機動戦士ガンダム 「堕落の反逆者達へ~」   作:ヅダ神様

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オペレーション・レッド 終章

「…うぐっ…!、ちゅ、中佐…!」

半分以上がブラックアウトし、残るスクリーンもモザイクまみれで良く外が見えないスクリーンにセプト少尉の顔がウィンドウ越しに見えた、ヘルメットを外した彼女の銀髪は半部以上が血まみれとなり、顔の半分近くが頭から流れた血によって真っ赤に染まっていた。無論、パイロットスーツも血まみれである

 

「少尉…お前のドムは…まだ動くか?」

朦朧とする意識の中、俺は力の無い声を出した。少尉は不安そうな顔をしながらも俺の問いに答えてくれた

 

「…両腕は使い物になりませんが、脚部は無傷ですので動けます」

少尉の答えに安堵した俺は

 

「そうか、では少尉。逃げろ、これは上官命令だ」

彼女に逃げるよう命令した

 

「ッ!?、そっ!、そんなことできるわけ…!?」

 

「行け!、これは命令だ!!」

残った力を全て振り絞り、叫ぶ。その衝撃で俺は血を吐き出し、軋む体に苦悶の声を上げた。その様子を見て、尚少尉は俺を救出しようとこちらに向かってくる。それをサーベルを彼女の機体の足元の突き刺さる様に投げる事で止める

 

「頼むッ!、行ってくれぇ…!!」

体中に突き刺さった破片による痛みと出血は、止血剤と痛み止めによってある程度緩和できた。が、体中の異物感とそれによって生じるは吐き気や気分の悪さは収まらず、俺は胃の中身と共に血を吐き出しながら。少尉に叫んだ

 

「ッ!?」

 

「はぁ…はぁ…、お、俺なら…俺なら大丈夫……大丈夫…だから…な?」

自分と少尉に言い聞かせるようにそう言って、俺は精一杯の笑顔を見せた。それを見て、少尉が何を想ったのかはわからない。だが

 

「了解…しました…」

そう言って、彼女は敬礼して通信を切る。そして、ゆっくりとドムは本隊のいる後方へと退却を始める。それを見て

 

「ふっ…、終わったな……」

何が終わったのか、何に対してそれを言ったのか。もう分らないが、俺は笑って機体を起こした、起こそうとした瞬間。ダメージコンソールがエラーを吐き出し、機体が軋む、先ほどからバチバチと火花が散っていたが、今度はコクピット内のあらゆる箇所から火花が飛び散るが。とりあえず無視してマシンガンを構える。既に左腕は粉々に吹き飛び、両足の熱核ホバーエンジンはいつ爆発しても何らおかしくはない、数十カ所の被弾痕と、切り裂かれた事によって頭のてっぺんから2割ほどビームサーベルで切り飛ばされた頭部。……ほんっと、自分でも不思議に思うんだが、良く動いてるな、この機体

 

辺りには燃え盛る基地施設とスクラップに変わった敵の61やつい最近戦ったそれらしきもの、確かザニーとか言ったか?、そのザニーと全く違う。明らかな地上戦闘用の重装甲のMSが2種類、頭部の目が凸字型のバイザーが、人間っぽいかの違いだが。それらが約50…いや70程か、最新鋭機とは言え、よくもまぁこんだけ殺れたもんだ、我ながら自分で自分をほめちぎりたいね。帰ったら間違いなく勲章ものだ

 

「さて、後1分半で到達する敵本隊はこの数十倍の数が想定される。ま、精々突っ込んで負けようかな?」

何て事を言いながら、俺はザクマシンガンを始めとした武器や弾薬を集めた。そして

 

「投降せよ!、最早貴官に勝ち目はない!、逃走も不可能だ!。無駄な抵抗をやめて降伏せよ!!」

 

敵本隊の旗艦らしきビック・トレーからの投稿勧告が来る。俺は、それに対して

 

「はっ!、ク タ バ レ!!」

そう言って一気に敵陣へ突っ込む、敵は待ってましたとばかりに艦砲や爆撃、銃火器によって俺を迎撃してくる、それを可能な限り少ない動作で躱し、防ぎ、そして、ある程度の距離で拡散ビームを敵へと放つ、まばゆい閃光が敵から目を奪う、俺はそのまま目につく敵すべてに右手のマシンガンをぶち込み、弾切れになると同時に一機のMSの両腕を破壊し。コクピットに直撃しないよう気を付けながら胴体にシールドのスピアをぶっさし、ついで両足も切り飛ばす。そして

 

