FE覚醒~誓いの剣と精霊の弓~   作:言語嫌い

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後、2話です。少し急ぎ足な気もしますが、ここのあたりは語ることがありませんので、このような形になりました。

それではどうぞ。



第三十八話 絶望の始まり~定められた序章~

 

「な……あれが」

 

目の前に現れた余りにも大きすぎるソレに誰もが目を奪われる。

 

「そうです、あれが、私の世界を壊した元凶……私が時間を遡って、歴史を変えることで倒そうとしたものです」

 

ルキナは淡々とその事実を口にする。

 

「邪神ギムレー……あれこそが、私たちが未来で戦い続けた相手であり、ビャクヤさんが最後に戦った相手」

「あれが、邪神ギムレー」

「あれを相手にするのか……? 山と戦うようなものだぞ」

「たとえ、そうだとしても……あれを倒さないと、私たちに未来はありません」

「……っ! くそ、考えるのは後だ! 今は撤退するぞ!!」 

 

クロムたちも踵を返し、撤退を始める。そんな中、僕は頭上に表れたそれを見て小さく呟いた。

 

「……さすがに、これだけでは難しそうだな」

 

全軍が撤退する中、僕は最後までギムレーのその姿を見続けた。

 

「でも、だからといって、諦める気はないよ」

「ビャクヤさん?」

「いや、何でもない、行こうか。フレデリクも、すまない。急いで離脱しよう」

「ルフレさんは、あなたが?」

「ああ、僕が運ぼう。時間がない、急ぐよ」

「はい。リズ様も行きますよ」

「うん、お願い」

 

ギムレーの復活は止められなかった。だけど、まだ、終わりじゃない。あれを倒すことさえできれば、未来はルキナの言うような絶望に包まれることは無い。

 

「まだ、僕は諦めない」

 

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

ペレジアとフェリア・イーリス連合軍の戦いは両者の思惑から外れ、1日と掛からずに決着がついた。その結果、両軍の被害は軽微であり、こちらもほぼ無傷といっていい状態で戦場から撤退することが出来た。

 

だが、それは戦争による被害に限った話だった。ペレジアの被害はそれだけに収まらなかった。ペレジア国内には大昔に倒され、封印されたとされるギムレーの骸があり、その周辺にいた住民や、戦闘中だった兵たちがギムレー復活の際の贄となってしまった。それにより、相手側の被害は甚大で、またギャンレルの代わりに王となっていたギムレーが消えたことで玉座は空席となったことなどが重なり、ペレジアは大混乱。とても戦争をしている状況ではなくなった。もちろん、戦争をしている場合でないのはこちらも同じ。一番避けたかった結果――【炎の台座】が奪われ、ギムレーが復活した。

 

だが、チャンスはまだある。ギムレーは復活の直後はその強大な力になれるために数日から数週間を要するという。それもそうだろう。千年以上眠りについていたのだから、うまい具合に力が使えず、移動も難しい。

 

そして、その時間が最後のチャンス。

 

 

 

 

「それで、ビャクヤ。あんたは、どうする気だい? みんなで避けようとしていた最悪の結果が訪れちまったわけだが……。それと、聞いたよ。決戦の前夜にクロムに対して自由にするように言ったらしいね。こうなることも予期していたんだろう? なら、何らかの対策があるんだろう?」

 

イーリスへと向かう道中の軍議で、フラヴィア様はそう聞いてきた。そして、それはこの場に集まった者たちの総意なのだろう。一部を除いて、皆、フラヴィア様と同じように僕に視線を向ける。

 

「……本当は、ギムレーが復活した後にでも頑張って【炎の台座】を回収する予定だったんだけど、それは不可能だった。ギムレーに吸収されたのかどうかはわからないけど、どちらにせよ、今それは手元にない。だから、もう一つの策が使えるかどうか、ナーガに聞きに行く」

「神竜ナーガに?」

「ああ、そうだ。この世界に存在するギムレーと対になるような神――――ギムレーが破壊と絶望を司るなら、ナーガは創造と希望を司る。そして、初代聖王にギムレーを倒すために力を分け与えたのもナーガとされている。ならば、きっと、知っているはずだ」

 

とはいえ、これは僕の考えではない。そして、策なんてものでもない。だが、この事実を僕が知っていればこの手を取るだろう。だって、これを提示したのは、もとはといえば、僕なのだから。

