俺以外の男性IS操縦者が軒並み強いんだが by一夏 作:suryu-
俺は訓練をすることにした。ただでさえ数の少ないISのコアを、俺専用の機体に組み込んでいるのだ。
だからそれ相応の責任とかなんとかがあるから、俺は与えられたモノを上手く使いこなすために訓練することにしたのだ。
訓練のコーチは同室で代表候補生のフェルメールに頼み、早速次の日からフェルメールの都合のつく時だけ、訓練を始めることとなっていた。
それで俺がどうして学校指定の運動着で、学園内の運動部員がランニングで使うコースを歩いているのかというと、コースを覚えてこの後走るからだ。
この訓練は正直、ISの訓練とは言い難いものだ。だが、フェルメールは事前にどういう意図で行うのかを教えてくれていた。
基礎体力を確認し、今後行う訓練内容を考えるためだとか。
それを言われてしまっては、俺はぐうの音も出せなかった。
「さて、1周歩いたことだし、後ろから付いていくからね」
「分かった」
1周も歩き終わり、次に走りに入る。このランニングコースは歩いて30分以上あった。
と考えると、恐らく長さは2kmはあると思う。そんな距離を走るのは、毎年度計測する長距離走以外では走る以外はない。
俺はスタートから自分のペースで走り出し、後ろをフェルメールが追走する。
最初は平気ではあったが半分を超えた辺りで段々と息が上がり始め、額に汗がにじみ出てくる。キツくなってきたのだ。
腕を振って足を前に進めるが、それでも段々と速度は落ちていく。歩いてしまえば楽なんだろうが、歩くことだけはしたくなかった。
俺は余力を絞って駆け足を続ける。そんな中、後ろから声が聞こえてくる。フェルメールだ。
「まだ行ける?」
俺には答える余裕も無かった。だから首を大げさに縦に振り、自分の意志を伝える。
そのことはフェルメールにも伝わったみたいで、黙って追走を続けている。
1周を通り過ぎ、2周目に突入する。
俺の速度もスタートから半分くらいの速度にまで落ちているだろうが、主観では同じくらいのスピードで走っている感覚だ。
そして遂に、俺は足を止めた。2周目の2/5まで進んだ頃だった。
俺は足を止めることはせず、そのまま歩く。急に止まると身体に悪いということなので、最後までは歩いて行くことにした。
額に流れる汗を拭っていると、横にフェルメールが来た。
表情は走り出した時よりも少し辛そうではあるが、全く俺ほどではない。少し走った程度の様子にしか見えなかった。
「これで多分3kmくらいかな……」
息の戻っていない俺に対して、平気そうな表情をしながら評価をしていくフェルメール。
あまり長くはないが、結構見てくれていたみたいだった。
性格を見ている訳じゃないから、分かりやすかったんだろう。色々とあれこれと指摘してくれる。
「うーん……運動部経験があるって聞いたから想像はしていたけど、それなりに体力はあると思うよ。それでね、持久力の方なんだけど、もっとあった方が何かと良いかもしれないかなぁ? 機体特性に対応するには、いくら絶対防御があると言ってもGに対する抵抗があるかって言ったら、わからないからね」
スラスラと指摘していくことは、客観的な評価なんだろう。俺はそう思った。
「この様子だと、たまにISの訓練を入れつつも筋トレかなぁ? ……それでいい?」
「はい……。あざっす……」
コーチをしている時のフェルメールは何だか同級生には見えなかった。
3kmも走っても全然疲れていない様子はおろか、俺の観察もやったなると凄いな。流石は代表候補生だ。
そんな関心をしつつも、ゴールに到着して腰を下ろす。
タオルで額や首筋を拭き、水を口いっぱいに含む。冷たくはないが、その水分が喉を潤してくれた。
息を整え、汗が引いたころに再び俺は口を開く。隣に座っているフェルメールに、気になったことを聞くためだ。
「なぁ、フェルメール」
「何?」
