「これにより地球方面軍の指揮系統は崩壊。連邦軍が各地で大規模な攻勢に出る。………そしてそれは俺達がいるこの中米例外ではなく」
《/center》「パナマ攻略ヲ目標トシタ連邦軍ノ大部隊ガジャブローヲ出発ス」《/center》
「との報がパナマ基地司令部に届く。これを受けパナマ基地基地司令兼南米方面軍司令官の「ハヴォック」准将はヤビサを中心として建造された要塞線「パナマライン」に全兵力を集結、連邦軍の撃退を計る」
「弾薬積載量の確認…チェック、各システムの起動再確認…チェック、通信システム…あ~あ~テステス、ルーキー聞こえるか?」
格納庫内で機体の最終チェックを行っていた俺は、最後に残った通信システムの確認を行う為ルーキーに回線を開く、するとスクリーンの左端にブラックアウトしたままのウィンドウが表示され、すぐにルーキーの顔がウィンドウに表示される
「どうかしましたか?」
「いや、ちょっと通信システムのチェックをな」
「そうでしたか、丁度自分も中佐にチェックを兼ねた通信を入れようと思ってました」
「おいおい、部下が上官をモルモット扱いするのか?」
「いッ!?、いえ!、そんなつもりは毛頭ありませんです!、はい!!」
「ハハハ、冗談だよ、冗談」
「中佐、第1種戦闘配置中ですよ?、他愛のない会話は慎んでください」
「分かったよ中尉」
「中佐、出撃準備完了。指示を」
「待機だ、セプト中尉」
ラークとセプト中尉の2人もこちらに通信してきたため、ウィンドウが3つになってしまった、こうなるとスクリーンの左右が大分見にくくなってしまう。が、今は置いとく
「こちらCP、ドーン01、応答せよ」
今度はウィンドウは開かれず、簡易回線での通信が入る。俺はすぐさま意識を切り替える
「こちらドーン01。CP、どうした?」
「これより作戦の最終確認に映る。第2小隊総員傾注」
その言葉に他の3人も意識を切り変え、オペレーターの言葉を一語一句逃さず聴き取ろうと神経をオペレーターの声と耳へと集中させる
「…現在ガウ攻撃空母8機からなる急襲部隊が敵本隊中央部に向け飛行中です。強襲部隊の目的は敵司令部の撃破、ないし損害を与えて進軍を停止させ。パナマラインの防衛態勢を整える猶予を稼ぐことです。回収作業は不可能なため、自力での帰還をお願いします。…以上です、質問は?」
誰も口を開く事は無い。分かり切った事だ、ようは時間稼ぎのために死んで来いと言われたのだ。ま、しゃーない。誰かがやらなきゃならん仕事だ
「降下30秒前に空爆を敢行し、撤退時のルートを開きます。その後、衛星軌道上から30分間、敵軍の混乱が回復しないよう軌道爆撃を行います。そのため作戦時間は機動爆撃が終了うするまでの30分間のみ、それまでに主目標を達成して帰還して下さい。降下まで後1分」
「全機、ロック解除、兵装の最終確認」
部下にそう命じて機体を固定する格納庫のハンガーの固定ロックをすべて解除し、ハンガーに固定されている装備を取り出し安全装置を解除。コンソールを操作して火器管制とリンクさせる
「降下30秒前、全機空爆開始」
直後、格納庫内が僅かに揺れる、おそらくガウが機体下部のハッチを開いたのだろう
「降下15秒前、ハッチ開放。全機降下準備」
格納庫の扉がゆっくりと開かれ、外の景色と共に強い風が格納庫内へと入って来る。時刻は夜の12時、僅かな月明かりと星々の光のみが照らすこの夜の世界に、俺はまた見惚れてしまう。何せコロニーじゃ二度とお目にかかれない光景だ、しっかりと目に焼き付けておく
「降下5秒前」
「よっしゃぁ!、行くぞッ!!」
熱核ホバーエンジンは起動せず、足を使って開き切った格納庫の扉へと向かって走る
「えぇ!?、中佐ぁ!?」
「全く…行くぞルーキー!」
「…中佐に続きます」
他3人はそれぞれリアクションを取りつつ俺に続いて格納庫の扉へと走る
「2…1…0、全機降下開始」
CPが作戦開始を告げるその降下命令と共に一番に飛び出した俺は、雲よりも高かったが為にまず雲の中に入った。一瞬のうちにスクリーンが真っ白になり、MAPに頼るしかない状況…はものの10秒ほどで終わり、眼下に燃え盛るジャングルと、パナマへと進撃する連邦軍第8軍が見えた、仕事の始まりだ
「3500…3000…2500…2000…1500……」
背中のランドセルのスラスターを使って徐々に加速させつつ、高度計で減速させる高度を見極める。が、1500を切った瞬間MAP上を赤い点が埋め尽くし、敵からの攻撃を告げるアラームが鳴り響く。直後、周囲の空で無数の爆炎が発生し、機体を激しく揺らす。コンピューターがすぐさま原因を分析し。地上部隊からの対空砲火であるとの結論をスクリーンの中央にデカデカと表示して来る。邪魔ァ!?
