いや~本当に忙しかった。課題やら遠征やら。
夏休みと言いながら休みがなかったので秋休みが欲しい所ですね。
なんて冗談はそこまでにしておき、楽しみに待ってたと言ってくださる方もいらっしゃる・・・・・・と良いなぁ
久々の本編更新になってしまいましたが、楽しんで頂ければ幸いです。
それでは本編へどうぞ‼
~無名の丘 六時半~
無名の丘は適当に散策したときに偶然見つけた人も妖怪もほぼ近づかない・・・・・と言うか俺以外の誰かが来ているのを見た事がないような場所だ。
今回のように誰にも邪魔されないような場所として使うにはもってこいだ。
そして月も良く見えるし、そもそもこの場所が鈴蘭が咲きまくっているから綺麗な場所なんだ。
少しゆっくりしたかったので早く来たが、もう月が見えていい感じだった。今日は満月。生きて見てきた中で一番綺麗な月かもしれない。
前から思っていた事ではあったのだが、俺はこの一ヶ月近く経つが何を得たのだろうか?
俺の中では多分何も得てはいない。ただ、俺は俺のやりたいようにやってきただけ。
では俺の与えた影響は?
これは多分ある・・・と思う。自惚れかもしれないけど多分ある。
まず、そもそもとしてこの世界では人間は妖怪を基本的に敵視していて、妖怪も人間を餌だのそんな感じで見ている。なので人間と妖怪の関係は基本的によろしくない。
しかし、俺は外の人間でありながら帰らずに暫く居座った事で多くの妖怪などと関わりを持ち、その中にはかなり仲良くなった人達もいる。と、言うか妖怪の中ですら嫌われたり恐れられたりするような妖怪たちの集まる地底で楽しく営業してるのが不思議なくらいなんだと霖之助などに言われる。
まぁ、この世界じゃ本当にイレギュラーなのだろう。
何回か人里から地底の間の道で妖怪から襲撃を受けた事もあるし、普通に騙されたりしそうになったりもした。
でも俺は妖怪を敵視しない。だって特に襲う事にも騙す事にも俺は嫌悪感とか恐怖とか特にないから。
つか人間同士でもやってる事と同じだろう。
欺きあい騙しあい必要とあらば犠牲にする。
生きていくってそんな物だろう?って思って終わるのだ。
話が逸れちゃったな。
まぁ、とにかく俺は妖怪などを嫌うことなくむしろ仲良くやってしまった訳だ。
これは店をやっていること自体は新聞効果もあってか人里に行けばちょいちょい声をかけられるようになった。
そこでは妖怪の事とかも良く聞かれたりする。
俺は仲良くやってるのもあるが、ありのままに話す。
それを聞いた人里の人は未知の知識が聞けると言わんばかりに興味津々に聞いてくるくらいだ。
人里自体はある意味閉鎖的な社会構造で成り立っているのだ。
まず俺の話したことによってある程度人里の連中の見識を変えた事となる。
閉鎖的社会構造において少数の異端の知識を持った者が出来るだけでも、その社会を破壊するに十分な力を発揮する事もある。
これに気が付いたのは話してしまってからしばらく経ってからだったので後の祭りと言うやつだ。
妖怪側にも与えた影響はある・・・・と思う。
人間の適応能力やこんな奴もいると言う事だけでも意外と大きいのではないだろうか。
俺と関わっただけとはいえ地底の環境に変化はあったと思う。
大きな変化で言えば地霊殿から出なかったらしいさとりさんが地霊殿の外に出てくるようになったことだろう。
地底の妖怪たちは最初は大きく驚いていたがもう一ヶ月も経てば多少は慣れたのか前より抵抗がなくなってきたようだ。まだわだかまりはあったようだけど。
心を読む覚り妖怪と読まれる側の妖怪。以前は距離をお互い近づけなかったものが、近づいたとは言わないでも許容できる範囲は広がったのではないだろうか。
細かい事を言えば襲撃を受けたりしたって事は何かしら妖怪サイドでは俺の影響力に何かしら手を打つ必要があると判断するようになったのではと思う。それが何のためかはわからないが。
