(○月×日の続きから書かれている)
俺のバトルも無事終了。スバメもよく頑張った。ぶっつけ本番だったものの、それなりに仕上がったと思う。いいセンスだな。
そしてヤルキモノの安定感。喜びのコロンビアは癖みたいだ。ナマケロの時と同じようなすっとぼけた表情で両手を掲げているのは笑えた。いい感じに嬉しいとやってる気がする。今までもバトルして勝ってきただろうに何がそんなに良かったのかと思ったが、そう言えば初の対人戦だった。
森暮らしだったからね。仕方ないね。
ハルカちゃんは俺のジム戦を見た後病院に行った。眼科だそうだが……心配だな。バトルの時に砂ぼこりでも入ったりしたんだろうか。俺も気を付けよう。
その後はショップでボールを補充してカナシダトンネル方面に向かった。捕まえられるポケモンは捕まえておきたい。
が、途中で呼び止められた。アロハシャツのメタボディのおっさん。そう、エニシダさんだ。ジムでのバトルを見ていてくれたらしい。おもしろいバトルだったそうだ。光栄だね。おもしろい、が滑稽っていう意味じゃないことを祈ってる。
でまぁ、思ったより盛り上がっちゃってバトルについて談笑してたら、独特な格好のお兄さんが走っていった。いや、逃げてたのかな?
で、それを追いかける見覚えのある研究員さん。気づかれて荷物取り返してくれって頼まれちゃったよ。
これ、俺の仕事じゃなくない? 別にいいけどさ。
エニシダさんに別れを告げカナシダトンネルへ。入り口の前にご老人。ハギさんだ。ピー子ちゃんですねわかってました。
バトルするのは少し面倒な気がした。上手く説得する方向で動いてみた。
駄目だったよ。あいつは話を聞かないからな。
今日はキノココの御披露目をした。キノガッサにきあいパンチができるんだからキノココにもできる。そう思ってやらせてたんだが、勢い余って壁にめり込んでしまった。要練習、だな。まぁ、無事に荷物もピー子ちゃんも取り返せたので良しとする。
研究員さんは大層喜んでくれて、デボンコーポレーションの本社に連れてってくれた(連行されたとも言う)。俺はポケモン捕まえたかったんだが。
途中でハルカちゃんを見つけたので一緒に連行した。
ポケナビをもらった。手紙を預かった。ムロ行き確定。まぁ、格闘タイプのジムリーダーに是非きあいパンチを見て貰いたいから良いけどね。
更に研究員さんから荷物を預かった。カイナ行きも確定。釈然としないでござる。
あとポケモンを捕まえた。エネコとツチニンとゴニョニョ。どんなメンバーにするか迷ったが、ツチニンの進化に備えてゴニョニョとエネコに外れて貰った。
そんな感じ。
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「レン君、ムロタウンにはどうやって行くの?」
「ハギさんに乗せてって貰う」
「誰?」
「キャモメ好きの船乗りのおじいさん……だな」
レン君にそんな知り合いが居たことにびっくりだ。昨日もデボンの研究員さんにすごく感謝されてたし。
「そう言えば、ハルカちゃん」
「何?」
「トウカの森ってカナズミ側から抜けるとどのくらい掛かる?」
「会った時みたいにやってればすぐじゃないの?」
直線で抜けられるのは大きいと思う。環境にはすごく悪そうだけど。
「あれは道がわからなかったからだ」
「そうなの? えーっと、確かカナズミからなら道沿いでも割と早かったと思うよ。でも、どうして?」
「ハギさんの家がトウカの森の向こうだから」
「……カナズミからの船を待つんじゃダメなの?」
「旅費が浮く」
カナズミシティを出る辺りに差し掛かると、見覚えのある人物が立っているのが見えた。
「あっ! ハルカ!」
お隣さんになったユウキ君だ。オダマキ博士の息子さんで私よりトレーナーとしてちょっと先輩。でも前にバトルした時は私が勝った。
「こんにちは、ユウキ君」
「こんにちは、元気そうだな。ポケモンは捕まえてる? 俺は結構捕まえたよ」
「ぼちぼちかな」
「そっかそっか……それで、君は?」
「俺はレン。通りすがりの短パン小僧さ」
レン君は普通に長ズボンを履いている。
「そうなのか。俺はユウキ。最近の短パンって色々あるんだな!」
「よろしく、ユウキ君。最近のトレンドでは逆に長ズボンを履くんだ。だから、君も短パン小僧さ!」
「そうだったのか! ありがとう! じゃあ俺も今後は短パン小僧を名乗るよ」
そんなトレンド聞いたことない。
ユウキ君はオダマキ博士に似てるのか、ちょっと抜けてる所があるんだよね。
「そうだ! 出会いの記念にバトルしようぜ」
「……オッケー! やろうか!」
「じゃあ、審判は私?」
ムロタウンに急がなくて良いの? まぁ、いいか。
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出番少ない上にヒーローでもないのに毎回遅れて登場するライバルに出会った。でもテンション上がってあること無いこと吹き込んでしまった。
そしたらバトルを挑まれた。笑顔だけど、もしかして怒ってるのだろうか? ここはせめて、満足できるバトルを提供せねば。
「じゃあ……使用ポケモンは、何体にする?」
「俺は何体でもいい」
「同じく」
「ならもう、私が決めるよ。……2体でいいね。じゃあ、どうぞ」
ハルカちゃん、進行が雑じゃないか? 別にいいけどさ。
「よし、行け! コータス!」
「コォォォォ!」
コータスの鳴き声で波紋の戦士を思い出した。それはともかく、見た感じあんまり育ってなさそうだ。この時期、行ける範囲でどうやってコータスなんぞ捕まえたんだろう。……チートか?