「身体作りはやっていたから、全然平気なのか?」
「うーん……。確かに代表候補生になった後は、ずっと訓練と座学しかしてなかったからねー。確かに体力はあるのかもしれないね」
同じ運動着を着たフェルメールは膝を抱えた。そして少し寂しそうな表情をする。
何かあったのだろうか、と思ったが、聞けるわけがない。初対面3日目で訓練を付けて欲しいって頼み込んでいる時点で、かなり厚かましい奴なのに、そんなこと聞ける訳がないのだ。
そんなことを考えていた俺に、フェルメールは口を開いた。
「夢でもあったからね、代表候補生。……ま、そのために代表候補生になる前もずっと勉強とトレーニングばかりしていたんだけどね……。それがあってかは知らないけどさ」
何が出てくるのか、俺は身構えたが、その予想は呆気なく打ち砕かれる。
「影が薄いのはどうしようもなかったぁー!!」
「えぇー!!?」
ーーーーー
ーーー
ー
話を聞く限りだと、どうやらフェルメールは生まれつきの影の薄さがあるみたいだ。まぁ、たしかに影薄いもんな。
それはこの3日間居て、普通に分かった。気付かない方がおかしいってくらいに。というよりも、見ていて哀れなくらいだった。
出席を取る時に名前を呼ばれない、前から歩いてくる生徒とぶつかる、食堂で注文しようも飛ばされる等々……。
影の薄さもここまで来るととんでもないのな、って思い始めた俺だった。
そんな話を切り出されて少し戸惑いもしたが、それよりも深刻なことがあった。
学校のある時間は思い思いに過ごすものなので、俺も教科書を見たりだとかトイレに行ったりだとかしていたんだが、フェルメールはどうやら友だち作りを頑張っていたらしい。
そして哀れなことに、全然友だちが出来なかったそうな。近くの席の2人だけだとか。他のクラスメイトは結構な大人数のグループを作ったり、グループ同士でワイワイしていることが多い中、フェルメールはポツーンとしている。
俺が見ていても虐められている訳ではないが、この状況は自分の影の薄さが原因だとか。というかソレが原因以外考えられないんだが。
「まぁ、だいたいわかったよ。……それにしても、どうして体力の話からこんな話に脱線するんだろうか」
「……それもそうだね」
膝を抱えたまま話していたフェルメールは腕を解き、背を伸ばした。
俺は正面を見ていたからその姿は見ていないが、まぁ見ても良くは思われないだろうな。
伸びをしたフェルメールはそのまま立ち上がると思ったが、立ち上がることはなかった。
まだ話をするみたいだ。
「天色くんは何だか違う気がするの」
「うん?」
いきなり何いってんの、このお嬢さん。
「同室だしっ……。友だち、って思っても良いのかな?」
「何だそれ」
「えぇ……だってぇ」
いや本当に何を言っているのだろうか。まぁそれは置いておいて、フェルメールが云った『友だち、って思っても良いのかな?』という言葉に、俺は返事をした。
「俺はもう友だちになった気だったんだけど。友だちじゃなければ、こんな訓練の話、頼まないし……。というか、頼める人がいなかったからフェルメールに頼んだ訳であって」
本音だ。IS学園に来て、専用機を受け取ったは良いが、訓練のことを頼めるような友人や知り合いなんて居ない。
上級生に誰か知っている人が居たかもしれないが、そんなことは望み薄だ。希望を持つだけ無駄だと思ったのだ。山吹先生に頼めば良かったのかもしれないが、山吹先生は先生だ。頼んでも請け負ってくれないだろうと思ったのだ。だから、同室になってしまった代表候補生であり、少なからず時間を一緒に過ごしたからこそ、友人と思って頼んだことだったのだ。
「そうなの? そっかぁー」
「……何だよ、ニヤニヤして」
「いいやぁ? ただ嬉しいなぁーって」
そういったフェルメールは、スクッと立ち上がった。
どうやらもう休憩は終わりみたいだな。