たった一ヶ月こうして居ただけでこの世界のルールに影響を与えかねないかもしれない事になっている。
ここは居心地がいい。何だか懐かしいとさえ感じるくらいに。
けれど俺がこの世界から去らないといけないと強く思った理由は影響を与えたからではない。
正直この程度であればいずれ誰もが影響とさえ感じないようになる。
けれど俺にはそんな事よりも大きな事を起こしてしまう可能性がある。
それは・・・・・
「待たせて悪いねぇ。ちゃんと連れて来たよ」
「・・・・・・よう」
「久しぶり、萃香。来てくれて嬉しいよ。そして星熊さんもありがとうございました」
「あぁ、いいのいいの気にしないで。アンタとアタシの仲だろう?」
「そうですね。ありがとうございます」
「なんで私の事を呼んだんだ・・・」
「なんでってそりゃ店にも来ないし、かといってどこいるのかもわからないから連れてきてもらって一緒に飲もうかと思ってな」
「・・・・私はもうお前とは飲まない」
「・・・ありゃ、嫌われちゃったかね?」
「私は・・・お前の事は嫌った訳じゃない・・・けど・・・・・」
「けど?」
「お前の言った言葉が嘘に変わったから・・・・・お前と飲むのは・・・・嫌だ」
「まぁ、そうだよなぁ」
「アンタそれでいいのかい?」
「まぁ、実際そうとられてもおかしくないですからねぇ。俺の言葉は嘘じゃないけど、嘘のようなものになってしまった。結果としてみたら・・・・うん、まぁしょうがないんじゃないですかね」
「だったら・・・なんで私を呼んだ?」
「わかってはいるけどさぁ。あれは俺の本心で嘘偽りない気持ちで、間違えた事言ったつもりはないからね。傷ついてたら慰めたいとか、謝りたいとか。別にそんなんじゃ無くてな。嫌われた訳じゃないんだったら俺は一緒に酒飲みたいって思ったからここに呼んだってだけだよ」
「お前は・・・・私がどれだけ悩んでいると思ってるんだ‼私の気持ちも知らないくせに‼」
「確かに知らないな。俺は萃香じゃないし。出来たとしても今までの情報から推測くらいしか出来ないしね」
「もういい。帰る‼」
「アンタその言い方は!」
「それでも‼お前の事おもっと知りたいと、お前とまた楽しく飲みたいと!そう思ったからここに呼んだ‼最初から全て俺はやりたい事をやってきたし、言いたい事を言ってきた!そこに嘘偽りはない‼」
あの日言ったその言葉の意味が例え嘘のような物に変わってしまっても、それを言った気持ちに嘘はない。
『伊吹さんが俺の事嫌いになった時は無理になるかもしれませんけど、俺から嫌ったり逃げたりする事はないですから。都合が付けば俺で良ければいつでも飲みの相手になりますよ。俺、伊吹さんと飲むのは楽しくて好きですから』
確かに俺は言った。萃香からしたら今までの経験から外に帰る事は基本的にこちらに戻ってこない事が分かっていたんだろう。
だからそう言った、やっと見つけた飲める奴が自分の前からいなくなる。おそらくそれは逃げられたと感じてしまったのだろう。今までの経験もあって余計にそう感じさせたのかもしれない。
誰も責められないし、おかしい事はない。
誰にだって過去の辛い事や悲しい事から、時に物事を必要以上に大きく捉えてしまうことだってある。
そして今回偶々そうなったってだけの話だ。だからちゃんと話せばわかって貰える。
「俺から萃香を嫌ったり逃げたりする事はあらゆる全てに誓ってでも絶対にない。だから、お前も俺の事が嫌いじゃないならまた前みたいに楽しく飲もう。・・・・・・だから俺と飲むのが嫌だなんて悲しい事言わないでくれ」
「アンタ・・・・・・・」
俺がしたかった事、俺が伝えたかった事、これで俺の萃香にすることは終わり。
これでだめならその時は、もう諦めるしかない。
「うっぅ・・・・・・・・・うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」
今夜はまだ酔ってはいないけど、許してくれよ?