「さぁ撃ってみな!、コイツごと俺を撃てるならな!!」

そう言って、俺はそのMSを盾にしつつじりじりと下がる。一応高濃度のミノフスキー粒子入りのスモークグレネードが十分な数あるものの、それを使ってもとても逃げ切れるとは思えないほどに敵との距離は近かった。ので、俺はシールドに突き刺したMSを背中に回して全力逃走を開始した。が。敵のビック・トレーが砲撃を開始した

 

「味方ごと撃つのかよ!?」

一瞬この人質を捨てようとも思ったが、ビック・トレー以外は特に撃つそぶりすらも見せなかったので、これを背中に抱えたままとにかく全力で逃げる

 

「(あともう少し!、あともう少しで基地を抜けれる…!、あの遠くに見えるジャングルでスモークを使えば逃げられる…!。逃げてやる…!、俺は…!、俺には…!、まだッ!!)」

 

「うぉぉおおおおおおおおおおおおおおお!!」

気力を振り絞るように雄たけびをあげ、全力で逃げる。そして、基地のゲートを突破した次の瞬間、爆発音とともに俺の機体が前のめりに倒れた

 

「ッ!?、がああぁぁぁぁあああああああああああああああ!?」

凄まじい衝撃と共に世界が何度も回転し、衝撃でスクリーンや既に破損されていたコクピットの壁が砕け、破片がコクピットスーツやヘルメットのバイザーを突き破り、文字通り体中に突き刺さる。機体がレッドゾーンに入ったことを告げるアラーム音が鳴り響き、至る所から火花が飛び散る。そして

 

「グッ!?、がぁぁぁああああああああああ!?、ああぁぁぁぁぁあああぁぁぁっぁっぁああああ!?」

その衝撃は俺の傷口をえぐり、脳を揺らした、何がどうなってなんで?こんな…

 

「………」

………ここは…

 

「…………」

……………ここは…何処だ…?、俺は死んだのか…?、分からない、何も見えない、何も聞こえない。……あ、光が見えた。なんだろう?。まぁどうでもいいか、今‥俺は…とても……眠いんだ………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………」

 

「目が覚めたかい?」

 

「……ん………」

ゆっくりと瞼をあける、すると眼の前にはジオン軍の制服を着た軍医ではなく、連邦軍の制服を着た軍医がいた。年は20代前半ぐらいだろうか?、真っ黒な髪とその肌色の皮膚から見て、恐らくアジア系の人間であることが分かった。そして

 

「ッ!?、何処だ此処はッ!?」

ここが少なくとも味方の医務室ではない事だけは瞬時に理解できた。俺は素早くこの軍医を人質にしようと飛びかかろうとするも、四肢と胴体をベルトのような物で拘束されていた。その為、拘束されていなかった方から上の身が激しく上下すると言う何ともあほらしい格好となってしまった。それを見て、やっぱりかと態度で表した軍医は、ため息を吐いて俺を押さえつけた

 

「クッ!、放せッ!!、私は士官だぞ!?。捕虜の扱いは南極条約に乗っ取るべきじゃないのか!?」

抑えつけられながらも出来るだけ威圧感を込めて軍医を睨みつつそう怒鳴るも、軍医はまるで動じず

 

「貴方が士官なのはパイロットスーツに縫い付けられた階級章を見れば分かります!。ですが貴方は捕虜であり、重傷を負っていたため、こうしてこの医務室で手当てをしていたのです!、それに!、貴方がこうやって暴れてるから!、私はこの拘束具を外したくとも外せないんですよ!!」

そう言った軍医を、俺は見つめた。そして

 

「…分かった、手をどけてくれ」

観念したとばかりため息を吐きつつ、俺はベットに体を横たえた。それを見た軍医が安心した用意胸をなでおろし、そのままるう信用のテレビ回線で何やら誰かと話を初め、少しして、艦長らしき士官服に身を包んだ男が入って来る

 

「私は地球連邦陸軍 第2連隊所属カイル・トレー艦長のアーニクス・ブラットス中佐です」

そう言って、アーニクスと名乗った男は見事な敬礼を見せてくれる。見た目は軍医とほとんど変わらない…兄弟なんじゃないのか?。しかしこっちの方が大人びた雰囲気があるから…こっちが兄貴で向こうは弟か…?

