ソードアート・オンライン−−ギルド名『草生えるw』   作:tfride

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ウサギ
『桐ケ谷和人ゥ!! なぜ君がSAOにログインできたのかぁ!! なぜ君が二刀流スキルを手に入れたのかぁ!! なぜヒースさんに負けたのかぁ!!』

ローキ
『それ以上言うな!』

ニンジャ
『(とりあえず走る)』

ウサギ
『その答えはただ一つ…』

リク
『やめろ!!(そして走る)』

ウサギ
『桐ケ谷和人…君が………リア充だからだ!!』


全員
『な、なんだってえええええ(ソートウエキサイエキサイ』

ウサギ
『うぇあははははははははは』



















第8話『高速移ドゥエw』

「すすすまないキリト君。こんな…こんな事になっているとは…」

 

「い、いえ…」

 

ヒースクリフとキリトは激怒した。

必ずやかの傍若無人のギルドを滅ぼさねばならないと云々。

 

場所はまるでコロッセオのような外見をしている。その客席にこれでもかとプレイヤーを詰め込み、なんだったらコロッセオの外に結果を心待ちにしている者もいる。

観客席だけではなく、外で行われている出店も正月よろしく縦並んでおり、何より一番その歓声に燃料を投下しているのは、いつもの問題児四人組。

その観客全てがそのコロッセオで剣闘士よろしく向かい合うキリト≪二刀流≫とヒースクリフ≪神聖剣≫。

 

 

二人の心は一致していた。

 

『どうしてこうなった』

 

 

 

 

なぜこんな事態になったのか。

 

なぜ本編よりもお祭り騒ぎになっているのか。

 

説明する必要すらないだろう。

 

だって7話分全部使って彼らの異常性もとい…イレギュラー感もとい…頭のねじの外れ加減を晒してきたはずである。

そしてその数と同じほどに原作キャラクターの胃はドロドロに解けかけている事だろう。

 

 

※余談ではあるが現実の病院ではキリト、アスナ、リズベットetc.の容体が急変し、大量の液状胃薬が投与されたそうな。

 

 

だが説明しない限りは面白くないので。

 

面白くないので説明するとしよう。

 

 

 

 

 

正直な話、攻略組に勝るかもしれない、ただの商人プレイヤーだと思っていた。

 

第一層で諦めて座していたプレイヤーに演説のように語りかけてきた時も。

 

SAO商店を立ち上げて、ギルドマスターに任命された時も。

 

血盟騎士団と結託してアインクラッド解放軍を叩くと言ってきた時も。

 

ギルド『草生えるw』との一定の距離があったというのも理由の一つであったが、何より彼らの本気を見る機会がなかったのだ。

そもそも鍛冶屋のリズベットと戦闘職の草生えるwの四人では関わる時間も少ないが、そうだとしてもリズベットがそれらの話を耳にしなかったのは異常だ。

鍛冶屋とギルドマスターであるリズベットにとって他人のプレイヤーの情報は、耳を塞いでいても聞こえてくる。

そんなリズベットが彼らの話を殆ど聞かないのは。

 

 

今まで本気で戦ってはいなかったのでは。

 

 

そんな自問自答の結果に、リズベットは小さく笑った。

 

「ねぇねぇリズちゃん、御免なさい。二度と悪い事しないんで許してください」

 

「哀れだなウサギ。そのまま餓死して死んでしまうのか」

 

「死なないでウサギ、お前が死んだら誰が嫁さん養うんだ」

 

「次回、ウサギ、死す」

 

 

否、鼻で笑った。

 

 

 

 

 

ウサギがまたやった。慈悲はない。

このアインクラッドにもアップデート機能はあるのだろうか、ウサギ曰く以前は成功していたはずの地面潜りバグができなくなっていた。

それに対抗心を燃やしたウサギは、次なる潜りバグを模索し始めた。リズベット武具店で。

その結果としてプチゲッタンをかまし、店の中を滅茶苦茶にしたウサギは現在店内に晒し巻きにされて吊るされていた。

ご丁寧に『ご自由に殴ってください』と書かれた立て札付きである。

 

何が一番怖いかってこの状況に慣れてきたのか普通に接してくるウサギである。

 

しかし、そんな丁寧にウサギに対する仕返しを済ませたにも関わらずに仕事をきっちりこなすリズベット本人は、やっぱり優秀なのだろう。

満足のいく出来に仕上がったのかスッキリした顔で裏から出てきた。

 

