長々、語ってもあれんあので、さっそくどうぞ。
「はっ、知らない天井だ‼」
起きての一言がこんなのもどうかとは思うが、記憶の最後に会った外ではなくどこか屋内に運ばれたようだ。
おそらく、水・・・・何とかさんが運んでくれたのだろうか。
「っいつつつ、おぉ、包帯が巻いてある」
もう治療済みと言わんばかりに包帯が巻かれていた。
強打したせいかかなりの大きな痣と腫れが出来たみたいだ
少し薬っぽい匂いもするし、処置が終わってからしばらく眠っていたみたいだ。
暗かった空も、明るくなっている。窓から見える太陽の高さ的にもお昼くらいかなって感じだ。
え?12時間以上寝てたって事か!?寝すぎだろ‼
薬のおかげか痛みもかなり和らいでいるが、あれだけの痛みを和らげるとか危険なお薬とかじゃないんだろうか。
俺はまだポリスメンのお世話にはなりたくないぞ。いや、一生お世話になりたくないけどさ。
なんて思っていると、急にトイレに行きたくなった。
しかし、人のうちのトイレを許可なく使うのは気が引けるので―――――――
「すいませーん、誰かいませんかー。トイレ使いたいんですけどー」
「勝手に使えばいいじゃない。いちいち確認を取るなんて律儀で妬ましい」
「妬まれる理由がおかしくないか!?まぁいいや。ちょっと借りさせてもらう」
~~~トイレ中~~~
スッキリした~~~。焼肉の分も出たな。お腹が軽い。
「さて、えーと、お嬢さんが助けてくれたので良いのかな?」
「水橋パルスィよ。覚えなさい」
「水橋さんが助けてくれたと」
「あなたが倒れた後、何とか私の家まで運んで医者に診て貰ったわ。全治4日の絶対安静だそうよ。人間の治癒力じゃその程度でしょうね」
「そこまでしてくれたのか。いくらかかった?」
「お金はいらないわよ。いいから休みなさい。絶対安静なんだから」
「いや、金はいっぱいあるから払うよ」
「財布見たけど外の通貨じゃない。ここじゃ使えないわよ」
「人の財布の中勝手に見たんですか⁉」
「あなたに払わせようと思ったからね。あれだけお金持って歩いてるなんて妬ましい」
「うーん、まぁいいか。なら貸しにしといてくれ。しばらくはここに居るつもりだからいずれ何らかの形で返す」
「・・・・期待せずに待ってるわ。ところであなた行く当てはあるのかしら?」
「あるように見えるか?こう見えても俺は行き当たりばったりで生きて来た男だぞ」
「自信ありげに言うことではないわね。まぁいいわ、怪我が治るまではここに居ていいから」
「俺としてはありがたいけど、見ず知らずの怪しい男を泊めて大丈夫か」
「わざわざお手洗い使うのに確認するような男なら大丈夫でしょ。私はすることあるからもう出るけど、あなたは休んでなさいよ。夜になったら帰ってくるから、お腹がすいたらそこの果物でも食べてて。それじゃ」
行っちゃったよ。とりあえずお言葉に甘えて果物食おう。腹減ったし。
籠に入ってないあたりわざわざ買いに行ってくれたんだろうか。
冷たいようで優しいなぁ。その優しさが心にしみるよ。きっと普通の男だったら惚れちゃうね。
林檎1個にミカン2つにバナナ5本か。違う世界とは言えあっちと同じ食糧があるっていうのは安心だな。
とりあえず、リンゴから食べよう。って包丁ないな。丸かじりでいっか。
「しかし、幻想郷ねぇ。異なる世界に来たのかぁ。夢みたいな本で読んだみたいな話だな。そんな事ってあるんだなぁ」
「まぁ、夢でもなんでもなく実際に起こった話だものね」
「そうなんですよね。で、どちら様ですか?」
「あらあら、私のこと知らない?」
「知らないですね。そんな紫の中華風の服を着た人なんて」
過去にコスプレする後輩はいたが、それに等しい恰好がデフォの人なんて知らん。
ましてや俺の女性の家族ないし親族以外のの知り合いなんて片手で数えられるくらいしかいない。
「ま、会ったことないから知らなくて当然ね。私は八雲紫よ、よろしくね」
「はぁ、鷹崎仁です。よろしくお願いします」
「いきなりだけど、仁君は何か困ってることとかありそうね」
「そうですね。まずなんでこっちに来ちゃったのかって事ですよね」
「なんでかしらね~。皆目見当もつかないわー」
「正直それよりも、とりあえずこっちの金を得ない事には生活に困るのでどうしようって感じですけどね」
「外のお金とここのお金交換してあげましょうか?」
「本当ですか⁉ありがとうございます‼とりあえず30万円交換してください‼」
「ちょっと、落ち着いて。30万円分って大金を交換するのね」
「ここの物価が分からないのでとりあえず多めに。多くて困る事ってないと思うので」