「クッソ!、予定よりちと遅いが…!、その分密度が想定より多い!?」
今回は降下用の増加装甲を装備しているが、はっきり言って敵の対空砲の直撃を受ければ機体が持っても俺が持たない
「神様……お願いだから俺と部下には当てないでくれよ…!」
「全機状況報告!」
「こちらドーン、02問題なし」
「こちらドーン03、敵対空砲火による被弾は今のところ皆無。作戦行動に支障なし」
「こ、こちら…うわっ!?。あ、ど、ドーン04!、問題なしです!?」
「全員無事だな!?、このまま予定通りポイントL74に降下する!」
高度計が表示する高度が目標高度に達すると同時に一機にスラスターを全開にして落下速度を下げつつ、俺は丁度よく降下ポイント内にいるMSの上に乗った。…と言うよりある程度落下速度を下げた後そのまま敵MSに突っ込んだ、そう言った方が良いだろう。そのまま敵MSはバラバラになりながら大きく吹き飛ばされ、爆散。俺は着地と同時にMAP上に表示された敵マーカー目掛けてMMPをばら撒き、手近な敵艦へと155mmを打ち込む。そのタイミングで他の3人も降下し、各々が目標と定めた敵を攻撃していた
「中佐、周辺の敵部隊にある程度の損害を与えることに成功。このまま目標へ向かうべきだと判断します」
直接回線でのセプト中尉の進言に頷いた俺は、各機に手信号で進軍を指示してそのまま目標へ向かって走り出す。が、すぐに敵の攻撃が飛んでくる
「各機散開」
そう手信号で命令しつMMPで攻撃してくる敵へと反撃する。少なくとも攻撃が飛んできた方向には6つの敵反応があり、内4つは目視にて確認できた。MSだ、確か陸戦型GM(以降陸GMと呼称)とか言われるやつが1機に、GMとか言われる凸字みたいな形状のバイザーをつけたMSが3機、後は61が2両、そこそこ豪華な編成の小隊のようだ
「各個に応戦せよ」
手信号でそう命令し61めがけて155ミリを正射。しかし61は戦車とは思えないような軽快な動作でかわすと、そのままもう1両の61と共に距離をとりつつ反撃してくる、中々に腕の立つ戦車乗りが乗っているようだ、その事を素直に賞賛しつつMMPを戦車の進行方向のほうから戦車の方へ向かうようにばら撒いて撃破、お返しとばかりにもう1両の61が攻撃してくるのでそれを回避し、バズで地面ごと吹き飛ばす
「ん?」
バズのマガジンをシールド後ろに取り付けられた散弾と交換しれいると、陸GMが手に持つマシンガンを撃ちながら接近してくる、それをシールドで防ぎつつバズを腰の後ろ側のアタッチメントにしまい。腰のアタッチメントに装備されたヒートサーベルを左手で引き抜き、構える(前回の戦闘の後、急遽俺の要望で追加させた)。陸GMもマシンガンを捨て、もう一本サーベルを抜いて、まず左手のサーベルを横なぎに振るう、それを逆手で持ち替えたサーベルで受け止め、そのまま頭部へMMPを構え、引き金を引く。が、陸GMは素早くMMPを持つ右手の肘を狙ってサーベルを振るう
「うぉ!?」
反射的に機体を大きく回すようにターンすることで回避するも、MMPが真ん中から切り飛ばされる。
「しまっ!?」
素早くMMPを放り投げる。その直後にMMPは爆発し、これで残る飛び道具は腰の後ろ側のアタッチメントに直したバズと肩の155ミリのみとなる。正直言ってかなりヤバイ、しかしこの焦りを悟らせないようもう一本のサーベルを引き抜き、正面でクロスさせるような構えを取る
「……」
後ろへと素早く移動した陸GMは、油断なく両手のサーベルを逆手に構える。俺もそれに応え、2期の間に不気味な静寂が訪れた。が、それも束の間、2機の丁度間に飛来した1発のロケット弾が起こした爆発を合図に、陸GMが凄まじい速度で俺へと迫る、俺は両肩の155mmを陸GMへと斉射する。が、陸GMは機体各部のスラスターを利用して素早く155mmの弾道から機体を逃がし、155mmが通り抜けた後にすぐさま戻る
「上手い…!?」
興奮しながらそう言った俺は、素早くリニアシート正面から見て左側、計器類の中に紛れた一列のスイッチを上から全て押す。すると155mと弾薬庫の固定ロックが外され、155mmと弾薬庫は地面へと落下する
「全機、無線解除」