何に対して言っているのかはわからないけど、思った段階でもう体は動いていた。
俺はあの日と同じように伊吹さんの頭を撫で、小さな体に手を回し抱きしめ背をやさしく叩く事にした。
「何だかあの日みたいですねぇ。俺はあの日、誰も見せない萃香さんを俺だけが見られたと思って内心すごく嬉しかったんですよ。だから浮かれちゃったのと酒の勢いもあって柄にもなくかっこつけちゃったんですよね~」
「・・・っ・・バカッ・・・っぅ・・・・・」
「馬鹿ですよ。でも馬鹿なりに考えて必死に生きてるんです。何度でも言いますけど、俺のした事言った事全てに嘘偽りなく後悔もしてません。たから俺は萃香さんとの出会いも後悔なんてしないし、したくない。だから、俺は帰る事も一番に伝えました。過去に俺が感じたような、何も言われずにさよならはしたくなくて。萃香には笑ってサヨナラしたかったから」
「うぅっ・・・・・・・ごめん・・・・ごめんなぁ・・・っぅ・・・・・・・・」
「何で萃香が謝るんだよ。悪いことしたの俺じゃないの?」
「ぅつ・・・・・うぅぅぅぅぅぅぅぅ・・・・・・」
何だかよくわからんもんだなぁ
「はいはい、悪いけどアンタが慰めてたんじゃ萃香が泣き止まなさそうだからそこまでにしな」
「・・・・わかりました。じゃあ、あっちで準備して待ってるんで落ち着いたら来てください」
とりあえず、一件落着・・・・・かな?
*******
あれからどれくらいたったのだろうか?
しばらくして二人が来た。まだ萃香は少し顔が赤いままだったけど落ち着いたらしい
さてと始めますか!
「「「乾杯‼」」」
初っ端から鬼の酒はきついかもなぁ。美味いんだけどね。
「やっぱり、クるなぁ」
「何回か飲んでるんだろう?良い加減慣れても良いんじゃないかい?」
「そうだぞ~」
「ってもなぁ。本来これ人間が飲めるもんじゃないだろう?」
「とんでもない事になる代物だな‼」
「何で飲めんのかなぁ~。人間なのになぁ」
「それは分からないさね」
「だよなぁ。体が全体的に人間離れしたり、人間じゃ飲めないお酒を飲んでもなんともないし」
「いいじゃあないか。そのおかげで生き残れてる訳だし、アタシらと飲めてるんだからさ」
「それもそうなんだけど・・・・。なんかなぁ」
「それよりもさ、アタシは聞きたい事があるんだ」
「何ですか?」
「それはさ、何でアンタが急に変える覚悟を決めたのかって事さ」
「星熊さん・・・」
「勇儀だ」
「え?」
「アタシも一緒に酒を飲み明かす仲だろ・・・・・だから萃香だけじゃなくて私に事も名前で呼んでくれ」
「・・・・わかったよ勇儀。それで質問に答えると元々その予定だった・・・・って感じなんだけど?最初から休みの間だけ滞在するつもりだったからね~」
「それだけじゃないんだろう?」
「いやぁ、そんな事もないですよ?」
「アタシに嘘をつくのかい?」
「嘘って訳ではないですけどねぇ」
「何かそれ以外の事があるのか?」
「多分萃香と二人で飲んだ時に言ったとは思うけど。それじゃあ・・・・・天の原 ふりさけ見れば 春日なる 三笠の山に 出でし月かも」
「急に歌を出してきて・・・なんなんだい?」
「私と二人で飲んだあの夜にもそう言ってたな。・・・・・そんな男じゃないって言ってたけどやっぱり・・・」」
「違うんだよ萃香。この歌を詠んだ人は純粋に故郷に思いを馳せながらだったんだと思う。けど俺はやっぱりそうじゃない。・・・・・・・・・今日の月も綺麗だよな」
「?そうだけどそれがどうしたんだい?」
「綺麗だよなぁ。見惚れ着くらいにさ」
「そう、勇儀と萃香は綺麗だなぁで終わるのかもしれない。でもね。俺にはあの月は綺麗なだけじゃない。俺とこの世界の違いを感じさせる象徴みたいなものなんだよ」
