俺以外の男性IS操縦者が軒並み強いんだが by一夏   作:suryu-

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今回はしゅーがく氏の紅視点です。こっちの方が先に専用機が出てくるんですよね。
かなり個人的にかっこいいと思うので私はかなり好きです。

それでは、お楽しみください!


4話 紅視点

 入学の次の日。

起きた部屋の天井に見覚えがないことに少し戸惑ったが、すぐに自分自身が置かれた状況を理解した。

フェルメールも同様に寝起きでボケつつも理解していたみたいだ。ソソクサと昨日決めたことを実行に移す。制服を持って洗面所に入っていった。

俺もそろそろ着替えようかな。

 

ーーーーー

 

ーーー

 

 

 朝食はフェルメールと摂り、教室に来ていた。

他の生徒たちも集まってきていて、授業開講まで10分くらいだった。席を立って話をしていたりだとか、そういう風に皆それぞれで過ごしている。

俺はというと、自分の席で教科書を見ていた。こういう高校生デビューだったら、友だち作りに力を入れるべきなんだろう。だけど、俺が置かれている状況が状況だ。

能動的に動くのが本来するべきことなんだろうけど、まぁ……この状況だったら数人だけ作って置くだけで十分だろうな。

 俺の近くでは話しかけようとしている女子生徒が数人いたが、どうやら勇気を振り絞ることが出来なかったみたいだった。

俺もそんな様子に気付いていながらも、こちらから話しかけるようなことはしない。

そんなことをしているうちに、HRの時間になっていた。山吹先生が教壇に立っていることだし、HRが開始されるだろう。

 

「はーい、おはようございます」

 

「「「「おはようございます!」」」」

 

「……うん! 初日からの遅刻者はなし!! 良いねぇ!! ってことで、今日はちょーっとばかしお知らせ」

 

そう言って山吹先生は話を開始した。

 

「今回の男性IS操縦者が現れたことで、データ取りも兼ねて専用機が用意されることになりましたっ!! はい拍手っ!!」

 

山吹先生の声に、皆が拍手をする。まぁ、俺もそれに加わって拍手をした。

 

「んで、ウチのクラスの大事な大事な男性IS操縦者である天色 紅くんにも無論、専用機が用意されることになりました。というか既に到着してま~す」

 

 山吹先生は腕を天に突き上げると、そのまま俺に渡される専用機の話をし始めた。

HRの時間があと10分だというのに、ISの話なんてしだしたら1限に食い込んでしまうんじゃないだろうか。そんな風に思っていたが、よく考えてみれば次の時間はゆき担当の時間。

ISの科目のところなのだ。

 

「あ、このまま1限入るから、10分早く終わるね」

 

そう言った山吹先生はホログラムを動かし、俺に渡されるISの話を始めた。

 

「天色くんに支給されるISは国内のISメーカー、イーグレット社製第三世代IS ジェード」

 

ホログラムにおそらく、俺に支給されるISの正面と背面の画像が表示された。

そのISは基本グレーで青いラインの入ったカラーリングをしている。

 

「中・近距離戦用ISだね。前衛タイプの」

 

そんな話をし始めた途端、教室の雰囲気が一変した。

最初は専用機に盛り上がっていたクラスメイトも割りと静かになった。ざわざわというよりも、ひそひそといった感じに変わったのだ。

 

「何だかすっごい細身だよね」

 

「うん。他のISだったらもっと太いもんね」

 

そんな話を待ってましたと言わんばかりに、山吹先生が拾った。

 

「良いところに気がついたねぇ!! 武装に関して喋っちゃうとアレだから、ここでは言わないけど他のところは話しておこうと思うんだ」

 

「……もちろん俺にはその辺の説明はあるんですよね?」

 

「そりゃあねぇ……。てことで、他のところは今教えてあげる」

 

山吹先生は話がこういう風に流れていくことを考えていたんだろう。ホログラムが次に移った。次はジェードの特徴が書かれていたのだ。

 

「この機体の特徴は一般機のような汎用性とかは全くないんだ。だから専用機って呼ばれている訳であるんだけど、その専用機の中でもピーキーな機体」

 

 ホログラムでジェードが拡大されて映され、ある部位へと視点が動いていく。

動いた先は背部とふくらはぎ、足裏。それぞれ拡大されて映された。

 