「あんた達!お待たせ!」

 

しかしそんなリズベットの心境お構いなしに彼らはいつも自由だった。

 

 

「だからさ、デッドプールは完全にポルノ映画だって」

 

「確か実際にポルノ映画放映して短い期間で上映中止になった映画あったでしょ」

 

「【自主規制】?」

 

「そうそれ。アレに比べたらましでしょ?」

 

 

「あたしの店でR18紛いな事話すのやめてくれない?」

 

そう言いながらカウンターに腰掛けるリズベットに、蟻のように群がってくる男ども。

あんな話の後にこんな表現したら何か怪しい事に聞こえるかもしれないが、執筆者含めてR18紛いなことに思考を侵されている証拠です。すぐさま五分間の瞑想を行いましょう。

ウサギは相変わらず晒しに巻かれたままだがリクが引きずってくる。

 

「出来たわよ。でもやっぱりオーダーメイド品だから前線のモンスタードロップよりは見劣りするわね」

 

そう言って品物を提示してきた彼女の装備は、一般プレイヤーからすれば喉から手が出るほどの数値が提示されているのだろうが、やはりそこは攻略プレイヤー基準なのだろう。

謙遜する彼女の言葉をそう受け取った三人+一巻きはお礼を言うと、三人はその場で新装備に着替え始める。

 

一瞬霧散する光るエフェクトが彼らの装備を一瞬で切り替えた。

三人+一巻きの装備は全員色が固定されており、薄い青地に濃い緑色の装飾ラインが入っていた。

 

リクの装備は軍隊が装備していそうな鉄甲冑ではなく、竜の鱗が特徴の野性的な装備に仕上がっていた。

 

ローキの装備も竜の鱗があしらわれていたが、こちらは革も使っているのだろう。全体的に革と鱗の面積が半々になるように構成されており、まさしく軽金属鎧と呼ばれる所以のようなものだった。

 

が、ニンジャの装備は完全に薄い何か布のようなもので出来た、クラインの様な野武士感あふれる鎧ではなく、流浪人のような和服姿であった。

 

「ねぇリズ、これ何で出来てんの?」

 

「確か…翼の膜?」

 

「うっは弱そう」

 

ガッツリと愚痴をこぼすもその性能は今まで装備していたモノと比べれば差は歴然。

ちなみに竜の革で作られた新装備を受け取ったウサギは絶賛放置。

 

「さっすがリズちゃん。許して」

 

「流石リズベットだね、これお代」

 

「ありがとうローキさん、褒めても何もないですよ?」

 

「ローキには敬語なんだね。キリトもそうだったよ。許してリズちゃん」

 

「うっさい」

 

「許してくださいリズベット様」

 

さらっと触れてほしくない用語に触れてくるあたり、もはや無意識で確信犯なのだろうか。

そんなウサギに一度蹴りを入れて、リズベットは残り三人に向き直った。

 

「それで?今度は何をやらかすつもりなの?」

 

「やらかす前提かよ」

 

「次は何をするのか予定はあるの?って聞きたかったのよ。イラついている原因は察して」

 

その言葉に三人はウサギに一度視線を移し。

 

『ごめん、何の事だか見当もつかない』

 

「ひでぇ!?」

 

一向に解放されないウサギを無視して話を続ける三人とリズベット。

が、そこで思い出したかのようにリズベットがカウンターの裏から一枚の情報誌を持ってくる。

 

「そうそうあんた達こんなの知ってる?」

 

そう言って出してきた情報誌には。

 

「50連撃のソードスキル」

「74層ボスを倒した黒の剣士の実態」

「黒鉄宮に投獄されたキバオウの容体が急変」

 

などと書かれており、もちろん四人の注目は。

 

「キバオウざまぁ」

 

「因果応報」

 

「自業自得」

 

「許してください、ほどいてください」

 

「ちがう、そっちじゃない」

 

話によると、アインクラッド解放軍とキリト達率いる風林火山と血盟騎士団副団長アスナが偶然に鉢合わせ、まだキバオウ達元アインクラッド解放隊の残党が残っていたらしく、ボス戦を強行。

アインクラッド解放隊のパーティー隊長が死亡し、ボスはキリトが放った二刀流スキル『スターバーストストリーム』に切り倒された。

というものが、大阪名物膨らし粉によって増長されて書かれていた。

なんだかもうどうしようもない。

 

