」

 

カタパルトは一夏を勢いよく送り出すと、アリーナは歓声に包まれる。熱狂。その一言で表すには足りない程だ。

その一夏の試合が始まると、蓮は食い入るように見詰める。次は自分が戦うのだ。と視線の先の戦いに目を凝らした。

避け続ける一夏。恐らくエネルギーの余裕を確認しているのが見て取れる。と、その時だった。

 

「やっぱり、ビットを動かしている時は自分は動けないんだな!」

 

「っ、それが分かったとしても!」

 

蓮はその言葉を聞くと、次の戦いでの戦闘方法をイメージする。千冬と真耶からこの数日で叩き込まれた戦い方を、頭の中で想起。シュミレートをはじめた。

そしてまた、一夏の試合を再度目に映したかと思えば驚愕する。

 

「せェいッ!」

 

「なっ、どうしてミサイルビットが!?」

 

一夏の一薙と共に、ミサイルビットは爆発していた。よく見るとその下には叩き落とされたビットが散らばっている。

一夏は何故そんなことが出来るのか。初めてではないのか。そんな思いは胸をよぎるが、この後は自分の戦いも控えている。と、考えた矢先、一夏の白式はまた光を纏う。

 

「あ、あなた。もしかしてファーストシフトせずに今まで……!?」

 

「そうだな。流石に焦ったぜ。……雪片弐型、か。まるで運命だな」

 

「っ、なっ!」

 

刹那。雪片弐型を展開した一夏はセシリアに一瞬で近寄ると雪片が光のブレードを展開してセシリアを斬る!

セシリアはなすすべもなく絶対防御を発動させて、SEを削り取られれば全ては終わった。

 

 

Shield Energy empty! WIN Ichika orimura!

 

 

唖然。場内はしん……と静まりその一言で表せる。先ほどの熱狂とは対比的な状態に、一握りの熱意と大きな闘士。それながら冷静な心を持った目線が見詰める。

セシリアは一夏と何かを話してから頬を赤くする様子が見て取れるが、彼には関係ない。なにせ次は彼の番なのだ。

男とは、闘争本能の中で生きる生き物。それがなければ枯渇するという話はあるが。彼、蓮はその闘争本能を生まれて初めて感じていた。隣に居る真耶も初めて見る蓮の様子に少しだけ見惚れる。

そんな中、ピットには一夏が戻ってきた。晴れやかな笑顔で蓮に拳を突き出す。

 

「お疲れ様、一夏」

 

「おう、お前の言葉で油断せずに済んだぜ」

 

拳を合わせては一言ずつ交わす二人。男の友情が芽生えていた。二人の様子は青春そのもの。ここに紅も居たら、と蓮は思うが今は試合前。気合をいれなおすと同時に、時は来た。

 

「れんれん。お待たせ〜……専用機、来たよ!」

 

「っ。布仏さん、ありがとう!」

 

本音がいつの間にか台車に機体を載せて、ピットへとやって来ていた。

その台車にある機体は黄色……というよりは金色に見える。蓮はその機体に目を見張る。美しいの一言で終わらせるには勿体なかった。細部まで見るとその金の装甲はスライドする事が分かる。カナードも展開するようだった。

機体をそうして眺めていると、ふと。呼ばれた気がした。誰に、という訳でもない。だが、確実に呼ばれたということが頭の中に残る。

そして蓮はISを触る。すると、電流のように情報が流れ込んだ。コイツだ。コイツが僕を呼んでるんだ。そう確信すると、ISに乗り込む。

 

「ッ……!」

 

瞬間。目線が変わったと同時にポップが現れる。

 

[搭乗者、登録完了。お待ちしておりました。my master……私は夕凪です]

 

ポップが現れた事により、この機体の名前は夕凪という名前であるという事が分かった。

しかし、インフィニット・ストラトスとはこんなにも親身なものなのだろうかとは思うが、こんなものだろうと考える事にする。

今は試合だ。蓮は少しだけポップのことが気になりつつも意識から除外して、フィッティングのあとのファーストシフトまでをどうするか考える。

 

-だが、それを織斑千冬は許さない-

 

「金澄、次はお前の番だ。カタパルトに乗れ」

 

「……僕もファーストシフト無しですか」

 

ある意味では、蓮は分かっていたのかもしれない。一応の問いかけに、千冬はふっと笑い当然の事だと蓮を見据える。

 

「私の弟子だ、それ位してもらわないとな」

 

「了解しました。なら行ってきます」

 

千冬との問答は軽いものだが、それでも感じるものはあった。故に二つ返事で了承するとカタパルトに乗り込む。

 

「れんれん……」

 

「どうしたの? 布仏さん」

 

「勝ってきてね~。それと……本音って呼んで」

 

「……分かった。本音、行ってくるよ」

 

「蓮君。大丈夫ですよ、セシリアさんに勝てます」

 

「ありがとう、真耶さん」

 

オペレーターである真耶と訓練機の整備をしてくれた本音に笑顔で受け答えをする蓮。覚悟は出来た。その覚悟と共に、叫ぶ!