「そのピーキーにさせた理由がこれ。ジェードには通常のISよりもスラスタの数が多いのが特徴であり、短所でもあるんだよ。スラスタの数だけ高機動であって、その分機体制御がかなり難しいんだ」

 

山吹先生がそこで切った時、クラスメイトの1人が手を上げた。

 

「はい。そこ」

 

「はい。……どうして天色くんに、そのピーキーな機体が支給されることになったんでしょうか?」

 

「簡単に言っちゃうと適正なんだよね。皆も調べてもらっているIS適正で、搭乗機を選んだり出来るのは知っているね? んで、天色くんのIS適正はAランク。そして本人の特性で『一般人やスポーツ選手をも遥かに上回る動体視力』があるの」

 

何やら難しいことを言っていたけど、そういうことらしい。俺にIS適正が発見されてから様々なテストや検査を受けさせられる課程で、そういう自分にある秀でた何かを知ることも出来たのだ。

俺の場合は山吹先生も言った通り『動体視力』。それと俺に支給されるジェードとの相性が良かったのだろうな。

 

「言ってしまえば、高機動をする機体の制御をしやすくなるだけの能力を持ち合わせているということ。だから日本国内のメーカーにある数あるISの中からジェードが選ばれたって訳」

 

 ホログラムの画像が変わり、映像に切り替わった。ちなみに実写映像ではなく、アニメーションだ。

 

「そういう訳で、ジェードの特筆すべき点は『超高機動』なところ。ジェードに高機動格闘戦を挑むのは自殺行為に等しいね。搭乗者の能力値を同等に設定したジェードと打鉄との戦闘シュミレーションでは、打鉄の攻撃は一撃も当たらずに戦闘不能に追い込んでいるんだ」

 

アニメーションが再生され、戦闘がシュミレートされている。

時間にして2分程度だろう。それくらいで戦闘が終了したのだ。

 

「はい。ジェードの説明はおしまいっ! 天色くんは後で武装と固有武装に関して教えるからね、放課後に時間頂戴。わ・た・し・が、手取り足取り教えてあげるからぁ」

 

「はーい」

 

 言い方が気になったが、まぁ教えてくれるのなら良いだろう。

俺はそう思い、返事を返す。

 授業はこのままISの座学に入っていった。

学園に配備されているISの打鉄とラファール・リヴァイブについての講義が始まった。

さっきまでのジェードの話が無かったかのように始まり、少し違和感があったものの、授業内容を分ける意味でもそういう風にしたんだろうということにした。

 

ーーーーー

 

ーーー

 

 

 放課後は相部屋のフェルメールに話しかけた。

遅れて帰ってくることを伝えておくのだ。

 

「フェルメール」

 

「……なぁに?」

 

教室を2周りくらい見渡して、やっと見つけたのだ。自分の席に居たみたいだが、最初は分からなかったぞ。

 

「これから山吹先生のところに行ってきて、専用機の……」

 

「あぁ、朝のやつだね。分かった」

 

途中まで話して分かったのは、授業の内容になっていたからだろう。

というよりも。言いに行かなくても分かっていただろうな、とか考えつつ、俺は職員室に居るであろう山吹先生のところへ向かった。

 職員室の扉をノックし、中に入って山吹先生のところへと歩いていく。

時間的にどうやら会議があるみたいで、他の先生たちは出払っているみたいだ。

 

「おぉ、来たねぇ!!」

 

「先生が呼び出したんですよ?」

 

「うんうん!! 分かっているよ!! じゃあアリーナに行こうか。許可は取ってあるし!!」

 

俺が近づいて話しかけるなり、そういうことになった。

 山吹先生に連れられて、俺は学園内にいくつもあるアリーナの1つ。第4アリーナに来ている。

ピットには布が被せられたISが1機、置かれているだけだった。他には何も置かれていない。入学試験の時の教員との模擬戦闘との時に入った時と変わらない状態だった。

 山吹先生はISに近づき、被せられていた布を取って放り投げる。

 

「これが天色くんの専用機、ジェードだよ」

 

 そこにはISにしてはシルエットが細すぎるデザインをしたグレーを基調としたISが鎮座していた。

1限の時に見た画像とは違い、生はかなりの迫力がある。大きいし、特徴であるスラスタの数も尋常じゃない。そして人が乗り込むところには誰も居なかった。

そこに俺が乗ることになるんだろう。

そんなISを見上げる俺は、声を1つも出すことが出来なかった。その迫力に圧倒されていたのだ。

 

