遊戯王の世界に生まれたのですがどうすればいいのでしょう?   作:火影みみみ

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舞網チャンピオンシップ―ジュニア編―

∴月〇日

 

 ハートランドシティに通うようになってたぶん二年くらい過ぎたと思う。

 六歳だった私も八歳になり、身長も若干伸びました。

 まあ、だからと言って何が変わったかということもなく、あちらとこちらを行き来する以外は普通の小学生生活を過ごしております。

 そこで少し思ったのですが……、もしかしてハートランドシティには、いやあちら側(・・・・)には融合がないんじゃないかな?

 

 一年過ぎたあたりで違和感を感じ、そこから半年くらい後にその違和感の正体に気が付きました。

 たしかZEXALではエクシーズこそ主流ですが、融合もある程度使われていたはずなのでこれには少し驚きました。

 ここ二年で友好を深めた黒咲瑠璃ちゃん(以下瑠璃ちゃん)も、融合なんてしらないと言っていましたし……。(あ、儀式はありました)

 

 となれば、ある程度の推測が立ちます。

 

 あちら(ハートランドシティ)にはエクシーズがあった、こちら(舞網市)には基本以外なかった。ならほかの二つ、融合とシンクロはどこへ行ってしまったのか?

 

 もしかして融合とシンクロも、それぞれ隔絶された別の場所で独自の発展を遂げているのではないでしょうか?

 

 エクシーズはあった。なら融合とシンクロもどこかにあってしかるべきのはず。

 あと忘れてはならないのは新召喚法。

 5D's以降の遊戯王は、新番組になると新しい召喚が登場するようになりました。(まあ、まだ二つしかないけれど)

 それを含めて考えると私の知らない場所があと最低二つはあることになる。

 精霊たちに聞いてもだんまりだし……。(何か知ってると思うのになあ)

 

 それと関係あるかわからないけれど、このデュエルディスクにもおかしなところがある。

 

 

 

 なんで、エクシーズ使えるの?

 

 

 

 遊戯王だからといってはそれまでだけれども、これは少しおかしい。

 もともとそれが『ある』と考えて作らなきゃ、こんなことできるはずがない。

 

 ……いや、ちがう。それならもっと舞網市にほかの召喚法があふれているはず。

 ならなぜ?

 

 ……もしかしてデュエルディスクには、召喚法に関するプログラムを一切していないのじゃはないのか?

 

 私は今までTFなどのゲームのようにデュエルディスクに一定のパターン通りにしかデュエルできない仕掛けがあると思い込んでいたけれど、そうじゃなくて。

 デュエルディスク本体はただ召喚するだけの道具に過ぎなくて、召喚法はもっと別のところにあるのじゃないか?

 禁止カードなどはこちらの人たちでも決めることができる。しかし、召喚法は?

 あらかじめ知るはずのないものをプログラムできるわけがない。

 ならばどこ?

 

 

 

――――精霊界――――

 

 

 

 ふとそう頭に浮かんだ。

 きっとこちらにもあると思われる精霊界。

 あそこならば、すべての召喚を熟知しているはずだ。

 つまり、デュエルディスクは精霊界のルールに従って召喚を実行しているということになる。

 

 最初にソリッドビジョンを開発したのは海馬、カード作ったのはペガサス。

 しかし、この二人の名前はこちらの歴史にはなかった。

 では、誰がこの二つを作り上げたのだろう?

 調べても調べても、それら二つに行きつくことはできなかった。

 ただ気が付けばあった、という気楽さしか感じ取ることはできなかった。

 

 まぁ、製作者についてはそれほど重要ではないので放置するけれども。

 このデュエルディスクの発案者はどうやって作り上げることができたのだろう。

 ただ少し、それが気になった。

 

 

 ……シャイニングドローってほんとどんな原理なのだろう。ルール的に。

 

 

 

 

 

∴月×日

 

 昨日気になったことについて、一つ実験してみた。

 

 まずデュエルディスクを起動して、場に灰流うららとアトラの蟲惑魔を召喚する。

 次にこの二体でシンクロ召喚を行うとどうなるか?

 

 まず、シンクロ召喚お馴染みの片方のモンスターが星となり、もう片方のモンスターに組み合わせられる()()()()()()()()にerrorと表示される。

 

 このerrorは例えばモンスターゾーンに魔法カードを置いたり、なんの効果もなしに上級モンスターを召喚しようとすると起こるデュエルディスクの機能の一つ。

 この機能があるから、対戦相手は相手が行っている手順を正しいものと確認できる。

 

 そこはわかってる。重要なのはerrorが出る少し前のところ。

 今回はerrorだったけれど()()()()()ということは、もしもその条件を満たすレベル七のシンクロモンスター(例えばブラック・ローズ・ドラゴンのような)がいれば、召喚できていたということじゃないのか?