 

「金澄蓮。夕凪。行きます!」

 

それと同時にカタパルトは夕凪を射出。アリーナへと蓮は飛び出した。蒼き空と膨大な歓声が蓮を迎える。そして、目の前にはセシリアが居た。

目線を合わせると、蓮にセシリアはまずは一礼する。どういう事かとは思うが、セシリアはそれに答えた。

 

「先ずは、蓮さん。今までの非礼を、お詫び致します」

 

「……急だね。一夏と戦って何か変わった?」

 

「ええ。素敵な殿方でした。私が見てきた男達と違って……」

 

頬を染めながら蓮の問いかけに返答するセシリアの様子に、これは落ちたなと理解する。ここ数日で一夏がフラグメイカーなのは確信的な為に、彼女にも旗が立ったのだと分かってしまった。

少しだけの羨ましさを感じるものの今は戦いの前。そんな思考は隅に追いやった。

 

カウント3……

 

「それでは参りましょう。見下しも手加減もありませんわ」

 

「それはありがとう。師匠も見てるからそれじゃあ満足しないしね」

 

カウント2……

 

「あら、それでは優雅に踊りましょう。エスコート致しますわ」

 

「ご生憎、僕はダンスに不慣れなんだ。ジャズが好きでね」

 

カウント1……

 

「それではジャズ風にしましょう。何せ……友人になれそうですもの。即興演奏も好きですわ」

 

「まあ、そうだね。意見は合いそうだ。なら全力でいくよ。レディ……」

 

試 合 開 始 !

 

 

「ブルーティアーズの奏でる音で!」

 

「ゴー!」

 

二人の試合が始まる前の掛け合いを終わらせたかと思えば、最初はセシリアの狙撃から始まる。だが、蓮はそれをひらりとかわしてみせた。その程度なら千冬という師匠に叩き込まれている。

だが、回避と同時に違和感を感じる。自分の考えた回避先とは少しのズレがあるのだ。おそらくファーストシフトが終わってないからだ。すかさずポップを見る。

 

[first shift program 21%]

 

これはまだまだ時間がかかるなと脳内で思いつつも、今はセシリアのレーザーによる射撃から回避へと専念する。

どういう事か一夏の時とは狙撃速度が違うという事は少し気になるが、来たるビットに備えるため、バススロットに入っている武器を確認する。

 

「紫電と飛電、ね……大方資料にあったビームライフルとビームサーベルか」

 

第四世代としての夕凪の映像資料は受け取っていたためにその二つは恐らく初期武器なのだな。と理解しつつ声に出してはビームライフルの紫電を取り出す。

戦闘中に声など余裕だな、とは思われるだろうが流石に千冬程の相手ではない為に。というのは比較対象としてセシリアには悪いのだが、地獄の訓練をくぐり抜けている身分としては幾ばくかの余裕はあった。

とはいえ、である。

 

「っ、中々当たってくれませんわね……なら、行きなさい。ブルーティアーズ!」

 

「ッ、お出ましか!」

 

 

■■■

 

 

ついにセシリアの切札。ブルーティアーズを引き出させた蓮は、その動きを目に焼き付けるように避ける。少しでも反撃の糸口を探して。でなければ、勝ち目はないのだと。この不利な状況を脱する策をねらなければならなかった。

 

ここで、何故不利なのか分からないという事が分からない人に説明をする。

そもそも、ブルーティアーズは完全に遠距離。搭乗者のセシリア・オルコットのスキルもあってか、狙撃型の機体であることが分かる。

しかし、流石のセシリアとて狙撃だけで勝てるほど甘くないというのは重々承知なのだ。だからこそ、彼女は狙撃スキルがあろうと近接では押し負ける事を理解している。

そこでビットという存在が、彼女の狙撃に強味を持たせている。というのも、ビットを動かしている間は機体を動かす事が出来ないものの、ビットの動きによりポイントまで追い込む事は出来るのだ。

対する蓮はまだファーストシフトすらしていない機体で、尚且つ所有している武装は近距離のビームサーベルの飛電と中距離が現実的なビームライフルの紫電のみなのだ。

さらに言うとファーストシフトをしていないからか、専用の機体とはいえまだ反応が少し遅い。回避先に微妙な差があるのだ。

 

ピットからは真耶と千冬。そして本音がその様子を眺めていた。真耶はやきもきしていて、千冬は静観。本音はしっかりと機体の動きを見ている。

三者三様の中で、落ち着きのある千冬はようやくと言ったかのように言葉を発する。

 

「そろそろだな」

 

「……えっ?」

 

真耶が、そのつぶやきに反応すると同時に試合に目を向ける。事は動こうとしていた。

 

 

 

■■■

 

 

「っ、なかなかに当たってくれませんわね!」

 

「当たったら負けるから、ね!」

 

蓮はその時を、まだこないのか。早く来なければと待ち続ける。反撃の時は遠いものではないのだと信じて、回避を優先した。勿論、ビームライフルで牽制はするものの避けながらでは狙いが定まらない。

 

「っ、まだなのか……!」

 