「ずいぶんあっさり私の言葉を信じるのね」
「えぇ、まぁ、そうですね」
「普通は疑うものだと思うけど」
「まぁ、この場面でそんな嘘ついても八雲さんに得なんてないでしょ」
「偽物のお金と交換するかもしれないわよ?」
「そーゆーこと言ってる時点でしない人だとは思いますけどね。そうだったとしたら、その時はその時って事で」
正直今は勝手知った場所じゃないから頼れるものは頼っておきたいって感じだしな。
「ふーん、じゃあ、これ30万円分のこっちの通貨ね。基本あなたの居た所と同じだから困る事はないと思うわ」
「じゃ、30万です。ってほとんど一緒ですね。細かい所とか違いますけど、お札と硬貨で変わらなさそうで安心しました」
「さて、ちょと気分が良いからわかる事なら何でも教えてげるわよ」
八雲紫さんがそう言ってくれたので遠慮なく聞きたい事を聞きまくった。
気絶する前に軽く説明聞いたような気がするけど、とにかく知らない事の方が多いから、情報は出来るだけ多く仕入れておきたい。
なるべく負担にならないよう雑談を交えながら話したけど、途中から八雲さんから疲労が見えたような気がする。
きっと気のせい。そう、決して俺が気になったことを聞きまくったから疲れたとかじゃないだろう。
「結構話し込んじゃいましたけど、八雲さんは時間は大丈夫ですか?」
「ん、えぇ、時間は大丈夫よ。時間は・・・ね」
「なんだか変に意味深長って感じですねぇ」
と、八雲さんが後ろを指さし、見ろと言わんかのように指を動かしていた。
あっれーおかしいなーなんか変な汗が出てきたぞー。少し怖いけど後ろを見ることにした。
「はっはっはっ、何ですか辺に後ろなんか指さして。驚かそうとでもしているんですか?ここには俺と八雲さんしかいませんよ。まぁ、居たとしたらここの家主くら・・い・・・・」
俺の後ろには鬼のように怒った家主その人が。
あれー、何でそんなに怒ってるの⁉俺、安静にしてたよ⁉
「やぁ、おかえりなさい。水・・・えっと・・・そう‼水橋さんですよね。落ち着いてください、お願いだからその手に持ったネギ振り下ろそうとするのはやめて貰えませんか‼」
「人が仕事してる間に他人の家で女とイチャイチャするなんて良い度胸してるじゃないの。妬ましい」
「え?同居人じゃないの?しれっといたからってっきり同居人かと思ってました。八雲さんってここの人じゃ・・・・・ってぇぇぇ⁉あれ?八雲さんは?」
「いなくなったみたいね。・・・さて、大人しくしてたかしら・・・・・って果物なくなってるじゃない。全部食べたの⁉」
「いやーつい、お腹減ってたんで食べちゃいました」
「それだけ食べられるなら体は大丈夫そうね。」
「おかげさまで何とか。治療費とか払いますね。どれくらいでした?ってもどれだけかわからないのでとりあえずこれだけ渡しておきます」
とりあえず3万円くらいで良いかなと思い、渡した。
「いらないわよ。これからの生活のために取っておきなさい」
「いやいや、そういう訳にもいきません。ご迷惑おかけした分の対価は払わないと」
「いやでもあなたお金持ってないじゃない。外の通貨貰ってもどうしようにもないんだけど」
「大丈夫ですって。交換していっぱい持ってますから。こうやって面倒見てもらってるのに代金も払わないなんて申し訳ないですし」
結局、お互いなかなか譲らないので、渡すのに苦労した。最後は水橋さんに折れてもらったけどね。
まぁ、その後に八雲さんを何を話していたかとか根掘り葉掘り聞かれたことの方が大変だった気がする。
「はぁ、もういいですか水橋さん。さすがに疲れました」
「もういいわ。貴方が何を話してたかはもうこれ以上聞けるものはないでしょうし」
「最初から正直に話してますよ。なんかいも聞いてきたのはそっちじゃないですか」
「それは・・・まぁ・・・。とりあえず脱ぎなさい」
「え?恥ずかしいんでちょっと・・・。しかし、まさかこんな美女に脱げなんて言われるなんてなぁ。人生捨てたもんじゃないな」
「怪我してる所に薬塗るだけだから、馬鹿な事言ってない脱ぎなさい・・・って噓でしょ‼」
そんなに驚くことがあるんだろうか。全体的に薄めに痣があるくらいで、見た感じ悪化はしてないように見えるけど。
「え?なんかおかしなことでもありました?もしかして悪化した感じですか?」
「いや、悪化じゃなくて、何で何でこんなに早く治ってるのよ・・・・」
「いや、最初がどんな状態かわからないので何とも言えないんですけど、薬のおかげじゃ?すごく腕のいい薬師さんなんでしょう?」
「そうなんだけど、一面痣だらけの酷い状態だったのにどうして・・・・・」