「さて、と。走るのは疲れるから、筋トレでもしよう!! 夕食の時間までやろう?」
「そうだな」
俺とフェルメールは、そのまま筋トレを始めることにしたのだった。
筋トレと言っても、ごく一般的なことしかしない。
腹筋・背筋・腕立て伏せ・スクワット等々。自分の限界までやり、フェルメールに『まだいける!』と言われながらやるのは、結構身体に来るものがあった。
この筋トレをランニングと合わせて毎日続けていくこととなる。
ーーーーー
ーーー
ー
入学して1週間ほど経ったが、講義中や休み時間中の過ごし方というのは、あまり変わることはない。
クラス代表になってしまったことで、山吹先生から課せられる仕事をこなしたりだとか、元々自分から積極的に話しかけにいくタイプでないこともあり、友だち作りらしい友だち作りはしなかった。
だが、クラスメイトたちがよく話しかけてくれるので、それには愛想よく返事をしているつもり。
勉学にも真面目に取り組みつつも、俺はフェルメールのコーチの元で初のIS自主訓練を行うことになった。アリーナの使用許可を合間を縫って山吹先生に取り付けてきたのだ。どうやらこれまでは1組が使っていたみたいだが、それももうあまりなくなったとのこと。
それで、俺は今、数多とあるアリーナの1つを借りている。
目の前にはフェルメールがISスーツを身に纏って立っている。
まだ講義中のISの科目は座学しかないので、そのうちに実習も入ることだろう。その時のために、ある程度は動かせるようにしておくのが今日の目標だった。
「さぁ、ジェードを展開してみよう!」
「あぁ」
楽しそうに元気よくそう言ったフェルメールとは裏腹に、俺は少し顔をそむけていた。
何故ならば、ISスーツってほとんど水着みたいなものなのだ。身体に布が張り付いているからか、ボディーラインが強調されている。カラーも暗いグレーか黒なので、フェルメールの白い肌には丁度良い色合いだったのも相まってか、俺はそっちをあまり見ることが出来なかった。
恥ずかしさやなんかが先に来てしまっていたのだ。
「ん? どうしたの?」
「い、いいや……なんでもない」
そう言いながら俺はジェードを展開する。
首から下げていたペンダントが光だし、次々と量子化されていたISが身体に装着されていく。あまり違和感を感じないこの動作は2回目ということもあり、変な感じではあった。
自分の四肢の長さが伸びた気分というものは。
フェルメールは俺のISを見上げて、少し黙り込んでいた。
多分観察しているんだろうけど、あまりジロジロみないで欲しいモノだ。
「うん! 良いよ!! じゃあ、歩行からやってみて」
「分かった」
俺は言われた通りに、周りを歩き始める。
アリーナの中を1周歩いた後、俺はフェルメールの元に戻ってきた。
「なるほど……。普通に歩くことが出来ているから、次のステップに移ろうか! 次は走ってみて」
「よし! 走るのは初めてだ!!」
そう言って、俺は足を前に出す。歩く時とあまり感覚は変わらないが、走る時は違和感を持った。
足が軽いのだ。どうしてだろう。
そう思っていたが、すぐに理由が分かる。どうやらジェードに大量に取り付けられているスラスタの一部、脚部腓腹筋周辺と足の裏土踏まずのスラスタが作用しているみたいだ。
足を浮き上がらせる時、スラスタを一時的にふかして足を浮かせているらしい。
これは良いものだと思った。何せ、自分の筋力以外にも付加された力で足が上がるからだ。だがそれでも、通常生きている人には備わっていないものだからか、少しふらついたり、時には転びそうになったりもする。
そんなようになりながらも、俺は1周を終えてフェルメールのところみ戻ってきた。
「うんうん、いい調子だね。基本的にはISで地上を歩くことが多いけど、走ることは少ないの」
「なるほど」
「だからもう少し安定して走ることが出来れば問題なしね。……もう1周走ってきてみて?」
「分かった」
