前回のあらすじ
バシャーモ「シャモは二度蹴る」
オリ主「きあいパンチドーン☆」
池「ウボァー」
オリ主「皆も水ポケ、ゲットじゃぞ!」
そんな感じ
「泳いで渡るのも悪くないと思うんだよ」
「ならレン君は泳げばいいんじゃない?」
今日も今日とてハルカちゃんの対応は、……何だろう、ドライだ。
「うん、まぁ俺はそれでも問題ないんだけど。ハルカちゃんはどうするの?」
「確か対岸行きの船があったでしょ?」
「船も良いけどさ、海を泳いで渡るなんて、なかなかできないことだと思わない?」
「やりたいとも思わないよ」
もう少し乗ってくれてもいいと思うんだけどなぁ……こうなると、此方としてもドッキリをやる他ない。
指笛を吹く。すると、ハルカちゃんのモンスターボールからバシャーモが出てくる。
「じゃあ、手筈通りに」
バシャーモはハルカちゃんを肩に担ぐ。
「えっ……ちょっと、なにこれ?」
さて俺はオオスバメにでも……お? 俺も担がれた。これは想定外。大方俺もついでにウェイトにしようって腹なんだろう。
俺とハルカちゃんを担いだバシャーモは、海に向かって駆け出す。砂場が終わる。
バシャーモの足は海へと踏み出した。
━━━━━
「あれ? 沈んでない?」
バシャバシャと激しく水を弾く音がしている。
「ぶっつけ本番にしてはよく出来てるよな」
「ちょっとこれ……」
バシャーモの羽毛が邪魔で喋りずらい。
「下を見ればわかるさ」
レン君の言葉に従って、下を見る。バシャーモが足を素早く動かして水を弾いている。
「なにこれ……」
「走ってる、と言うよりは、水面を蹴っているって言うのが正解かなぁ」
色々と意味がわからない。
「船代が浮いて良かっごぼっ」
レン君の言葉の続きは想像できる。問題は途中で途切れてしまったこと。そう、沈んだのだ。
理由は、バシャーモが力尽きたから。
レン君は右肩、私は左肩に担がれていた。レン君が沈んだ。つまり、私も沈んだ。言葉が途切れたのはこのため。
「こんなこともあろうかとオオスバメに待機しといてもらって良かったよ」
悪びれもせずへらへら笑いながら服を搾るレン君。確かに助かったけど、この状況を招いたのもレン君だ。少しは反省してもらいたい。
あの後私は空中で待機していたオオスバメに回収され、対岸に運ばれた。バシャーモはちゃっかりモンスターボールに戻っていた。後でお説教しないと。
一方レン君は、いつの間に出していたのか、ヘイガニと競争しながら泳いできた。
浜に上がって最初の一言があれである。この一連の出来事はレン君が仕組んだもの、ということだ。
「何でこんなことしたの!?」
「バシャーモが修行したいって感じで俺に視線を送って来たから提案したらバシャーモが乗ってきただけだよ」
レン君はいつからバシャーモとそんなに仲良くなってたの!? ……ってもしかして、パパとのバトルで様子がおかしかったのも……。
「もしかして、トウカシティでも」
「きあいパンチは断られたからにどげりについてアドバイスはした」
はい確定。油断も隙もないのね。本当にいつの間に?
レン君による常識の侵略は私では止められそうにない。誰か代わりに止めてください。
「それよりハルカちゃんも服乾かしたりしないの? 風邪引くんじゃない?」
レン君がこっちを見ながら言う。確かに、服が海水で濡れて張り付いている。
「ちょっと、こっち見ないでよ」
「いやいや、その程度じゃあ、ねえ?」
失礼な話だ。いや、見ないのなら別に問題ないんだけど。
「……よし、こんなもんだろう」
レン君はまだ明らかに湿ったままのブラウスを羽織った。肌に張り付いて黒のタンクトップが透けている。
「まだ濡れてるじゃん」
「馬鹿とか馬鹿じゃないとか関係なく、俺は風邪引かないから問題ないの」
意味不明。だけど否定できるほどの根拠があるわけでもない。
「ん? あれって……」
何かに気付いたらしいレン君が走っていく。
「くしゅんっ」
私も服を乾かさないと。
「バシャーモ、火、お願い」
「あら、あなたはあの時の……確かレン君!」
「どうもお久しぶりです」
どうやらレン君は知り合いの人を見つけたみたい。
「時代はきあいパンチ! ……前にインタビューに答えて貰った時の答えよ。ちゃんと覚えてるんだから」
どうやらテレビの人らしい。そのインタビュー見たもんね。というか、色んな人を相手にする筈のインタビュアーさんにも覚えられてるとか……。相当印象が強かったんだね……まあ、それもそうか。
「じゃあ早速バトルですね!」
「……うん、そうね! やりましょうか!」
ちょっと間があったのはなんなんだろう。
「おーい、ハルカちゃーん」
えっ、私も呼ばれるの? 何で?