(考えながらも薬を塗ってくれる水橋さん。やさしいなー。正直自分で塗れるけど滅多にない経験としてありがたくしてもらうとしよう。正直めちゃくちゃ緊張するが、若干背中にもあるみたいで塗りにくい所もあるようだしね」
「心の声が漏れてるわよ。はい、おわり。とりあえず晩御飯作るから待ってなさい」
「すいません、正直者なんで。あ、1つお願いがあるんですけど・・・・」
「なによ?」
「晩御飯、俺に作らせてもらえませんか?」
「いいけど・・・・。作れるの?」
「えぇ、ま、それなりには。って訳でいいですか?」
「なら、好きにしなさい。台所にある物は何でも使っていいから」
「それじゃさっそく。楽しみにしててくださいね」
「それなら期待して待ってるわ」
自分で言っといてなんだけど、期待されると緊張するね。
さて、食材は一般家庭の例倉庫にありそうなものはだいたいそろっていた。調味料も問題なくある。
正直水橋さんがどれくらい食べるかわからないけど1汁3菜にしよう。
あと、和ものっぽいお皿とか多いから和風なほうが良いかなぁ。
そうと決まれば、話は早い。終えれは凝ったものも作るのが大好きだけど、1人暮らしで学業部活とやっていると時間に余裕はない。ので、手早くおいしいものを作ることも出来る。今回はその中間みたいな感じだ。
「さぁ、お待たせしました。食事が出来ましたよ」
「まぁ・・・」
〈メニュー〉
・炊きたてご飯
・豆腐とわかめの味噌汁
・塩あんかけ豆腐
・鶏胸肉のショウガ餡かけ
・ほうれん草のからし醤油和え
メインが和風かと問われれば微妙だからツッコまないでくれ‼
「結構おいしそうじゃない。妬ましい」
「妬ましいって・・・・。さ、温かいうちに食べてください」
「「いただきます」」
うん、今日もおいしくできてるな。しかし、釜でご飯を炊くことになるなんて貴重な経験だったな。うまく炊けたようで安心した。ってこれからしばらく釜生活科か・・・・・。
みそ汁はいつも作ってたものだから問題なくできているはず・・・・。うん、おいしい。
ほうれん草のからし醤油和えはいい感じの塩気と辛みが鼻を抜ける。どちらかと言えば酒が欲しくなる一品。
塩あんかけ豆腐は、塩餡をかける前に表面を少し焼いているので、香ばしくもダシの味がある塩餡にって美味しい。余っていたらしい柚子をしぼって入れたの良かったかもしれない
鶏胸肉のショウガ餡かけは、醤油・白だし・ショウガ・水で出来る。簡単だけど結構おいしい。
胸肉は水気をとって一口大に切り、筋を横断する切込みをいれ片栗粉をまとわせて、茹でるだけ。そうすると片栗粉のもちもちした感じと胸の柔らかさが良い感じになる。俺はこの鳥を茹でた汁で餡作るんだけどね。この料理は結構俺の仲でお気に入りの料理だったりする。個人的には鶏胸肉食う時の最高の食べ方だと思ってる。
水橋さんが満足してくれればいいんだけど・・・・。って睨んでいらしゃる。
口に合わなかったかな?それとも少し量が多かっただろうか?
「水橋さんそんなに睨んでどうしたんですか?お口に合いませんでした?」
「いえ、そんな事はないわ。とてもおいしいけれど・・・」
けれど?
「美味しすぎて負けてる感じが嫌なのよ‼妬ましいわね‼」
「えぇ~~~。おいしいもの作って妬まれるって・・・・」
「何よ?文句ある?」
「いいえ、むしろ褒めことでしょ。そんだけ美味いって思って貰えたって事ですから」
「ふーん、あなた変わってるわね」
「よく言われます。自覚もありますけど」
「なおさら変な男ね」
「えぇ、ま、これで20年生きて来たんで」
「20年⁉」
「はい、20年ですね。20歳なので。そんなに若く見えませんでした?」
「えぇ・・・。悪いけどもう少し上だと思ってたわ」
「それも良く言われます。気にしないでください。自覚あるんで」
「へぇ~、そうなのね。妬ましい」
「何が⁉」
こんな感じで、お互い手探りな会話をしながら、食事か終わった・・・・・。
これを機にとは言わないが、少しでもお互いの事を知って仲良くなれるならそれは悪くないなとは思った。
やっぱ俺って若干老けて見えるんだなぁ・・・・・・。
最後まで読んでくださりありがとうございます。
今回で2話目なのでだいたいわかっていただけたかと思いますが、こんな感じで進めていきます。
間違いなどあったら遠慮なく指摘お願いします。
もし面白いとか好きだよって方がいてくれれば幸いです。・・・・応援メッセージとか送ってくれてもいいんだよ?
はい、すいません。調子乗りました‼
この物語を楽しんで頂けるよう頑張ってまいりますので、次回もまたよろしくお願いします。