機動戦士ガンダム 「堕落の反逆者達へ~」   作:ヅダ神様

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強襲

「3番ゲートより零番機が出撃する。メカニックマンは退避急げェ!!」

司令所からの通達にあわただしく動く整備兵たち。それを横目に、俺は今回自分が乗る機体を眺めていた

 

「これがゲルググ用の強襲兵装か…」

通常のカタパルトでは接続できないため、専用のカタパルトアームを使って吊り上げられた斑緑のゲルググ。その姿は通常の物とかなり変わっていた。まず両肩には機体の頭部から腰辺りまでを覆えるサイズのシールドが取り付けられており、そのシールドの外側にはミサイルランチャーが3機ワンセットのものが2つずつ。計12本あり、内側にはザクマシンガン用のマガジンが一つずつ備わり。更に機体全体に追加装甲が施され、背部には大型のエンジンユニットと、その燃料タンクがむき出しの状態で一体化された大型のブースターユニットが取り付けられ、両足は正座した状態で、固定させるために太ももより下がドダイのような飛行ユニットに接続され。その飛行ユニットにはバズーカやマシンガンなどの各種武装がずらっと取り付けられていた

 

「またずいぶんとゴツいですね…」

隣で背部のブースターユニットや足の飛行ユニットの機体本体とのリンク確認を行っている整備兵にそう言うと

 

「なんでも、元はルナツーに対する単機での強襲ユニットとして開発され手た奴を、こっちで引き取って再設計したらしいですよ」

そう言って、整備兵は感慨深げな表情でをゲルググを眺めていた

 

「それでこんなゴツイ見た目に…でも、これだけの重装備に追加装甲。おまけに専用のシールドにブースターユニット。武装ラックも兼ねた補助飛行ユニットまで……こんな機体を採用したなんて話は聞こえないし。計画段階で凍結されたブラックリスト(実行されることなく計画段階で凍結されたMS、MA及び新型艦船の事をひとくくりにしてそう呼んでいる)の奴じゃないんですか?」

そう聞くと、整備兵は苦笑しつつ、後ろ頭を搔きながら

 

「ま、事実その通りっすね。けどまぁ、カタログスペック上はザンジバル級の最高速度の2.5倍は出せるそうなんで。これならソロモンまで30分もあればつけますよ」

 

「そっか…、ありがとう。じゃあ私は行くよ」

そう言って整備兵の方を叩き、私は地面を蹴ってゲルググのコクピットへと飛ぶ。すると整備兵は姿勢を正して敬礼しながら

 

「ご武運を」

と言ってくれた。その言葉から勇気を貰いつつ。私は彼に「必ず戻って来るから」と言ってコクピット前で待機していた整備兵にキャッチして貰い、そのままコクピットへと押し入れて貰う。私は有難うとその整備兵に礼を言って。ハッチを閉める。既に機体は稼働体制に入っており、後は格納庫から射出されるのを待つだけだ。そう考えた矢先、司令所のオペレーターから通信が入る

 

「パイロット。状態はどうだ?」

 

「問題ありません」

 

「よろしい。ゲート開放、メカニックマンの退避確認。ブースターユニットの起動は射出3秒後に行う。以降、機体の射出タイミングはパイロットに一任する」

 

「了解。カイト・バジュール、ゲルググ・シュマイザー。出るぞ!!」

直後、カタパルトアームが一気に機体を戦闘速度まで加速させ。ゲートから出る直前でロックを解除。私の乗る機体が宇宙へと放り出され。ブースターユニットが起動。凄まじいGによって体シートに食い込み、全身が押しつぶされるような感覚と痛みを前に絶叫しそうになる口を無理矢理歯を食いしばって抑え込み、オートパイロットを起動してソロモンへと向かう

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「良いかね、カイト君。今回の君の任務はソロモンへの救援だ」

出撃の1時間前、私は何時も通り博士からのブリーフィングを受けていた

 

「ルナツーより出撃した連邦艦隊は、ソロモンへと進路を取っている。貴官には連邦艦隊に対しての攪乱、及び遅滞戦闘を行ってもらう。その後。しかる後にソロモンに後退しろ。ただし、今回戦闘が予想される宙域はこの施設からあまりにも離れ過ぎているため、この施設を発進後、ソロモンに帰還するまでの間は一切の通信は出来ない。…まぁ、多少いつもと違うが。やることは同じだ、気楽にな」

そう言って。博士はいつも通りこっちの事ちゃんと考えて言ってんのか?。と、そう考えずにはいられない、何時も通り無責任オーラ満載の歪な笑顔をしてくれた

 

