東方与太噺   作:ノリさん

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気が付いたら一周年!と言う訳で以前Twitterでアンケートを採った時に二位だった人達がメインのお噺です。偏りがある気がするけど二人がメインなんや‼

このお噺はすれ違う思い「~ 運命の Countdown Start ~」から「月夜に・・・・・・・・」までのお噺になります。そしてこのお噺によって「月夜に・・・・・・・」のお噺が完成する感じになっています。(あくまで書いた本人の感覚ではありますが)


さて、何が終わりなのか。普段と比べると短くはありますが書きたい事をいつも通り書きました。それではお噺に参りましょう。


閑話 酒、真実が嘘、一つの終わり

 

 

私の心はどうしてしまったんだ。

元々わかっていた事なのに、元々知っていた事なのに、終わりが見えるとどうしてこんなに苦しいんだ。

今の私はタダの臆病者だ。こんな姿仲間に見られたら人間が来年の話をするくらいには笑われるな。

 

 

*******

 

 

「ってもどうするかねぇ」

 

地霊殿の連中に呼ばれたのは嘘だ。たまたま見かけた萃香の様子がおかしかったから聞きに来た所にちらほら話が見えただけだ。その後本人から少し話を聞けた。アイツは仁にかなり入れ込んでたからなぁ。ってそれはあたしも同じだけどさ。でもアイツにとっては特別何かあったみたいだねぇ。あの落ち込み用は年中酒飲んで愉快にやってるアイツには珍しい事だ。

 

 

「でもあいつのいく所なんて正直わからないしねぇ。引き受けたのは良いけどどうしたもんか」

「あら、勇儀さんではないですか。困った顔してどうしました? 」

「あぁ、アンタは天狗の…何だっけな」

「射命丸文です。はい。何かお困りですか? 」

「あぁ、萃香を探していたんだけどな。アイツどこにいるか正直わかんなくてさ。困ってるんだよ」

「あぁ、仁さんの件ですか。なるほど。良いですよ。萃香さんなら先ほど見ましたし案内しますよ」

「ありがたいねぇ。ま、その前にアンタの知ってること話して貰おうか。答えてくれるよな」

「あぁ、はい‼ 誠心誠意説明させていただきます‼ 」

 

 

~ 少女説明中 ~

 

 

「ふぅん。なるほど二人で店で飲んだ時に何かあったんじゃないかって事だね」

「はい。朝まで帰ってなかったみたいですし…」

「でも何がそんなに奴に執着させることになったんだ? 」

「いやぁ、正直そこまでは私は…。でも以前から人間を助けて酒を飲もうとして失敗してたりしてましたからね。意外と気にしてたみたいですし。それらについて何かあったのでは? 」

「例えば? 」

「そうですねぇ。仁さんでしたら。『この世界に来て会った妖怪の皆さんは美人ですしねぇ。それに面白いですし、怖いなんて思った事なんてないですよ。だから俺は好きで飲んでるんですから、飲み相手にならいくらでもなりますよ』とかそんな感じの事をいい感じに言ったんじゃないですか? 」

「それ仁の物真似かい? 」

「えぇ、似てるでしょう」

「確かに言いそうだし、喋りの雰囲気も似てたね」

「ありがとうございます」

「アンタはそれでいいのかい? 」

「何がですか? 」

「アンタ、アイツに惚れてるだろ? 」

「なぜそれを? 」

「以前からのアンタを知ってる人なら誰でもわかるって。なんやかんやあの店通ってるし、アイツを見る時のアンタは女の目をしてるからね」

「あややややや、お恥ずかしい」

「でも惚れてる相手が他の女と二人でいい感じに飲んでるのは? 」

「正直言うと悔しいです。私もいい感じに二人で飲みたいです! 」

「萃香に先を越されたねぇ」

「ええ。でも彼は誰にでも優しいですから気にしたら負けな気はするんですけどね。そのくせして自分には厳しいですから、ほっておけないと言いますか…」

「あ~、惚気は良いから案内しな。聞きたい事は聞けたしね」

「惚気てるだなんてそんなそんな。はい!ご案内します! 」

 

アタシのやる事は決まった。

 

 

 

********

 

 

 

「よう萃香。ここで飲んでたのか?」

「勇儀……」

「聞いたよ。仁帰る目途が立ったんだってな」

「うん…」

「アイツは元々外の人間なんだから良いじゃないか。笑って送ってやろうぜ」

「そうだな…」

「あーもー。なんだいそのシャキッとしない返事は」

「わかってるんだ。わかってたんだ。アイツは外の人間で、最初からここに居られる期間は決まってて、居られ時間も限度があって」

「ならどうして」

「わかってるんだけど。何だかこう酒が胸に沁みないんだ。どんだけ飲んでも」

「アンタ何でそんなに入れ込んでるんだ」

「それは…二人でアイツの店で飲んでたんだ。その時に」

「…」

「アイツが言ったんだ。私は前から人間と楽しく酒を飲んで他愛もない話してはしゃぐのも好きなんだ。でも拒まれ続けた。でもな、アイツは違った。怖がるどころか楽しいから好きって言ってくれたんだ。初めてだった男にそんな事言われたのは。抱きしめられて嬉しかった安心した癒された。アイツには好きって何回か言ってたけどその瞬間から特別な好きに変わっちゃったんだよ」

「…」

「それに…。『大丈夫ですよ。伊吹さんが俺の事嫌いになった時は無理になるかもしれませんけど、俺から嫌ったり逃げたりする事はないですから。都合が付けば俺で良ければいつでも飲みの相手になりますよ。俺、伊吹さんと飲むのは楽しくて好きですから』って。逃げないって。私といつでも飲んでくれるって。ここに居る間だけなのは頭では分かってたんだ。でもアイツが帰るのを聞かされてなんだか裏切られた気持ちになったんだ。もうぐちゃぐちゃなんだよ」

