FE覚醒~誓いの剣と精霊の弓~   作:言語嫌い

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とりあえず作者が煮詰まってきたので、更新しました。

設定は……現在進行形です。

……それでは、本編どうぞ。


第七話 小さな傭兵団~新たな出会い~

リズの後に続いて石造りの建物の入り口をくぐる。

 

「ここは?」

「ふふふ」

 

リズは、くるりとこちらに振り向くと、大きく手を広げて、いつもの調子で言った。

 

「じゃーん! ここが、わたしたちクロム自警団のアジトだよ!」

 

あの後、王女である彼女に手をひかれてここまで来たのだが、その時の周りの視線についてはあえて語るまい。あの反応を見るかぎり、うわさはすぐに広がることだろう。まあ、それは今は置いておこう。

 

「アジトって……なにかほかに言い方はなかったの? 拠点とか、本部とかさ。アジトって聞くとなんか悪いことやっている感じに聞こえるよ」

「そうかな? まぁ、いっか! よくわかんないし!」

「リズがいいならいいけど」

「……?」

 

リズは、わかっていないのか、かわいらしく首をかしげている。

まあ、これはクロムのせいかな。それとも僕の感覚がおかしいのだろうか。アジトといえば海賊とか山賊の拠点というイメージが強い。

 

「あ、それよりもビャクヤさん。ここにいるみんなのことも紹介してあげる! それに、この中のことも案内するからついて来て!」

「ああ……」

「リズ! 無事でしたの!」

 

横から来た誰かの声にリズと僕は振り返る。どこかの貴族の御令嬢といった雰囲気の少女がリズへと近づく。

 

「あ、マリアベル!」

 

件の少女はマリアベルというらしい。どうやら、二人とも仲がいいみたいだ。マリアベルと呼ばれた少女はリズに怪我がないかどうかをしきりに確認している。

 

「心配しましたわ! リズったら、もう! お怪我はございませんこと?」

「大丈夫だよ! お風呂とかご飯は大変だったけど、ビャク――」

「よう、リズ。クロムはどうした? 俺様のライバルはビビッて腰を抜かしていたんじゃねーか?」

「大丈夫だったよ。よかったね! ヴェイクはお兄ちゃんのこと大好きだもんね!」

「冗談でもよしてくれよ、そういうことを言うのは……そのせいで俺がどんな目にあっているか」

「ん? どうしたのヴェイク? 頭が悪いの?」

「違うだろ!!」

「よかった、クロム様も無事で……」

「スミアもさらっと普通に流すんじゃねー! 明らかにさっきのはおかしいだろ! というか、今その話題かよ! もう過ぎたわ! 今はそうじゃなくて……!」

「スミアさんは心配のあまり、毎日花占いを――」

「だから、俺を――!」

 

最初の彼女の登場から、リズの周りに多くの仲間が集まってきている。この状況では僕の紹介は難しいだろう。落ち着くまでこの中を見て回ろうか。様子を見る限り久しぶりに会ったみたいだし。

 

そっと、その部屋を後にして扉の向こうに続く通路へと出た。目的地は時間を潰せそうな書庫。歩いてれば見つかるだろうと、お目当ての部屋を探した。

 

探したのだが……

 

「……ない、かな?」

 

空いている部屋の中をのぞいてみる限り、それらすべてが私室であるようで勝手に入るのははばかれる。他にあるのは武器庫くらいだが、特に目を引くものはなかった。後はカギがかかってたため、確認できなかった。

 

「リズと来るべきだったかな?」

 

少なくとも、どこがどの部屋かもわかっただろうし、書庫にもすぐたどり着けたはずである。だが、建物自体はそこまで大きくはない。あと調べて無いのは、二階くらいのはず。

 

「階段と……部屋がもう一つ?」

 

最奥の角を曲がってみるとそこには階段ともう一つ部屋があった。

 

そこで今までと同じようにノックをする。だが、やはり今までと同じように反応なし。となると――

 

「さて、勝手にのぞかせてもらおう……」

 

