キシリア閣下より、ある指令が伝達された
「俺達はキシリア閣下の命令に従い、ルウムへと進撃する。今度こそ、楽しめると良いのだが…」
「どう思う?、今度の
同僚である「カータス・シュバッケン少尉」が、不安そうな顔で俺に話しかけてくる、ここは食堂の端、士官用の個室だ。ガラス越しに広大な宇宙を眺めながら、ハンバーガーとポテトを食っている。以外に美味いんだな、これが
「俺達末端の兵士がどうこう騒いだって、前線送りで殺されるか、懲罰大隊行きさ、俺達はただ敵を殺すだけの機械、それでいいんじゃないか?」
実際はあれこれ考えても馬鹿らしいと思ってるから何だが、それは言ったらめんどくさそうだから言わないでおく
「お前はそれで良いのかよ‥」
「言いも悪いも無いさ、俺達は軍人、軍人はただ命令に従うのみ。で、あれば…」
勢いよく席を立ちあがり、そのまま上着を羽織り、トレイを持って個室を出る
「そう言った疑問は覚えないもんさ」
そう言って、個室を後にする、残されたカータスは
「そんなの、機械とかわんねぇじゃねぇかよ…」
吐き捨てるように呟いたカータスは、そのまま持ち込んだウィスキーの入ったスキットルを一気に飲み干した
「綺麗だ…」
ワザとコロニーの一部を破壊して作ったデブリ帯の中で他の味方と共に隠れながら、主力同士による艦隊戦を見ていた。未だにドズル中将から命令は無く、俺達はうずうずしながら、すぐそばで繰り広げられる艦隊戦を見入っていた。文字通り雨の様に放たれる巨大な光とミサイルの撃ち合いにより、両艦隊の陣形は乱れ、綻び、崩れ、無数の光の玉となって消えて行く
「……?」
そんな中、一際大きな紫色の光が、一つ、遥か後方から連邦艦隊を襲う。しかし狙いは大きく外れ、光がとおった周辺にいた一隻のサラミスを、その余波で破壊した
「…凄いな」
あんなものが複数あるのなら、連邦軍との戦いもさぞや楽になるだろう
「…オペレーター、今の紫の光は何だ?、一体何処の部隊だ?」
ためしに、聞いてみると、以外にも第603技術試験隊とか言うのが使用している試作兵器だと言う返答が帰って来る
「通信は可能か?」
「可能ですが‥?」
よし
「じゃあ繋いでくれないか?」
「はぁ…分りました」
俺の嬉しそうな声に、困惑しながらも無線を繋げてくれるオペレーター、少しして、見慣れたオペレーターの顔から、別の女性の顔に代わる
「こちら、第603技術試験隊所属、ヨーツンヘイム」
「こちらは第15師団 第22独立MS大隊所属、カイト・バジュール少佐だ。そちらが先程放った試作兵器は、きちんと目標に命中しなかったように見えたが、何か不備でもあったか?」
オペレーターが返答に困ったのか、艦長らしき壮年の男性の方に向き、艦長…、と指示を乞うように言うと、まだ戦場慣れしていなさそうな青年と、いかにも堅物なインテリですオーラ満載の女性士官が出てくる
「こちらは、第603技術試験隊所属、オリヴァー・マイ技術中尉であります」
「同じく、モニク・キャディラック特務大尉であります」
「突然ですが、我々のヨルムンガント…あ、し、試作兵器は間接射撃指示が必要不可欠であります!、是非とも、そちらからの間接射撃指示を願います!!」
おおぅ、凄い剣幕だな…まぁ
「了解した。そちらに対して間接射撃指示を行う、心して聞かれたし」
「あ、ありがとうございます!」
「全軍、作戦を第2段階に行こうする、全部隊、直ちに攻撃を開始せよ」
司令部からの指示だった。……チャンス到来、しかもとびっきりのだ…!
「P-112、Y-221、Z-114、そこにマゼランが固まっている、よく狙え!?」
そのまま通信を切り、一気に連邦艦隊へと突っ込む、やっとこちらの糸に気づいたのか、パニックになったかのように陣形が乱れ、弾幕が張られる。だが
「そんな密集した状況で…!!」
そう、ここまで密集した状態では、いかに多数の対空砲を搭載したサラミスやマゼランと言えど、誤射を避けるように撃てば、十分な弾幕の網を張る事は出来ず、一隻、また一隻と喰われていく。そしてレーダーに一際強いエネルギー反応が、先ほどと同じ場所からこちら側へ向かってくる
「来たか…!?」
そう、例の技術試験隊が持ってきた、期待すらされていなかった試作兵器の一撃である。それはやや中央に位置するマゼランを中心に固まる一部隊と更にその周囲にいた数隻のマゼランやサラミスを破壊し、連邦艦隊に小さくない穴をあける。そこに集中砲火が浴びせられ、更に無数の味方が群がり、その穴を広げて行く。正直想像以上の破壊力である
「…おぉ…!、凄まじいな…よし、次のポイントはX-168、Y-221、Z-142だ!、外すなよ!」
ジャイアントヒートホークでサラミスを3分の1ほど切り裂き、そのまま引き抜きざまにバズーカをぶち込み撃破、そのまま大きく体を捻り、後方から俺に迫る3機の戦闘機を薙ぎ払うように粉々に吹き飛ばし、バズーカをその場に置き、ハイパーマシンガンでマゼランのブリッジからブリッジ真下の胴体部分、エンジンを穴だらけにして沈め、俺を狙って突進してくるマゼランにジャイアントヒートホークと交換したバズーカとハイパーマシンガンをばら撒きつつ、空になったバズーカをブリッジに放り投げ、足にマウントされたヒートホークを抜き取り、エンジンに叩き付け撃破、そのタイミングで試作兵器の第2射…いや第3射が飛来し、また10隻以上の敵艦隊を飲み込み、破壊していく
「…さて、こっからどうするか……」
ジャイアントヒートホークを回収しつつハイパーマシンガンの残弾を確認していると、他のマゼランと少し形状が違う青色のマゼランを視界に捉えた
「あれは…!?」
見間違うわけもない、あれこそ総大将レビルの座乗艦、「アナンケ」だ
機体を一気に最高速にまで加速し、そのまま通り過ぎざまにブリッジの真下にヒートホークをぶっさし、そのまま急上昇し、一回転して、そのまま捻りこむように降下、通り抜けざまにもう片方の足にマウントされたヒートホークでエンジンを損傷させ、航行不能にさせてから、直俺機を全て撃ち落とす。すると黒い3機のザクがアナンケから脱出しようとする一機の脱出艇を捕縛した。完全に美味しい所だけ奪われてしまった。…しかもご丁寧に3人で敬礼してきやがる、撃ちてぇ…!!、撃ち殺してぇ…!!
レビル捕縛によって指揮官を失った連邦艦隊は一気に崩壊、その3分の2以上を殲滅され、辛うじて残った僅かな部隊がルナツーに逃げ帰った。まさしく大敗北である
やっぱりルウム戦役ならヨルムンガンドは欠かせないよね