「お友達?」
「はい! 俺たち凄い仲良しなんですよ!」
……スマイルよ、スマイル。たぶんカメラ回ってる……? どっちにしても油断しちゃ駄目。
「ダブルバトルだよ! 初のタッグ戦だ」
毒されつつあるバシャーモみたいに、非常識が私のポケモン達に移ったらどうしよう……? ……バシャーモに戦ってもらおう。
「格闘タイプサイコー!」
バトル後のレン君のコメントだ。バトルでレン君が使ったのはレアコイル。技は言うまでもない。もう、どんなのが来ても驚かなくなってきてる。慣れてきてて本当に嫌だ。
考えてみると、レン君の言う格闘タイプは某技のこと、そうなると、前回のインタビューで答えてたことと大して変わらないんじゃないかと思った。けどそれを私が指摘しなくたって良いよね。だって疲れてるんだもの。
━━━━━
△月□日 雨
キンセツシティを出発して無理やり天気研究所まで来た。
道中マリさんダイさんに出会った。俺たち仲良しですって言ってやった。案の定ハルカちゃんは微妙な顔をしていた。
で、バトル→インタビュー。今回はハルカちゃんとダブルバトル。俺はレアコイル、ハルカちゃんはバシャーモだった。ダイさんのレアコイルの手本になるように、っていう俺なりの配慮。砂鉄のきあいパンチとかかっこいいよね。今日は急いでたから教えられなかったけど、今度会ったらその時こそ教えよう。
それはそれとして、道中海水でびしょ濡れになったものの、適当に乾かして進んだ俺の判断はそんなに間違っちゃいなかった。この雨ならどの道服なんて濡れる。
ハルカちゃんの服も張り付いている。そんなに高揚感はないが。メイちゃんクラスなら俺も喜んだろう。まあ、仕方ないね。スレンダーなのは悪いことじゃない。
俺はともかくハルカちゃんは風邪引かないといいね。
カッパも傘も持ってるけど黙っておいた。
橋を塞ぐアクア団と交渉を試みたけど通してくれなかった。ので、交渉(物理)か川を渡るかにしようかと思ったけど、どっちもハルカちゃんに止められた。流石主人公。真っ直ぐだね。
━━━━━
「おっ、ベッドもパソコンもあるじゃん。俺ここで待ってていい?」
「駄目に決まってるでしょ」
「ですよねー」
研究所の中にはアクア団がいっぱいいる。私だけじゃ相手してられない。
「通気孔にきのこの胞子ぶちこんだらすぐ終わるんじゃないかな」
何を言ってるのかわからない。
したっぱを倒して先に進む。
「オーッホッホッホ! われわれ……」
高笑いするおば……お姉さんが目の前にいるけど、今はそれどころじゃない。レン君がどこかに行ってしまった。
一体いつの間に……? それに、何の為に……まさか、私に任せて先に行っちゃったの!?
「……なっちゃう! やっつけてあげるわね!」
レン君がそんなことするわけない! なんて言えれば良いんだけど、しないとは言えないというか、レン君ならやりかねないというか……。
そうだったら、許せない。
「バシャーモ!」
「オーッホッホ! 強くて憎らしくなっちゃうわ! マグマ団だけでも目障りなのに、あなたどうして私達の周りを嗅ぎ回っているの!?」
いつの間に居なくなったの……入り口では居た。仮眠室でも居た。一階のフロアの時は居た。二階は……二階!
そうだ。二階に行く時に登ってこなかったのね!
