俺以外の男性IS操縦者が軒並み強いんだが by一夏   作:suryu-

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六話 蓮視点

「という訳で、一組の代表は織斑一夏君になりました! あ、一繋がりでいいですね!」

 

「うん、似合ってるよ一夏」

 

「お似合いですわ一夏さん」

 

「なぁ、蓮。俺お前に負けたんだけど。聞いてないんだけど」

 

現在、一組の代表を決定してクラスは湧き上がる中、一夏はちょっと待てという表情をしている。どうしてこうなったんだと言わんばかりに突っかかるが蓮はにこやかに笑う。

 

「勿論、一夏の成長の為さ」

 

「蓮、お前はめんどくさいだけだろ!?」

 

どうしてこの流れになったのか、その前日まで遡らねばならない。

 

 

 

■■■

 

 

 

「蓮さん。少しお話宜しいでしょうか?」

 

「あ、セシリアさん。どうしたの?」

 

夜、漸く寮に戻った蓮の前にはセシリアが現れて、いきなり話をしていいかとの問いかけからそれは始まった。セシリアはなにやら交渉を持ちかけるネゴシエーターのようにも見える。

その様子に直感が働いた蓮は、その交渉についてどういうものかを一瞬にて理解した。そう、その答えは。

 

「一夏さんをクラス代表にしませんか?」

 

「奇遇だね、僕もそう思ってたんだ」

 

一夏をクラス代表に仕立てあげるというものなのだ。セシリアは蓮の言葉を聞くとそれはそれは華のような笑顔を見せて安堵の息をもらす。

 

「それでは、蓮さんは一夏さんに……」

 

「うん。譲るよ」

 

「っ、そうですか!」

 

セシリアの場合、好きとなった一夏に成長してほしいという想いや、恰好いい姿を見たいというものからによる一種の心酔からきたものだ。

対して蓮の場合は、自分がクラス代表になると面倒事が多いと踏んだために一夏に譲ろうと決めたのだ。面倒になるのを避ける一手として丁度いいと踏んだ結果である。

ちなみに、その蓮と一夏の試合とはこういうものだった。蓮が地道にビームライフルの紫電を撃ち常に一夏から離れながらの勝利という、なんとも泥臭く、狡いものであった。故に、蓮本人は純粋な勝利とは認めていない。

「それでは織斑先生にこの事を……」

 

「うん、伝えようか」

 

そんな事から二人は結託すると握手を交わす。そんな二人は織斑千冬へと直談判をしに行くのであった。

 

 

 

■■■

 

 

 

「という訳で、一夏が代表だから宜しくね」

 

「何がという訳なんだよ!? 俺は何も理解出来てねーよ!?」

 

一夏の叫びは蓮に向けられるが蓮は流すだけでまともに返答しない。そんな一夏をフォローするようにセシリアは笑みを向けた。それが更に外堀を埋めると知らずに。

 

「大丈夫ですわ。一夏さんは素敵ですもの」

 

「お、おう。ありがとな。じゃなくて!」

 

それでも尚なんとか反論しようとしている一夏には追い打ちがかけられる。その追い打ちを使ったのは、無論この教室の絶対強者。彼女に逆らえる者は、早々いないだろう。それは。

 

「静かにしろ、織斑。これは決定事項だ」

 

「ちふ……じゃなくて、織斑先生まで……謀ったな、蓮!?」

 

そう。織斑千冬という世界最強が存在するこの中で反論など無駄なのである。反論しようものなら彼女と口で戦うことになり、見事返り討ちになるまでがテンプレートだ。

その事がすっかり身に染みて分かっている一夏は項垂れると、机に突っ伏した。

 

「……俺に味方は居ないのか」

 

「頑張れ、一夏」

 

「お前が言うな!?」

 

「煩いぞ、織斑」

 

一夏は内心、嫌がる中で少しばかりの安堵を覚える。馬鹿みたいな会話が出来る男子は貴重に感じた。きっと、こんなやり取りが一番なのかもしれない。

彼は突っ伏しながら笑い、心の底から嬉しさを噛み締めることにした。

 

 

 

■■■

 

 

 

そんなやりとりをした後の事である。その日の晩は一年一組の女子と、男子二名が集まっている。その目的とは、ちょっとしたパーティーのような物だ。

クラス代表が決まったということで彼女達はパーティーを行うことに何の迷いもない。女三人集まれば姦しいという言葉が使われるのはまさにこのような事態なのだろう。やけに準備が早かったのは元から宴を行う気だったのだとツッコミを行う人物は此処には居ない。

 

「という訳で、織斑君。クラス代表決定おめでとう!」

 

「おめでとう、一夏」

 

「おめでとうございます。一夏さん」

 

「蓮に言われるのは凄く釈然としないけどな。取り敢えずありがとう」

 