「つまりね、今じゃユニークスキルの二刀流使いって事で超有名になってんのキリトは」

 

リズベットの有難いお話を、しかしこの四人はすでに聞いていない。

 

「え、キリト君アスナちゃんとデートしてたの?爆発しろ」

 

「つかなんだか嫌な予感がするね。これ絶対血盟騎士団黙ってないでしょ」

 

「とりあえず55層直行?」

 

「ねぇそろそろ助けてくれてもいいんじゃないの?」

 

 

「あんた達人の話聞いてる?」

 

いそいそと支度をする三人と一巻きに、いつも通りかと溜息を吐く。

あの白竜戦で見せた、何とも言えない悲しそうな雰囲気はどこへやらといった感じだが…。

 

と、そこでリズベットは渡し忘れに気づいた。

 

「そうだあんた達。これ作ってみたんだけど」

 

 

そう言ってストレージから何枚かの布切れを取り出した。

明らかに白竜の討伐素材から作られてはいない、腰布のような大きさである。

青地に緑のラインで『W』の文字が縫い込まれていた。

 

「草生えるwのギルドイメージカラーってことで作ってみたのよ、あなた達全員装備の種類も装飾もバラバラだったから」

 

そう言いながらまるで押し付けるようにウサギの胸元に掌底付きで渡された。

苦しむウサギを放置して各々が腰布を装備していく。

ささやかなプレゼントに三人と瀕死の一巻きはありがとうと告げると、いそいそと出入り口にすっ飛んでいった。

 

誰もいなくなった静かな店に、一人たたずむリズベット。

 

既にその心に、失恋の暗い心象は残っていなかった。

 

 

 

 

だって窓越しに解放されかけたウサギの晒巻きが、上空に凄まじい速度で滑空しながら、それに掴まる三人を道連れにしている光景を眺めて。

 

「何がどうしてそうなった」

 

と突っ込まざるをえなかったから。

 

 

 

 

 

 

 

「キリト君。欲しければ剣で…二刀流で奪いたまえ」

 

ヒースクリフの言葉に、その場の緊張は極限まで高められる。

血盟騎士団本部…そのヒースクリフの前で、アスナは無意識のうちにキリトの袖に手を伸ばしてしまう。

不安や恐怖をごまかすための本能が…やめてとキリトに直接言えない気の弱さが浮き彫りになっている。

しかし、キリトの表情を見れば、既に答えは決まっていた。

 

「私に勝てば、アスナ君を連れて行くといい…しかし私が勝てば――君が血盟騎士団に入るのだ」

 

 

 

やめて

 

 

アスナのその心の一言虚しく、キリトの口は開かれる。

 

 

「わかりました、剣で語れというなら望むところです」

 

あぁ、言ってしまった。

やってしまった。

あの時軍をしっかり止めていれば。

自分が感情に流されずボス部屋に突入しなければ…。

 

様々な後悔が思い出すかのように流れ込み、そしてアスナの心をえぐっていく。

 

しかし。

 

 

「デュエルで決着を―――」

 

 

「あんぎゃぁああああああああああ!!」

 

バコンッという何かが捻じ込まれ鉄が悲鳴を上げるような音とともに…ヒースクリフの頭上。

巨大な窓のさらに上の部分の壁に、何かが飛び出している。

 

ウサギだ。

 

しかもなにやら扉の向こうから悲鳴が聞こえる。

 

突如として開かれる扉から騎士団の一人が飛び出し。

 

「団長!!全身空色の装備をした三人組が突撃して――」

 

がそんな部下の報告虚しく、後方からくる凄まじい衝撃にぶっ飛ばされる。

 

「ウサギてめぇ!!回収する俺らのことも考えやがれ!!」

 

「何が『お前らにベニヤ板バグを教えてやる』だ!! おもいッくそ失敗してんじゃねぇか!!」

 

「ウサギギルティ。慈悲はない」

 

いつもとは装備の質が明らかに違ういつもの草生えるwがそこにいた。

 

「君たちはいったい何を…」

 

「助けて!! このままだとグラフィックの溝に引きずり込まれる!!」

 

「いやだからいったい何を」

 

「マーカーでも置いてリスポーンしろよ」

 

「遠回しにデスポーンしろって言ってるよね」

 

