FE覚醒~誓いの剣と精霊の弓~   作:言語嫌い

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さて、続きです。ちなみに次の話はまだ一筆もかけていません……

それでは本編をどうぞ


第三十六話 ペレジア戦争~王の決断と軍師の戦い~

「……そうか、わかった。さがっていいよ」

「はっ!」

 

両陣営の士気は高い。僕らの所属するフェリア・イーリス連合軍は自分たちの王を殺された恨みから。そして、それはペレジアもまた積年の恨みが晴らすべく多くのものがこの地へと集まっていた。また、彼らが戦う理由はそれだけではない。彼らの王であるギャンレルもまた、何者かに暗殺されたようだ。

 

カナが成功したという可能性もあり得るが、それが真実とは限らない。ギャンレルの傍には神出鬼没と言って差し支えない、謎の司祭がいる。あれがいる限り暗殺はそう簡単には成功しないとみるべきだ。だが、仮に違うとした場合は本当にどうしてか理由がつかめない。ギャンレルは少なくとも自国の民や兵士の心をある程度つかんでいた。そういった者たちで固めれば身内に殺されるということはまずないはずだし、カナがその隙をつくのも可能ではあるが、非常に難しいはずだ。

 

密偵によれば大きな反乱があったわけでもなく、目立った騒ぎもなかったらしい。だが、気になるのは、ギャンレルの死後、ギャンレルの思想を受け継ぐと宣言した件の司祭がペレジアのトップへとおさまり、そのまま軍も国もまとめ上げてしまったことだ。

 

ギャンレルがそういうことを想定していてすでに準備をしていたのか、それとも司祭の方が手をまわしていたのかは定かではない。でも……

 

「ビャクヤさん、考えるのは後です。もう、みんな準備が整いました。いつでもいけますよ」

「そうか。なら、行こうか、ルフレ」

「はい!」

 

ルフレの言う通り、今考えても仕方ないこと。正直、判断を下すには情報が足りない。だから、今は目の前のこれらをどうにかしないといけない。

 

報告の通り、数だけ見れば向こうの方が多い。また、地の利も向こうにあるだろう。そして、仲間であるティアモはペレジアにとらえられたまま。あからさまに、こちらの分が悪い。けれど、そんなこと最初からわかっている。不利であることなど、百も承知。僕らのすべきことは一つだ。目の前にいる敵を討ち、自分たちの正義を貫き通す。

 

それを成すために、僕ら軍師はいる。

 

「さあ、行くよ! 敵を討ち、僕らの未来をこの手に!!」

 

動き出した以上、もう止まることはできない。

 

 

 

そう、坂を転がり落ちる石ころのように……止まることなく、ずるずると終着点へと進み始めた。そう、誰も気付くことなく、わたしたちは終わりを目指す。

 

「だから、わたしがいるんです。終わらせないために。終わりを始まりへと変えるために。生あるすべての者たちの希望を絶やさないために……そして何より」

 

『……よろしくね』

 

「あの人との約束を果たすために……」

 

『ですが、忘れないでください。これは――』

 

「でも、どうか、わたしにこれをさせないで。わたしのこれを完成させないでください」

 

もしかしたら……そんな、淡い期待を抱いたまま、わたしもまた進み続ける。もう、後戻りなどできない。ならば、わたしも、わたしの成すべきことをする。

 

いつの間にか、風はやんでいた。

 

 

 

 

 

―――――――――――――――――

 

 

 

戦いの最中、ふと、昨日のことが頭をよぎる。

 

『クロム、何故、僕が呼んだかわかるかい?』

 

そう告げたあいつの言葉が思い出されていた。そして、それがとても大切なことだったと今になって実感した。

 

 

 

昨日の夜、俺は珍しくビャクヤに呼び出されていた。そして、呼び出された場にはルフレやマークの姿はなく、代わりにジェロームやガイアといったあいつが信用し、よく使っている者たちがいた。そして、普段なら最終確認のために見回りをしているはずのフレデリクや、輸送隊のフラムという古参の者も集まっている。そして、不思議なことにルフレの姿はなかった。

 

だが、正直な話、すでに軍議は終えている。後は明日に備えてしっかり休むくらいのはず。だというのに、こいつはそれ以外で俺を呼んだ理由があると言う。

 