少しだけ期待しながらドアを開けてみると、そこは救護室だった。木製のベッドが並べて置いてあり、他の部屋と違い独特の清潔感があった。また、見渡せば戸棚には、薬と思われる薬品の入った瓶も見られる。

 

「ここも、違ったか……」

 

そう思って、踵を返そうとしたときに小さな音が聞こえた。

 

気になって耳をすませてみれば、それは人の声。うなされているような感じのものだった。さすがに、目の前で苦しそうにしている人がいるのに放っておくわけにもいかず、声の聞こえるベッドに近寄る。

 

そのベッドに寝ていたのは、リズと同じかそれより下と思われる銀の髪の少女だった。その少女は、苦しそうに顔を歪めている。

 

「わからない…………なんで……行かないで。お願い……」

 

夢見が悪いのか、辛そうな言葉が漏れる。何とかしてあげたいのだが、こういう時にしてあげられることなどほとんど知らない。

 

「逆効果じゃないといいんだけど……」

 

彼女のベッドの横に腰を下ろし、その手に自分の手のひらを重ねた。こういう時は人恋しくなるはず。だから、誰か近くにいると感じることが出来るだけでもだいぶ違うと思う。そう、思いたい。

 

「!? …………」

「良かった。落ち着いたみたいだ」

 

あの状態から悪化することなく、彼女は今とても穏やかに寝息を立てている。表情も柔らかくなり、呼吸も落ち着いている。だけど、困ったことが一つ。

 

「さて、どうやってリズと合流しようか」

 

予想できた事態ではあったが、彼女に手をつかまれて動くに動けなくなってしまったのである。抜け出そうと手を動かすと、彼女は両手でつかんで自分の方に寄せる。

 

離さないように。決して、手放すことのないように、彼女は僕の手を強く引き寄せる。

 

「……はぁ」

 

とりあえず、彼女が起きるまでこうしていよう。

 

 

 

***

 

 

 

数日ぶりに会った自警団のみんなは変わらずとても元気そうだった。というか、スミアさん。また花占いして、部屋の中をお花で埋めちゃったんだ。まったく、マリアベルと一緒で心配性なんだから。

ん? 何か忘れてる気がする。

 

……なんだっけ?

 

「リズ? どうかしましたの?」

「うーん。なんだっけ? 何か忘れているような気が……」

「クロム様! って、あ……!」

 

考えているうちにお兄ちゃんが会議を終えて戻ってきた。お兄ちゃんに駆け寄ろうとしたスミアさんは足元に落ちていた書類に気がつかなくてこけてる。けっこうすごい音がしたけど大丈夫かな?

 

「だ、大丈夫か、スミア?」

「うぅ、大丈夫です。すみません、いつもこうで……」

「ほんとに大丈夫? すごい音したけど」

「えぇ、ひどいようでしたら私が直して差し上げますよ」

「いえ! 本当に大丈夫ですから」

 

少し心配だけど、スミアさんがそう言うなら大丈夫なのかなぁ……

 

「それはそうと、お兄ちゃん。さっきの会議はなんだったの?」

「あぁ、そうだな。それを報告しないとな。みんな聞いてくれ。俺はフレデリクとともにフェリア連合王国に向かうことになった」

「フェリア? お兄ちゃんなんで?」

「なんであんな寒いとこに行かないといけないんだよ。どういうことか説明しろよ、クロム!」

「俺がそれを言う前にお前が遮ったんだろう」

「お前がさっさと話さないのが悪い!」

「あのな」

 

また、お兄ちゃんとヴェイクはけんかを始めた。なにかとヴェイクはお兄ちゃんにぶつかっていく。ヴェイクが言うには、ライバルらしいけど、もう少し仲良くしてほしいかも……

 

「あの~クロム様。それでなんでフェリアに向かうんですか?」

「ん、あぁ、最近イーリス周辺に異形の化け物が出没するようになった。それに対処するには兵力がイーリスだけでは足りないんだ。だからフェリアに助力を求めに行く。本来なら姉さんが行くところだが、今国を離れるわけにはいかないんだ」