 

 

 

 

「…どう考えても単機でやる数じゃねェな」

あの時のブリーフィングでの言葉を思い返しながら。最大望遠で捉えた連邦艦隊を見つつ俺はそう溢した。宇宙要塞ソロモンを攻略するための艦隊と言う話だったから。相当数の敵艦がいる事は想像できたが、まさかこれほどとは…

 

「連邦軍の国力は凄いな……」

と、素直な称賛の言葉を述べながら。俺は下の補助飛行ユニットに搭載された牽引用のワイヤーを使って運搬していた。このゲルググより少し大きいくらいのサイズの小惑星から牽引用のワイヤーを外すと、そのまま小惑星の後ろに回り、両手を小惑星につけ。一気にブースターユニットを最高速度にまで上げ

 

「射程まであと5…4…3…2…1…0」

0と同時にトリガーを引く。直後、両肩のシールドに取り付けられていたミサイルランチャー12発が全て発射され、ランチャーの発射機がシールドから外される。発射されたミサイルは真っ直ぐに連邦艦隊の前衛部隊へと真っ直ぐに突き進む

 

「さ~て。これでこの小惑星を衛星ミサイルかなんかだと思ってくれるかな?」

と、私は博打でもするような気持ちで連邦艦隊がどう対応するのかを眺めていた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「レーダーの誤認じゃないのか!?」

自室で休息を取っていた地球連邦軍第3艦隊の司令官であるワッケイン中佐は、突如としてブリッジの当直オペレーターから飛び込んできた敵襲の報に慌ててブリッジへと向かい。状況の把握と掌握のためにオペレーターに怒鳴る様に確認した

 

「い、いえ!。確かにミサイルです!。先ほど速度を上げて艦隊の正面から突入してくる小惑星から発射されました」

と、オペレーターは艦隊と小惑星の侵攻ルートを床ののスクリーンに映し出す。確かに小惑星から複数のミサイルと思われる飛翔体が、艦隊の前衛部隊目掛けて直進してくる様子が映し出される。ワッケインはその事実に舌打ちしつつ、直ちに迎撃を命じる

 

「今すぐあのミサイルを撃ち落とせ!。それとあの小惑星も破壊するんだ!」

すぐさまワッケインの命令に従い、数席のサラミスがミサイルへと弾幕を張り、その後方から2隻のマゼランが少サラミスの少し前に出て小惑星に対してメガ粒子砲を使い砲撃を敢行。一瞬のうちに小惑星は爆散。飛来したミサイルも全て迎撃できた。脅威がさっとことに安堵したワッケインがほっと胸をなでおろした次の瞬間。オペレーターがそれを撃ち壊す次なる悲報をもたらした

 

「ッ!?。MSらしき物!。先ほど破壊した小惑星より突如として出現!!」

その言葉に何!?。と驚愕の声を上げながらも。ワッケインは素早く敵MSに関する報告をさせた。そのタイミングで先ほどミサイルと小惑星の対処に当たったサラミスとマゼランが砲撃を開始。ワッケインの体はオペレーターから砲撃を行うサラミス達へと向きながらも。オペレーターから必要な情報を聞き出していた

 

「何機だ!?」

 

 

「1機です!。1機ですが…は、速すぎます!!。高速艦並みのスピードでこちらに接近中。会敵まであと15秒!!」

オペレーターの言葉に反射的に戦闘配置の号令を出す

 

「総員第1種戦闘配置につけ、全艦対MS戦用意!。MS隊緊急発進急げ!!」

しかしワッケインがその号令を出した次の瞬間。MSの迎撃を行っていたマゼラン2隻が爆散。続いて艦載砲クラスの大きさの緑色のメガ粒子がその後方で弾幕を張っていたサラミスを全て薙ぎ払う。その光景にワッケインを含めたブリッジクルーは皆絶句し

 

「………はっ!?。何をしている!。対空砲火はどうした!?」

と、周りの物を叱咤する。それによって意識を取り戻したブリッジクルーたちは慌ててワッケインの命令を艦隊に伝達する、しかし、その時点で先ほど撃破されたサラミス達と合わせ、既に20隻近い艦艇が撃破され。独断で出撃したMS隊がたった1機のMSを相手に翻弄されていた

 

「あのMS隊を掩護するんだ!、全MS隊発進急げ!!」

翻弄されるMS隊を指さしながらワッケインが命令を下し、MS隊が順次発進を開し、更にワッケインのマゼラン以外の艦艇も遅れながら対空砲火を始める

 