『……まあ、わかっていたらこんな風にわざわざ呼ばずに僕が確認をしにいけばいいだけなんだけどね』

『まあ、それもそうですね』

 

ため息とともにビャクヤは疲れたようにフレデリクへと言葉を投げかけ、フレデリクもまた同じように返す。そして、他の者たちも呆れたようにため息をついていた。

 

……さすがに、失礼ではないだろうか。仮にも、俺はこいつらの主なのだが。

 

『まあ、いい。僕がここにわざわざよんだのは、最終確認として釘を刺すためだ』

『何をだ?』

『明日、クロムにはフレデリクと共に行動してもらう。そして、はぐれた場合も、今ここにいる者たちの誰かが極力クロムの傍に護衛として張り付くことになっている。さて、何故だと思う?』

 

そこまで言われて俺もさすがに気付いた。

 

『暗殺の防止か』

『それもあるが、本命は違う』

『ん? それ以外に何かあるのか』

 

これが違うと言われると見当もつかない。そして、ビャクヤの方も俺がそう考えていることがわかったようで――――と、いうか、わかっていたみたいで、念を押すように、告げる。

 

『これはクロムの暴走を防ぐための見張りだ』

『…………』

『わざわざ、実力者をここまで集めたのにはそれなりの理由がある。暴走して突出しすぎたクロムを回収するためと、その抑止力となってもらうために、みんなには事情を話し納得してもらった。もちろん、ここにいる僕ら以外でも、できる限りクロムのフォローに回るように言ってある』

 

ビャクヤの言いたいことはわかる。俺はどうしても前に出すぎるところがある。だが、それなら、今まで通りでいいはずだ。けれど、そうしない。むしろ、今までよりもしっかりと対策を立てている。そこの理由がわからない。

 

『ここまでする必要があるのかと思うかもしれないけど……今回、向こうに人質としてティアモが囚われているというのが一番の原因だ』

『…………』

『落ちつけ、クロム。ただの事実確認にすぎない。さて、ここからが本題なんだが、向こうの手口として、確実にからめ手を使ってくる。ただの真っ向勝負だけで終わるはずがない。となれば、情に流されやすく、突出しやすく、そして、最高の交渉材料である炎の台座を持ち、こちらの士気を一気に下げることのできるクロムが狙われる。何に……などとは言わなくてもわかるよな』

『ああ……よく、わかる』

 

ビャクヤのように軍全体を見るものからすれば、俺はあまりにも弱点が多い。たしかに、俺がいるということで軍全体の統率がとりやすく、また、士気も上がる。だが、それは逆を言えば、俺さえ討ち取れれば崩壊するともとれる。そして、向こうのあの司祭も気付いているが、俺にとってティアモは……大切な存在だ。確実にティアモを交渉材料にされたら、俺はうなずいてしまう。きっと、ビャクヤのように切り捨てることなんてできない。

 

そこまで考えて、ルフレがいない理由にも見当がついた。ここにいる者たちならティアモを……切り捨てて俺や炎の台座の守護を行うだろう。だが、あいつはおそらくそれができない。おそらく選択ができず、その間に俺が決断すれば間違いなく――

 

『クロム。絶対に一人になるな。おそらく、おまえが孤立したところをあれは狙ってくる。そうなれば、こちらが戦争に勝っても結果的には負けたことになる』

『そう……だろうな。ルフレがいないのもそれが理由か?』

『……そうだ。ルフレは僕と行動することになる』

『そうか』

 

たとえ、戦争に勝ち、ティアモを取り返したとしてもギムレーが復活することになってはどうしようもない。そうなれば、イーリスの国だけでなく、世界が滅亡の危機に陥る。

 

『……僕の伝えたいことは以上だ。それじゃあ、明日に備えて解散しよう』

『いや、待て。もう一つ聞いていない』

『なんだい?』

『もし、おまえの考える最悪の状態に俺が直面したら……俺は、どうすればいい?』

 

片づけを始めたビャクヤに俺は問いかける。ビャクヤは片づけの手を止め、こちらを見ると苦笑しながら答えた。その顔はどこかあきらめたようで、悟ったものだった。

 

