FE覚醒~誓いの剣と精霊の弓~   作:言語嫌い

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テストがようやく終わりました。

文は相変わらずあれですが、どうぞ。



第四話 炎の中で

「少し、いいかな?」

 

そう僕が声をかけると、目の前の仮面の剣士は敵に向かうのを止め、その場にとどまる。無視されずに済んだことに安堵しながら、僕は次の言葉を紡いだ。

 

「こちらと協力してくれると助かるんだけど……どうかな? 話だけでも聞いてくれるとうれしいかな?」

 

そう問いかけると、しばし考えたのちに仮面の剣士はしっかりとうなずいた。

 

「そうか、助かる。とりあえず、あちらの砦に僕の仲間がこもって、こいつらを迎撃している。僕らもその周囲に行って撃退したい。戦力差がすごいからね、少数のこちらは極力まとまって、撃退したい。ケガは仲間のヒーラーが砦内で癒してくれる。どうかな、そんなに悪くないと思うけど……」

 

こちらの意思を伝えると、仮面の剣士はそのまま再び頷く。

僕はそれを了承と取り、話を進める。

 

「協力感謝する。それじゃ、適当にそこいらの奴を引きつけながら砦に向かおう。その後は僕と一緒に遊撃の役を手伝ってくれるかい?」

「わかった。そのように動こう」

「よし。じゃあ、行くよ」

 

そう言って、僕は砦に向かって駆けだす。少し遅れて仮面の剣士も僕の後を追走する。このほんのわずかなタイムラグ、そのわずかな間に確かに聞こえた言葉……

 

「やはり、あなたは変わりませんね……」

 

その言葉は、戦いの中、記憶の底に埋もれることとなる。

 

 

 

 

 

 

「わかっています。あなたはあなたではない。でも……それでも、また会えてうれしいですよ、――」

 

炎に照らされて、その人物の胸元がきらりと、一度だけ光った。

 

 

 

***

 

 

 

「少しいいかな、クロム君」

 

謎の光が見えてからしばらくすると、砦の上部で弓を射ていたヴィオールが話しかけてきた。

 

「どうしたヴィオール。どうでもいいことなら後にしてくれないか。今は忙しい。お前にかまっている余裕はあまりない」

 

砦の門の構造を利用して1対1の状況を作りながら戦うクロムは、ヴィオールに対し適当に返す。あんまりな返答であるがこれは仕方ない。確かに彼の援護のおかげで比較的楽に動けているが、それとこれは別。先ほどの一件ですでに彼に対しての評価は決まってしまっていた。

 

「なんと、なかなか辛辣な一言じゃないか。先ほども言ったが、あまり急いてもいいことはない――――」

「いいから早く要件を告げてくれませんか?」

「それに手も止まっているんだよ!」

「……私はいじめられているのかね? たまには最後まで語らしてくれて――」

「それで用件はなんだ?」

 

ヴィオールは何か諦めたようにガクッと肩を落とすと、その状態のまま左側を指差した。

 

「……諸君、左方より仮面の剣士とビャクヤ君がこちらに向かってきている。彼らが着き次第何かするように、と言われたことはあるかい?」

「ふむ、そうだな……とりあえず、仮面の剣士を一時中に入れることくらいだな。

リズ! 回復の準備をしておけ!」

「うん! わかったよ! って、私それ以外にすることないから準備も何もないけど……まぁ、いっか! それより、ヴィオールさん、手が止まってるよ! 頑張って援護しないと!」

「あ、あぁ、任せたまえ。貴族的に華麗に援護して見せよう!」

 

それを聞いたクロムは、言われていた指示を再度リズに伝える。そして、落ち込んでいるヴィオールはリズに励まされたことにより、勢いを取り戻し、再び華麗に戦闘に加わる。

急にやる気を出したヴィオールをリズは不思議そうに眺めていたが、やがて考えるのを放棄したのか、自分の仕事に戻った。不幸なことか、はたまた幸運なことなのか、今ここに両者の勘違いを正す者はいなかった……

 

そして、ヴィオールの発言から数分としないうちにビャクヤたちは彼らのもとにたどりついた。ビャクヤは仮面の剣士を砦の中に無理やり押し込むと、フレデリクと変わりクロムの隣に並ぶ。

 

「大丈夫そうだな。クロム、ヴィオールは役に立ったか?」

「まぁな。役に立ちはしてるんだが……あの口調さえなければ完璧な弓兵だな。実際腕もいいし、援護するタイミングや場所もわかっている。戦場を見る目があるのかもしれん。あながち高貴なところの出というのは嘘ではないかもしれん」

「そうか、まぁ、役に立っているならいいかな?」

「そう簡単に済ませるにはだいぶめんどくさい代物だがな……それより、片づけるぞ。もうだいぶ減ってきている」

「そうだね。それに、斧もちのあいつがこいつらの長みたいだし。もう少し倒したらあれを倒すとしよう。いけるね、クロム」

「問題ない。いくぞ、ビャクヤ」

「僕も手伝うよ。遊撃をするんだよね」

 

クロムたちが今後の動きについて確認を終えると、後ろから回復を終えた仮面の剣士が近づいてきた。

 

「もういいのかい?」

「はい。問題ないです。リズさんの治癒の杖のおかげで、しっかり回復しました」

「そう――じゃあ、始めに言った通りに僕と共に遊撃をしようか。

クロム。ごめんけどフレデリクと一緒にここの守りを頼む」

「あぁ、わかった。ここは任せろ。フレデリク! もうひと踏ん張りだ! いくぞ!」

「えぇ、お任せください」

 

クロムの声を聞き、後ろに一時的に下がっていたフレデリクが城門へと出てくる。

それを確認したビャクヤは出る前にヴィオールにも指示を出す。

 

