「大佐、やっぱり出撃はやめた方が良いのではないでしょうか?」
私と共に機体の最終調整を行う整備兵が、不安そうな表情で私に出撃を止めるように提案して来る。私は包帯で左半分の視界が奪われているため、上半身を捻って整備兵の方を向き
「大丈夫、頭さえあれば動かせるから…体がこうなってても大丈夫」
そう言って、軽く笑って見せる私の姿は、一目見ても分かるほどにボロボロだった。上半身の内、左目や口元、左耳以外の全ての場所に包帯が巻かれ、下半身も包帯が巻かれていた。歩行すら満足にできないのだ。こんな状態で戦うなんて不可能なはずなのに…
「ブレイムならできるから」
ただそれだけの理由で戦おうとする彼は、仲間の為に…と言うよりもどこか死に急いでいる様にすら感じられた
「あ、あの…大佐?」
別に何か伝えようとした訳でも無く、自然と彼の名前を呼んでいた
「どうした?」
彼が私の方に向き直る、その時傷が痛んだのか彼が痛がるそぶりを見せる
「や、やっぱりその体で戦うのは無理ですよ!、今からでも遅くはありません、やめましょう!?」
と、私は彼は彼の方を持ちながら、出撃を止めようと頼む。しかし、彼は額に大量の汗を浮かべ、本当に苦しそうに顔をゆがめながら
「それでも…それでも行かなきゃならない…利用なんてない。どうしても…そう、どうしても行かなきゃならないんだ。俺が俺である理由が…もう
「ごめん、俺をあの中に行かせてくれ」
そう言って、彼は本当に清々しい笑みを浮かべました。何故あんな笑みを浮かべることが出来たのか、この時の私には理解できませんでした。……ただ
「ッ…!?」
本当に、悲しい人だなって…じゃあこの戦いが終わった後、彼には何が残るのだろうって…そう思って
「うぅ…」
気がついたら涙があふれて来て、私は彼に一言
「はい、必ず行かせて見せます」
そう、力強く応えました
「サイコ・コネクター接続確認。神経系とブレイムの駆動中枢へのリンク確保…起動再確認…問題なし。全兵装最終動作確認…完了」
私はてきぱきとブレイムの起動確認をしながら、彼のバイタルをチェックしていた。…やっぱりこんな状態で戦いに行けば彼は死んでしまう…けど
「私じゃ…彼の代わりにはなれない」
情けない、ふがいないと言う思いと悔しさで唇をぎゅっと噛みしめ、涙をこらえながら作業を続ける
「全行程終了ブレイム、カタパルトデッキへ移動」
クロノスとブレイムを固定する4本のアームがブレイムを持ち上げ、ゆっくりとカタパルトにブレイムを運ぶ。そして使い捨て方式のカタパルト(四方からアームでクロノスとブレイム本体を固定し、加速。そのまま船外にブレイムと共に射出される)に到達すると、ゆっくりと次世代型汎用MS戦闘母艦「ファルシオン」級のネームドシップ「ファルシオン」…そのブリッジ部分のみに搭載された唯一の前面カタパルトがゆっくりと開く
「大佐、ブレイムはまだコアの最終調整がすんでいません。20分以上の戦闘はコアが暴走する危険性がありますので、それ以上の戦闘は絶対にしないで下さい」
殿整備兵からの通信に分かった、と返す。その直後天井から現れたランプが発進を許可しない赤から、許可する青へと色が変わると同時に機体が急加速し、そのままカタパルトごと船外へと射出され、カタパルトが射出されると同時に外れ、クロノスのエンジンを点火させ、今だ砲火の止まぬ戦場へと飛び込んで行った
ノーサイドってかぁ…?、レフリーは…ここにはいねェよォ!!