 

「今回、戻る先をイーリスにしたのもこのためだ。一刻も早く、虹の山にたどり着くために、僕らはこの道を選んだ」

「そこに行けば、ギムレーを倒すこと方法がわかるんだな」

「ああ……とはいっても、おそらく、クロムかルキナにしかそれは実行できない」

「どういうことだい?」

「ファルシオンが必要になるから、その担い手であるクロム達にしか実行できないんだ」

 

それを聞くと、フラヴィア様は納得したように、クロムたちの持つファルシオンに目を向ける。イーリスの王族のみが使うことを許された剣。僕の持つビャクヤ・カティと同様、剣が使い手を選ぶ。そのため、正規の使用者以外が使うことはできない。それを知っているからなのか、フラヴィア様も納得はしたものの、やはり苦い顔をしている。

 

「父さん、訂正があります。正確には、たどり着く必要があるのはクロムさん――では、今回は難しそうですね……ルキナさんだけで大丈夫です。ルキナさんさえたどり着ければ、そこで試練を受けることが出来ます」

「……どういう、ことかな」

「クロムさんの持つファルシオンはまだ眠ったままです。そして、その覚醒に必要なのが、【炎の台座】なんです。ナーガ様の儀式はあくまで覚醒したファルシオンにギムレーへと対抗する力を与えるだけで、剣自体を覚醒させるのは別なんです。だから、過去で既にファルシオンを覚醒させているルキナさんにしか、この役は出来ません」

「…………ルキナ」

「はい……私もそのように聞いています」

「そう、か」

 

 

 

 

 

その後、未来の知識を持つマーク達の言葉が決定打となり、これからの方針は決まった。連合軍の本体はこの近辺にある砦で野営。その間に、別働隊としてルキナとマークとフラムさんとカナの4人で虹の山に向かい、そこで覚醒の儀を行うことになった。時間との勝負になるため、これ以上人数を増やすのは厳しいため、僕と同じ光魔法により屍兵に対し有利に戦えるマークをついて行かせることにし、あとは移動手段の関係から、フラムとカナが選ばれた。

 

本当は僕も向かいたかったが、ルフレは今とても不安定な状態にある。だから、ここをおいそれと離れるわけにはいかなかった。そして、それはクロムも同様だった。クロムもまた、僕と同じようにルキナ達と共に行こうとした。だが、ただでさえ、ギムレー復活により空中分解しかけているこの軍からクロムが抜け、さらに道中に何かあって命を落としたなどあれば、勝てる勝負も勝てなくなる。軍全体の士気を保つ意味でも、クロムにはここにいて、軍内部の見回りをしてもらう必要がある。そのように、僕はクロムを諭す。そのおかげか、クロムも踏みとどまり、最終的にルキナ達を見送る側に素直に立った。

 

「……待つのは、思っているより辛いものだな」

「それがわかったのなら、無理をしないことだよ。その気持ちをいつもエメリナ様は味わっていたのだから。そして、前線にいる君のことを後方で待つリズもまた同じように思っている」

 

見送った後も、ルキナ達が向かった方を見続けるクロムはぼそりと呟いた。そして、返答が帰ってくるとも思ってはいなかったのか、少し驚いたように僕の方へと振り返る。

 

「……お前は――――」

「愚問だよ、クロム」

「いや、まだ、俺は何も――――」

「僕は軍師だ。今はこうして前線で戦うことが出来るけど、もともとは力のない、頭を働かせることしかできなかった、無力な男だよ」

 

クロムのその問いに僕は即答する。僕も同じではないのか? そう思っての質問だろうけど、僕は生粋の戦士ではない。だからこそ、何度も味わってきた。

 

「悪い……」

「気にしなくていいよ。それより、僕らは僕らの仕事をしよう」

「ああ……そう、だな」

「……ティアモ、あとは任せる」

「はい」

 

その際に、強く、強く握りしめられた拳からは血がにじみ出ていた。クロムの性格から、仕方ないとさえいえるが、まあ、良く耐えた方だろう。精神面が若干不安ではあるが、そこは、フラヴィア様やフェリアの戦士たち、僕らイーリス自警団もいるし、なにより、リズやティアモがいれば、大丈夫だろう。

 

 

 

 

 

