お前はまだきあいパンチを知らない   作:C-WEED

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5/28 さーくるぷりんと様、誤字報告ありがとうございました。


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 最初のジムがあるカナズミシティを目指してトウカの森を歩いていると、デボンコーポレーションの研究員さんに出会った。

 デボンコーポレーションと言えば、このホウエンで一番の企業。ポケナビとかを開発したのもこの会社だ。大手の会社なんだし冴えないように見えるけどこの人も結構なエリートなんだろう。

 

「あ! トレーナーさん! この辺でキノココ見てません? 私あのポケモン好きなんですよ!」

 

 初対面の私に対する一声目がこれだ。研究員さんて変わってるんだね。

 

「見てないです」

 

「そうですか……」

 

「頑張って探せばいると思いますよ」

 

「そうですよね! ありがとう!」

 

 そのまま草むらに入って行こうとする研究員さん。

 

「キノココ探してて良いんですか?」

 

「えっ?」

 

「いえ、荷物持ってるみたいだから」

 

 研究員さんの手にある荷物を指差す。研究員さんは手元に視線を落として目の色を変える。

 

「そうだった! 早くカナズミの本社に届けないと!」

 

 慌てて駆け出す研究員さんだったが……

 

「へっへっへ、見つけたぜ! おい! その荷物をこっちによこしな!」

 

 怪しい人物に行く手を塞がれてしまった。研究員さんはどうする? なんて。

 

「だ、誰ですかあなた!? 渡すわけないでしょう!?」

 

「うるせぇ! 渡さねぇなら力ずくで奪ってやるぜ!」

 

 そう言って怪しい人はポケモンを繰り出した。

 ……ポチエナか。怪しい人物の癖にちょっとかわいいポケモン使ってるなんて……。

 

「ぷっ」

 

 あ、吹き出してしまった。

 

「ああん?」

 

「あっ! トレーナーさん! 助けてください! 私今戦えるポケモン持ってないんです」

 

 言うが早いか、研究員さんは私の後ろに隠れた。いい大人が……カッコ悪。

 

「お前、さっき笑いやがったな? 喧嘩なら買ってやるぜ!」

 

 面倒だな。カナズミシティまでどのくらいかかるのかわかんないし。でも研究員さんがなぁ……。後ろに目をやると、研究員さんは生まれたての小鹿のように震えていらっしゃった。

 

 やるしかないのか。

 

「先手必勝! ポチエナ、体当たり!!」

 

 ポチエナが走ってくる。まだこっちはポケモン出してないのに。

 でも、まだポケモンを出していなかったのは幸運だったのだと思う。

 

 モンスターボールに手をかけたその時、轟ッ! という音と共に目の前を何かが通りすぎて行ったから。

 木々をなぎ倒しながらやってきたその何かに巻き込まれて、ポチエナは紙のように宙を舞い、木にぶつかった。

 見るまでもなく戦闘不能だろう。

 

「うん、良い威力だ。ナイスパンチ」

 

 声がした方を見ると、私と同じくらいの年に見える男の子とヤルキモノが立っていた。

 

「丁度人も見つかった。ツいてるね」

 

 彼らの後ろには、彼らが移動する時に邪魔だったらしい木が根本から折れて散らばっていた。

 

「俺はコブシ・レン。森暮らしの短パン小僧さ!」

 

 彼は長ズボンを穿いていた。

 

━━━━━

 

 旅立ちの日 晴れ

 

 俺達の旅立ちを祝うような快晴だった。

 森を歩く、と言っても俺達が居たのは道から外れた森の外れ。まともな道などない以上まともに歩けば消耗するのは当然だ。しかし町に降りると決めた以上そう時間は掛けたくない。

 

 誰かは忘れたが先人は言っていた。「歩いた後にどうのこうの」つまり、道は切り開くものなのだ。故に、キガヨケテル(物理)によって進んだ。避けられなかった木については察してもらう他ない。

 