チンピラまがいの連邦兵が学徒兵の乗るオッゴに真下から急上昇して捻りこむ用に急接近し、オッゴの目と鼻の先にまで近づき、明らかに興奮しきった声質で叫びながら手に持つマシンガンをっごへと向ける。私は反射的にやめろ、と叫んでGMをロックオンするも、このビグ・ラングに装備された武装ではオッゴごと殺してしまいかねない、そのままGMがオッゴへと構えたマシンガンの引き金を引こうとして
「そうだな」
全周波数で発せられたその言葉に続いて、目にもとまらぬ速さで後方からビグ・ラングの頭部横をかすめるようにして一機の見た事も無いMSが通り過ぎ、そのままGMの頭へすれ違いざまに巨大な鉄塊の如き鋼鉄の斧を叩きつけてあたまをごういんにひきちぎr、その反動でGMを回転させながら後ろへと吹き飛ばし、続けざまに機体後部に連結された巨大なブースターを束ねたコンテナのようなものに設置されたアームに装備された無数の重火器が弾幕を展開。先ほどまで数で圧倒していた連邦軍MS部隊を蹂躙し始める
「レフリーがいないのだ、多少の危険プレーは大目に見てもらおうか?」
そのまま後方で弾幕を展開する敵艦隊に一気に突撃を掛ける機体を、私は学徒兵らとともにしばらく眺めていた
「はっ!?、み、みんな散開するんだ!」
はっ、と意識を取り戻した私は学徒兵たちに散開を命じ、私の指示に慌ててオッゴ太刀がビグ・ラングを守るように散開する
「…あの声…」
かつてルウム戦役で、全くあてにされていなかったこちらに救いの手を差し伸べたあの男…確か名前は…
「カイト、カイト…バジュール…」
そう、南米撤退戦の最終局面であるパナマ撤退戦で
「何故…彼の声が…?」
操縦桿を握る手に自然と力を込めながら、彼…オリヴァー・マイ技術中尉はたった一機で連邦軍を翻弄する、死んだはずの男を見つめていた
「シネェェエエエエエエエエエエエエエエエ!!」
絶叫と何ら変わらない叫びを上げて、私は両手と一体化した、ジャイアント・ヒートホークよりの倍はあろう巨大な鉄塊の如き斧…ギガント・ヒートホークと一体化した、振るうにはあまりにも細すぎる腕でまるで棒切れのように軽々と振りかぶったギガント・ヒートホークを振りかぶり、そのままサラミスに叩き付ける、一瞬にしてサラミスが叩き付けられた箇所からVの字に変形し、そのまま両断され爆沈。更にクロノスに搭載されたサイコ・アームが装備するバズーカやマシンガンをばら撒いて直俺のGMやボールを次々と撃ち落とし、敵艦の艦艇部や機関部を集中的に攻撃して行く
「邪魔だぁ!?」
不用意に接近してきたGMを機体ごと回転させて勢いをつけたギガントを叩き付けて粉々に吹き飛ばして破壊し、そのままクロノスを最大加速にして無理矢理敵艦隊からの砲撃を回避し、そのまま宙返りをして機体を艦隊へと向けつつ一気に機体を最高速まで加速させ、艦隊の陣形中央を通り抜ける、通り抜けざまにマゼランとサラミスを艦艇部から艦首方向に斜めに両断して爆散させ、敵艦隊からの追撃を回避しつつ敵艦隊の真上から急降下しつつサイコ・アームのバズーカを全弾撃ち込んで3隻の敵艦を撃破し、更に撤退する友軍を強引に突破しようとしていた2隻のマゼランに斜め45度の角度でブリッジからギガントを叩きこんで両断し、撃破する
「ふぅ…ふぅ…」
呼吸を整えつつ友軍の撤退状況を確認すべくMAPを確認しそのままサイコ・アームに装備した武装のマガジンを交換しつつ敵艦の攻撃を回避しつつEフィールドからの追撃部隊を必死に食い止めるオッゴと巨大な赤色のMAの部隊に援護射撃として両腕のギガントをナノマシンに反して、ツイン・バスターライフルに再構築し、敵艦隊の中央部へと叩き込む。放たれた黄色の極太ビームが敵艦隊を一瞬のうちに飲み込み。風穴を開ける。そのタイミングで活動限界が5分を切ったことを告げるアラームが鳴り響く
「チッ!、早いな!?」
舌打ちしつつNフィールドからの追撃部隊の指揮官級が乗船する艦を狙ってツインバスターライフルを2度放ち、更に突出した敵に追加で2度放って勢いを削ったところにダメ押しとばかりに動きが鈍り始めた敵に放って陣形を乱して壊乱状態にまで追い込み、Eフィールドに居るMAたちへと飛ぶ
「どけお前ら!!」
通信でオッゴ達にどくように命令しつつ雲の子を散らす様にして道を開けるオッゴ太刀を通り過ぎ、そのままサイコ・アームで敵のMSとボールの混成部隊を可能な限り撃破しつつ艦隊と混成部隊からの弾幕を縫うようにして回避しつつ一気に敵艦隊へと迫り、敵艦隊の中に無理矢理突入して、ツインバスターライフルの連結を解除し、機体を回転させながら両手のバスターライフルを放って敵艦隊を壊滅させる。そのタイミングでコクピットをランプが真っ赤に染め、機械音声にて活動限界が1分を切ったことを告げる警告が発せられる
「…ここまでか」
私はツインバスターライフルを分解してマシン・タンクに再構築してクロノスに格納して、既に離脱したファルシオンへと撤退しようとしたところで、MAのパイロットから通信が入る
「こちらは第603技術試験隊所属、試作MAビグ・ラングパイロットのオリヴァー・マイ技術中尉であります」
「総帥府直属第1MS実験隊所属、ハルファー・フォン・デスピナ大佐だ」
MAのパイロット…枚の挨拶に自分も挨拶を返す
「デスピナ…けどこの声は…」
と、枚は何やら意味深に呟くも、機体の活動限界が近い私は
「すまんがこちらも急ぎのみでな、話の続きは本国でしよう」
とだけ言って、ア・バオア・クーを離脱した
この戦いの後、宇宙世紀0080 1月1日。ザビ家全員の死亡によりジオン公国は事実上崩壊、ダルシア・バハロを首相としたジオン共和国と連邦政府との間で終戦協定が結ばれる
そして…私は更なる地獄を見る