「それで、ビャクヤ君はこんなところでのんびりしていていいのかい?」

「今の僕にできることは、特にない。ギムレーとの戦いにおいて最も注意しなければならないのは神出鬼没の屍兵の存在。だが、それに関してはみんな対応できる。ルフレは、今のところ大丈夫。ギムレーに繰られるということもないみたいだし」

「まあ、それもそうだが……」

「それで? ヴィオールは何のようだい?」

 

どこから持ってきたのか、僕のテントで優雅に紅茶を飲んでいるヴィオールと、その後ろで先ほどまで給仕をしていたセルジュは澄ました顔で自身も紅茶を飲んでいる。話があると言って僕のもとに来たはずなのだが……いったい何をしに来たのだろう。

 

「まあ、ビャクヤ君も飲みたまえ。これはわざわざ取り寄せてもらったものだから、おいしいぞ」

「まあ、取り寄せたのは私ですけどね……しかも、現地へと買いに行ったのも私なんですよね」

「うっ! そ、その件は、また、あとでゆっくりと話し合おうじゃないか」

「そうですね……あとで、じっくりと、話し合いましょう」

 

……漫才をしに来たわけじゃないよな? そうだよな? さすがに、今の状況でそんなことをしに来たとは思いたくはないのだが……大丈夫だよな?

 

「ああ、すまない。そろそろ本題に入るとしよう」

「……それで? 用件は?」

「難しいことじゃない。ただ、一つだけ、聞きたいことがあったんだよ」

「何かな?」

 

紅茶を置いて、ヴィオールはこちらへと向き直った。まじめな顔も作れるのだな、と場違いに思った僕は悪くない。

 

「マーク君と今度お茶を飲みたいのだが……」

「却下」

「ミネルバちゃんを呼んできますねー」

「許可します」

「まて、早まるな。話せばわかる。私が悪かった。最近、思い詰めているようだったから少し冗談で場を和ませようと思っただけだ。悪気はない。いや、場違いなことはさすがの私でもわかっているが、どうしても……」

 

予想通りに、ふざけたことを言い出したヴィオールの要件を却下し、セルジュさんにヴィオールへの罰を与えることを即座に許可した。さすがのヴィオールもここまでされるとは思ってなかったようで、セルジュを引き留めながらこちらへと必死に謝ってくる。そうなることくらい予想できただろうに……僕はため息をつきながらセルジュさんにストップをかけた。

 

「セルジュさん……とりあえず、折檻の方はあなたにまかせますので、話を聞くことにします」

「はい、そうしてくださると助かります」

「……私が言うのもなんだが、本題に入る。聞きたいことは先ほどのように、マーク君のことだ」

「マークの? 何か気になることでも?」

「無ければ聞かないよ」

「それで、何が聞きたいんだ?」

「マーク君は何を隠しているんだい? もちろん、君もだ。二人して、何を隠している?」

「……へー、さすがは、落ちたとはいえ貴族。領地を治めていただけはあるか」

 

あの少ない情報でそのように判断するとは思わなかったし、ましてや直接聞いてくるとも思いはしなかった。これは、ガイアも噛んでいるとみるべきかな? だけど、残念だが、その問いには答えられない。

 

「悪いけど、その問いには答えられない」

「……理由を聞いても?」

「まず、第一に、マークの隠し事は僕も知らない」

 

予想外の答えだったのか、ヴィオールは呆気にとられたようにこちらを見ていたが、すぐに立ち直ると、こちらへと再度問いかける。

 

「……待ちたまえ。確か君たちは親子だろう? 少し前からたまにマーク君の相談も受けているという話も聞くし、一緒に寝ているという話も聞いているのだが、その時に何も聞いていないのかい?」

「残念だけどね……僕が聞いているのは主に未来の情報。ルキナからはもう聞いたから、それでマークから情報を集めていたんだ。あー、そうなると一応秘密の正体が一つはわかるな」

「それは?」

「マークが僕と誰の間にできた子供なのか。すなわち、僕が結婚することになった人のこと」

 

……とても、予想通りの反応だな。いや、うん、そうなるのはわかるし、聞きたいのはそれじゃないというのも理解できている。だが、それ以外のことは僕も知らないのだから勘弁してほしい。

 

