「作戦を確認します、予定通りファットアンクルはあと1分半後には前線を通過します。第2小隊は前線を通過後、所定のポイントにて超低空降下。その後前線にて我が軍と交戦中の連邦軍部隊の配置状況より推定される各基地施設に対する強行偵察を行い、偵察終了後、自力にて連邦軍の戦線を後方より突破し、ラン・グィナ基地に帰投する。以上です」
全く…上もまぁこんな無茶な任務を押し付けてくれる。第一たった2機で敵中を強行偵察なんて、冗談だとしても笑えない。まぁ…少尉はやる気満々みたいだし、俺も腹を括るか…
「時間だ、降下準備」
直後、固定用のロープがすべて外され、アンクルの隔壁が開かれる
「ご搭乗ありがとうございまぁ〜す!、またのご利用をお待ちしておりまぁ〜す」
「次はファーストクラスで頼むよ」
そう言って、俺はアンクルから飛び出す。眼下には月明かりと夜空を色どる満点の星空のみが世界を照らす。地球でしかみることのできない美しい夜景が広がっていた
「綺麗だな…地球で観る夜景ってやつは…」
そう言いながら俺は背中のスラスターを使ってゆっくりと地面に着地、少尉も俺のすぐ後ろに着地する
「よし、ここから偵察目標に指定されている物の中で最も遠い目標Hから遠い順で行くぞ。MAPにマークする」
そう言って、俺はMAP上に表示されたA~Hまでアルファベットが宛てられた赤丸のうち、Hを当てられた赤丸にスポットする
「確認しました、自分が先行しましょうか?」
「いや、マシンガンがある分こっちの方が突発的な戦闘で隠密行動がしやすい。バズをぶっ放しちまえば爆発でばれちまうからな。こっちの方がマシだ」
まぁ発砲しちまえばその時点で終わりなんだがな。の部分は飲み込み、Hに向かって前進する。因みにIFF(敵味方識別信号)はOFF、おまけに通信は直接回線(機体の一部に触れる事で触れている機体同士のみでの会話が可能となる)以外の通信回線を全てカットしている
「中佐…、パトロール機がこちらに接近中です」
少尉の言葉に振り替えると、少尉が北東の方角を指さしていた。見て見ればデッシュが一機、こちらに向かって飛んでいた
「ッ!?、止まれ!、融合炉を停止して予備電源に切り替えろ!!」
デッシュを指さす少尉の機体の腕をつかんでおろし、怒鳴るように指示を出す
「ッ!?、は、はい!」
少尉の返事が聴こえるのとほぼ同時に融合炉の電源を切り、予備電源に切り替えると同時に少尉との直接回線とMAP以外のすべての機能を停止させる
「ちゅ…中佐……!」
「堪えろ…、動けば死ぬぞ……」
デッシュはその後、俺らの周囲を何度も往復したのち、何処かへと飛び去ってしまった
「…っふぅ…、融合炉を起動しろ、急いでHに向かうぞ」
少尉にそう伝え、予備電源から融合炉に切り替え、各システムが起動した事を確認してから移動を開始する
「見えました、どうやら推測は間違っていなかったようですね」
少尉がそう言って、コクピットハッチから双眼鏡で連邦軍の基地を見ていた。規模は中々大きく、どうやら開戦前から建造されていたらしい、なかなかの規模の基地だ
「滑走路は中規模の飛行場並、格納庫は滑走路内のだけで12、基地全体で30以上…うへぇ……方面軍クラスだな…。取れるだけの写真を撮ったら次の目標に行くぞ!」
「了解しました」
「A、B、E、Hは指定されたポイントに存在しました。が、C、D、Fは指定されたポイントにはいなかったものの、F以外はさして離れていませんでした。大きく離れていたのはFだけですね」
少尉が司令部から渡された敵基地の推定位置を記したMAPと、修正したMAPとを比較しつつ報告してくれた。その報告を聞きつつ、俺は一番近い前線の街へと向かっていた。すでに山向こうがうっすらと赤色に染まり、燃え上がる黒煙によって何やら不気味な感じになっていた
「中佐、敵の左翼が動き始めました、どうやら機甲師団を集中運用して前線を突破しようと考えているようです」
山を登り終え、激しい爆発音と砲火が鳴りやまぬ戦場を木々に隠れながら注意深く俺達は観察していた。そして、敵の機甲部隊が密集体型を取って、一気に前進を開始した光景を見つけた
「よし!、行くぞ少尉!、後ろは気にするな!!」
勢いよくその場からスラスターを使ってジャンプし、そのまま一気に中腹にある指揮所らしきテントに着地する。無論、着地の瞬間にはスラスターで減速した。そのままは熱核ホバーエンジンで一気に山を駆け下りる
「ちゅ、中佐!?、危険です!」
少尉が慌てて俺を追いかけつつそう言ってくるが
「今敵が攻勢に出ようとしてるタイミング意外に突破は不可能だ!、敵の左翼をこのまま突破するぞ!」
後方の補給部隊や自走砲陣地を吹き飛ばしながら一気にななめ右後ろから敵左翼に突入する。マシンガンの弾薬が空になるまで打ちつくし、続いてバズとサーベルを抜き取り、指揮車らしき車両をバズ4発を使って撃破できるだけ撃破し、此方の防衛線を突破しようと密集体型をとっていた敵戦車をサーベルで薙ぎ払うように振るう、少尉も合流し、更に内側から陣形が食い破られていく。更に陣形が崩れた事を察知した味方が反撃に転じた事で、一気に連邦軍の左翼が崩れ、そのまま敵の戦線は崩壊した。そして俺達はもはや軍隊としての体を成せていない配送する連邦軍を追撃する味方とは合流せず、そのままラン・グィナ基地に向かって移動を開始した