「バラバラに撃つな!。10隻単位の小部隊に分かれ相互に連携しながら敵機に対して弾幕を張れ!!」

ワッケインの命令を受け。10隻単位に密集しつつ、相互に連携できる程度に艦隊は散開しはじめる。そして

 

「MS隊は敵を艦隊のクロスファイヤポイントに追い込むんだ!」

ワッケインの命令通りにMS隊は犠牲を出しながらも、敵機を懸命に追い立て。そして

 

「敵機。艦隊のクロスファイヤポイントに来ます!。後10秒!!」

オペレーターからの命令に思わず小さくガッツポーズを作りつつワッケインは

 

「よし!。全艦敵機がクロスファイヤポイントに入り次第一斉射だ!」

と。号令を下す。そして、敵機がクロスファイヤポイントに入ると同時に。文字通り雨の如き弾幕が放たれ。完全に回避する隙間もない中。ワッケインは敵機を撃破できると確信した。が

 

「…甘いな」

敵機は突如として取り出した量手持ちの大型のライフル…と言うより大砲のような物を取り出すと。そこから先程サラミス達を撃沈せしめた阿野メガ粒子を放ち。そのまま弾幕ごと艦隊を薙ぎ払う様に1回転する。

 

「ッ!?。か、回避ィ!?」

ワッケインの悲鳴とも絶叫とも取れる命令が下されるよりも速く、操舵主は素早く舵を切って艦に回避行動をとらせ、僅かに艦種が蒸発する程度の損害に留めて見せた。が、僚艦は回避しきれずにビームによって艦を真っ二つにされ爆沈。その衝撃波によって艦が大きく揺れ、ワッケインはその場に倒れる

 

「ぐわッ!?」

 

「艦長!?」

倒れるワッケインを心配し、何名かのクルーが持ち場を離れてワッケインを起こそうと駆けよって来るが。ワッケインは一喝してそれを止め。持ち場に戻るよう命令した後。帽子を拾いつつ倒れた際に打った右側頭部を抑えつつ

オペレーターに

 

「か…艦隊の被害は?」

と聞く。直ちにオペレーターが情報を収集し。簡潔に報告してくれた

 

「先程の一撃で艦隊は半壊状態です。残った艦艇も3分の1近くが戦闘不能ないし航行不能状態となってしまいました。出撃したMS隊は健在ですが、このままでは全滅かと…」

その報告に苦虫をかみつぶしたような表情を取りながら、ワッケインは

 

「後退命令の発行信号を上げろ。予備のMS隊を出して直俺に着かせる」

力なく発したワッケインの命令に、オペレーターは

 

「で、ですが…!」

と、今一度再考するよう提案した。なぜならこのタイミングで交代すると言う事は。航行不能な状態の艦艇や。沈んだ船の乗組員たちを見捨てると言っているような物だったからだ。しかしワッケインはそれを拒否し

 

「このままではどの道全滅だ。ならばここは後退して後方の増援と合流後。しかる後負傷者や損傷艦の救援を行う。これは命令だ。こうしている間にも味方が死んでいる。早く命令を遂行したまえ」

最後の方は声が僅かに震えていた。それだけで。ワッケインがどれほど考えた末の苦渋の決断であったのかは簡単に理解できた。だからこそオペレーターはそれ以上何も言わず、他のクルーたちもまたオペレーターと同様何も言わずに命令を遂行し、発行信号を打ち上げ、後方に控えていた予備のMS隊が艦隊の直俺に着き、統一された軍隊とはとても呼べないが、それでもなんとか最低限の統率を保った状態で交代を開始し、敵機と戦うMS隊は観方の後退を支援する為、壁となるように展開。そのまま睨み合いの状態のままMS隊はじりじりと下がり。そして突如として敵機はMS隊に背を向けると。ソロモンの方向に向かって飛んで行ってしまった

 

「……」

突然逃げ去って行った敵機が飛んで行った方向をしばらく眺めた後。艦隊からの帰投命令を受け。MS隊は後退し。戦闘は終了した

 

 

 

 

 

 

「この後。生き残ったMSパイロットの1人がこう話したと言う」

 

 

「俺は何度もジオンのMSと戦ってきたが。あんな戦い方してる奴は初めて見た。まるで機械みてぇに無慈悲に仲間を殺して行った。まるで殺人機械《キリングマシーン》だったぜ」

このパイロットの言葉から。あの敵機は殺人機械(キリングマシーン)と呼ばれ。戦場で出会えば生きて帰れないと噂され。連邦パイロットたちに畏れられる事となる


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