「でもウサギなら死ななそうな不思議」

 

『確かに』

 

ヒースクリフの抗議虚しく、三人による釣り竿によるウサギの救助作戦がその場で始まり。

 

「何の話してたんだっけ」

 

キリトのその一言は、四人の奇声に掻き消えた。

 

 

 

 

 

「なんであんなこと言っちゃったのよ!!」

 

場所と時間は変わり、闘技場の入場口に切り替わる。

しかもアスナがキリトの目の前で激おこぷんぷん丸である。

その様子に完全に委縮しているキリトは、釈明を続けるも、まったく収まる様子もない。

 

「しかも草生えるwのせいでお祭りどころか軽く紛争のレベルよ!!」

 

その言葉にふと外に視線を向ける。

本来なら闘技場の観客席に少しあふれる程度になるだろうと思っていたプレイヤーの数は、草生えるwの活躍のせいで…というより、子供すら混じっている。

アインクラッド解放軍のリーダー、シンカーの協力により(むしろシンカーが見たいということで)第一層に待機していた非攻略メンバー全員の移送が決定したため、とんでもない人数になってしまった。

結局客席に入りきらない人数は、闘技場の外周に椅子とバリケードを設置して事なきを得ている状況である。

しかもヒースクリフVSキリトの賭博も何だかんだで凄まじい量betされており、血盟騎士団の会計係が泡を吹いて倒れていた。

 

「いや、全部あいつらのせいじゃ…」

 

なんていうキリトの視線の先には、観客席の最前線で旗を振る草生えるw四人の姿。

しかも旗には。

 

 

「俺らはお前に賭けた。死んでもぶっ殺せ」

 

 

なんて書かれている。

 

あぁ今すぐぶっ飛ばしたい。

そんなキリトの心中を察したのか、アスナもなぜか遠い目をしている。

 

「あの人たち…なんで攻略全然しないのに、あそこまでしてるんだろう…」

 

そう、草生えるwは一度も攻略会議に参加したことはない。

そんな中唯一攻略に参加したのは、第25層のアインクラッド解放軍壊滅の被害にあったときだろう。

いや、あれは攻略に参加というより、軍を撤退させるまでの時間稼ぎをしたといったほうが正しい。

しかし、レイドを組んで挑んだ結果、壊滅的な被害をもたらしたはずのボスに対して四人で時間稼ぎをし、HPがイエローゾーンどまりで済んだのは、圧倒的にプレイヤーの戦闘スキルの差を見せつけられた。

そんな力を有してるのにもかかわらず、しかし攻略には興味を示さずに、未開の地の踏破や、ダンジョンのボス攻略などに奔走。

各地のイベントの開催。

SAO商店の運営の手伝いなどに力を注いでいる。

アスナや、攻略組からすれば、自分に関係ないところで尽力する、ビーターよりも面倒な奴らになっていた。

しかも商店の運営が自分たちの攻略の手助けになっていることから、邪険にもできない。

微妙な関係に収まってる。

 

「第一層攻略会議で言ってたじゃないか。クリアする気はないって」

 

そう言いながら立ち上がり、背中に剣を二本装備するキリトに、しかしその説明では納得いかないのか、アスナが疑問をぶつける。

 

「それが意味が分からないんじゃない。クリアする気がないなら、なんで私たち攻略組の手助けみたいなことするのよ」

 

「クリアするのと、プレイするのじゃ大きく違うだろ」

 

「プレイする?」

 

その言葉に、しかし疑問が払拭できないアスナ。

 

「確かにあいつらは攻略にまったく参加しない。けどこのSAOで一番楽しんでプレイしている奴らだ」

 

 

時間となり、登場口に向かうキリトは首だけ後ろに向けると。

 

「要は俺たちとは違って、ただ純粋にゲーマーなんだよ」

 

 

 

 

 

 

 

結果からして、勝負はキリトの敗北に終わった。

終わったのはいいのだが…。

 

『キサマぁああああああああああああああああああ!!』

 

というとある四人の暴動が始まって大乱闘会(圏内)が始まったのは別の話。

ちなみにキリトは即行避難。

難を逃れたキリト氏のメッセージに四人から。

 

【恨み晴らさいでか】

 

なんてものが送られてきて、しばらく前線にキリトが出てこない問題が…。

 

※ただ単に血盟騎士団に入団しただけです。

 

が、問題はここからである。

 

 

 