「ヴィオール。周囲にあいつらが見えなくなったら、クロムには砦から出てくるように言ってくれ」

「それくらいなら、任せたまえ」

「任せたよ。さてと――いこうか、倒しきるよ。頼めるかな?」

「はい、よろしくお願いします」

 

指示の終わったビャクヤは仮面の剣士のほうを向き、再度頼む。それに仮面の剣士は頷きながら返すと、彼の隣に並ぶ。ビャクヤは隣に来たのを確認した後、前を向く。そして、鏡写しのように剣を構えた二人は同時に地をけると、目の前の異形に切りかかる。

 

二人が抜けたことによる空白をクロムとフレデリクが埋め、その上からヴィオールが援護をしていく。

 

こうして、炎の中始まった演舞は、幕を下ろそうとしていた。

 

 

 

***

 

 

 

それからしばらくして、遊撃の方へと加わったクロムの活躍もあり、周囲にあふれていた異形の群れを掃討し終えた。

 

「どうやら、もう湧いてこないようですね。お疲れ様です、クロム様、リズ様に、ビャクヤさんも。それとあなた方も……ありがとうございました」

「…………」

「ふ、貴族として当然のことをしたまでだよ」

「そうですか……」

 

フレデリクはヴィオールの返答を軽く受け流し、仮面の剣士の方に振り向く。

 

「ヴィオールさんはおいておくとして、本当にありがとうございました。あなたのおかげでリズ様が助かました」

「あ、うん。さっきはありがとう……」

「俺からも礼を言う。俺はクロム。あんたの名前を聞いてもいいか?」

 

話の主導権がクロムに映る。事後処理についてだけでなく、伝えたいことがこちらにもあった。だが、この調子だと僕の出番がないまま別れることになりそうだ。

 

「でだ……」

「なにかね、ビャクヤ君」

 

意味ありげに僕の肩に手を置くな、嬉しそうに頷くな。無視されたわけではないし、お前の同類ではない。ヴィオールとそんなやり取りを続けていると、仮面の剣士がちらに目を向け……

 

「……ル…………っ」

「ん? なんだ。すまない。聞こえなかったんだがもう一度言ってもらえないか」

 

仮面の剣士は何かをつぶやいて急に口をつぐんだ。クロムは聞き取れなかったみたいで再び聞き返していた。

 

「マルス。僕の名前はマルスだ」

 

マルス、そう仮面の剣士は言いなおした。仮面の剣士――マルスはクロムに向かって自分の名前を名乗る。その様子がどこか引っかかった。なにも、気になるところはなさそうではあるのに……

 

「マルス……古の英雄王と同じ名か。確かにその名に恥じない腕だ。どこで習ったんだ?」

 

違和感があった。それが何かはわからない。なぜか、僕はマルスが……いや、気のせいかな。

 

「僕のことはいい。それよりも、この世界には大きな災いが訪れようとしている。

これはその予兆。だから、気を付けて」

 

そう言ってマルスは僕らに背を向けて歩き出す。そのまま、暗い森の中へと足を踏み入れた。そして完全に姿が消える前に一度立ち止まると顔だけこちらに向けた。

 

「それでは、また――風の導きの先で……」

「それは、またどこかで会う――ということかな?」

 

そう尋ねるとマルスは、静かにうなずく。

 

「……そう、じゃあ、またどこかで」

「うん! 今度会ったらお礼するね! だからまた必ず会おうね! 約束だよ!」

 

僕らの会話を聞いたリズはマルスにそう言う。それを聞いたマルスは小さく微笑み、言葉を返す。

 

「えぇ、約束しましょう……」

 

マルスはそのまま前を向くと今度こそ暗い森の中へと消えていった。

 

「行っちゃったね」

「あぁ、だが、また会えるだろう」

「そうですね。あなたもそう思いますか? ビャクヤさん」

「…………」

「ビャクヤさん……? どうかなさいましたか?」

「……いや、なんでもない。それより、ヴィオールについてはどうする?」

 

僕は思考を放棄すると、訪ねてきたフレデリクに今回一時的とはいえ仲間に加わったヴィオールについて尋ねることにした。

 

「そうですね……変な人ではありますが、悪い人ではなさそうなので、王都につき次第軽い取調べの後、正式に雇うことになるかと」

「ふ、私の実力を見抜くとはなかなかだね、フレデリク君。しかし、私は――」

 

再び調子に乗って話し始めるヴィオールだったが、ここでしゃべらせると長くなるなと思った僕は、彼の言葉にかぶせるようにして話に入った。

 

「あぁ、そのことだけど彼は僕の専属の部下にしてくれないか? 給与に対してもいろいろと融通聞かせれるよ?」

「――って、少し待ちたま……」

「わかりました。そのようにしますのでお願いします、ビャクヤさん」

「だから少し私の……」

「うん、ありがとう。じゃ、そういうことだから、今後ともよろしくね」

「……勝手にしてくれ……」

 

ヴィオールは何やら諦めたようにうなだれると、隅の方で膝を抱えて座り込んだ。

 

こうして僕はとても都合の良い部下(雑用)を手に入れたのだった。

 

 

 

***

 

 

 

何故だろう?

 

それは、記憶の片隅に、もやがかかって見えないけど――

 

なぜか見覚えがあった――

 

「マルス」

 

そうつぶやいたその顔に――

 

 

そして、なぜだろう……

 

「風の導きの先で……」

 

そう僕らに伝えたその言葉が――

 

そう返したその言の葉を、聞いたことがあると思ったのは……

 

どうしてだろう、僕はどこかで、彼女にあったことがあるのだろうか。

 

 

その答えはまだ見えそうにない。




う~ん、だんだん、ひどくなってる気が……

書き直すかもしれません。


それではまた次話で会いましょう。


2018/4/26 修正

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