この指導も基礎中の基礎だろう。それでも俺は何だかISの訓練が楽しく思えてきた。時間的にもそこまで経ってないから余裕はあるから、早く飛んでみたい。
飛ぶ練習も今日はするのだろうか。そんなことを考えながら、俺は1周を走り終える。
今回は特にふらつくこともなければ、転びそうになることもなかった。ビギナーズラックである可能性も十分に考えられるが、大丈夫だろうと判断したのだろう。
フェルメールが次の行程に移ると言い出した。
「じゃあ次! 次は飛んでみようかな」
「おぉ!! 飛ぶのか!!」
「うんっ!!」
やった! 今日飛ぶ練習も出来るのか。俺は最初、そう思っていた。
だが、考えていた以上に、飛ぶことは難しかったのである。
「じゃあ、私が最初に飛ぶから、一度見てみて。ISが飛ぶところはみたことあるだろうけど、念のため、ね?」
「分かった」
そう言ったフェルメールは専用機を身に纏い始めた。
どうやらフェルメールも待機状態はペンダントだったらしく、首から下がっていたペンダントが光り始める。そして量子化されていたパーツが身体にどんどん装着されていき、最後には右手に大きな長槍を持ち、左手には小さな盾があった。
見てくれやカラーリングは完全に中世の騎士を連想させるようなもので、何というかカッコイイのだ。
「おぉ!!」
「えへへっ……何だかそういう反応は新鮮だなぁ」
「そうなのか?」
「うん。皆『あー、パッとしない色と武装だなぁ』とか言うのが普通だったからね」
顔をほころばせつつも、そう言ったフェルメールは地面から足を浮かせた。正確に言えばISの脚部だが。
槍を立てたまま浮き上がり、50cmくらいのところで静止した。
「じゃあ、行くよ?」
「おう」
そう言ったフェルメールは少し足を曲げて、伸ばすとそのまま空へともの凄いスピードで浮き上がって行った。否。加速して行ったのだ。
そしてそのまま空中で旋回を繰り返しつつ、ぐるぐると鳥の様に飛び回る。
時々俺の横を通り過ぎて行くので、後から空気の塊を一身に受けることもあるが、俺はフェルメールの飛ぶ姿からは目を離すことはなかった。どうして釘付けになっていたのか?
それは、飛ぶ姿に心を奪われてしまったからだった。
気流に靡くアッシュブロンドの髪は綺麗で、いつもはおっとりした表情をしているフェルメールが真剣な表情をしていたこともあったのだ。
空中を自由に舞ったフェルメールは1分か2分で飛ぶことを止め、俺の目の前に降りてきた。
そして、少し乱れた髪を手ぐして整えた後、俺に言ったのだ。
「まずは浮くところからかな?」
「浮く、ねぇ……」
『浮く』と言われても、どうやって浮けば良いのか分からなかったのだ。
人間が取れる動きはISが作用して反映させているが、それ以外の行動は入力する必要があるのだ。イメージ・インターフェイスとPICに入力を思考することで行い、空を飛ぶのがISが浮いたり飛んだりする原理だ。そんなこと知っている。だけど出来ないのだ。
話は聞いていたが、やはり浮くことは難しい。頭で浮くことを考えるが、文字の『浮く』が浮かび上がるためか、全く浮く様子がない。
走る時に作用していたスラスタも全く動かないし、運動エネルギーを造り出している様子もない。
「……」
「……やっぱり浮けないの?」
「あぁ。イメージして浮くことは分かっているんだ。だけど、浮かない」
「そっかぁ……」
そう言って、フェルメールは足を付いた。
「説明が難しいんだけど、どう言えば良いのかなぁ?」
そう言って考え始めた。身体を動かすことで浮くことが出来るなんて到底考えられない。ISの特性上、イメージが重要なのは理解出来るのだ。
だが、そのイメージが上手く言っていないんだろう。現に俺は浮くことが出来ないからだ。
浮くことをしようと努力するも、全然浮く気配は無かった。