「じゃあ、お姉ちゃんの代わりに行くんだね! なら頑張らないとね!」

「そうだ。それと、この自警団からも名乗りを上げたやつを連れていく」

「あ、じゃあ、わたしも行く!」

「当然、俺様も行くぜ! クロムだけじゃ荷が重いだろうからな!」

「……僕も頑張ろう」

「……」

 

お姉ちゃんは普段からしっかりとがんばってるんだから、こういう時くらいはちゃんとお手伝いしたい。そうでなくてもお姉ちゃんは……。

 

いけない、私がこんなところで暗くなっちゃったらみんなまで暗くなる。だから笑顔でいないと。みんなが笑っていられるように。

 

「スミアもどうだ?」

「ク、クロム様!? でも、私はまだ見習いです。もう少し訓練するようにフィレイン様にも言われています。ですから……」

 

わたしが百面相している間に、お兄ちゃんが先ほどから少し下向いているスミアさんに声をかけていました。むぅ、私の役割を持って行かれちゃったな……まぁ、いっか。

 

「見ているだけでも勉強になる。だから、来ないか?」

「……いいんですか?」

「大丈夫だよ、スミアさん! 何かあったらお兄ちゃんが守ってくれるから! ね!」

「あぁ、そのつもりだ。だから、俺のそばからあまり離れるなよ?」

「はい……! 約束します!」

 

良かった。これでみんないっしょに行けるね!

 

みんな?

……なんだろう? 何か忘れてる気がする。

 

そう考えていると、お兄ちゃんが不思議そうに私に尋ねました。

 

「そういえばリズ。ビャクヤはどうした? ここにいないようだが。一緒に行動していたんじゃないのか?」

「あ!!? いけない! みんなに会えたのがうれしくて、忘れてた! って、あれ? ビャクヤさんどこ?」

「だから、そのビャクヤがいないと言っているだろう……少し落ち着いたらどうだ?」

 

あぁあああーーーーーー! ビャクヤさんのことすっかり忘れていた! 

どうしよう。い、いま、どこにいるのかな? とりあえず探さないと。怒ってないといいなぁ。

 

「お、お兄ちゃん……どうしよう」

「ここいらにいるだろうから手分けして探そう――にも、そもそも、顔がわからないか」

「リズの隣におられた灰色の髪の男性のことですか? 黒いコートを着ている」

「あぁ、そいつのことだ。わかっているなら手伝ってくれないか?」

「しょうがねえなぁ、俺様も手伝ってやっか!」

「よし手分けして探そう。そうだな、リズ、屋内を探すか?」

「うん!」

「そうか、じゃあ、後は…………」

 

そんな感じで、ビャクヤさんの捜索を始めようとしたときに、奥の部屋の方から大きな音とともに、誰かの叫ぶ声が聞こえてきました。

 

「そこで君は何をやっている!!」

「……」

 

それは聞き覚えのある声で、ソワレさんの声だった。

 

「ソワレか? くそ、いったい何事だ! 行くぞ、ヴェイク!」

「おうよ! 任せな!」

「お、お兄ちゃん! 待って!」

 

戦場でもないのに、緊迫した声が聞こえた。わたしは、みんな無事でありますように……そう願いながらそこに向かった。

 

 

 

向かった先は、救護室。部屋の前が散乱していて、扉は開け放たれていた。そして、わたしたちの目の前で、ソワレがそこから吹き飛ばされて廊下の壁にぶつかる。

 

「く、くそ……! 強いっ……!」

「ソワレさん!!」

 

わたしは急いで彼女に駆け寄って、治療しようとしたとき、そこで、信じられないものを見た。

 

「ビャクヤさん……なん、で?」

 

扉の向こう側には黒い剣を構えたビャクヤさんが後ろの少女をかばうように立っていた。

 

「クロム、これはどういうことだい?」

 

彼は、そう冷たく言い放って、私の後ろにいるお兄ちゃんに尋ねた。




ようやく、二章に入りました。長かったです。この原因は思いつきで始めたのと、作者の文才の無さが原因なのですが……今更ですね


これからもこんな感じになりますが、どうかよろしくお願いします。


2018/5/17 修正しました

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