ビットのレーザーをかなりスレスレで回避するも、やはり危ない事には変わりはない。そこで、だ。漸くポップが現れる。

 

[First shift program complete. My master……決行のご指示を]

 

「っ、来た!」

 

迷いはない。決行のボタンを押すと、変わりゆく機体と自分を纏う光の中、セシリアの驚く顔を見て、珍しくニヒルな笑みを浮かべる。

ドッキリが成功したとでも言わんばかりの顔をしているが、実際自分の機体の装備を完全には分かりきっていないために、変わる中で武装を確認する。すると、ある武装が目に入り、これでいけると確信した。

 

「あ、あなたもファーストシフトなしで……!?」

 

「ご名答。まぁ、師匠から言われたんだけどね」

 

変わりきった機体は鮮やかな金。装甲はスライドして背中にはスラスター。そして手に持つ紫電は蓮に合ったちゃんとした装備へと変わったのだ。

機械的ながらも雅な姿を残すその機体。夕凪は本来の姿となり蓮に完全に蓮へと馴染む。この感覚なら。

 

「ですが、隙だらけですわ!」

 

蓮のその姿を何時までも呆けて見ているセシリアではない。彼女はビットとライフルを構え一斉射撃をする。

だが、蓮は冷静にセシリアを見る。それから自分の機体を信じて。そしてプレッシャーのある中で彼は笑う。

 

「八咫鏡!」

 

「決まりまし……なッ!?」

 

その瞬間。通常なら有り得ないことが起きた。蓮に当たったかと思ったレーザーは全て跳ね返される。その時蓮が纏う光が一瞬目くらましになったとたん全てのビットは落ち、ライフルは焼けている。

体感したことがない事象。セシリアが何事かと狼狽えていると、いつの間にか蓮は動いていた。そうだ、今は狼狽えている場合ではない!

 

「み、ミサイルビット……!」

 

「させない!」

 

腰のミサイルビットはビームサーベルに焼き切られ、セシリアの持つ実体剣を出す前に、蓮は既に行動に移している。

有り得ない。この速さはなんなのだろうか。蓮は初心者だったはずなのだ。故にその強さに驚きを感じる。時の流れが遅くなるような感覚すら覚えた。

その隙を、蓮は逃さない。

 

「これで、終わりだ!」

 

「きゃっ!?」

 

蓮はビームサーベルを一回当てたあと、片方を腰に着けると握り締め、振り抜く。

 

曰く、瞬間の一撃。曰く、目に捕えられぬ速さになる事が条件。曰く、一回で決めるべし。

 

「せいッ!」

 

居合切り。それが決まると同時にセシリアはシールドエネルギーを、刈り取られる事が目に取れた。それは敗北と理解する。

決まるまでの瞬間に驚愕の色が見られるセシリアに対して、蓮は自分の出せる限りの闘士を込めた一撃を放ったのだった。

 

「い、今のは一体……ですが……」

 

セシリアはその居合切りに不意を打たれた形になるのだが、その一撃にただ驚くだけではなく、見事なものだったと笑みを浮かべる。

一夏だけでなく、蓮も勝利を勝ち取った。何時ぞやの自分を恥ずかしく思う。セシリアはそんな事を考えて微笑むと、一夏を恋愛対象に。蓮を友人としてこれから楽しく過ごす事に。男という存在に。彼等に、希望を持ったのだ。

 

 

 

Shield Energy empty! WIN Ren Kanazumi!

 

 

試合終了。その言葉が浮かび上がり、勝者の名前は表示される。それは、ISにおいて栄光の証。そしてその表記により静まり返ったアリーナは、驚き。そして、巨大な歓声が湧き上がる。

 

「凄い。凄いわ!」

 

「一夏君だけじゃなく、金澄君も!」

 

「男の人も凄いんだ!」

 

そのような歓声を受けて、少しばかり照れくさい感情を覚える蓮だが、セシリアが蓮を見ている事から向き直る。どこか晴れやかな表情だった。

 

「ふふ、完敗でしたわ。……ありがとうございます」

 

「こっちもファーストシフトがなければ危なかったよ。……お疲れ様」

 

二人の戦闘後の握手によりまたもや歓声があがると、手を振りながらお互いのピットに戻る。ちょっとした充実だった。すると、本音と真耶は飛びついてくる事に蓮は驚くがなんとか受け止めた。

 

「凄いよ〜れんれん〜!」

 

「やりましたよ、蓮君。凄いです!」

 

「あ、ありがとう。二人共」

 

勝った自分よりも嬉しそうな二人を見るとなんだか不思議な気持ちになるな。と蓮は内心で思うと千冬はこちらを見ていた。

それにより、一回目を閉じその視線に応えるかのように向き直れば目を開く。千冬は満足気に頷いた。

 

「及第点だ。金澄、良くやった」

 

「……っ、ありがとうございます!」

 

師弟となった事により、その言葉は重く。嬉しく響く。一夏も驚いたが少し間を置いてからサムズアップした。

 

「……よっしゃあ!」

 

そして、その叫びは木霊する。アリーナの歓声は鳴り止まず、響き続けるのであった。


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