お前はまだきあいパンチを知らない   作:C-WEED

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頭を空っぽにしてご覧下さい。


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 一日目 晴れ

 

 この世界での日付がわからないので一先ず、○日目、という表記をすることにする。まずは今日わかったことを整理しよう。

 

 ・ここはホウエン地方(推定)

 ・何処かの海に面した森

 ・きあいパンチが弱い

 

 改めて確認して悲しくなる。

 飯はローブシンのお陰で入手できた木の実。木の実はそんなに使ってなかったから名前はわからない。あまり美味いとは思えなかったが、一先ず空腹を凌ぐことはできたので良しとしよう。

 

 今後の方針は

 

 ・森を出る

 ・きあいパンチをどうにかする

 

 この二つが中心、かな?

 森を出ることに関してはそんなに難しくないと思う。鳥ポケモンでも仲間にできれば空から町を見つけてもらえる。海沿いだし、キャモメとかだろうか。どうせなら夢特性を粘りたい所だが、無理は禁物だろう。ボールも少ないし。

 疲れたので寝る。

 

 

 

 二日目 晴れ

 

 キャモメが飛んでいるのは見えたのだがこっちにこない。暫く待ったが俺が耐えきれなかったので、森の探索をすることにした。

 

 道中でクソザコナメク……ナマケロを捕まえた。

 寝ている所を見つけたのでボールを投げたら捕まったのだ。ナマケロからしたら寝て起きたら捕まっていたという状況なのだが特に何のアクションもなかった。こいつは大物になると思ったが、よく考えるとただ鈍いだけかもしれない。

 木の実をあげたらゆっっくりと動きだし、両手を上げた。喜びを表現しているのか……? コロンビアを思わせるポーズだった。某UCのBGMが脳内で流れた。可能性のナマケモノ……何を書いてるんだか。将来的に種族値の化け物になることを考えればそんなに間違っていない気もする。

 

 まぁそれはそれとして。ナマケロが生息してるということは、この森はトウカの森、ということなのだろう。トウカの森ってこんなに広かったんだっけ? ゲームと現実の差異といった所だろうか。いずれにせよ、森から出られればそう遠く無い位置にカナズミなりトウカなり町があるだろう。

 

 今日も飯は木の実。肉が食べたい。まぁ、町に行くまでの辛抱か。……何の肉なんだろう。肉ってあるんだっけ?

 

 

 

 三日目 晴れ

 

 筋肉痛で動けない。いや、動きたくなかった。ので、ローブシンのきあいパンチの実験をした。といっても大したものではないが。

 

 まず、ゲームと同様、攻撃を受けたら中断されるのか。

 ナマケロの特性もあってテンポは悪かったが、何とか協力してもらい実験した。試行回数は10回。

 結果、ローブシンは技を出すことが出来なかった。捕まえたばかりのナマケロのひっかくで中断されるタイプ最強技……。

 しかもローブシンは進化の最終形。対してナマケロは初期段階だ。集中ってなんなんだろう。

 

 次、攻撃以外の要因で妨げられるのか。PPのシステムがあるのかはよく分からないので取り敢えず3回ずつ行った。

 

 1、木の実をぶつける。

 

 場合によっては「なげつける」になってしまうかもしれないのでナマケロではなく俺が投げた。当たり所によるみたいだが、中断できた。

 

 2、くすぐる

 

 変化技にもあった気はするが、取り敢えず今回は俺がくすぐった。……中断できた。人間の手でできたってことはポケモンの技なら余裕だろう。

 

 3、足場を崩す

 

 適当に石などを積んだ上で溜めて貰った。積んだものを崩したら、中断できた。……正直、流れから考えるとこれはやらなくても結果は見えていた。

 

 結果を見ればわかる通り、思っていた以上に貧弱だ。ローブシンが悪い? そんな筈はない。意地っ張りな性格だ。ナマケロのひっかくで一回止められた時点でかなり頭に来ていたらしい。10回も繰り返したらそれはもう目も当てられない怒りようだった。それでも無闇に暴れない辺り流石といった所だろうか。

 

 あと、PPは特に気にしなくても良さそうだ。実験が終わった後普通にきあいパンチを4、5回木に向けて撃っていた。そう言えば、アニメでもきあいパンチ連打してるような奴が居たような。

 

 さて、実験で確認して、しみじみ思った。

 

 

 きあいって、何なんだろう。

 

 

 

 四日目 雨

 

 唐突な雨。傘を持ってないって本当に困った。町に行けたら買わなきゃな。

 いつもなら夜に日記を書いていたが雨の中では何もできないので昼間から書いている。早く止まないかな。

 今は木のウロ……には入れなかったので取り敢えず木の下に居る。何とか雨を防げてるけど勢いが強くなったらアウトだな。

 

 できることもないので昨日の続きでもしようか。

 

 きあいとは何か。

 きあいパンチ、きあいだま、きあいだめの中で使われる「きあい」

 これは如何なるものなのだろう。各技の説明を思い出せないが、きあいパンチは精神を高めてどうのこうのする技で、きあいだまは渾身の力とかで攻撃する技、きあいだめは集中力を高めて……急所に当たりやすくなるんだっけ。

 

 精神力の向上と格闘の強化の関係はまぁ、何となくわかる。集中する、というのはきあいパンチときあいだめに共通している所だ。結果が違うが。

 きあいだまは……あれも格闘最強技だよな。特殊の。波導弾と何が違うんだろう。いや、考えるまでもないか。波導は波導だもんな。でも波導弾が必中なのに対してきあいだまは70%……いや、この世界ならテクニック次第でどうとでも当てられるかもしれないが……どっちもきあいとか波導とかぼんやりしたものを纏めてぶつけてるのに、この差は……。

 

 きあいだまは色んなポケモンが覚えられるが波導弾は覚えられるポケモンを選ぶってのも一因か……?