 

「ジオン公国総帥府直属 第12MS親衛大隊第2小隊小隊長のカイト・バジュール中佐です」

俺も自分の所属と階級を明かし、ジオン式の敬礼を取る。そして向こうが敬礼を解いて椅子に座った為、俺も敬礼を解く。アーニクス中佐は真剣な顔で俺の顔をじっと見つめ

 

「単刀直入に申し上げます。ジオン軍の侵攻ルート、各基地の場所や物資集積所の位置。そして各部隊の配備状況と、貴方が乗っていた新型機に関する情報の全て。これらを話していただきたい」

 

「断る。私は軍人として…いや、一人の人間として、味方を売る事は出来ない」

ぶっちゃけそんなもんばらした日には人生終了待ったなしだからな、…自白剤とか盛られた何の抵抗も出来んが、少なくとも言わされてるからある程度の体面は保てる。だから、俺は言わない。少なくとも自分からは

 

「もう話す事はないだろう?」

そう言って、俺は彼から天井へと視線を向け、そのまま寝る姿勢を取る

 

「…失礼します」

アーニクス中佐はそう言って、医務室を後にした

 

「随分と態度でかかったね?、その場で殴られたりとかするんじゃないか、とか考えなかったの?」

アーニクス中佐が医務室を出るのを待っていたかのように、自分のデスクで小さくなっていた軍医が俺に話しかけてきた

 

「あのさぁ…お前マンガとかゲームとかに影響されすぎじゃない?。てか、軍学校出てないだろ、お前」

呆れた俺がため息混じりにそう言うと、男はとても意外そうな顔をした後

 

「驚いた、確かに僕は民間から徴兵された唯の医師だ。僕はいった覚えがないんだけど、君は何で分かったんだい?」

 

「いくら捕虜といっても人権と言うものがある。さらに言えば、南極条約でさらに厳しく且つ細かく定められているからな。捕虜に対しての暴行や自白剤などを使うのは一切禁止だ。それぐらい、軍人なら知っていて当然だぞ?」

実際締結されてから慌てて条約の内容を覚えたからなぁ…あれは地獄だった……

 

「そうなんですね、僕は軍属になってからそこまで日がたってないから、良くわかんなくて。正直早く元の職場に帰りたいって、ずっと思ってるんですよね」

そう言って苦笑しつつ後ろ髪を掻く彼は、俺にはとても悲しいものに思えてしまった。ジオンでも部分徴兵が始まっているが。連邦軍は65歳以下~10歳以上の男女全てが徴兵対象らしい。……戦後のことちょっとでも考えたらそんなキチガイじみた徴兵制可決する筈がない筈なんだよなぁ…?

 

「ま、後1年もすりゃ戦争は終わるよ、そしたらお前も元の職場に戻れる。ま、そこが無事ならの話だがな?」

そう言って、俺は胸ポケットから煙草を取り出そうとして、タバコが無い事に気づく、と言うかこれ誰のパジャマだ?、ッ!?、と言うか俺の服は!?

 

「はい、貴方の煙草です。…それと戦争が後1年で終わるって。どういう事ですか?」

あんがと、と言って煙草を受け取りつつ、いつの間にか隣に座っていた軍医に、俺はこう聞いた

 

「お前…名前は?」

 

「フォーデ・ブラットス少尉です」

そう言って、フォーでと名乗った男は煙草をくわえた俺のすぐ目の前、丁度煙草の先に火を付けたライターを出してきた。俺はライターにそ煙草の先を近づける

 

「ふぅ~…ブラットス少尉。我々は開戦当初、サイド1、2、4を強襲し、連邦の駐留艦隊ごと全てを粉砕した。そしてコロニー一基を地球に落とすブリティッシュ作戦で地球全土にかなりな被害と、気候の変動をもたらし、さらに降下作戦の為に、地表の対空防衛網を月のマスドライバーを利用した隕石落としで徹底的に叩いた。それもすぐに修復できないよう周辺の都市まで、…徹底的に破壊した。そして降下作戦により地球の約3割以上を占領、その過程で行われた激しい戦闘により、我が軍の占領下の大都市~中都市までは完全に瓦礫と廃墟の都市となった。おまけに俺らはそこまで占領下の連邦市民が生きれるような配慮は行っていない。つまり…」

そこで一旦区切り、大きく煙草の煙を掃出し。続きを口にする

 

「仮に取り返せたとしても、連邦はただただ荒野と廃墟しか手に入らず、終戦後。長期間に渡ってその国力を復興に割かなきゃならん。と言うより、国民の半数以上を失ってるんだ。最早連邦は元通りにはならん、この戦争が起き、ここまで進んでしまった時点で、連邦の負けだ」

 

「ま、ジオンはスペースノイドの自治独立のために戦ってるし。連邦は地球をここまでした鬼畜ジオンを殺せ!、って感じ出しな。どっちかが滅ぶまで終わらんだろう」

そう言って、俺は吸殻を適当に隣の台に置かれていたコップの中に入れる

 

「ま、あくまで俺の個人的な意見だ。鵜呑みにしないように。しっかりと大局を見極め、持論を持ちたまえ」

そう言って、俺は新しい煙草を口に加え、火を付けろと上下に動かした

 


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