「…そうか」

 

萃香の気持ちは本物だ。アタシの気持ちが嘘かと聞かれたら決してそうではないけど、ここに居る鬼には比べるまでもなく負けている。きっとアタシじゃそこまで行けない。なら、アタシは友の応援をしよう。子の気持がどうなるかはわからないけど、少なくともアタシはこいつとアイツが幸せになって欲しいとも思った。

 

少しの間だったけど、いい夢を見れたねぇ

 

「それでアンタはどうしたいんだい? 」

「わからない。会いたいけど会いたくない。アイツと飲むのも、アイツの事も好きだ。でも、いっしょにいたら嫌でも別れを意識しちゃうだろうから…」

「いい加減にうじうじするのはよしな‼ 」

「ゆうぎ…」

「アタイらは何だい? 天下無双の鬼だぞ! いつからそんなに臆病になった! どんなにきつくても真っ向から向かい合って何とかするのがアタシらのやり方だろ! 」

「でも…今回は…」

「でもじゃない‼ 」

「うるさい!勇儀だって仁に惚れてるくせに!」

「あぁ、そうさ。あたしは話したことも少ないがアイツの肝の据わってるところが好きだ! 面白い事が好きで最後まで飲み合ってくれるアイツが好きだ! アタシは鬼だ! アンタがうじうじしてる間にアタシが奪っても良いんだな! 」

「それはダメだ‼ 仁は私のだ! 他の誰かに取られるのは死んでも御免だ! 」

「そうだその意気だ萃香! 何を怯える。アイツの言葉を、アイツの事をアンタ自身で全部嘘にするつもりか! 」

「そんな事絶対しない! 仁は本物なんだ‼ 本物の私が恋した人間なんだ‼ 」

「…よし。それならその恋した人間からの伝言だ。時間は19時、無名の丘待つってね」

「それって…」

「あぁそうだ。アンタの愛しい人は何とかしたくて色々考えてたって事さ」

「でも…」

「あのな。まだなんかうじうじしてるのかい」

「違うよ!勇儀はそれでいいの? 」

 

 

は~、ここでそれを言ってくるかねぇ。萃香の察しの良さが悪い方向に働きやがったよ。

アタシは良いんだよ。あんたを徹底的に応援する事にした!そうすぐ言えたらよかったんだけど…。

 

「…」

「無理しなくてもいいんだよ」

「無理なんかしてないさ。ただ、何でアタシにそんなこと聞いてきたのか不思議に思ってな」

「だって…」

「良いんだよ。アンタはあたしを応援する事にした。鬼に二言はない。でもそうさねぇ。ただちょっと応援してやる代わりに協力してほしいんだけど…」

 

小さな復讐くらい許してくれるよな。

 

 

 

**********

 

 

 

そこからの話はまぁ、そう言う事だ。萃香には落ち込んでいるふりをして貰って感情的に話して貰った。

萃香は不思議そうな顔をしてたけどこれには意図がある。

まず仁に対しての小さい復讐で恥ずかしい事でも引き出してあと肴にでもしてからかおうと思った。

そして萃香には、その引き出されるであろう恥ずかしい事を素面の状態(年中飲んでるアタシらに素面なんてあるとか言ってはいけない。要はそういったようないつもの状態でって事だ)で聞いてもらって恥ずかしい思いをして貰って横で笑うって算段だった。

 

でもねぇ。そう言えば忘れてたわ。初めて会った時もきれいとか臆面もなく言ってくる奴だった。って事普通言うのが恥ずかしそうな言葉がフツーに出るのな。こっちが恥ずかしかったさね。ましてや抱いて頭撫でるなんてどこの女たらしだい!(少し羨ましいと思ったのは内緒だけどね)

 

んでもって萃香は萃香でアイツ引きはがしてアタシと二人になった途端

 

「恥ずかしい、でも嬉しい。どうしよう、何かめっちゃくちゃドキドキしたんだけど。どうしよう仁の顔まともに見れるかな」

 

とか開口一番それだから呆れた。あぁ、なんかすごく負けだ気分になったわ。

あ~、やってらんないね。今晩は酒を浴びるように飲んでしまいそうだ。いつも以上にね。

 

でも、二人が幸せになればいいなとより強く思ったのも内緒だ。

 

「ほらいつまでも照れてないで行くよ。私は早く酒盛りがしたいんだ」

「うん。ありがと、勇儀!」

 

まぁ、こいつの笑顔も戻ったし、良しとしよう。この時はこのまま穏やかに終わってくれるとそう思ってたんだ。

 






毎度の事ながら最後まで読んで頂きありがとうございます。

私事ではありますが、ありがたい事に応援もあり五個くらい書いたら終わるつもりが一年続ける事が出来ていました‼いやぁ、こんな未熟も未熟で、稚拙な文章とお噺なのに…と少しまで思っていました。いや、今でも未熟だったり拙いとは思ったりしますけどね。

とにかく最近ではちょいちょいいい感じの感想頂けたりして嬉しかったりして、「誰かに面白いと思って貰えるような物が書けているんだなぁ」とちょっとした自信に繋がったりとありがたいですね。やっぱり書いている以上読者がいないとここまでやれてないですから。

と言う訳で読者の皆様、本当に一年間ありがとうございました。まだ本編は終わった訳でもないですが改めてお礼を。もし少しでも楽しんで頂けたら幸いです。そしてもしよろしければ何卒今後の応援もよろしくお願いします。

それではこの辺で今回はお別れです。本当に嬉しい事なのでもう一度。一年間ありがとうございました‼次のお噺でお会いしましょう。さようならさようなら。

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