蓮はにこやかな。それも面倒事が無くなったと安堵したような感情によるもので。セシリアは純粋に微笑み。クラスの皆は笑顔でその代表について祝う。

ただ、箒に関しては何も語るどころかむすっとしたままそっぽを向いていた。だが、敢えてそこにはツッコミをせずパーティーは始まる。

 

「それにしてもれんれんは強かったな〜」

 

「よしてよ、本音。一夏に対してはまともに戦ってないから」

 

「あら、代表候補生の私に勝ったのですから誇っても宜しいのでは?」

 

「そうだぜ蓮。俺が近づけなかったのもお前の策略だろ」

 

「……二人共」

 

何だかんだ言いつつも、三人からは賛辞の言葉を送られて気恥しい思いをする蓮だが、とはいえ。やはり納得出来ない部分はある。一夏との戦いはやはり蓮に有利な戦いであった事から納得はしきれないのだ。

とはいえ、自分が二勝したのも事実である事から。そこは認めなければならないのかもしれない。と、今更ながら少しばかり認める事にする。

 

「それにしても蓮の機体ってどんな武装が積んであるんだ? あのレーザーを跳ね返したのは……」

 

「ああ、八咫鏡かな」

 

「八咫鏡……日本の神話に出てくる鏡ですわね」

 

「うん。どうやらアレで色々跳ね返せるみたい。勿論SEを少しばかり消費するけど……」

 

そんな中、話題は夕凪に搭載されている八咫鏡へと移る。第四世代の中で謎の多い夕凪は、何かと話題の種となりやすいのでセシリアも興味があるようだ。

ただ、一点気になるとするとそれは何故セシリアが八咫鏡を知っているのかという事になるが、其処は気にしないことにした。恐らく何かで勉強したのだろう。

 

「それで、夕凪の武装には叢雲っていうものがあってそれが……」

 

「はいはーい。お話の途中だけど、ちょこーっと良いかしら?」

 

そんな中武装を説明しようとしていると先輩らしき人が声をかけてきたために、蓮はその先輩を見やる。新聞部らしき人だと理解すると、胡散臭いものを見る目と変わる。

そんな蓮の視線は気にせずに一夏へと近寄るとその先輩は笑顔を向ける。

 

「私は新聞部の黛 薫子です。さて、クラス代表となった一夏君に少しばかり質問させてもらいます」

 

「えっ? あっ、はい」

 

黛先輩とやらは一夏に質問をしに来たようだ。一体何を聞くのやら。と思っているとすぐに先輩は動く。

 

「さて、クラス代表となった事に一言お願い!」

 

「自分。不器用なんで」

 

「前時代的ね……改竄を」

 

「なら。俺は! みんなを守る! でお願いします」

 

「OKよ、じゃあそれで」

 

「それでいいの!?」

 

一夏と黛薫子の問答はこのようなものだ。蓮は一夏のセンスに不安を感じつつもこの後は自分の番だろうと身構える。予想通り黛薫子は蓮の目の前へとやってきた。

 

「それじゃあ次は蓮君の番ね。第四世代という規格外の期待と機体を渡された訳だけども。何かあるかしら?」

 

「何か、ですか」

 

改めて質問された事の内容に少しばかりどう答えればと考える。第四世代。それは、自分にとって手に届く範囲を守るための力とは考えたが期待を機体と共に。と考えると少しばかり悩みが生じる。

だが、いつまでも悩むことは出来ない。考えた結果を述べることにした。

 

「……僕は過去に失った。だから、今度こそ手に届く範囲を守るため。そして期待については応えられるように頑張ります」

 

蓮の答えには納得する様子を見せると、手帳にメモをする。薫子は少し過去について気になる所が有るが、次の質問が重要な為にその質問を投げつける。

 

「ふむふむ。気になる事はあるにはあるけど。いいわ。それともう一つ。この学園に来て好みの子は居た?」

 

「ゑ?」

 

「あ、それは気になりますね!」

 

「れんれんの好きなタイプの人〜……?」

 

その質問が投げかけられるとともに一組の皆は一斉に反応した。まさに、餌を見るライオンの如く。

その視線に蓮はたじろぐのだが、特に同時にいつの間にか現れた我がクラスの副担任で幼なじみであったらしい山田真耶や同室同クラスの布仏本音からの視線が気になる。本当に食い入るように蓮を見ている事から彼は困惑の中にいた。

だがしかし、薫子は答えを催促するために恐らく、自分が発言しなければどうにもならない。と蓮は察すると腹を括る。

 

「え、えっと。真耶さんや本音、かな?」

 

その答えを出すとともに周りの女子はキャーキャーと騒ぎ出す。此処、寮だよね? と蓮はこの騒がしさはいいものでは無いと思うものの、口には出さないことにした。

その答えを聞いた薫子は嬉しそうにメモを取り始める。本格的にインスピレーションでも湧いたのかもしれない。と、見つめながら蓮は感じた。

 