「1限の時に話さなかった武装のことを説明すると。……まぁ、その前にフォーマットとフィッティングをするから」

 

「あ、はい」

 

 俺は言われるがまま、山吹先生の指示に従って動き始める。

ここに来る前に渡されていたISスーツに着替え、脚立を使って搭乗するところに足を滑り込ませる。

ジェードの脚部に足が入り込み、あちこちを冷たい何かが触れていく。腕部に手を入れると、目の前にディスプレイが表示された。

 

〈Format Activate〉

 

〈Format operation start〉

 

どうやらフォーマットが始まったみたいだ。近くで山吹先生がノートPCを弄っている。

多分そこから操作しているんだろう。

 身体を這うように何かが張り付いていく。頭にはヘッドセットのような機械が付けられ、背面から腹部に掛けて、装甲板が覆いかぶさってくる。

そして背中がずっしりと重くなった。きっとバックパックでも量子化されたんだろう。

 

〈Personalize Activate〉

 

〈Personalize operation dawnload〉

 

〈Install completed〉

 

俺の身体情報が読み取られていっているみたいだ。山吹先生の方から手動でやるわけじゃないんだな。

 

〈Fitting Activate〉

 

〈Fitting operation start〉

 

次に調整が開始され、俺の体型に合わせて調整調整が成されていく。

そして最後にディスプレイが移り変わっていく。今まで表示されていた文字だけの状態から、数字やメーターが出てくる。そして中心にまた文字が浮かび上がった。

 

〈Completed〉

 

初期設定が完了したみたいだ。これで動かせるようになっている、と思う。

 ノートPCを操作していた山吹先生がこちらに向き、話しかけてくる。

視点的には見下ろす形ではあるが、気にしてもいないだろう。俺はそのまま話をする。

 

「もう終わったから動いていいよ」

 

「はい」

 

 俺は言われた通り、動き始める。

基本的にISの操縦は基本的な手の動きや歩行に関しては、IS自体が搭乗者の動きに同調して動いている。それ以外の浮遊・飛行・手を使わない武装の使用に関しては、イメージ・インターフェイス及びパッシブ・イナーシャル・キャンセラー(略:PIC)を使って浮いたり飛んだり、武装を使っている。

 IS訓練に関してだが、教本では『初心者は歩行から』というのが通例となっている。

俺は普段と同じように動き始める。足を出して歩行を開始し、ピットの中をぐるぐると歩き回る。特段違和感があるわけでもなく、ISを装着していない状態と生身とでは大差なかった。強いて言えば、目線の位置がかなり高くなったことくらいだろうか。

 いつもの身体よりも腕と足が長く感じるが、それも特に問題があるとは思えない。

ピットの中を歩き回ること数分、山吹先生に声を掛けられる。

 

「どうやら慣れたみたいだねぇ。じゃあ、武装について説明するよ」

 

 やっと本題に入ることが出来る。

と言っても、ここまで到達するのにそこまで時間は使っていない。精々10分くらいだろう。

 

「そのISは朝も話したように、自社製の武器が備わっているの。武器のインベントリを開いてみて」

 

 俺は山吹先生に言われた通りに、ISに武器のインベントリを開くように命令をする。

この命令はイメージ・インターフェイスが作用し、何かを操作することなく目の前のディスプレイに表示される。

 武器のインベントリには『エンジュラス』と『エンジュラス・ショート』、『Mill-20』が文字だけで書かれていた。

試しに『エンジュラス』という武器を量子化してみる。

 

「あ、出しちゃったか……」

 

 そんなことを言われつつも、何もないところから量子化して出したのは長刀だった。正確に言えば太刀だろう。

形状からして西洋の剣とは形状がまるで違う。日本の刀と酷似したその姿だが、長さは異常だった。ISの全長の2/3ほどの長さがあるのだ。

 

「それはジェードの近接戦闘用高周波刀 エンジュラス。その名の如く、刀身が発する高周波で物体を切り裂く太刀だよ」

 

 説明があった通りだが、刀身は特に震えているようには見えない。それに、これ以上の説明はあとであるだろう。

 

