遊戯王の世界に生まれたのですがどうすればいいのでしょう? 作:火影みみみ
若干のシリアス注意。
次回以降はコミカルになるといいなぁ……。
〇月×日
方中ミエルと友達になりました。
……いやね、最初は話を聞くだけだったのだけど、あの子の勢いに押されに押され、いつの間にか連絡先を交換してしまっていました。
若い子って恐ろしい。(私も若いけど
ま、まあ。 (たぶんおそらくきっと)あの子も悪い子じゃないと思うし、しばらくはこのままでもいいと思う。
…………それにしても、あの子の声を私どこかで聞いたことがある気がする。
どこだっけ? 何か急に歌ってたような気がする。
■月□日
不思議系キャラがだんだんと根付いてきた今日この頃。
クラスのみんなも最初は驚いていたけれど、最近は慣れてきてくれて普通に接してくるようになった。(前世だとたぶん引かれるよねぇ……
家政婦の美田さんも私が最初からこの性格だったかのように接してくれる。これは私の母に慣れていたからかもしれない。
私も最近はこのキャラを演じるのが楽しくなってきたし、キャラ付けとしては成功したと言ってもいい。
それにしても、蟲惑魔デッキで勝率九割五分を越えるのはこの世界独特の引きの良さ故なのか、それとも小学生相手じゃさすがに弱いものいじめなだけなのか……。
明日は町の強そうな人に声をかけて見よう。
きっと私を楽しませてくれるはず。
☆月▼日
放課後、さっそく影霊衣デッキを持って街へ出かける。
蟲惑魔じゃない理由は、蟲惑魔自体が対策しやすくほぼデッキだけで勝敗が決してしまいそうだから。(サイコショッカーだけで割と勝ちの目が消える
五人くらいとデュエルしたけれど、そんなに強くはなかった。
次は場所を変えてみよう。
<月<日
収穫なし。 次は時間帯を変えてみることにする。
<>月<>日
収穫なし。 何がいけないのだろう。
<・>月<>日
収穫あり。ただしカード。
いまだ
<・>月<・>日
収穫なし。今日も満足できない。
<●>月<・>日
まん……、ぞく……。
<●>月<●>日
おい、デュエルしろよ。
◎月◎日
ふと日記を読み返し、正気に戻る私。
いけない、ライバルがいなさすぎて情緒不安定になってる。
ここ数日、この街一帯をまわって年上の人たちにどんどんデュエルを申し込んでみたけれど、どれもこれも大差がなかった。
せっかくチューナーを出したのにシンクロしなかったり、星がそろったのにエクシーズしなかったり、なぜか基本皆アドバンス召喚しか使わない。だから負ける。
…………いや、わかっている。
今の今までその問題から目をそらしてきたけれど、これは私がデビューする上で避けては通れない存在であり、いつかは直面すること。
ただ、私はそれを認めたくなかった。それを認めてしまうと私の中の情熱の炎が消えてしまうような気がして。
みな、使わなかったのではなく、
しようとしなかったのではなく、そもそも
……この世界、実はエクストラデッキから召喚するタイプの特殊召喚が存在しない。
わかりやすく言えば、シンクロ、エクシーズ、さらには融合すらも、この世界には存在しない。
図書館のデュエルモンスターズについての関連書籍は端から端まで調べたし、友達にもそれとなく聞いてみたこともある。さらには父の部屋にあったパソコンを借りて検索をかけてみたけれど、そんなものは一片たりとも存在しなかった。
つまりは、この世界には通常召喚と儀式しか
超融合もできなければ、フィールを感じてアクセルシンクロを行うことも、さらには
それは、私にとっては失望でしかなかった。
それは、私が憧れた彼らのようなデュエルができないということを意味していたから。
それを自覚した途端、私は悲しくなった。
転生しようとも現実は厳しく、重く私にのしかかってくる。
所詮私は紛い物、彼らのように離れないということか。
私は、楽しいデュエルがしたいのに。
次は有名な人にあたっていくのがいいのかな?
まだまだ不安が残るけど、大会に出てみるのもいいかもしれない。
あとは優勝経験者をあたってみるとか?
まだまだいろいろあるけれど、考えがまとまらない。
この日記のおかげで多少はまとめられるけど、それどもまだぐちゃぐちゃ。
もう寝よう、寝てしまおう。
幸い明日は休日だ、このまま丸一日寝ていても何の問題もない。
ああ、頭が痛い。
――暗闇の中、声だけが聞こえる――
――1人2人のものではない、大勢の人ならざるものの声が静かに響く――
『やっと寝たみたい』
『今日は一段と荒れてたね』
『致し方あるまい、この次元において彼女ほどの担い手はそうそういるものではない』
『それに相手のデッキも悪いわ、影霊衣相手に並のアドバンス召喚のみでは勝てるわけないじゃない』
『……そろそろ頃合いかもしれぬな』
『いいの?』
『問題ない、主は全ての召喚法を熟知しておられるご様子』
『じゃあ、最初はどこにする?』
『融合はだめ、今のままじゃ危なすぎる』
『シンクロも……ダメ、……あそこは、まだ早い』
『なら決まりだな』
『ええ、最初はエクシーズにしましょう』
『うまくいくかな?』
『いくといいね』
『はやいとこ蟲惑魔の仲間と、あっちにいる星座の戦士たちと合流しないとな』
『少しずつではあるけれど奴らの気配を強く感じるようになっている……、たぶんそう遠くない未来、おそらく10年以内には復活すると見た方がいいかもしれないわ』
『それまでに我らは備えなければならぬ、再び世界が滅びぬように』
『奴に凌駕するほどのポテンシャルを秘めたこの子なら、必ずあの覇王を討ち取れる』
『私たちの声を聞いて、なおかつ実体化できるだけの魔力を持つこの子なら、きっとできる』
『そのために、俺たちはここに集った』
『アヤツも悪い人間ではなかったのじゃが、いかんせん環境が悪かった』
『優華もああなってほしくはないのだけど』
『そのために我らが存在する』
『この子を誤った道へ歩ませぬよう、我らが導かねばならぬ』
『ダイジョブ~ダイジョウブ~』
『大丈夫~大丈夫~』
『能天気ね、あなたたち』
『ああいう種族だからね』
『では、主が起きぬうちに』
『じゃあね』
――その声を最後に、物音ひとつ聞こえなくなった――
『舞網市に現れる、謎の影』NEW
・最近、謎のデュエリストによる無差別デュエルが頻発しています。
・被害にあった方々からは金品が盗まれた様子はなく、ただデュエルをしていただけとの証言を得ることができた。
・しかし、相手のことを思い出そうにも記憶にモヤがかかったかのように黒い影しかおもいだせないとのこと。
・この症状は被害にあったデュエリスト共通のもので、全員がその影に敗北していることも関係があるのかもしれない。
・最近ではこの事件の影響か、夜間に外出する人の姿をみなくなっている。
・我々も独自の調査を行ってはいるが、手がかり一つ発見することはできなかった。
・この事件がこの街の七不思議の一つとなる日もそう遠くはないのかもしれない。