人間の私が吸血鬼の姉になるだけの不思議で特別な物語 作:百合好きなmerrick
あ、3話、題名通りのお話です。
少しずつ変わるナオミの心境。
まだこれは序章過ぎないのだが、まだ誰も知る由もない。
......まぁ、まだ3話だしね(メメタァ)
side Naomi Garcia
──リリィの部屋
「じゃ、リン。簡単な説明からお願いね」
私達はリンを呼び、リリィの部屋で魔法を教えてもらうことになった。
ここで教えてもらう理由は、リリィの姉が遺したアーティファクトや魔導書が沢山置いてあるかららしい。
「はい。まずは魔力......『マナ』と『オド』の説明からですね。
この世界には、自然に存在するマナ、それぞれの人の中に存在するオドがあります。どちらも、魔法を行使するために必要なものです。
行使する分には片方だけで充分ですけど」
「うんうん。基本的にはオドで魔法を行使して、マナは属性魔法とか使う時とか、オドが少なくなった時に使うんだよね」
「はい。オドは人によって量が違いますし、使う度に量が減りますから。減った分は時間経過や睡眠、食事で回復しますけど」
「......そう言えばさ、貴方は魔眼を持っているけど、ホムンクルスだからオドは持ってないんじゃないの?」
基本的に、オドは生命体しか持つことが出来ない。魔物であるアンデッドやゴーストは元々生命体だったため、例外だが。
「マナは扱えませんが、魔眼を付けられた際に人工の魔力器官を取り付けられたため、オドはあります。私は睡眠や食事を必要としないため、時間経過でしか回復はしませんが」
「ふーん......」
「では、話を戻しますね。魔法を行使するには、その魔法に必要な量の魔力と魔法ごとに違う詠唱が必要不可欠です。魔力は先ほど話したマナかオドのどちらかを必要とします。詠唱は魔法ごとによって違い、魔眼などのように詠唱を必要としない例外が多く存在しますので......まぁ、詠唱は魔法ごとに覚えていけばいいでしょう」
「ふむふむ......まぁ、取り敢えずさ、簡単な魔法から教えてよ。お金の判別でもいいからさ」
「はい、分かりました。では、まずはそれからですね。と言っても、詠唱が『ゴールド』という単語だけの簡単すぎる魔法ですけど」
その簡単な魔法も私は知らないからなぁ。正直、今まで贋金掴まされてたとしても、全然気付いてないと思う。
「......そう言えば、魔法なんてお姉さまに習ったこと一度もなかったなぁ......。姉様! 一緒に習おっか!」
「え? ま、まぁ、別にいいわよ。それにしても、貴方のお姉さんは凄い魔法使いだったんでしょ? どうしてお姉さんに習わなかったのよ」
「え、んー......私はただ、お姉さまと一緒に居るだけでよかったから、魔法なんて興味なかったのよね。
でも、姉様が魔法習うってなったら、私のことを放っておくでしょ? だからね、一緒に習ったら、放ってはおけなくなるでしょ?」
「なるほどね。その放ってはおけなくなる、っていう自信がどこから来るのか分からないことが分かったわ」
本当にこの娘の心理が理解できないわ。この娘のお姉さんも大変だったんだろうね......。
いやまぁ、妹も妹なら、姉も姉かもしれないけど。
「あはっ、またまたぁ、そう言って、構ってくれるんでしょ?」
「あぁ、はいはい。分かったから次行きましょ。リンさん、偽金ってあるの?」
「はい、ありますよ。判別魔法で判別出来る贋金が」
「じゃ、それを貰うわ」
そう言って、リンさんから贋金を受け取った。
私は贋金を握りしめ、『ゴールド』と呟いた。
「......うん、全然分からない」
「あらまぁ。ただ、呟くだけではダメですよ。魔法を行使するイメージを持って、魔力を身体に、物に流すイメージを持ってくだい」
「......あ、出来た」
リリィのその言葉に反応して、私はリリィの方を振り向いた。
一瞬の出来事だったが、リリィの手に握られた贋金は薄らと輝いて見えた。
「くっ、負けた......」
「あはっ、大丈夫大丈夫。姉様もすぐに出来るようになるよ!」
「......そう言ってくれるだけでも嬉しいわ。......ありがと。それじゃぁ、もう一度やってみましょうか」
次は、リンさんに言われた通りに魔法を行使するイメージを、魔力を流すイメージを持ってみる。
「......あ、姉様! 光ってるよ!」
「......えぇ、本当ね。これが、魔法......なんだね」