俺がそう命令を発してからわずか5秒で3人分のウィンドウが開かれ。3人の顔が表示され。それとほぼ同タイミングで陸GMが俺へと左手のサーベルを振り下ろしてくる。それを右腕のサーベルで受け止める
「ッぐぅ…!?」
振動が機体を震わせ、コクピット決して弱くない強さで揺さぶって来るが、そんな物で動揺はしない。俺はそのままウィンドウに表示された3人を見ながら怒鳴る
「俺がコイツと他のMSを抑える!、お前らは目標へ向かえ!!」
そのまま陸GMを吹き飛ばし、そのまま着地した瞬間を狙おうと駆ける
「ですが一人で4機も相手にするのは危険です!、こいつら…!」
「黙って行けッ!!」
ルーキーの言葉を遮る様に怒鳴りつつ、今まさに着地しようとしていた陸GMへと両腕のサーベルを大きく振りかぶる。が、しかし向こうもそれには気づいているようで、着地する瞬間に背中のスラスターを全力で吹かして後ろへと飛ぶ
「何!?」
おかげで俺の攻撃は完全に空振りに終わり、その大きな隙を突くように側面から2機のGMが俺へと手に持つマシンガンで攻撃してくる。それを熱核ホバーエンジンの機動力と旋回性能で無理矢理回避しつつ、思わず
「チッ!?、ルーキーたちじゃ抑え切れなかったか…!」
しかし、それは同時にルーキー達がフリーになった事を告げていた。ならば…!
「作戦時間は限られてるんだぞ!?、いいからさっさと行けッ!!」
大きくひり被られた陸GMの攻撃を弾き飛ばしながら怒鳴る。この時点で降下してから約10分が経過していた
「何!?、ウォッカスが!?」
深緑に深い青色のまだら模様のカラーリングと頭部にサメのペイントが施されたドム。…ジオンの死神と恐れられるジオンのエースパイロット「カイト・バジュール」が乗る機体へサーベルを構えたまま、俺は部下からの報告に動揺を抑え切れずにいた………そんな…あのウォッカスが…
「は、はい…やけに動きの速いドムがいて、あっという間にやられました…」
涙声で部下がウォッカスの最後を話してくれる、本当はアイツの死を悲しみ、涙を流したかった。……だが今は戦場にいて、敵と対峙している。なら一人の友として友人の死を悲しむよりも、隊長として、部下を指揮しなければならない。そう自分に言い聞かせながら。俺はもう1人の部下に
「他の敵は?」
と聞いた。すると
「他の敵は司令部の方へ向かいました、敵部隊と合流しようとしているのではないかと…」
と返してくる
(逃がした…か。……なら…)
「ここで死神を叩く、各機。援護を」
俺がそう言うと、2人分の了解、と言う言葉が聞こえてくるので、そのまま一気に機体を死神へと向かわせる。死神は迎え撃とうとするも、左右に移動した部下の攻撃に追い立てられ。迎撃の体勢を整えれずにいた。その隙を逃さず、もっとも確実に殺れるタイミングで一気に懐へと潜りこみ、そのまま両腕のサーベルで胴体と頭部を狙う
「取った!」
しかし、死神は
「しまっ!?」
殺られる!?、そう直感的に理解した俺は、ぎゅっと目を閉じた。が、部下の1人がシールドタックルで強引に俺から離そうとするも、容易く回避され、逆にガラ空きとなった脇腹にカウンターをいれられそうになるも、もう1人の部下の掩護射撃に阻まれ失敗。そこに体勢を立て直した俺が振り上げた2本のサーベルを全力で振り下ろす。それを死神は右手のサーベルで受け止め。そして、…何故か左手のサーベルをしまう
「うぉぉおおおおおおお!」
一体何の意図があってしまったのかはわからないが。このまま一気に押し切ればいいだけ…!、勝てる…。勝てるぞ…!
「隊長!、このまま仕留めます!!」
「ラーバッツ!?」
ラーバッツと呼ばれた俺の部下が、手に持つマシンガンを死神へと向ける。が、鳴り響いたのはGMが持つ100mmの乾いた発砲音の連続ではなく。死神が
「ッ!?、ラーバッツ!?」
まるでハチの巣のように機体が穴だらけとなったラーバッツのGMは、そのまま仰向けに倒れ。爆散した
「ラーバッツ!!」
爆散した機体の方を見ながら俺がそう叫んだ直後、凄まじい衝撃が俺を襲う。まるでミキサーでシェイクされたかのように視界が激しく揺れ、一際激しい衝撃と共にそれが終わる
「ガハッ…!?」
衝撃で肺の中の空気をすべて吐き出した。何も分からない。耳鳴りがする、……あれ?、何で何も見えないんだろう…?、一体何がどうなったんだろうか……?