「どういうことだい?」
「あの月は確かに構成されてる物質から地球までの距離とか一緒なのかもしれない。それでもね、俺の世界じゃ月に人はいないし、ましてやウサミミ付けた女もいない。同じであって同じじゃない」
「・・・・・・なるほどねぇ」
「勇儀は何か分かったみたいだけど私にはわからないなぁ」
勇儀にはわかったみたいだけど、萃香にはわからないみたいだ。
いや、かなり突拍子のない着地点な話だから分かるほうが多分少ない。
「じゃあ萃香に質問だ。この幻想郷には多くの妖怪や神様たちがいる。じゃその妖怪や神様たちは何でここに居る?」
「それは・・・・もともとここに居た外の世界に居られなくなったからじゃないか?」
「そうだね。俺もそう聞いてるしね。で、外の世界の知識や技術が多く備わっている俺が来た。その気になれば幻想郷の人里に知識や技術を伝え繁栄をもたらす事が出来る」
「それで?」
「今は違うけどもし俺が人里に肩入れするようになったら?すぐには変化ってものはないだろうけどね。三十年、四十年、もっと遅いかもしれないし、もっと早いのかもしれないけど俺がその気になれば外と似たような人里を作る事が出来る。そうしたらどうなる?外に居られないからここに来た、もしくはもともといた妖怪や神様にしたってこの世界ですらいられなくなってしまう。そうなる前に手は打ってくるだろうけどそれで人と妖怪が衝突したら?」
「・・・・それは・・・・・」
「今の人里とあまり変わらない状態なら人間の大負けだろうね。仮にそうなったとしたら人の感情や信仰を糧にしている妖怪や神は消える。もしくは大きく力を失いその他の者から淘汰される。では、もし人間が勝ったら?」
「人間が妖怪を淘汰する・・・・・⁉」
「そう。もし人間が勝つことになれば今度は恐怖の対象であった妖怪たちを徹底的に排除しようとするだろうね。どちらにせよ、待っているのはバランスが崩れた地獄だ」
「でもお前はそんな事はしないだろ?」
「今はね。でも今後何者かの口車に乗せられたとしたら?何かしらの能力で操られてしまったら?きっとそうなったらタダでは済まないだろう。もしかしたら俺は為政者となって萃香達の目の前に立ちはだかる事になるかもしれない。あり得ないと笑われるかもしれないけど、それでもないとは言いきれない」
「でも・・・・・」
「俺はそう言った未来を作ることも出来る人間だ。だからこそ元居た場所に帰らないといけない。例えどんなに楽しいから居たいと思ってもその可能性がある俺は居続けるわけにはいかない。さっきの歌は故郷を偲んで読んだものらしい。でも俺はそうはならない。だって・・・同じ月なのに違って、違うからこそ帰らないといけない哀しさを感じる。俺が言ったそうはならないって言うのはそういった意味もあったのさ」
「アンタも意外と考えてるんだねぇ」
「ほ・・勇儀の言い方だと普段の俺がまるで考えなしみたいだなぁ」
「そうは言わないけどさ・・・。思い付きで行動とか多いだろ?」
「確かにねぇ。まぁ、大体言うならそんな感じだよ。あの月を見て帰れる故郷を偲ぶんじゃなくて、帰らなきゃいけない覚悟を決めさせられた。たったそれだけ。・・・・それだけの事なんだよ」
俺はこの世界に居ちゃいけない。
きっと本当にそうなってしまった時、俺は人間として戦う事を選んでしまうだろうから。
それは嫌だ。こうやって飲んでいる萃香や勇儀、地霊殿の人たち、水橋さんに霧雨さんや霖之助とも道を違える。
そうなる前に帰らなきゃならない。だったら今すぐにでも帰ったほうが良いのかもしれない確かにそうなのかもしれない。でも俺はもう少しだけここに居たかった。だから、せめてもの妥協点としてギリギリの期間を設定した。