 道中、人を見つけた。この世界に来る前ぶりの人だった。デボンコーポレーションの研究員とポケモントレーナーのハルカ。この二人もカナズミに行くと言うことだったので同行させて貰った。

 この組み合わせだということはアクア団だかマグマ団のイベントの後だったのだろう。

 

 研究員さんはキノココを見つけることは出来なかった。実はキノココを持っていることは内緒である。

 あとハルカちゃんはセンリさんのお子さんらしい。つまり、主人公だ。

 森の出口辺りでスバメを捕まえた。俺を追いかけてきたらしい。キガヨケテル(物理)に怒っていたのかもしれない。一応ポケモンとかは巻き込まないように気を付けてはいたんだが。取り敢えず、その執念が気に入ったので捕獲した。

 

 で、色々あったような無かったようなだが、無事、カナズミについた。

 

 文明万歳。ポケモンセンターって素晴らしい。声を大にしてそう言いたい。ポケモンを回復できて飯が食べられて宿泊もできる。ベッドで寝るとか森暮らしには想像もつかない贅沢だ。

 

 明日はジムに挑む。そう言えばハルカちゃんも一緒に行くらしい。主人公のお手並みを見せてもらうとしよう。

 

━━━━

 

「おはよう、ハルカちゃん」

 

「おはよう」

 

「じゃ、行こうか」

 

「うん」

 

 今一緒に歩いているのは、昨日のヤルキモノの人。コブシ・レンと言うそうだ。カナズミジムに挑むそうなのでご一緒している。

 

「そう言えば、どっちから挑戦する?」

 

「あー、俺は別にどっちでも良いんだけど……急いでる?」

 

「そんなには」

 

 早くパパに挑みたいとは思うけど、旅はしっかり楽しみたいからね。

 

「うーん、じゃあ、ハルカちゃん先どうぞ」

 

「何で?」

 

「カナズミに早く来れたのはハルカちゃん達のお陰だからね」

 

「そうかな?」

 

 あんな風に木を吹き飛ばしながらならそんなに時間は掛からなかったと思うんだけど。

 

「あ、もしかして」

 

「ん?」

 

「ジムリーダーのポケモン、偵察するつもりでしょ」

 

「そんなことするわけないよ。必要ないし」

 

 ジムリーダーに挑むのにそう言えるのは凄い自信だと思う。初めてのジム戦だって言ってたし。……でも、あのヤルキモノなら負けることはなさそうだよね。

 そんなことを話していたらジムの前に着いた。

 

「じゃあ、お先に」

 

「たぶん勝つとは思うけど、頑張ってね」

 

「はーい」

 

━━━━━

 

 ○月×日 晴れ

 

 一先ず見学なので書いている。

 カナズミジムに入って驚いたこと。ツツジさんがロリじゃない。もしかしてアドバンス時空なのか。そう言えばハルカちゃんもORASとは服のデザイン違うな。肩が出てる系ってことは、エメラルドかな?

 

 

 バトルが始まった。ツツジさんの初手はイシツブテ。対するハルカちゃんはワカシャモ。ハルカちゃんはアチャモ選んだんだね。ケッキングパパにも有利だし。ここでもまぁ、わりと、有利だよな。うん。イシツブテ相手は余裕そうだ。はい、勝ちですね。2体目もイシツブテ。ここも問題なく突破出来るだろう。問題は次なんだよなぁ。

 

 

 ノズパス登場。面倒だよね。なんかやたら硬かった記憶がある。ハルカちゃんはどうするのか……交代!? 別に何もおかしくなかった。成る程、キノココか。

 

 

 あとは省略して良いだろう。ハルカちゃんの勝ち。以上。

 次は俺だな。まぁ負けるとかありえないけど。

 

━━━━

 

 ツツジさんのポケモンの回復を待ってから、レン君がバトルフィールドに立った。

 

「先程聞いていたかもしれませんが、私はツツジ。カナズミシティジムのジムリーダーです」

 