「……さすがに、それを聞けないのはわかる。だが、それではないだろう?」

「さて、そっちの方は僕も知りたいんだけどね……無理なものは無理だ」

「そうか、それで? 君の方はどうなんだい? 何故、言えない」

「…………知らない方がいいこともある。ただ、それだけだよ」

 

その様に告げると、ヴィオールはそれ以上追及することを諦めたのか紅茶を再び口に運ぶ。ヴィオールの質問も一段落したようなので僕も紅茶を飲む。悔しいが、ヴィオールが自慢するだけはある。とても、おいしかった。

 

「さて、それでは、私の方の用件は済んだ。結局、何もわからなかったがね」

「そこは、諦めてくれ。こればっかりは話すわけにはいかないんだ。いつどこで誰が聞いているかわからないからね。少なくとも、ガイアは聞いてるし、このお菓子を狙っている」

「そのようだね……はー、ガイア。入ってきても構わんよ。君も一緒にどうだね?」

「お! 気が利くな、ヴィオール。とはいえ、こっちも仕事があるから、あまり長居は出来ないけどな」

「……ここでやれとは言ってないんだけど」

「気にしたら負けだよ」

 

その後、結局、どこから広まったのか、マリアベルやスミア、リズなどの自警団のメンバーが集まり、僕のテントはとても賑やかになった。久しく感じてなかった温かな団欒にヴィオールの言う通りに僕の精神的な疲れはだいぶ癒された。

 

――だが、そういう時間ほど長く続かない。

 

「ビャクヤ」

「なんだい、ガイア。仕事に戻ったんじゃなかったか?」

「帰ってきた」

「……なら、僕はいかないといけないね」

「私もお供します」

 

終わりは突然にやってくる。そして、間が悪いことに、隣にはルフレがいた。彼女もガイアの言葉が聞こえていたのか、こちらへと意識を向ける。

 

「ここは使わないのか?」

「……せめて、ほんの少しの間ではあるけど、皆にも体を休めてほしい。そう思っただけだよ」

「ついて来てくれ」

 

そう、儀式を行うために出ていた4人が帰ってきたのだ。

 

結果として、儀式は成功。ルキナはナーガからギムレーへ対抗する力をもらったらしい。そして、その際に、詳しくギムレーへの対策を聞かされた。そして、僕らではどうあがいても、ギムレーを滅ぼすことが出来ないというのが結論だった。曲がりなりにも、ギムレーも神と呼ばれるような存在である。同格の存在であるナーガでは完全に滅ぼすことは出来ず、封印が手一杯ということだった。そして、ギムレーの滅びは自分自身の手によってでしか成しえない……それ以外の方法をナーガは知らないという。

 

その後、夜に再びみんなを集めて今回のことの結果を伝えた。

 

「……時間を稼ぐことしかできない。それが今回の結論か。倒すことはできても滅ぼせないのであれば意味がない。結局は今までと変わらない。それに、今回のように封印できるところまで持って行けるとも限らない」

「だが、滅ぼす方法がないんじゃ仕方ない。私たちがあれに死んでくれと頼むのかい? そんなことは絶対に聞き入れちゃくれないだろうさ」

「……あの」

「ルフレ? どうかしたのか?」

 

軍議の間、静かにしていたルフレの言葉にかぶせるように、僕は彼女の名前を呼んだ。僕の声の方が大きかったためか、突然僕が彼女の名を呼んだように聞こえただろう。だが、数人ほど、ルフレの声を聞いていた。彼らは一様に僕のことをいぶかしげに見ている。

 

「いえ、何でもないです」

「そうか……クロム、今はこれしか策がない。それに、封印であろうとしなければこの世界が滅ぶ。たとえただの延命でしかなくとも、僕らは出来る限りのことをしなければならない。そして、伝えないといけない。知りうる限りの全てを」

「そう……だな。ルキナもそれでいいか?」

「はい……」

「それじゃあ、解散しよう。明日からギムレーがいる場所へと移動を開始する」

 

そうして、僕は軍議を半ば無理やり終わらせると、ルフレを伴って移動する。フラムや、フラヴィア様、フレデリク辺りは、何かあると察しているのか、僕らが二人になりやすい状況を作るのに協力してくれていた。だが、その目は後で話せと語っていた。話せることじゃないから、ルフレと二人になれる場所を探しているんだけど……わかってもらえそうにない。

 

