FE覚醒~誓いの剣と精霊の弓~   作:言語嫌い

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第4話 懐かしき平穏

王都についた夜、割り当てられた部屋のベッドに僕は飛び込んだ。

 

「疲れた」

 

正直、昨日から色々ありすぎた。記憶はなくてどうしようかというところに、天変地異が起こって、変なのがたくさん出てきて、襲われていた人と共闘したかと思えば、その人たちは実は王子と王女とその部下たちで、この国の王様にいきなり面会することになるとかふつう思わないよね。

 

「ふつうは思わないよね、ルキナ」

「その……お疲れ様です、シエルさん」

 

一緒の部屋に割り当てられたルキナも困ったように返すのだが、この時点でおかしいと思うのは僕だけだろうか。僕とルキナはなぜか同室となっている。師匠であるシエルさんと違う部屋というのはおかしいですよね? とはルキナの談。町で宿をとった時には一部屋だったことを引き合いに出してきたのだが、それとこれとは違う気がする。せっかく一人一部屋与えられる予定だったのに、それを断る必要はなかったと思う。思うのだが、本人は嬉しそうだったので、何も言わないことにした。

 

「その、いろいろとありましたが、王城の一室を借りることも出来ましたし、お金も手に入りました。今の世界情勢についても説明してもらえましたので、今後どうするかについては、明日からゆっくり考えていけばいいと思いますよ」

「そうだね。まあ、そのあたりは明日以降ゆっくり考えよう」

「とりあえず、明日は観光でもしませんか? そのあとは、フェリアの方にでも行ってみるのもいいかもしれません?」

「うーん、どこに行くかは明日、観光しながら決めようか」

「はい。そうしましょう」

 

だが、明日の予定は、あくまで予定。こういう時に限って、何かしら向こうからやってきてしまうものらしい。

 

 

 

***

 

 

 

翌朝、部屋でくつろいでいると、クロムが訪ねてきた。

 

「突然で申し訳ないが、フェリアについてきてもらえないだろうか」

 

そして、申し訳なさそうにクロムはそう切り出した。

 

「断りましょう、ビャクヤさん。今日は観光をする予定ですし」

 

クロムの入室と同時に僕の布団を頭からかぶり、背中に隠れているルキナは間髪入れずにそう答えた。ちなみに、顔は少しだけ出している。さすがに、すっぽりかぶると息苦しいのだろう。

 

「その、だな。フェリアと同盟を組む必要が出てきたんだ。それで、可能ならついてきてほしいんだが……もちろん、報酬は払う」

「断りましょう、ビャクヤさん」

 

そして、ルキナは即答。一応、決定権は僕にあるようだが、選択肢はないに等しい。クロムの要求をのめばルキナは非常に不機嫌になることだろう。考えなくてもわかる。わかるが……クロムについていくメリットもある。

 

「マルス。二人で国境を超えるよりも、クロムたちの自警団についていった方が安全ではあるよ。それに、フェリアに……」

「嫌です」

「いや、その……」

「嫌です」

「その……」

「嫌です」

「……」

 

クロムはじっと待っている。ルキナは全身で抗議している。ここから動きませんと僕の膝を占拠している。ヴィオールがなぜか楽しそうにこちらを眺めている。とりあえず、ヴィオールは処す。華麗に避けた。無駄に身体能力が高いことに腹が立つ。

 

「それで、どうするんだビャクヤ」

 

ため息交じりに切り出したクロム。答えはわかっているのだろうが、一応聞いてくれる当たり、人間出来ている。

 

「クロム。申し出はありがたいけど、断るよ」

「そうか。まあ、そうなるだろうな」

 

また会おうとだけ残し、クロムたちは去っていった。結局、ヴィオールはどうして付いてきたのかわからなかった。何か目的があったように思えるが、道化のようにふるまう彼からその真意を見出すのは難しい。

 

「さて」

 

そして、部屋には僕とルキナだけが残った。ルキナは布団にくるまるのをやめて僕の対面に腰掛ける。

 

「それで、どうして断ったんだ? 王族である彼らとのつながりが築けたと思うけど?」

「……その、ですね」

 

ルキナは言いにくそうに目を伏せる。あの自警団もしくは王族である彼らに対し、何かしらあるのだろうことくらいはわかる。今日までの行動を見る限り、あまり関わりたくないようにも見えた。

 

「わかった。彼らとは一度距離を置こう。これでいいかい?」

「ありがとうございます」

「いいよ、気にしないで」

 

ルキナが彼らに関わりたくない理由はわからないけど、今はそのままでいいだろう。申し訳なさそうに縮こまるルキナの手を引いて、外へと出る。出立前のクロムたちに軽く挨拶をして、僕らは城の外、すなわち城下町へと降りた。

 

「あの、ビャクヤさん? どちらに?」

「ははは、そうだね。どこに行こうか」

「あの、ならどうして?」

 

状況をあまり理解できていないのか、困惑顔でルキナが聞いてくる。そんなルキナに、僕は努めて明るく答える。その不安を、申し訳ないと思う負い目を吹き飛ばせるようにと願いながら。

 

「ついさっき、君がクロムに言ったことだよ」

「私が?」

「うん。さあ、観光をしよう。どこを見て回ろうか?」

「あ……」

 

ルキナに笑顔が戻る。いつも見ていた、こちらの疲れを吹き飛ばしてくれるような、本当に幸せそうな笑顔。

 

「行きましょう、ビャクヤさん」

「うん、行こうか」

 

彼女は僕の手を引いて、弾むような足取りで城下町を進む。

 

「昨日、城の方が教えてくれた場所がたくさんあるんです。一つ一つ回りましょう」

「うん、時間はあるからね。今日の宿を探しながら、ゆっくり回ろう」

「はい!」

 

 

 

そして、数日かけてゆっくりと城下町を楽しんだ。イーリスという街の営みは暖かく、活気に満ちていた。ただただ、居心地の良い場所だった。本当に、ゆったりと時間が流れていた。

 

 

だが、それはいつかのように唐突に終わる。

 

 

「シエルさん。お話があります」

「なんだい、ルキナ」

 

その日、僕らはクロムたちがフェリアから帰ってきたの確認した。昼過ぎだったと思う。ルキナは突然、僕の手を引いてその場を離れると、借りている宿まで急いで戻った。

 

「今日の夜、イーリス城は暗殺者たちの襲撃を受けます」

 

彼女は前回と同じく、詳しいことを説明しなかった。

 

「……そうか」

「暗殺対象は、王族です」

 

だから、僕も聞かなかった。

 

「ルキナはどうしたい?」

「暗殺を止めたいです」

 

強い意志を宿した瞳だった。

 

「わかった。行こう」

 

僕は短く告げると、彼女と共に宿を出た。日が暮れ、夜の闇が迫る中、僕は彼女を抱えて素早く王城へと駆けた。

 

 

運命の歯車は少しずつ動き始めている。形を変えても、あるべき終わりを求めて回り始める。

 




エタるかと思った!!


自分が最大の敵でした。申し訳ない。

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