「な、なんと! 先生に同室の女の子ときましたか!」

 

「あら、蓮さんって大胆ですのね……」

 

「意外だな。こういうの言うんだな」

 

ただ、そんなよそ見をしているうちに一夏にセシリアは蓮を見る目が生暖かい物へと変わる。やめて。とは叫びたいがどうにもならないのが現状。少しばかり諦めつつ助けを求めて本音と真耶の方を向けば、二人は顔を紅くしている。

 

「……私、ですか。ふふ」

 

「れんれんが私が好みって……えへへ〜」

 

ここまでくると、収集がつかないな。なんて思っている内に、あっという間に時は流れ写真撮影をする事になっていた。

その様子はこんなものだ。

 

「一足す一は?」

 

「二!」

 

「ってなんで皆さん写ってらっしゃるの!?」

 

こんな事がありつつもパーティーは終わる。普段はこのような雰囲気になった事がないが、この騒がしさは不思議と心地よかった。

 

 

 

■■■

 

 

 

「それでは訓練を始める。専用機持ちの三人。ISを展開しろ」

 

翌日。ISの訓練にて展開をする事になった蓮達は今は待機状態のISを展開する事から初めていた。

元々蓮はイメージすることが得意な為に割と早く展開する事が出来たが、一夏は四苦八苦している。それを見た千冬は「遅い。熟練者ならば一秒も掛からんぞ」と叱責する。初心者にそれを求めるのも難はあるのではとは思うが、それでも三人とも展開が終わると、次は武器へと移る。

 

「金澄、お前はビームサーベルの飛電を展開しろ」

 

「はい!」

 

千冬からのお題はビームサーベルの展開。手に柄を持つイメージを瞬時に行えば飛電は展開され、ビームの刃を煌めかせていた。

 

「コンマ八秒か。及第点だ。あとコンマ三秒短縮しろ」

 

「はい。分かりました」

 

その結果は及第点となり、なんとか上手くいったという安堵を覚えていると隣ではセシリアが怒られていた。

確かにレーザーライフルをこちらに向けられていると何やら誤写の不安を感じるのは気のせいではない。そこについて修正を求められるとセシリアは落ち込んでいた。

お次のインターセプターについても名前を呼ぶ事で呼び出したセシリアには千冬から大目玉をくらい「貴方達のせいですわ!」と言われてしまうのだが、蓮は苦笑いしか出来なかった。

 

「さて、次は飛行訓練だ。上まで上がれ!」

 

「はい!」

 

「わかりましたわ!」

 

「いくぜ!」

 

上から蓮。セシリア。一夏の順で飛び上がるとそれぞれが速さを競う。その中で一夏は少しばかり遅れている為、千冬がインカムから激を飛ばす。

 

「織斑。スペックは夕凪と同程度あるんだぞ。貴様が置いていかれてどうする!」

 

その速さを聞けば度肝を抜かれる少女達も多いが今はその機動を見届けるのが先だった。

一方の一夏と蓮にセシリアは、飛行のイメージについての談義をしていた。

 

「反重力とかそんなの、分かんないよなぁ。おまけに円錐なんて考えただけでも分かりづらいな」

 

「一夏さん。イメージは人それぞれですわ。何でもいいんです」

 

「僕は翼を。背中に翼があるようにイメージしてるよ」

 

「なるほどな。そういう考え方もあるのか」

 

そんな会話をしていると下では箒が真耶のインカムを奪おうとして、千冬に出席簿で叩かれている。

なんとも言えない光景を見るも、三人はそろそろ地に降りるかという結論に至った。

 

「それでは、お先に失礼しますわ」

 

まずはセシリアから。千冬が出す指令の10cm近くに降りる。

 

「次は俺だな」

 

続いて一夏。今の彼に慢心はなく出来る限りの速さを使い降りるが、少しばかり10cmをオーバー。だが、地面にぶつかるということは起きなかった。

この話の裏にあるものだが、一夏は物覚えが良い。

例えば今の蓮から聞いた背中に翼をというイメージは、彼の中で自分のイメージを固めるに至る。それにより綺麗に降り立つことが出来たのだ。

そして、最後に蓮が降りることとなる。

 

「……よし。やるぞ!」

 

スピードを乗せて降下を始めると、スラスターの微調整を始める。地表までの時間をイメージで計算すると、真耶との訓練を思い出した。

そして、瞬間の判断で空中で一回転するとスラスターとバーニアをふかして静止。ピッタリ10cmという結果になる。

 

「規定通りだ。金澄、合格だ。今度は脚からも降りられるようにしてみろ」

 

「はいっ!」

 

「おお、流石だな。蓮!」

 

「今のは驚きましたわ……」

 

こうしてその日の訓練は終わる。終わるのだが、彼等はまだ知らない。彼女の来襲があるという事を。

 

 

 

 

「此処がIS学園ね……待ってなさい。一夏!」


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