 

「かがやけ…流星のごとく…」

 

「黄金の最強げーまー…」

 

「黙って働け」

 

ニンジャとウサギの覇気のないハイパー大変身を聞きつつもリクはてきぱきと後片付けをしていた。

大乱闘のせいで事態に収拾がつかなくなり、既に時間は20時。

圧倒的にこの四人の悪ふざけが原因であるため同情の余地皆無であるが、この世の終わりのような顔をして手を動かすこの二人。

既にリクが注意をしてから3回目である。

 

「はいぱーむてきーえぐぜーえー」

 

「ローキ、あんたもか」

 

最近ボケに走ってどうしようもない助け船に呆れつつ、ふと先ほど行われた戦いを思い出す。

二刀流スキルの最後の一撃。

あの瞬間ヒースクリフの盾は弾かれ、絶対に防げないはずだった。

その瞬間である。

キリトも、草生えるwの四人も一瞬の出来事をそのたぐいまれなる動体視力で捉えていた。

人間の動きを…システムの動きを超えた速度で防いだ盾の動きを…。

 

「あれは完全にスキルシステムの範囲を超えていたよな…」

 

リクのその言葉を聞いたほかの三人は、その瞬間を思い出したのか手が止まった。

 

「え、俺みたいにデバックしたんじゃないの?」

 

「お前と一緒にすんじゃねぇ」

 

「存在がバグ」

 

「システムの邪魔者」

 

「おぉ、味方がいない。悲しい」

 

いつも通りの掛け合いをした後にウサギが続ける。

 

「まぁデバックじゃないねあれは。グラフィックも崩れてなかったし」

 

「あからさまにチート…ズルだなあれは」

 

が、問題はそこではない。

その結果をキリトが認知していないはずがない。

そしてその結果を受けてキリトは敗北を認め、血盟騎士団に入団したのだ。問題は別にある。

そう、そのようなズルを実行できたとして、ヒースクリフとは何者なのか。

答えはおそらく。

 

 

 

「草生えるwの諸君、邪魔するぞ」

 

 

その言葉に視線を向けると、キリトと勝負した時の姿のままのヒースクリフが現れた。

普通ならここで何かしらの緊張感や、張り詰めた空気が場を満たすだろう。

 

「お、ヒースさんやっほー」

 

「乙」

 

「ちゃーす」

 

「こんにちはヒースクリフさん」

 

ただしコイツらは例外である。

むしろ青筋を一切立てない心の広いヒースクリフを皆さん褒めましょう。

 

「決闘の後は大変だったそうじゃないか」

 

「はい、大変でした。それはもう――――が――――で――――だったんですよ」

 

「そんな事が…私も――――の――――が――――だったのだよ」

 

「それはそれは」

 

なぜかヒースクリフが草生えるwの苦労人ローキと苦労人話に花を咲かせ始める。

ほんとにこの人は何をしに来たのか、分からなくなってきたリクは話を遮ることにした。

 

「んで、ヒースクリフさんは何しに来たんですか」

 

その言葉に我に返った…もといようやく本題に入るヒースクリフ。

 

「失礼、先ほどの決闘でキリト君が血盟騎士団に入ったのことは知っているね」

 

「おうさ」

 

その言葉に若干の嫌な予感がよぎる。

 

「そこでだ。いい加減君たちとのギルド合併を…」

 

「はい解散」

 

先ほどまでのやる気のなさはどこへやらと、テキパキと後かたずけを始める四人。

 

「まぁまて。私たち血盟騎士団がいなければアインクラッド解放軍の分離もできなかったと思うのだが?」

 

「しっかりと前金払っただろう」

 

ニンジャの講義を受け流し、ヒースクリフは続ける。

 

「だが、合併を行えばメリットしかない。なぜ断る理由がある?」

 

「むしろなぜ合併しようと思うんだよ」

 

リクの突っ込みが虚しい。

 

「であれば」

 

そうヒースクリフが言い放ちながら、盾から剣を引き抜く。

 

「キリト君と同じく、決闘にて決めるのはどうだろう」

 

そのヒースクリフの提案に四人は。

 

『却下』

 

聞く気すらない。

 

「まぁ待ちたまえ。私が負ければもう合併の話はしないと誓おう」

 

「勝ち負け関係なく誓ってほしいです」

 

「だが私が勝てば、合併してもらおう」

 