 

 逆に言えば、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 まあ、まだ確証も何もないけれどあるかもしれないという程度には希望が持てる。

 こんなことも考えられないほど荒れていたあの頃がすこし恥ずかしい。

 

 今日はこのくらいにして寝ることにする。

 明日はもっといいことが起きるといいな。

 

 

 

 

Θ月&日

 

 何もないまま半年以上が経過。悲しい。

 あれから一向にほかの召喚を探る手掛かりがつかめないでいる。

 正直一人では限界があるのも確かなので、これは気長にやっていくしかないみたい。

 

 そういえば、あと何か月かすれば舞網チャンピオンシップなるものが開催されると聞いた。

 私は年齢制限でジュニアコースしか登録できないし、優勝しても特に何かあるというわけでもないので放置していたけれど、もうそろそろ参加しておいた方がいいかもしれない。(実績作りは大事)

 

 

 

 

 

Θ月Σ日

 

 とりあえず参加条件を満たすように一日一回はデュエルする。(まあ、勝率は満たしているからあまり必要はないけど)

 私の初めての公式大会なので少しわくわくするけれど、相手が小学生なのが少し残念なくらい……。

 

 私を驚かせるような人がいるといいけど。

 

 

 

 

 

 月 日

 

 美田さんにお願いして参加登録終了。

 あと少ししたら大会が始まる。

 使用するデッキは蟲惑魔とアーティファクトの混成デッキにアクションデュエル用のカードを混ぜたもの。

 これならある程度勝ち抜けるし、天敵(サイコショッカー)などが来ても対応できるようにはしてある。

 あと、うっかり召喚してしまいそうだからエクストラデッキのカードをすべて抜いておく。

 

 

 

 ……そういえば、将来的にはアクションデュエルが主流になるわけだから今のうちに体を鍛えておいた方がいいのかもしれない。

 明日からランニングを始めてみようかな。

 

 

 

 

 

 月 日

 

 明日は大会ということもあってか、クラスの雰囲気が心なしか騒がしいように思える。

 同時に参加したかったけどできなかった子の嘆きも聞こえ、ここが遊戯王の世界だったということを改めて実感しました。

 

 できる限りのことはやったので早めに寝ることにする。

 目指すは、初出場初優勝。

 できる限り派手なデュエルをやってみたい。

 

 

 

 

 

 

――――☆――――☆――――☆――――☆――――☆――――

 

 

 

 

 

 まあ正直なところ、これが現実なのよね。(たぶん新シリーズだけど)

 

 唐突に何を言っているかわからないと思うけれど、今私はデュエルの真っ最中。

 私の場にはモンスターが五体、蟲惑魔たちがそれぞれ一体ずつ。

 

 相手の少年の場にモンスターはなし、伏せカードもなし、手札は残り三枚。(フィールド魔法はあり、『破邪の魔法壁』だけど)

 

「私はアトラの蟲惑魔で、ダイレクトアタック~」

 

 その宣言と同時に、目の前にいたアトラは相手へと走り出す。

 

『おっとぉー! 優華ちゃんここで勝負を決めるきだー!! さあ、茂武君、この攻撃が通ると君は負けちゃうぞー』

 

 実況するアナウンサーの声が、少しうるさい。

 あちらも仕事かもしれないけど、いい加減イライラしてきた。

 

「あ、アクション・カード!」

 

 相手の少年はアクション・カードを探しに走り出す。

 彼のライフポイントは残り1000、アトラの蟲惑魔で十分に削り切れる。

 手札のカードを使わないところを見ると防げるカードはないのかもしれない。

 

 ……あっても使わないっていうこともあるから、少し残念かな。

 

「あ!!」

 

 どうやら少年はアクション・カードを見つけたみたい。

 それに向かって一目散に走り出す。

 確かにそれがあればこの場はしのげる。

 

「でも残念♪」

 

 そんなの許すはずがない。

 

「足元注意だよ~」

 

「え、あ!?」

 

 私のモンスターは一体じゃない。

 

 彼の足元が崩れ、バランスを崩した少年はそのままこけてしまう。

 

『――♥』

 

 足元から現れたのはトリオンの蟲惑魔。

 彼女が地中から地面を崩して彼をこけさせたということ。

 お子様用アクションフィールドのおかげか、柔らかい素材でできてるみたいだから怪我はしてないはず。

 

 けど、これは致命的な隙となる。

 

「あ……」

 

『♪』

 

 彼の目と鼻の先にまで迫ったアトラの蟲惑魔は、ニコリとほほ笑む。

 

 そして右手の中指と親指で円を作り、軽く彼の額にその中指を当てた。

 いわゆる、デコピン、というものだ。

 

「うわー!!」

 

 軽くあてただけでもデュエルモンスターズのルールは適応されるもので、彼のライフはゼロとなる。

 

『決まったー! ジュニアコース準決勝戦、勝者は千樹優華ちゃんだー!!』

 

「ブイ!」

 

 観客が少ないのが残念だけど、決めるときには決めておく。

 

 その後にインタビューがあったような気がしたけどあまり覚えていない。

 キャラを作りつつ適当に答えたとおもう。

 

 

 

 やっぱり、ジュニアコースに出たのは失敗だったかなぁ……。

 今回の相手は違ったけれど、小学生だからかプレイングミスが目立つ。

 先行ドローをしようとしたり、上級モンスターをいきなり召喚しようとしたり……。

 

 まあ明日で最後だし、さっさと決めて帰ろう。……ん?

 

「やぁ、君が僕の対戦相手かな?」

 

 帰ろうと思った私の行き先に、同い年くらいの金髪の少年とその取り巻きっぽいのが三人がいた。

 

「おや、君はどちら様かな?」

 

 私はそう尋ねる。

 大体予想はついているけど、これはお約束というもの。

 

「は、君は対戦カードも見ていないのかい? しかたないから教えてあげるよ、明日の決勝戦で君と戦い、そして勝利する男!」

 

 そう少年が言い放つと、取り巻きーずが彼を目立たせるようにポーズを決め。

 

「沢渡シンゴさ!」

 

 と爽やかに名乗る彼。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 いや、それはいいから早くそこをどいてよ。

 

 

 

 




次回、やっとデュエルができる。

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