あれは、俺が帰るという決意で、枷でもある。
きっと最後まで口惜しいかもしれないけど。それは元々わかっていた事だから。
「・・・そうやってお前は一人で抱えて帰るのか」
「そんな大層なもんじゃないよ。俺が勝手にそう感じただけ・・・・。だからそれでいいんじゃないか?」
「ほんとにそんな感じで去るので良いのか?」
「いいんだよ。やりたいようにやって来てるしね~。むしろ俺がそこまでいていいのかって感じだよ」
俺は多分、この幻想郷から帰りたくない。
あっちよりも完全にこっちの方が居心地がいいからね。
だけど、そうあってはいけない。だからもしかしたらそうだからと言い聞かせてるだけかもしれない。
実際さっきのも本当に思ってる事なんだと思うけどね。
そうすると萃香が顔を俺の耳元に近付けてきて
「嘘つき」
と言い放った。
その後俺の顔の側から離れて笑顔ですぐに飲み始めたが、月明かりに照らされ、こっちに笑みを向けて酒を飲む姿は恐ろしく官能的で・・・・・・・・・・蠱惑的だった。
「んんっ、アンタはさ、もう少し自分の事を大切に思ったほうが良いよ」
「いや、ちゃんと怖いのとか痛いのとか嫌なんで避けてますよ?」
「そうじゃなくてだねぇ」
「もう少しでいいから自分を好きになれって事だよ‼」
バン‼
鬼の力だからフツーに痛い。
ってなんかこの感じ・・・・・。
「ふふっ」
「お?どうした?もう酔ったのか?」
「いや、今背中叩かれたので、初めて婦たちと飲んだ時の事を思い出してね。あの時叩いてきたのは勇儀だったけど。思い出したら変わってないなと思ってさ」
「それ褒めてるのかい?」
「褒めてるつもりだよ。ここでのいつもだなぁって安心できるからね」
「そうか‼とりあえず飲め‼」
「って萃香そんなにスレスレまで注ぐか⁉いや、飲むよ?ちゃんと飲むからそんな顔しないで・・・・・。あ、そうだ二人に渡しておきたいものが・・・」
「なんだ?なんかくれるのか?」
「何だろうねぇ。気が利いた物だといいけどねぇ」
「大丈夫‼どっちにあげるのも実用的な物だから・・・こっちの紙袋は萃香でこっちは勇儀だね、はい、どーぞ」
「ありがとね」
「サンキュー。おぉ?何だこの細い布は?リボンか?」
「そうそう。萃香いつも同じリボンだから偶には変わった可愛いのとか使っても良いかなって。赤、黒、ピングのレース付きの奴に、太めのリボンに切り込みを入れてそこから細いリボンを通して縞模様みたいにしたやつが二つで計五つのリボンセットさ」
「へぇ、こんなにリボンに装飾ってつけるんだねぇ」
「おぉ~、凝ってるなぁ。こんなに買ったら結構高くついたんじゃないか?」
「いや?そんなに大して布使った訳じゃないからそんな事もないよ。布自体はそんなに高くないしね」
「ん?これお前の手作り?」
「そうだよ。意外かな?」
「まじかぁ。お前何でもできるんだなぁ」
「萃香・・・・そんなに大げさに感心しなくても。一時裁縫にハマったりもしたからなぁ」
「えぇ、お前これそのまま売り物にできるんじゃないか、なぁ勇儀?」
「そうさねぇ。アタシはそう言った事には詳しくないから何とも言えないけど、確かに丁寧だし売り物になるのかもね」
「じゃあ、食事処が潰れそうになったら考えますかねぇ」
「じゃあ、アタシのにも期待できそうだね・・・・・・って何だい?」
「手ぬぐいです」
「ん?」
「だから、手ぬぐいだよ、勇儀」
「何で萃香には可愛らしい物でアタシは手ぬぐいなのさ」
「いやだって・・・勇儀に会った時とかっていつも風呂入った後か、酒飲んでるかだったからあんまり小物とか使うイメージなくてさ。じゃ何だろうってなった時に、地底って基本的に気温高めだったりするし、風呂上りとか酒飲んでる時もたまに汗ぬぐってるからさ。じゃあ、手ぬぐいが良いかなーって」