そして、これまたルフレが気付いているかは知らないけど、なんだかんだで、ガイアとマークが後を付けている。そこまでしっかりと気配を消せてないマークはおいといて、ガイア……忍べよ。いや、見張っているアピールをしているのはわかったから、あとでお菓子出すから、もう少し気配を消しくれ。気が散る。

 

そのまま、しばらく歩いて、野営地から少し外れたところまで来ると、僕はルフレの方に向き直る。

 

「……さて、大体何を言おうとしたのかは理解できるつもりだけど、さっきは何を思いついたんだ?」

「その前に、確認したいことがあるんですけど、いいですか?」

「なんだい?」

 

先も言ったように、彼女が何を思いついたのかはだいたいわかっている。だから、この質問も何が聞きたいのかわかる。おそらく、自分が――――

 

「私はヒトであると同時に、ギムレーでもありますか?」

「――――その答えは君が一番知っているはずだよ。もっとも、確信を得たいのであれば、ナーガに問いただすといい。自分がギムレーなのかどうか」

「そうですか」

 

そして、この答えが僕らの推測通りであるなら、ある一つの仮説のもとに、ギムレーを倒す可能性が生まれる。だが、確証はない。ほぼ確実に滅ぼせるが、出来ない可能性もある。そのような部の悪い賭けでもある。だが、彼女は聞いてくるだろう。

 

「ビャクヤさん。もし、ギムレーを倒す方法を思いついたと言ったら、賛同してくれますか?」

 

僕がその方法を良しとするかどうかを。もし自分が彼女の立場なら間違いなくそうしているであろう方法だけに、強く否定することが出来ない。いや、どこかでそれが最善と決めつけてしまっている自分がいる。だからこそ、否定をしなかった。口止めをしなかった。わざわざ、こんなところにまで連れてきて、その内容を聞こうとした。

 

どうか、自分の予想が外れていますように……そう願いながら。

 

でも、悪い予感や予想というものは何故か当たる。当たってしまう。だから、僕は答えざるを得ない。最善(最悪)の手を……

 

「するよ。ギムレーである君自身がギムレーを倒す。そうすることで、ギムレーが自身の消滅を望んだのと同じ結果を作る。まあ、簡単に言えば、手の込んだ自殺だね」

「……やっぱり、わかるんですね」

「困ったことに、良くも悪くも君は僕に似ている」

「目が覚めてから、ずっと――――ビャクヤさんを見てきましたから。記憶のなかった私を導いたのはほかでもない貴方です。だから、そうなるのも仕方ないですよ」

「そうだね。ルフレの言う通り、僕ならこうするだろう、そう考えれば、君の行動もある程度理解できるんだよ。だからこそ――僕にはそれを否定することができない。それによって、どのような結果が生まれるのかわかっていても、それを止めることが出来ない」

「そう……ですよね。でも、もしも、そうだとしても、私は……」

「わかっている。だから、ごめん」

「いえ、でも、少しだけ、わがままを聞いてください」

 

 

 

ほんの少しだけと――彼女が僕へと要求したわがままによって、少しだけ、予定していた時間を延長することになった。だが、それのせいで、わかってしまった。気付いてしまった。でも、僕は言ってしまった。彼女へと告げてしまった。だから、これは僕の贖罪……こんなものじゃ足りないだろうけど、せめて、こんな小さな望みくらいは、叶えたい。

 

そう、思った。

 

「今日は、寒いな……」

「そう、ですね……だから、あなたの温かさがよくわかります」

「僕は、そんな……」

「私が勝手に思っているだけですよ」

 

そう、彼女は何時かのように笑う。だから、僕もそれに対し何時かのように微笑んだ。

 

 

 

 

「…………戻ろう」

「はい」

 

 

 

 

 

次の日、僕らはナーガ様の加護を受けながら、ギムレーのいるペレジアを目指してイーリスを出た。

 

これが、僕の最後/最初の旅となった。

 

 

 

 

 

 

 




これは少女達の決意のお話。


これは少女の決意が受け止められたお話。
これは少女の決意を支えるお話。
これは少女の決意が受け継がれたお話。
これは少女が決意してしまったお話。


FE覚醒~誓いの剣と精霊の弓~ 第39話

『幕間 誓いと決意とこぼれた涙』

誓いはここに……あの時のまま、今もそこに残っている

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