『クロムの望むように。クロムが望んだ結果なら、どんな結末が訪れたとしても僕は構わない。でも、だからこそ後悔だけはするな』

『…………』

『僕の言いたいことはそれだけだよ』

 

それだけ言うと、ビャクヤは片づけに戻り、俺も明日に備えて自分の天幕へと戻った。

 

 

そして――――

 

 

最悪の予想というものは、こういう時に限って起こるもの……今、クロムの隣には誰もいない。クロム自身、気を付けて動いていたというのに、気が付けば周りには誰もおらず、戦場からも少し離れた位置にいた。

 

「……ビャクヤの、予想通りだな」

 

俺は近くの遺跡跡地にいつの間にか移動させられていて、その時連れていた部下は全員、目の前にいるあいつの放った範囲魔法の前に倒れた。そう、敵味方関係なく放たれたため、あいつの部下も巻き添えとなった。

 

「予想できても、回避できなければ意味はないよ。それに、この状況をどうにかできる切札が君にはあるのかな?」

「…………」

 

結果、この場にはあいつと俺と、そして、あいつが連れてきたティアモしかいない。この状況下で、向こうの言いたいことなど分かっている。だからこそ、ティアモが生かされ、俺の前にいるのだから。

 

「さて、予想できたのならこちらが何を要求しているかもわかるよね」

「さあな? 教えてくれないか?」

「……なるほど、軍師の入れ知恵か。まあ、いい。こちらの要求は一つ、【炎の台座】を渡してもらおうか? もし受け入れるのなら、この捕まってしまった哀れな騎士を開放しよう」

「…………」

「さあ、どうする?」

 

要求されたものも、その代わりに受け取ることが出来るものも想定通り。そして、向こうは確信している。俺がどちらを選ぶかを……

 

「クロム様!!」

 

俺が楯代わりに使っていた台座に手をかけると、捉えられているティアモが声をあげる。こっちに関しても、何を言いたいのか理解できてしまう。そして、それ故にもう止まることも出来ない。

 

「わたしのために、そのようなことをする必要はありません! あなたのすべきことは、この交渉を拒み、台座を持ったまま、ビャクヤさんたちと合流することです!! 違いますか!!」

「ああ、そうだろうな。そうするのが正しい」

「ならっ……!!」

 

ああ、そうだ。ティアモの言っていることは正しい。一人の王として、国を守る王として、世界を救う聖王としての行動なら間違いなくお前は正しい。

 

「クロム、彼女の言うことは正しい。どこまでも正しく、正論だ。だが、だからこそ、君はそれにあらがう。違うかい?」

「クロム様!!」

 

そうだ、ティアモの言うことは正しい。でも、俺は――――

 

「ああ、そうだ。俺はそれを選べない。俺は世界ではなく、ティアモを選んでしまう」

 

俺はそう言いながら盾代わりに用いていた炎の台座を目の前に放り投げた。それを見た司祭は捕まえていたティアモを解放し、炎の台座をつかむとあの時のように黒い霧となって消え去った。残されたのは俺と呆然とその場に座り込んだティアモだけだった。

 

「無事か? ティアモ」

 

地面に座り込むティアモに差し出された手は彼女の前で止まり、そして、勢いよくはじかれた。呆然としていた顔には確かな感情が浮かんでおり、その感情は全て俺へと向けられている。

 

「……無事か? ではありません!! 何をしているんですか!! あれはイーリスの象徴であり、守るべき宝。そして、ペレジアに渡ればどうなるかわかっているんですか!」

「ああ、わかっている」

「なら! どうして!!」

 

ティアモは感情の赴くままにこちらを責める。だが、こいつがそうなるのも十分にわかるし、もし逆の立場なら俺もこいつのように怒っていただろう。どう考えても、理屈の上では、王として、未来を担う英雄の子孫としてすべきことはこれではないだろう。

 

だが、それでも、わかっていても、俺にはそれが出来なかった。

 

一言、告げればよかった――――お前を捨てると。世界のために、犠牲にすると。

 

一言、謝ればよかった――――犠牲にしてすまないと。気付けなくてすまないと。

 

ただ行動すればよかった――――彼女に背を向け、みんなのもとへ向かうのが正解だった。

 

「だが、できるわけがないだろうっ……!!」

「……クロム様?」

 