「うん確かにそうだけどさ・・・・。欲を言えばちょっともう少しねぇ・・・・」
「大丈夫布の模様はしっかり考えてあるから。紺地に桜が散ってるやつでしょ。それに薄い桃色の長めの奴でしょ。で最後に白地に赤い椿の模様が入ってるやつさ」
「へぇ、気が利いてるじゃないか」
「特に椿の奴はお似合いだと思ってね」
「そうなのかい?」
「椿の花言葉は確か完璧な魅力、女性らしさ、誇りとかそんなところだったはずだからね。勇儀に正しくぴったりかなって思ったんだよ」
「・・・・そ、そうかいっ?」
「なんでそこで上擦るんだ?」
「む~~~~~~~~~~~」
「なんで萃香はそこでむくれるのさ?」
「とりあえずその酒を飲め‼」
「え?飲むけどつまみながらゆっくりと・・・・・・」
「良いから飲め‼」
「イエスマム‼」
ゴクッゴクッゴクッゴクッゴクッゴクッ
「ふぅ・・・・。何でまたスレスレまで注いでるの⁉」
「良いから飲みまくれ!」
「えぇ・・・・・・」
何で片っぽは「そうかそうか・・・・・」って言いながら飲んでるわ、片っぽは急にむくれて飲ませてくるわ。
こんなはずではなかった。・・・・・・・・・どうしてこうなった?
~鷹崎仁 幻想郷滞在期間 残り 11 日~
********
~同時刻 地底 飲み屋~
ここは鬼や妖怪の中でも荒くれ物が集まったりする地底。
その中でも際立って恐れられている人物がいる。古明地さとりである。
以前の彼女は地霊殿の外から出る事はなかった。
しかし、最近の彼女は外部から入ってきた人間の影響か外にたまに出歩くようになっていた。
なぜ彼女が恐れられているのか?答えは明白だ。心を読まれるからである。
基本的に理性あるものなら心を読まれることを忌避する。それは妖怪でも神様でも例外なく。
いや理性がなくても恐れるのかな?本能的に。そこのところはどうでもいいや。
以前であれば出歩くことはなかったので怯える必要はよほどの事がない限りはなかった。
しかし出歩くようになっては少なからず警戒する必要が出て来た。
今までしなくてよかった心配をするようになると言うのは結構な負担になる。
私はそれを利用させてもらうとしよう。
偶然にもこの地底の飲み屋の一角に数名のその事に不満を抱いている鬼達がが集まっていたからね。
「ったくよぉ。今まで気にしなくても良かったのによぉ」
「しかも、嬉しそうな顔してるから余計に腹が立つんだよなぁ」
「そうそう、こっちがどんだけ気を遣ってるのかって話だよな‼おい、酒のお替りをそれぞれにもってこい‼」
「はい、ただ今~」
話しかけるなら今が良い頃合いだね。
「もし。そこの鬼の皆さんや」
「なんだお前?なんか用か?」
「ええ、僕はお守りやちょっとした装飾品などを売っているしがない小物屋を営んでいる者でして。お話が少し聞えたんでお声をかけさせて頂いたんですよ」
「へっ、小物屋に何ができるってんだ」
「いやいや、お力になれると思ったのでお声おかけたんですよ。どうやら心を読まれるんじゃないかと気にされているご様子。どうでしょう?わたくしの店の商品に心を読まれなくなるお守りと言った物がございまして、是非使ってはみませんか?」
「そんな都合のいい物があるのかい?」
「はい、完成しております。最近覚り妖怪が出歩くようになってると聞いたものですから準備した次第でありますよ」
「でもたけぇんだろう?生憎払う金はねぇ」
「いえ、お代は頂きません。と言うのもこのお守り試したので効果がある事は確認したもののほかの皆様にもお使いいただけるかはまだ確認できていないんですね。ですので皆さまが使えるか確認してくださると言うのであればこちらの方をすぐにタダでお譲りします」