 

 力任せに捻り出したエネルギーを球体にぶつけるのと、普通は感知出来ないエネルギーを操ってぶつけるのではまぁ威力、命中共に違うのも納得だな。

 

 とは言え、結局きあいが何なのかはわからない。要はパワーアップする何か、もしくはパワーそのものという認識なのだろうか。あやふやな認識できあいパンチを何とかできるとは思えない。

 

━━━━━

 

 日記(レポート?)を書く手を止めて、ローブシンに話しかける。

 

「きあいって何だ?」

 

 知らん、とでも言いたげに首を振る。やっぱり無口な奴だ。

 わからないものをどうして扱えるのか。

 俺も何か修行とかしたらきあいが理解できるようになるのだろうか。

 

「……精神修行、とか?」

 

 修行、と聞いて思い付いたのは滝行。丁度目の前には未だやむ気配の無い雨。どっちみち濡れるのは時間の問題か。

 

「ローブシン、荷物と服を頼む」

 

 パンツ一丁になり、木の下から出て、胡座をかいて座る。パンツが湿って気持ち悪い。いや、考えてみたら雨の中なんだから全身ずぶ濡れだ。

 雨の中、パンツ一丁で胡座をかいて目を瞑っている少年。字面でもうヤバい。おっさんじゃないのが救いなのだろうか。

 いかんいかん。集中しよう。

 

 

 

 どれ程の時間がたっただろう。随分と、静かな気がする。

 集中していると、何かが頭に浮かんで来た。

 

━━━もっと、熱くなれよ!!

 

 !?

 

━━━強くなりたくば、喰らえ!!!

 

━━━飛べよぉぉぉぉおおおお!!

 

━━━オンドゥルルラギッタンディスカーー!!

 

━━━俺は人間を止めるぞ! ジョジョーーー!!

 

━━━てめーらにはおしえてやんねーー!!!! くそしてねろ!!!!

 

━━━満足させてくれよォ!!

 

━━━なに、きあいパンチが弱い? それは、無理に強く撃とうとしているからだよ。逆に考えるんだ。弱くたっていいさ、と考えるんだ

 

━━━行け、ピカチュウ! 10万ボルトだ!!

 

━━━まずは、その幻想をぶち殺す!

 

━━━ディアバウンドの攻撃! 螺旋波動!!

 

━━━ッエーイ☆

 

━━━二度もぶった! 親父にもぶたれたことないのに!!

 

━━━オノォォォレェェェ!!!

 

 

 

 色んなものが浮かんでは消えていく……もしかして、これが、真理(きあい)……!

 

 色々おかしいのが混ざっていたような……いや、それすらも真理(きあい)なのだろう。真理(きあい)とは全てであり、全ては真理(きあい)。そういうことなのか……!

 

 こうしちゃいられない!!

 

 

 

 さて、あの日から何日たったんだっけか。どうでもいいや。

 今日は、修行の仕上げだ。浜辺で、海に向かって立つ。

 

「ローブシン、構えろ」

 

 ローブシンは拳を腰だめに構え、目を瞑った。集中、しているのだろう。だが、初めて見た時とは明らかに違う。その拳は光を放たない。その体はピクリとも動かない。体全体が一つの巌の如く、揺るがない、静かな姿となっている。

 

 やがて、カッ!! と目を見開いた。十分に力が溜まったのだ。

 

「きあいパンチ!!」

 

 指示が出た瞬間には、既に拳は放たれていた。ローブシンの拳は、音を置き去りにしたのだ。遅れて響く爆発音。

 

「パーフェクト」

 

 空気が、波が、弾けた。そして……海が割れた。

 

 きあいとは、力。きあいとは、心。きあいとは、魂。きあいとは……全て。

 

 きあいパンチとは、超越。

 

━━━━━

 

 何日目かは知らん 晴れ

 

 久し振りの日記だ。まぁそんなことはどうでもいい。

 真理(きあい)に至って以降、町に降りるとかどうでもよくなり、ずっと修行を行っていた。

 そしてとうとう修行が終わった。明日、町に降りる。カナズミのジムで早速バトルといこう。念のため、ローブシンは出さないことにする。……まぁ、出すまでもない、とも言えるかもしれない。

 

 これから、世界に目にもの見せてやろう。

 

 きあいパンチが最強であることを、証明する。

 




読んで頂きありがとうございました。

まだ、書き貯めが、あるんですよ。私にしてはすごく珍しいことです。だからなんだって話ですね。

次回をお楽しみに的な

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