「このぉ…よくもッ!!」
微かに聞こえた部下の声が俺の意識を呼び起こす
「ぐ…ぅ……」
視界が徐々にはっきりと世界を写し始め、機体のダメージが危険域に入ったことを知らせる紅い光がコクピット内を寺師、至る所から火花が飛び散っている。そして
「このッ!、くそッ!?」
大量のノイズと至る所がブラックアウトしたスクリーンに映る部下と死神の戦い。それを見た俺は、部下を助けようとレバーを動かそうとし、気付く
「…?」
自分の左腕にコクピットの破片が突き刺さり、動かせなくなっていた事に。そして…
「がぁぁああああああああ!?」
今まで経験した事のない、言葉で言い表す事すらできないほどの激痛が俺を襲う。
「ぐぅゥ…!、クッソがァァ…!!」
引き抜こうと破片を掴むも、抜こうと力を入れた瞬間。さらに激しい痛みが俺を襲う。額に嫌な脂汗が流れ、今にも吐きそうになるが。部下を守る為、そう自分に言い聞かせながら一気に破片を引き抜く
「ぐぁぁぁ…!?、ぐぅ…ガッ・‥‥はぁ…!、はぁ…!!」
引き抜くと同時に俺を襲った余りの激痛に意識が遠のく、それを傷口を殴ることで強引に意識を覚醒させ、最低限の応急処置……止血と救急バンテージ(アムロが肩に開いた傷を塞ぐために貼ってたやつ)を貼る。しかし次の瞬間
「うわぁぁぁあああああああ!?」
最も聞こえて欲しく無かった声がコクピット内に響き渡る。見れば左腕を切り飛ばされ、地面に倒れ伏す部下のGMへと死神がジャイアント・バズを構えていた
「止めろ…!」
しかし俺の声は聞こえない、そのまま死神はジャイアント・バズをしまい。GMへと手を差し伸べる
「ッ!?、な、何を…?」
突然行動に困惑する俺と、困惑しながらもその手を取る部下、そして
「貴官らは実によく戦った。その健闘を讃えよう」
やや成熟しながらも、少し若い男の声が聞こえてくる。訳が分からないまま
「あ、ありがとうございます…」
と、状況を飲み込めず、死神の称賛の言葉を素直に受け取る部下
「うん、じゃあ……」
そう言って、GMの手を握ったまま、もう片方の手でサーベルを天高く振り上げる死神
「死のっか?」
そう言うと同時にサーベルをコクピットへと突き刺し、抉るように切り裂く
「は…?」
そのまま部下のGMは爆散し、燃え盛るスクラップへと変わる
「イェーガン!?。ッ!、クソがッ!、絶対に…絶対に殺してやる!!」
そして、ゆっくりと頭部のモノアイを俺へと向けた死神はそのモノアイを光らせ。そのタイミングで先程死神のもとを離れたの3機のドムが死神を元に戻って来る。そしてその周囲を2~30機のMSが通り過ぎて行く。全てジオン製のMSであることから。降下してきた敵部隊だろう
「運が良かったな…」
先ほどの若い男の声が聞こえてくる。どうやら俺に対して言って来ているようだ
「絶対に殺してやる!…絶対に…殺してやるッ!!」
反射的に激しい憎悪と憎しみの込めて死神へ叫ぶ。それに対し、鼻で笑いながら
「貴様じゃ俺は殺せん。諦めて軍を辞める事だな‥」
そう言って、3機のドムと共に通り過ぎて行った降下部隊の後を追って、燃え盛るジャングルの中へと……死神は消えて行った
「…ッ…ッ……」
俺はその後ろ姿をに居ら見続けながら、痛みと言いようのない胸から来る何かに押しつぶされるような感覚を味わいながら。声を押し殺して泣いていた
その後救助された俺は、司令艦を始めとした艦隊が半壊したこと、後続の第11軍の到着を待って進撃を再開する事を知らされ。確信した。連中が何故あれほど無謀な行動をとったのか…その狙いはこれだったのだ……
「ッ……」
気が付くと俺はまた泣いていた、何で泣いているのか?、理由は分からない…だが
「……絶対に殺してやる…!」
この胸の内で煌々と燃え上がるこの復讐の炎が何故生まれたのか、その理由だけは…確かに覚えている……
追記
ご指摘を受け。ガルマ・ザビに関する記述を追加しました