ああ、出来るわけがない。選べるわけがなかった。

 

気付いてしまった以上、思い出してしまった以上、ティアモを見捨てることなどできるわけがないのだ。

 

「俺には、おまえのいない未来なんて選べない……たとえ、その結果、ギムレーが復活してしまうとしても……お前を見捨てて世界を救った未来を俺は選べない」

「どうしてですか!! わたしはクロム様に仕える騎士にすぎません!! わたしの代わりは誰にでもつとまります! ビャクヤさんやルフレさん、フェリアの王の様な代わりのきかないものでは――――!!」

「お前の代わりはほかにはいないんだよ!!」

 

ティアモの言葉を聞いていられなくなった俺はかぶせるように言葉を紡ぐ。そして、座り込んだままのティアモを乱暴に引き寄せて、抱きしめた。突然の俺の行動にティアモが驚いて声をあげる。だが、それだけで、こちらを拒む様子はなかった。

 

「ティアモ……今まですまなかった。俺は、スミアに告白されたあの時まで、おまえとの約束を忘れていた」

「…………」

「身勝手な言い分だというのはわかっている。これは俺のわがままだし、本来優先させるべきものではない。だけど、それでも、この約束を破ることなんてできなかった」

 

静かに俺の独白を聞いていたティアモは小さく、ぽつりと呟いた。その声にはどこか後悔するような響きと、その冷たさの中にある温かな感情が込められているように感じた。

 

「……その約束は、思い出してほしくなかったです。そうすれば、このような事態を避けることが出来ました」

「そうだろうな……だが、思い出さなければ、俺はずっと腐ったままだったと思う。そして、思い出せたから、こうして自分の意志で前へと進むことが出来た」

「…………」

「ティアモ」

「はい」

「遅くなったが、約束を果たしに来た」

「……はい」

 

――――なら、私を守ってよ!! 私に守られるのが嫌なら、そうすればいいじゃない!

できないなら、言わないで!! 

 

――――ああ、わかった

 

――――強くなってよ……守られなくてもいいくらいに、誰かを守ることが出来るくらいに、強く、何よりも強くなって……

 

――――俺は強くなる。お前に守られなくてもいいように……そして、その力で誰かを守れるように。俺を守ってくれたお前を守れるように強くなる。

 

――――……なら、私はそれまであなたを守る。いつか私やほかの誰かを守れるまで強くなるその時まで、あなたの騎士として、あなたを守る。だから、あなたはいつか必ず、誰かを守れるくらい強くなってね?

 

――――ああ、約束する。必ず、強くなる。強くなって、いつか、必ず……

 

 

 

「お前を助けに来た」

 

――――人々を守るために、戦い続ける、おまえを助ける。

 

「……はい、本当に遅いですよ。クロム様……」

 

あいつが今どんな顔をしているかは俺にはわからなかった。だが、きっと泣かせてしまったのだと思う。ティアモから回された腕は彼女から零れ落ちる温かなものと共に、俺にこいつを守り切れたんだという実感をゆっくりともたらした。

 

 

 

 

王子と騎士の小さいころからの約束はこうして果たされた。だが、それは一つの結末を定めたことと同義でもある。避けなければならなかった、一つの結末はこうして彼らの予想通りに決まった。

 

「これを見る限り、炎の台座は奪われたと考えるべきか。だが、ようやく通じ合えたのだ。いましばらくの間くらいは、この逢瀬に目をつむるとしよう。それに、生憎、私一人では無防備な彼女を護衛しながらというのはなかなか厳しい」

「なら、私も手伝いますよ」

「……君は、呼ばれてはいないと思うのだが」

「人出は欲しいでしょう? それに、時間が残されているわけではありません。ここに、あれがいないということは、次に狙われるのは――――」

「そうだな……感動の場面ではあるが、仕方ない。馬に蹴られてくるとしよう」

 

男はため息をつきながら、彼らへと歩み寄る。

 

「そう、時間はもう残されていないんですよ。だから、どうか死なないで、父さん……」

 

そして、未来はまた一歩、彼女の望まない方向へと進む。

 

 

 

 

―――――――――

 

 

 

 

戦いの最中、突如として僕らの前に現れたそいつは周囲を敵味方関係なく吹き飛ばし、僕らと対峙した。そして、僕とルフレがともに行動してるのを確認したあり得ないものを見たとでもいうかのように、驚きに目をみはる。