「レンです。しがないポケモントレーナーですが、よろしくお願いします」

 

「良いバトルをしましょう」

 

「はい」

 

 やっぱりツツジさんの初手はイシツブテ。さっきそうだったし、変える必要もないよね。

 

「行け! スバメ!」

 

 えっ……。

 

 レン君の方は予想外。何でスバメ? ヤルキモノでいいじゃん。

 

「……あなたはタイプの相性を知らないんですか?」

 

「知らない筈ないでしょう」

 

「なら、わかると思いますが、スバメを出したのは間違いですよ」

 

 これはツツジさんに同意するしかない。レン君は何を考えてるんだか。

 

「それを判断するのはまだ早いです」

 

「……まぁ、良いでしょう。イシツブテ、体当たりです!」

 

「スバメ、きあいパンチ!」

 

 レン君は何を言ってるの?

 ほら、スバメも困惑してる。

 

「昨日教えたじゃないか! 頑張れ!」

 

 そんなことやってる間に、イシツブテの体当たりが命中。結構なダメージが入ってそう。

 

「スバメはきあいパンチを使えないでしょう」

 

「誰がそう言ったんですか?」

 

「誰が、というか、常識です!」

 

 でもレン君は譲らない。

 

「スバメ、もう一回だ! きあいパンチ!」

 

 やっぱりスバメは動かない。レン君の指示に応えようとはしてるみたいだけど、どうにもできないみたいだ。

 

「無理難題をポケモンに押し付けるのは止めなさい!」

 

「無理なんて誰が決めたんですか! スバメならできます!」

 

 レン君の考えてることがわからない。スバメにパンチは無理でしょ?

 

「スバメ、お前ならできる。お前だってヤルキモノのきあいパンチを見ただろ?」

 

 見ても出来ないと思う。

 

「ヤルキモノにできてお前にできないなんて、そんなことあるわけ無いじゃないか!」

 

 きあいパンチはできないよ。

 

「ヤルキモノとお前と、何が違うって言うんだ? お前には骨がある。体がある。口がある。目がある。お前とヤルキモノは同じなんだ。違う所なんか無いんだ!」

 

 骨格が違うと思う。

 

「もしかしたらお前はきあいパンチを履き違えているかもしれない。だから教えてやる! きあいパンチには、腕なんかいらない! 拳なんかいらない! お前には体がある! 魂がある! だったらきあいもあるんだ! きあいさえあれば、できる!!」

 

 もう何を言ってるのかわからない。

 

「もう見てられません。イシツブテ、岩石封じ!」

 

「お前の根性、見せてくれ! これでラストだ! きあいパンチ!!」

 

 スバメにイシツブテの放った岩が迫る。今度もスバメは動けないかも……えっ? スバメは岩を回避してイシツブテに突っ込んでいく。

 

「イシツブテ、体当たり!」

 

 イシツブテは転がりながらスバメを迎え撃つ。激突の瞬間。拳が見えたような気がした。

 

「見せて貰ったぜ。お前のきあいパンチ」

 

 イシツブテとスバメは相討ちで戦闘不能。でも、モンスターボールに戻る時のスバメは満足げに見えた。

 

 そこからの試合は、ヤルキモノのきあいパンチですぐ終わった。最初から出せばよかったのに。

 

 

「えーっと、お疲れ様」

 

「ありがとう。ハルカちゃんもお疲れ」

 

「(色々と)凄いバトルだったよ」

 

 そう言うと、レン君は嬉しそうに笑っていた。

 

 その後、レン君はポケモンセンターに行ってから色々とぶらぶらするそうだ。私は別行動を取ることにした。

 

「どこ行くの?」

 

「病院」

 

「風邪でも引いた?」

 

「違う違う。眼科だよ」

 

 レン君は心配そうだった。

 あと、眼科でツツジさんと会った。




読んで頂きありがとうございました。

書き貯めが尽きました。考えてみたら、一気に上げたら書き貯めておく意味ないですね。
……どうでもいいか。

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