「大変です! たった今マグマ団の連中が天気研究所を通過して送り火山方面に向かって行きました!」
「なんですって!? ……こうしちゃいられないわ! 我々も送り火山へ急ぐわよ! 全員移動の準備をなさい!」
「はい!」
考え事をしている間にアクア団は引き上げて行った。
研究員の人達からお礼を言われて、ポワルンというポケモンを貰った。可愛い。嬉しい。でも今はそれよりレン君だ。
急いで階段を下りると、レン君は普通に居た。何故か掃除道具を持って。
「何やってるの?」
「掃除じゃなかったら何なんだろうね? ……掃除とは何か、か……哲学的だなぁ」
「何で掃除なんかしてるの?」
「バトルしたら散らかるじゃん。ここ研究所だよ? 散らかってるのはよくないじゃない? 勿論、散らかったものを戻したりしただけだから、下手にいじったりはしてないよ」
「え、ああ、そう……」
「散らかしたら片付けるって、常識、じゃない?」
レン君もその後研究員さん達にお礼を言われて、ポワルンを貰っていた。なんか、レン君に常識を語られるのは、複雑だ。
天気研究所を後にして、ヒワマキシティを目指して進む。
「ハルカ! ん? レンもいるじゃないか!」
後ろから声がした。
「ああ、久しぶりだね」
ユウキ君だった。
「私はそんなに久しぶりじゃないけど」
「ここでポケモン探してたのか? ってそれより、レン! 久しぶりに会ったんだから、バトルしようぜ!」
「お、そうだな」
「前とは一味違うってとこを見せてやるぜ!」
一味、か……たぶんきあいパンチのことだよね……。
思い返せばあの頃はまだ比較的理解できるレベルだったなぁ……。
……ん? いや、待ってよ? あの時点でスバメのきあいパンチでしょ? 理解できてないじゃん。危ないわ、本当に慣れって嫌。
「ハスブレロ、メガドレイン!」
「きあいパンチ!」
今回は、いや今回もレン君はきあいパンチしか指示しない。指示を受けたオオスバメは、一旦ハスブレロから距離を取り、ドリルみたいに回転しながら突っ込んでいく。
スバメの頃より強そう。すごーい。
回転で攻撃を弾きつつ、確実にダメージを与えている。そして直撃の瞬間に拳が……。もう諦めよう。そういう技なんだ。私の目がおかしいわけじゃない。
「やっぱり強いな! でもまだまだ! マグマッグ!」
ユウキ君の二番手はマグマッグ。雨の中で戦わせるにはかわいそうなポケモンだ。じゅーじゅー言ってる。
「交代だ! レアコイル!」
出た。レアコイルだ。私はレアコイルが苦手だ。レン君のせいで。
「きあいパンチ!」
きあいパンチが気持ち悪いから。もうレアコイルがきあいパンチを使えることには突っ込まない。
レアコイルのきあいパンチは物理技だ。磁力を使って砂鉄を操ってパンチをする、というのをレン君に聞いた。
まあそこはいいとしても、使うときのレアコイルが……あ、やっぱり気持ち悪い。
腕が6本。通常U字磁石があるところに砂鉄が集まって腕を形成した結果、腕が6本生えているように見える。
おそらくコイルの時には腕2本だったんだろうけど、レアコイルだから三倍。気持ち悪さも三倍だ。
6本の腕から繰り出されるきあいパンチに、マグマッグはなすすべなく倒れた。
砂鉄であって本当の腕じゃないからこそ、本物の腕では不可能な動きをすることも気持ち悪さの一因だと、バトルを見ていて思った。
「流石レンだな! やっぱり強い。だが、こいつなら! 頼むぞヌマクロー!」
きあいパンチのヌマクローだ。あのきあいパンチがレン君に、レン君のポケモンに通じるのかな……?
「行くぞヌマクロー! きあいパンチだ!」
ヌマクローの拳が光る。
「へぇ……」
レン君は興味深そうな顔で見ている。指示を出さなくていいのかな?
ヌマクローの拳がレアコイルに当たる。効果は抜群、だよね。でもレアコイルは倒れない。
「きあいパンチでも倒れないのか……」
がっかりするユウキ君。
レン君は考え込むような表情で何も言わない。
「そのきあいパンチ……誰に教わった?」
「え……きあいパンチ親父って人だけど……」
え、誰それ。きあいパンチばっかり使ってきそうな名前だけど。
レン君の表情が微妙な感じになった。
「成る程な。戻れ、レアコイル」
レアコイルを戻して繰り出したのは、サワムラー。ホウエンには生息していない珍しいポケモンだ。……あんなポケモン持ってたのね。
「ごめん、バトルを続けよう」
「お、おう! ヌマクロー、もう一回きあいパンチだ!」
再びヌマクローの拳が光る。
「わかるか、サワムラー、あの技の歪みが」
サワムラーは頷いた。技の、歪み? 何言ってるの?
そうこうしてるうちにヌマクローはサワムラーに迫ってくる。
「見せてやれ」
「きあいパンチ!」
その
「せっかくだから、改めて自己紹介させてもらうよ……俺はコブシ・レン」
レン君はドヤ顔で言葉を紡ぐ。
「きあいパンチ親父だ」
……ハァ?
読んで頂きありがとうございました。濡れ透けですよ。嬉しかったでしょう?
実はサワムラーは今回出す気は無かった。その場のノリって怖いですね。
次回予告
ヒワマキシティへたどり着いた二人。しかし、ジムへ挑もうとする二人の前に姿の見えない何かが!(ヒント:カクレオン) 宙を舞うバネブーの真意や如何に!?
次回 お前だパンチ 第11話
決戦、愛の戦士バネブー!
明日の自分に、きあいパンチ!
今回の次回予告はちゃんとふざけられた気がします。