ただ地面に突っ立って、浮くことを必死に練習するのも時間が結構経つものだ。その練習だけでも20分くらいは続けていた。流石にフェルメールも他の訓練に入った方が良いだろうと言い出し、浮く訓練は切り上げることになった。しかに俺はこの後、浮くまでにかなりの日にち練習することになるとは知らなかったのだ。
ちなみに、浮く訓練を切り上げた後は、フェルメールの思いつきで加えた訓練をしていた。
走る時に脚部腓腹筋周辺と足の裏土踏まずのスラスタが作用することを応用し、走る歩幅を増やすことは出来ないか、ということを始めたのだった。ちなみにこれは成功した。
やっている行動は走る動作とあまり変わらないが、スラスタの出力が調整出来るようになったのだ。つまり、1歩1歩の歩幅が広がったのである。
そして、ジャンブする時にもスラスタが作用することが分かり、短距離ながら飛ぶことが出来るようになったのだ。浮いて空を自由に飛び回ることは出来ないが、脚力を使って飛ぶことが出来るようになったのは、大きな前進だと俺は思う。
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「い、痛いっ……」
「あれだけ足に負荷を掛けていたからねぇ、そうもなるよー」
俺は私室で寝転がっていた。というのも、普段は寝る時以外はほとんど座っているのだが、先ほどの訓練から帰ってきて、夕食を食べて風呂に入った後、ベッドにごろんと転がったが最後だったのだ。
つまり、いきなり筋肉痛に襲われたのである。気を抜いたからだろうな、と俺は思った。
それに関して、フェルメールも同意見なようだ。
「負荷って言っても、ただ走ってジャンプしていただけだぞ?!」
「そうだけどさ、普通のISはあんなところにスラスタは付いてないからねぇ」
「それはそうかもしれないけど……」
俺はうつ伏せになりながら、フェルメールと話をする。
ここからは見えないが、恐らく今は午後10時過ぎ。もうあと1時間かそこらしたら消灯の時間だ。
俺はずっとこの体勢で話していても疲れるだけなので、痛む足を我慢しながら身体を起こした。
そのままベッドの腕を四つん這いで移動し、端で足をだらんと下ろす。フェルメールも同じような体勢で、自分のベッドで座っているようだ。
格好は最近見慣れたか寝間着姿だが、まぁ、目に毒って訳でもないから良い。髪も普段は三つ編みにしているが、今は解いている。寝る時は解いているのだ。
「何にせよ、今日からISの実機訓練を始めた訳だけどさ、最初は浮くこともままならないのが普通だからね。あまり気にしないで」
「気にしてはいないんだがな……。やっぱりフェルメールも訓練を重ねて浮けるようになったのか?」
「そりゃもちろん。何時間も繰り返して、やっと浮けるようになるんだよ」
「へぇー」
俺はフェルメールに訓練を頼んで良かった、と改めて思った。
基礎体力トレーニングも、無理ないように限界を超える程度のメニューを作ってくれるし、今日のISの訓練だって効率を考えてああいう構成になっていたんだろう。
それに『フェルメールが空いている日だけで良いから、コーチしてくれないか』という頼み方だったのに、頼んだ日から今日まで毎日付き合って来れているのだ。
色々心配にはなるが、やっぱり体質みたいなアレを気にしているのだろうか。俺はそう考えてしまう。
「……ま、俺も頑張るよ。浮けるようにならないと、ジェードの特性も引き出すことは出来ないからな」
「うんっ!! その意気だよ!!」
「はははっ」
こうして夜は更けていったのだった。
この後も他愛もない話を消灯の時間になっても話していた。今まではこんなことなかったが、今日はなんだかフェルメールとの距離が近づいた気がする。
それにしても、フェルメールの語る『自虐ネタ』は面白い。両親と買い物に出かけた先で迷子になったが、両親が最初から最後まで気付かずに家に帰ってしまった話とかな。
大笑いしたら怒られてしまった。