「次は今のエンジュラスの刀身を短くしたもの。エンジュラス・ショート。エンジュラスは1振りしかないけど、エンジュラス・ショートは何本も量子化しているから、いくらでも出せるよ」

 

「……あ、本当だ」

 

山吹先生に言われてエンジュラスを量子化し、エンジュラス・ショートを出してみた。

 手に取れたのは1本だけで、他にも一緒に出てきてしまったものは地面へと転がっていく。総数7本。

どれだけ持っているんだろうか……。

 話を聞く限りだと、エンジュラスと同じ特性を持っていることに違いはない。長さも短刀程度だからな。

これだけの量を保有しているということは、ナイフみたいな使い方をするんだろうな。捨てることが出来るという意味もあるような気もする。

 

「次はMill-20。これはIS専用大型マシンガン。ぶっちゃけオートマチックライフルみたいなものだよ。口径は20×121mmで、弾種も選択可能。弾倉には30発の20×121mmが装填出来るから」

 

 そういった説明はディスプレイに表示されないからありがたい。

表示されるのは名前と武器の絵というか図くらいなものだからな。

 

「んまぁ、ライフルって言っちゃったけど、分類的には機関砲。それは人間サイズでもISサイズでも同じだからね」

 

「機関砲……ですか」

 

「うん」

 

 機関砲といわれても、俺はあまりパッとしないな。よく分からないし。

 

「まぁ、使えば分かるから。そんでもって、最後ね。固有武装、ジェード。機体の名前にもなっているその固有武装は、一言で言っちゃえば『ヤバイ』」

 

 多分、固有武装の話を出したということは、最後のことなんだろう。

それにしても『ヤバイ』ってどういうことなんだ。現代日本で『ヤバイ』という単語は、それこそ数え切れないほどの意味と用法を持っているからな。判断し辛い。

 

「本当にぶっちゃけちゃえば、その固有武装は対IS兵装と言って相手のシールドバリアを斬り裂いて、シールドエネルギーを刈り取る……つまり、バリア無効化攻撃が可能なの」

 

「……凄さが分かりません」

 

 IS学園に入学して2日目だし、IS学園に入学するつもりもなかったから、そういった知識は殆ど持ち合わせていなんだ。

一応、入学前に渡されている参考書はやってあるが、それでもやったというだけで、頭に入っているかは定かではない。

 

「シールドバリアで通常の攻撃を受けるんだけど、それすらをも越えてダメージを与える……っていう固有武装なの。拳銃弾で抜けない鉄板をライフル弾で抜くようなものだよ、つまりは」

 

「は、はぁ……」

 

その言い換えでもよく分からなかったが、つまりは攻撃力がかなり高いってことだろう。

 

「あーそうそう、男性IS操縦者全員に専用機が用意されているんだけどね、その中の1つ、白式にも同じような武装が内蔵されていて単一仕様能力としてあるからね」

 

「白式……」

 

「うん。でも気にすることないよ。白式は武装が雪片っていう近接戦闘用武装しかないから。ジェードも近接戦闘用武装だけど、機関砲もあるからねぇ……。それに朝話したと思うけど、機動性はジェードがトップクラス。使いようによっては、色々楽しめるみたいだからね」

 

「そうなんですか」

 

 どうやらこれで専用機の説明は終わったみたいだ。俺はISから降りるために、命令を出す。

専用機は身につけるモノに変えて待機状態にする、ってあった気がする。

 

「戻れっ!! とか言ってみた……うわぁぁぁ!!」

 

試しに口に出してみたら、ISが解除された。そして最後には、俺の首にぶら下がるペンダントへと変わったのだ。

 

「よしっ!! 補習終わりぃーっ!! さぁーて、帰るよー!!」

 

「はーい」

 

 そのまま解散するように山吹先生に言われ、俺は更衣室に向かった。

その際に山吹先生からあるものを渡された。俺の専用機『ジェード』の仕様書だ。後でゆっくり読もう。

 ふと思い出し、もう授業時間じゃないからと、携帯電話の電源を入れるとメールを受信していた。

昨日はすぐに寝たし、寝起きも携帯電話を見ることがなかったからな。

受信箱からメールの内容を確認する。

 

「……昨日の夜、蓮からかぁ」

 

内容はというと『お前もか!』とあった。

 

「なんとも世知辛いなぁ」

 

俺は内容を見て、そう思ったのであった。


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