次こそは、はっきり分かった。これが偽物であるということ、魔法を行使出来たということが。
一番簡単だけど、初めて使った魔法。......うん、なんだか嬉しい。
「ふむ、ナオミ様。次の魔法に行きましょうか。次は召喚魔法です。理由は貴方様のオドの量を調べるためでございます」
「召喚魔法ね。......何を召喚するの?」
一口に召喚魔法と言っても、使い魔や武器、その他道具など、様々な物を召喚出来る。
あまりにも種類が多いため、召喚魔法を極めてる者は少ないとか。
「貴方様自身の身を守る武器を召喚して下さい。自分に一番合う武器は、召喚魔法で一番召喚しやすいので」
「ふーん......でも、私は武器とか持ったことすらないよ?」
「うんうん。私も武器なんて必要ないから、武器は持ったことないや。姉様と同じだね!」
「あぁ、うん。そうだね。でも、リリィは爪があるでしょ? それに、牙も」
「うん! でも、武器じゃなくて種族特徴だし、召喚魔法では召喚出来ないのよね」
「まぁ、それは仕方ありませんね。魔法の練習と並行で、武器の扱い方、ついでに魔法学校で一通り覚える勉強もしましょう」
勉強かぁ......魔法学校行ってないから、どんな勉強するか全然知らないのよね。......でも、やってみたいわね。魔法の知識が増えるのなら。
「えぇー! 勉強するのぉ!?」
「え? リリィは勉強が嫌いなの?」
「うん......。姉様は好きなの?」
「まぁ、そうね......やったことはないけど、やってみたいとは思ってるわ」
「そう......なら、私も勉強する! 姉様と同じがいい!」
この娘、本当に私が......。いえ、姉が好きなのね。狂気的なほど、姉が好き。だから、何でも姉と同じがいい。
だけど、本当のお姉さんが死んだ時は後追い自殺なんてしなかった。......お姉さんが何か言ったのかしら?
まぁ、お姉さんが死んだ今となっては、聞こうとは思わないけど。
「では、まずは自分に合う武器を探すために、武器の練習から始めましょうか」
「はーい! 姉様! 姉様はどんな武器が好きなの?」
「私、武器なんて使ったことないから好きな武器なんてないわよ。ただ、使いやすいのがいいわね。
それか、遠距離攻撃出来るやつがいいわ。私、力は強くないし」
「ま、姉様は人間だからねぇ......。姉様、吸血されてみない?」
「全力でお断りするわ」
確か、吸血鬼の吸血って、魅了の効果があったり、眷属になる効果があったりするらしいしね。
それで力が強くなるとしても、人間じゃなくなるのは嫌だね。
「ふーん......ま、いつかされたいって思う日が来るだろうし、それまで我慢しないとね」
「絶対に来ないからね! さ、そんなことは置いといて、さっさと練習を始めましょ。
極東にある倭国では、善は急げ、って言うらしいし」
「では、そうですね......一番ポピュラーな剣から始めましょうか。それでは......妹様、ナオミ様。この剣を使って下さい」
「えぇ、ありがと。......って、え!? 詠唱は!?」
リンさんは、詠唱をせずに、手を動かしただけで剣を召喚して見せた。
あ、そう言えば......魔眼みたいに詠唱を必要としない例外が多く存在するって、さっきリンさん言ってたっけ......。
「詠唱を動作で置き換えましたので。このように、詠唱の代わりを動作で置き換えるというのはよくあるので、これから一緒に覚えていきましょう」
「うわぁ、動作まで覚えるの〜?」
「詠唱か動作。一つの魔法にどちらかだけを覚えるだけでいいので、そこまで苦ではないかと」
「全然苦だけど!?」
「はぁー......リリィ、私が付いているから。一緒に覚えましょ」
「え? ......う、うん!」
リリィは嬉しそうな顔で返事をした。
そこまで嬉しそうにすることなんてあった? いやまぁ、別にどうでもいいけど。......どうでもいいはずなのに......。
やっぱり、エリーに似ているから情が移ったのかな? それとも......。
「姉様? どうしたの?」
「......いや、何でもない。それじゃ、始めましょ。リンさん、簡単な剣の扱いからお願い」
「えぇ、分かりました。では、まずは──」
こうして、私達は武器の扱い方、魔法の練習、勉強を始めることになった。
そして、それらが終わり、夜になった頃。
いつものように悪夢を見ると思っていたが......今日は、違っていたようだ────
次回も自分の他の作品と比べると文字数が少ないですが、少し早めになると思います。