「聞けよ厨二患者≪神聖剣≫」

 

 

 

 

要約。

もういちいち勧誘するのがめんどくさいのでチートでも何でも使って入団させますね。

 

 

『ざけんな』

 

完全に一方的な勧誘に、しかし四人の表情は―――

 

―――網にかかった獲物を見るような目になっている。

 

 

 

 

 

 

≪ヒースクリフがデュエルを申請しました≫

 

≪初撃決着モード≫

 

 

 

――カウント60

 

――59

 

――58

 

 

「なんで俺なの」

 

そういうウサギの後ろには、つまみ片手に観戦している三人の姿が。

いや、結果的にはジャンケンで負けたウサギの自業自得なのだが。

 

「あのチート技にどう立ち向かえと」

 

そうつぶやくウサギの講義虚しくカウントが進んでいく。

 

「さぁ構えるんだ」

 

「勘弁してくれ」

 

 

――3

 

――2

 

 

「ウサギ」

 

「なんじゃニンジャ」

 

「手段を選ばなくていいぞよ」

 

――0

 

 

 

 

 

「まじで?」

 

その瞬間すり足のように上下運動なく距離を詰めてきたヒースクリフ。

ウサギの視線は完全に後ろを向いている。

隙だらけ。

初撃決着とは一撃でも入れれば勝ちとなるシステム。

HP0が死を意味するSAOにおいて、唯一の力で安全に勝敗を決める決闘法である。

そして相手は隙だらけ。

 

下から上へ切上げるその一撃をウサギが避けられる道理が…。

 

 

 

刹那。

 

凄まじい衝撃音がヒースクリフの後方ではじけた。

 

「は?」

 

思わずそう言わずにはいられないヒースクリフ。

しかし問題は衝突した何か…ウサギに問題が…。

 

「いででで。高速移動バグは制御が…」

 

「高速移動…ばぐ?」

 

完全に放心したヒースさんは、これが終わったら仕事が一つ増えたと嘆き悲しむことになる。

 

 

 

 

 

「ドゥエドゥエドゥエドゥエドゥエドゥエ」

 

「ええぃ動くな!!」

 

 

 

 

「ずさー、ずさー、ずさー、ずさー」

 

「くそぅ追いつけん!」

 

 

 

 

「やややややややややややややふぅうううううううう」

 

 

『とんだぁああああああああああああ!?』

 

 

 

 

 

結果から言おう。

高速移ドゥエを続けたウサギの体力切れにより敗北を喫したのであった。

 

 

「おう、いっぺん死んでみるか」

 

「やめてくださいごめんなさい」

 

何だかんだで無事死亡したウサギ。

現在リズベット武具店に移動した四人は、ひとしきりウサギをボコボコにした後、再び晒巻きにされて天井に吊るされることになった。

 

「それで?結局負けて同盟を組まされることになったわけ?」

 

いくつかの端切れ素材を箱に詰めて運んでいるリズベットの質問に、しかしニンジャはニヤついた顔で。

 

「いんや?もちろん断ってきた」

 

「え、どうやって?」

 

「簡単簡単。あっちは自分が勝った時の内容を決めてたけど、負けた時の内容を決めていなかったから。」

 

ローキのその言葉に、しかしリズベットは続ける。

 

「ん? 負けた時は勧誘を自粛するって話じゃなかったっけ」

 

そう。

 

しかしそれに対してニンジャは。

 

「は?それはあくまで前提だろ?」

 

と、四人の傍若無人の言い争いが始まった。

しかも。

 

 

「いいのかヒースさん!? 今ここで俺らを入団させようものなら、自分が勝った時の条件しか決めない不公平なルールで戦わされたって触れ込むぞぉ???」

 

なんて言い出したもんだから…。

 

 

 

 

「あんた最低ね」

 

「ばっちこい」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

今日もSAOは平和です。




Twitter始めました(一年前)
情報更新していけたらしていきます。(まず何をかけばいいんですかね?)
みてねー( ̄^ ̄)ゞ(需要ない気がしてならない)













一年前に作ったのはいいけどこれどうすればいいのだろうか。
そもそも友達がいないから個人の情報発信しても意味ない気がしてならない。
そんなこんなで最近の更新も一年前。

アヒャヒャヒャ



という文章を書いておきながら自分の垢を貼り付け忘れる失態。
https://mobile.twitter.com/Ninj_penguin

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