そんな筈ないよね。
「行け! スバメ! きあいパンチ!」
ボールを投げながら指示を出すというアニポケクオリティ。使わせていただきます。
スバメはボールから飛び出した勢いもそのままにコータスに向かって突っ込んでいく。
「スバメがきあいパンチだって!?」
驚愕を露にし、一瞬呆気に取られるユウキ君。
「迎え撃てコータス! 体当たり!」
ユウキ君の指示でコータスも動き出す。しかし、既にスバメのきあいパンチは準備が整っていた。きあいの込もったスバメの突撃。溢れるきあいは拳を形作る。
きあいとは真理。真理とはきあい。即ち、きあいパンチとは真理の一撃。
体当たりごときで止められる筈が、無い。
「コータス、戦闘不能」
「そんな……」
「スバメ、ナイスパンチ!」
「スバッ!!」
スバメも誇らしげだ。
「凄いパンチだな。でも、こいつはどうかな? 行け、ミズゴロウ!」
続いて出てきたのはミズゴロウ。ハルカちゃんはもうワカシャモにしてたんだが。……ペースは人それぞれだよね。
「続けて行くぞ! きあいパンチ!」
「引き付けてかわすんだ!」
スバメは矢のように、いや、拳のように突っ込んでいく。
が、ミズゴロウはユウキ君の指示に沿って、上手く避けた。バトル慣れしてるな。
対するスバメは、まだ経験不足感が否めない。きあいパンチも形になってきたばかりだからな。
だが、
「電光石火で回り込め!」
「っ! ミズゴロウ、後ろだ!」
「きあいパンチ!」
今度は、避けさせない。
「ミズゴロウ、戦闘不能」
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やっぱり、レン君は意味わかんない。なんかもう、スバメも普通にきあいパンチしてるし。
……いやいや落ち着くのよハルカ。あれはパンチじゃないでしょう? 確かに拳に見えたけどあれがきあいパンチだなんて……おかしいはずよ。
でも昨日の眼科では異常無しって言われたんだよね……。
「凄いなレン君! スバメがきあいパンチを使えるなんて!!」
「スバメだけじゃないよ。ポケモンは皆、すごい力を秘めているんだ。トレーナーである俺達は、その力を引き出してあげなくちゃね」
「そっか、そうだよな! 俺も頑張らないと!」
ユウキ君素直過ぎるんじゃない?
レン君がもっともらしいこと言ってるってのもあるけど。でも、だからと言ってレン君の言ってることを真に受けるのは不味い気がする。……きっと私の常識がそう言ってるのね。
「じゃ、俺行くよ。またなハルカ! レン!」
「あ、うん、またね!」
「おう。きあいパンチを覚えたくなったらいつでも言ってくれ」
ユウキ君は楽しげな笑顔で去っていった。……変な影響受けない内に別れたのはユウキ君にとって良かったのかな?
いや、それだと私はどうなるのよ。
「どうしたの? ハルカちゃん」
「あ、何でもないよ」
その後は特に問題なくトウカの森を抜けた。何だろう、何も無い方が逆に不安になる。こう言うの何て言うんだっけ? ……嵐の前の静けさ? じゃないと良いんだけど。
「ハギさん、入りますよ」
「こらこら待て待てピー子ちゃん。……ん? おお、レン君。そちらのお嬢さんはお友達かな?」
友達……? いや、うん、まぁ、友達だよね。一応。
「あ、はい。ハルカです。よろしくお願いします」
「よろしくな」
普通のおじいさんだ。なんかキャモメ追い掛けてたけど。レン君の意味わからなさからしたらひどくまともに見える。
「してレン君、わしの所に来たということは、早速海を渡りたいんじゃな?」
「はい、ムロとカイナにそれぞれ用事が」
「ムロにカイナか、任せなさい。わしに掛かればアッ━と言う間じゃ」
そんなやり取りの後、早速船に乗せてもらった。中型のボートだ。
そう言えば、気になったのでハギさんに聞いてみた。
「あっと言う間って言ってましたけど、そんなにムロタウンって近いんですか?」
「ん? いや、そんなに近くは無いなぁ」
「じゃあどうして」
「飛ばすからじゃよ」
「えっ」
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○月△日 晴れ
今日は━━━━━━━━━━━━━(急に引っ張られたかのように長い線が引かれている)
酔った(震えた字で書かれている)
読んで頂きありがとうございました。
これ更新するならホンダムも更新しろよとか思われてるかもしれませんね。でも、私にもマイブームとか、あるんですよ。
はい、そっちも頑張りますごめんなさい。