 

「さて、まさか、あなたがわたしの傍についているなんてね……正直なところ予想外だったよ、ビャクヤさん」

「自分の正体をそんな簡単に明かしていいのかい? 邪龍ギムレー……それともルフレと呼んだ方がよかったかな?」

「どちらでもいいよ。でも、私としては昔のようにルフレって言ってほしいな」

「そうか……」

 

そんなやり取りをしながらも、僕とそいつ――――ギムレーは戦いの手を止めはしなかった。ギムレーも驚きはしたものの、すぐに立ち直ると僕へと切りかかり、それに僕も応戦した。そして、この場で一人、ルフレだけが状況を理解できずに、呆然としている。

 

「それで? どうして、わたしの傍にいたんだい?」

「君がクロムから炎の台座を奪った後に狙われるのはイレギュラーである僕か、最も高い素質を持つルフレのどちらかだからね。そして、どちらを狙ってもイーリスの軍にとっては大打撃になる。さらに言えば、ルフレを君が使う可能性もあるし、成り済ます可能性だってある。そうなると、ほとんどの者が君とルフレが入れ替わったことに気付かずに誤った指示を受けることになる。そうなれば、敗北は必須だ。だからこそ、僕はルフレの傍にいる。君が彼女に何をしてもすぐに対応できるようにするために」

 

魔力の高まりを感じた……それとともに、僕は察した。こいつの術中にはまっていたことを。だが、だからといってどうにかできるわけではない。

 

「……その情報をどこで手にしたんだい? ルキナから……というわけではないだろう? あの娘はそこまでのことを知らないはずだから」

「それを君に教えると思うかい?」

「そうだね……なら、無理やりにでも聞きだすよ!!! あなたの持つ、黒の宝珠と共にね!!!」

「やれるもんならね!!」

 

僕はギムレーの打ち込みに合わせて斜め後方へと大きく飛び、風魔法を行使して一気に加速してギムレーから距離を取る。そして――――

 

「〈レクスカリバー〉!!!!」

 

僕とギムレーがいた場所へと強力な風魔法が撃ち込まれ、周囲の砂を巻き上げ、辺り一面を風の刃が切り刻んだ。完全に目から光を失ってしまっているルフレを見据えながら、こちらをニヤニヤと眺めるギムレーを見る。先の発言からするに、ギムレーは黒の宝珠が足りないはずだ。そして、それの所有者が誰であるかについても検討が付いているはず。だからこそ、ここに姿を現し、ついでとばかりに、イレギュラーたる僕を殺そうと考えたのだろう。

 

「さて……本当にどうしようかな」

 

だが、ここまでならある意味、想定内だ。限りなく最悪に近い状況ではあるが、まだいける。僕を殺すために力を残しておきたいはずだから、クロムはおそらくではあるが生きているだろう。そして、未だに黒の宝珠を手に入れてないということは、ギムレーは僕が黒の宝珠の持ち主であると誤解してしまっている。ならば、この状況はチャンスだ。今まで後手に回り続けていたが、この一瞬だけは、ギムレーを出し抜くことが出来る。

 

だからこそ――――ここで奴を倒し、未来を変える!

 

「何度目になるかは知らないけど、挑ましてもらうよ……絶望の象徴――邪龍ギムレー!」

 

 

 

 

奇しくも、あの時と同じように、僕の隣には誰もいなかった……

 

こうして、ギムレーとの一騎打ちが始まった(運命は定まった)

 




さて、早く投稿できた理由ですが、実は35話が2ヶ月以上前に完成していて、ここのところ忙しくて、それを投稿するのを忘れていました。申し訳ありません。

さて、終わりに向けてそろそろ風呂敷をたたみ始めているところですが……以前お話ししたように、物語がいくつかのルートに分けられる都合上、あえて回収しないものも多々あります。まあ、もしかしたら、バレバレなのかもしれませんが、なんで回収してないの? と思われましたら、作者のことを微笑ましい眼で見ながら、いつか回収されるのを待っていていただけたらうれしいです。

それでは次をいつ投稿するかはわかりませんが、ここいらで終わります。

また次回お会いしましょう。

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