魔法少女とアカデミア   作:ささみの照り焼き

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牛歩にしたって鈍足がすぎる……




魔法少女とチームメイト

 ☆

 

 

 

 13位だ。

 何がって? 障害物競走の順位だよッ!

 

「ぐぬぬ……抜かれたからって意地張って轟くんの前に飛び出すんじゃなかった……」

「見事な氷漬けだったねぇ」

 

 ぐぬぬぬぬ、と悔しがる私の肩に手を置き、今まさにディスプレイに映し出されている私の醜態を眺めるお茶子ちゃん。

 スタートダッシュ決めたくせにすんなり轟くんに抜かされ、焦った私は『個性』で身体能力をブーストしてダッシュ、というかほぼ飛行に近い速度でかっとび──タイミング良く(悪く)轟くんの『個性』に巻き込まれて宙ずりになったのだ。

 

「俺としては、あの状態(最下位)から13位まで上がってきた事に驚いているがな」

 

 クールダウン中の飯田くんが言うように、氷から抜け出すのに非常に難儀した私は結局最下位からのスタートとなった。

 こりゃ制御とか考えてる場合じゃないって感じで、必死にダッシュやらワープを使いつつ、なんとか13位まで漕ぎ着けたのだ。

 

「当初の予定では華麗に1位決める予定だったんだけどなあ」

 

 チラ、と。

 1位でゴールした()の後ろ姿に目をやる。

 

「まさか緑谷くんが1位とは、ねえ」

 

 見慣れた背中は興奮と冷静の間を往復しているのだろうか、微かに震えている。

 けれど、僅かに見える横顔は──やってやったんだ、と確かな達成感に満たされていた。

 

「緑谷くん」

「……──え。あっ! ま、まままま魔乙女さん!?」

「はい。ままままま魔乙女さんです」

 

 忍び足で近づいて声をかけると、逆にこちらがびっくりしてしまいそうになるほど盛大に緑谷くんが跳ねた。

 ……そろそろ耐性ついてもいいような気がするけど、まあ気長に待ちますかね。

 

「まずは1位おめでとう。ホントなら私が取る予定だったんだけど……まあ色々事故があったとはいえ、見事にかっ攫われちゃったね」

「あ、ありがとう。……でも」

「でも?」

 

 緑谷くんが視線を観客席を向ける。その先にいるのは、私たちの目標(オールマイト)だ。

 

「本当の実力(・・)が試されるのは、ここからだから」

「……うん、そうだね」

 

 うん。どうやら私が心配していたほど、彼はブレない男らしい。

 雄英に来てからずっと、彼は成長を続けている。そのスピードは数々のヒーローを見てきた私としても驚くほどだ。

 

「それじゃあ改めて、お互い頑張ろうね、緑谷くん」

「うん。……ありがとう、魔乙女さん」

 

 

 

 その後、次種目『騎馬戦』で個人に割り振られるポイントが、障害物競走1位の緑谷くんが1000万と判明して助けを求める視線を向けられたけれど……。

 

 まあ、緑谷くんなら何とかするでしょ。

 

 

 

 

 

 ☆

 

 

 

 

 さて。

 緑谷くんのことは置いといて、今は私のチーム構成に着いて考えなければならない。

 

 まず前提として、私の配置は両手がフリーで使える騎手一択だ。

 何故なら『個性』使用のモーション上、手をかざしたところから個性を発動した方が狙いが定めやすいから。足の先とかからも出せるけど、精度は落ちる。

 

 次に、私が騎手とした上で騎馬を任せる人を考える。

 

「…………んー。ダメそう」

 

 パッと思い浮かんだメンバーを探してみるけれど、皆早くもメンバーが決まりかけているようだ。

 ……A組、B組それぞれで固まってるからそう見えるだけなのかな?

 

「となると、代替案を……」

 

 …………うん、これなら行けそう。

 

 

 

 

 

 ☆

 

 

 

 

 

「じゃ、作戦通りよろしくお願いしますね、鉄哲さん(・・・・)

「わァってるよッ! 後ろの2人も、ちゃんと着いてこいよォ!」

「もちろん。足でまといにはならないよ」

「くそっ……こんなはずじゃ……」

 

 騎馬戦開始直前。

 騎手としてハチマキを巻く私の足を支えるのは3人。

 

 前はB組の鉄哲徹鐵さん。

 私の作戦はとにかく最前列の人がパワーでゴリ押せて、かつ頑丈な人が必要であることからスカウトした。

 『個性』が切島くんと似通っているのを障害物競走で見ていたから、切島くんの代替案としてスカウトした訳だが……この事を話すと、なんと素直に私のスカウトを受けてくれた。

 私としては渋られるものだと思っていたから意外だったけれど、私が素直に求める理由を話したことと、A組に啖呵を切りに来た時に私のマジレス(ブチ切れ)を聞いていた分、A組の中では少しだけマシなイメージだったようだ。何でも『漢気を感じた』との事。

 ……その後、B組の女子に『女子に何言ってんだ』って叩かれていたけれど。

 

 続いて右後ろ。

 鉄哲くんをスカウトする道中で捕まえたフィジカル強めマン。『個性』で急な制動・方向転換に対応しやすくなる他、騎手の足場も尻尾の分増えるという地味ながら凄くありがたい人材だ。

 彼はもう1人(・・・・)と話しているところを助けるついでに引っ張ってきたのだが、鉄哲さんのスカウトが成功したのを見て快く承諾してくれた。ありがたい。

 

 そして、最後。

 

心操くん(・・・・)も、準備はいいですか?」

「……ああ」

 

 普通科の中で唯一第1種目を突破した心操人使くん。

 彼は尾白くんに『個性』を使おうとしたところを、通りすがりの私に阻止されるついでに連行された人である。

 トリガーは分からないけど、多分精神系の『個性』だ。洗脳とか催眠とか、そっち系のやつ。尾白くんが明らかに普通の様子じゃなかったから、さすがに見過ごせなかった。

 彼としても私に『個性』を使う予定だったのだろうけれど、生憎私は精神系の『個性』は自動阻害出来るので運が悪かったと言うしかない。しかも今トリガー壊れてて常時阻害な上に私の半径5メートルくらい阻害範囲になってるからね。お詫びも兼ねて、というわけである。

 ……と、いうか彼。鉄哲さんが宣戦布告しに来た〜って話してたから思い出したけれど、あの時前に出てきてた普通科の人だ。今の今まで忘れていた。

 

「そう心配しなくても、約束通り勝てますから、安心していいですよ」

「……そうかよ」

「あ、でも鉄哲さんも尾白くんも割と体力お化けっぽいので……頑張ってくださいね、マジで」

「こんなハズじゃなかったんだよ……!」

 

 騎馬戦までの準備中、彼のプランを聞いたが……まあ私がいたのが不運すぎた。騎馬戦中に私に近づいたら『個性』即解除な上に下手したら即失格な可能性もある。

 

 ……騎馬戦開始も近づいてきた。

 咳払いを1つしてから、ハチマキを巻き直す。

 

「それじゃあ改めて……『スーパー漁夫の利作戦』、スタートです!」

「ネーミングセンスどうにかならなかったのかよマジで……!」

「アハハ……」

「やってやる……!」

 

 

 

 

 


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