「本当かい?それなら確認してやるよ。ここには三人いるから三人分貰えるんだろうな?」
「はいもちろんでございます。それではこちらの方どうぞ」
「へぇ、見た感じタダの首にかけるお守りだなぁ」
「えぇ、しかし効果はてきめんですよ。あ、ただ一つお願いと言うか注意がありまして。それを首に掛けたら何があっても外さないでください。効果が十分に発揮されない可能性がございますのでそこのところは絶対に守ってください」
「それくらいならお安い御用だ。どれ・・・・・・首に掛けても何かある感じではないなぁ」
「俺もだな」
「本当に効くんだろうな?」
「はい、もちろんですよ。ただ、心を読まれようとしない限りは効果は発揮しないのでいつも通り変わりませんよ」
「そうか、わかった。これを外さなければいいだけなんだな」
「左様でございます。皆様首に掛けてもらえたようなので数日したら効果のほどを聞きに来ますので、ここの酒場にだいたいこの時間にと言う事でどうでしょう?」
「いいぞ、何だか知らんがありがとうな」
「こちちらこそありがとうございます。それでは私はこれにて失礼いたしますね」
「おう、またな‼」
さて、目的も達成しましたし帰りますかね。
「店主、金はここに置いて行きますね。お釣りは要りませんので」
~~ 店の外 ~~
さて、これでおそらく数日後見に来た頃にはいい感じになっている事だろう。
さぁ、これに対してどう対応するのかなぁ。僕の知っている彼ならあの鬼達を容赦なく殺すんだろうなぁ。
久しく会っていないからなぁ。私も、僕も、とっても楽しみにしてるよ、仁。
毎度ながら最後まで読んで頂きありがとうございます。
あの歌をここまで引っ張ってしまいました。
いやぁ、これで萃香とのお噺である「反転芝浜 ~ 鬼と男とときどき酒と ~」の不明瞭な点が明らかになったのではないでしょうか?(そうなってるといいなぁ)
えぇ、ただの故郷を思うような男でないという意味以外にもこう言った意味があったんだよって事ですね、はい。
まぁ、反転芝浜の時にあとがきで書いた物とは意味合いは違いますけどね~。
それはそれでお楽しみに~。
さて、ここでいつもの宣伝を。
活動報告に質問用のフォームや人気投票用のフォームを作ったのでそちらもよろしくお願いします。またTwitterもやっていますので、しょうもない事をメインで言ってますが良ければよろしくお願いします。
宣伝はこれまで・・・・・と普段であれば言っているのですが今日はこれだけではございません。
Twitterの方をフォローしてくださった方には結構前にお伝えしてはいたのですが改めて。
東方与太噺の同人誌作成が決定いたしました‼
以前からやってみたかったというのがあります。が、応援してくださったり、本は出ないのかという声をくださった一部の方の為にもやってみようと決意した次第であります。
参加したいとと思っているイベントなどはTwitterの方で言っていたりします。
今後も同人誌関係の宣伝やちょっとしたアンケートなどもTwitterで行っていく予定ですので是非フォロー等よろしくお願いいたします‼
そして、最後にご報告。同人誌を作る事になった事により、加筆・修正や書き下ろしの執筆などの作業が増えた事により本編更新速度は今までのようにはいかないかもしれません。
楽しみに待ってくださっている方には申し訳ありませんが、それでもなるべく早く更新できるように頑張っていきたいと思いますので応援よろしくお願い致します。
それでは次話でまた会いましょう、さようならさようなら。