FE覚醒~誓いの剣と精霊の弓~   作:言語嫌い

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テストってなんだろう?

要するに現実逃避です……


第三話 仮面の剣士と貴族な弓兵

夜、イーリス郊外の森に火の手があった。

 

地の底から噴き出た炎の塊は、周囲に降り注ぎその一帯を赤に染める。燃え上がる森の中、火の気のない、開けた空間があった。炎に囲まれているのは無人の砦。周囲には異形の者たちを照らす炎の演舞……そこより導き出されるは終わりの光景、いつか見た絶望の世界。

 

そんな炎の揺らぎの中、金属のぶつかり合う音が響く。その終わりに抗うように、ただ、音は鳴り響く。先へ、先へとその剣は未来を目指す。望むが故に進み続けるのは、青き仮面の剣士。

 

「……ない。ぜった……めない」

 

そして、抗い続けるが故に、青き仮面の剣士の演舞はまだ終われない。

 

「……あの人と約束した、絶対に変えると。だから――――!」

 

その先にあるのは希望か、はたまた絶望か……それを知る者はいない。

 

 

 

***

 

 

 

青い異国の服を着た青年――ビャクヤはその手にビャクヤ・カティを持ちながら彼らに確認を取る。

 

「――――準備はいいね。僕が仮面の人を連れてくるまでに、砦をまず押さえて欲しい。砦を押さえたら、クロムとフレデリクで防衛をしつつ数を減らす。リズは回復をお願い。僕らが戻り次第、クロムと仮面の人で外の敵を、フレデリクが門の防衛、僕が弓で援護する」

「あぁ」

「問題ありません」

「うん!」

「よし。なら行こ――――」

「少し待ちたまえ、君たち」

 

指示を出し終えたビャクヤが戦いに赴こうとしたちょうどその時、妙に気取った声が聞こえてきた。彼らが声のした方に振り替えると、弓を持った空色の髪の青年がどことなく優雅さを強調しながらこちらに歩いてきていた。来ている服などから推測するに身分はいいほうだということがわかる。

 

ただ、その服は汚れ、髪も少しほつれているせいか、態度と裏腹に優雅さがみじんも感じらえなかった。とりあえず、努力しているらしいことだけは伝わった。

 

そんな自らの姿を気にせずに、というよりはあえて無視して青年は語り始める。

 

「人生というものは長い。そう先を急ぎすぎるものでもない。ここは――――」

「悪いが君と違ってこっちは急いでいるんだ。クロム、フレデリク、リズは砦に急いで。ここは僕が何とかしとくから」

 

指示を受けたクロムたちは、急いで砦へと向かった。残ったビャクヤは素性のわからない変な青年の対応をする。手短に済ませる……そのためにすべきことは、何故か心当たりがあった。

 

「フ……よく聞いてくれた。私はさすらいの高貴な弓使い、その名も――」

「弓使いか、ならクロムたちの援護のために砦に向かってほしい。今ならあの化け物も、仮面の人のおかげでこちらまで接近していない。問題なく行けるはずだ」

 

その方法とは、相手のペースに持ち込ませないこと。簡単なようで難しいが、今回は比較的楽ではある。なにせ、のんびりしていれば命に関わるのだから。

 

「こちらの要望は以上だよ。どうするかは、君が選んでほしい。でも時間がないから、早く」

「……って、ちょっと待ちたまえ君、人の名乗りを中断するどころか、いきなり命令してくるとはなんだね? 常識というものを……」

 

再び言葉をさえぎられた彼はビャクヤに抗議をする。ここで、弓使いの彼とのんびり話をしている余裕はない。そろそろ話をまとめたいビャクヤは剣を突きつける。

それを見た青年は顔を青ざめ、手をあげて降参の意を示す。

 

「もう一度言うよ……ここで死ぬか、僕らの手伝いをするか。選んで? 僕としてはこんなタイミングで現れた君の存在が怪しくてたまらない。切り捨ててもいいのだけど――どうする」

「わ、わかった。君たちの味方をするから剣をしまってくれたまえ。本当はいきなりの事態についていけなくて心細かったのだよ。イノシシに襲われるは、何とかなったと思ったら地面がゆ……」

「砦はむこうだ。頼んだよ」

「私の事情は無視かね!? わかった、なんでも手伝う。だから、助けて欲しい!」

 

そう言った彼に、ビャクヤはにこりと微笑む。

それを見て青年は、何か不穏な空気を感じるももはや時すでに遅し。

 

「名前は?」

「ヴィオールだ……」

「そう。じゃあ、頼んだよ」

「……あ、あぁ」

 

ヴィオールから言質をとったビャクヤは、剣を構え異形の者たちに切りかかっていった。

 

後に残された彼は、一人ぼそりとつぶやいた。

 

「……今日は厄日なのかね? 私の運はそこまで悪くないと思っていたのだが。とりあえず、行くことにしよう」

 

自嘲気味に笑いながら彼はそう言うと、自らの不幸を嘆きながらも弓を構え、指定された砦に向かう。誰かの下に入るということを新鮮に思いながら……

 

 

 

***

 

 

 

炎の中をうごめく異形たちを相手に、彼らは戦い続ける。

 

一方は砦にて陣を敷きながら、一方は平野にて異形に囲まれながら。双方はともに自らの武器を振るい続ける。

そんな戦いの最中、一筋の光が空から降り注いだ。

 

「お兄ちゃん! あれ!」

「!? あれは……」

 

突如、天より降り注いだ光にクロムたちは呆気にとられる。戦いの最中に動きを止めることは致命的な隙となるが、今回ばかりは双方にとってイレギュラーなことだったようだ。

目の前に迫っていた異形もその武器を下ろし、光の降り注いだ方角を見ている。とはいえ、この硬直はそう長くは続くものではない。異形の者のうちの一体が再びこちらを向き武器を構える。

 

「クロム様!」

 

いち早く硬直状態から回復していたフレデリクはそう叫ぶと、動きだそうとしていた異形の者を槍の一撃にて消滅させる。その言葉にて我に返ったクロムは剣を構えると、再び砦の防衛にあたる。

 

「フレデリク、先ほどの光はなんだと思う」

「おそらく、ビャクヤさんの光魔法と呼ばれるものではないでしょうか。どちらにせよ、彼が来るまでわかりません。今は目の前の戦いに集中しましょう」

「ああ、そうし――」

「その通りだともフレデリク君。今は、目の前のあれらを倒すのが先なのだよ。あのようなものに驚いている暇があるなら私のように戦うべきだね。あくまで貴族的に」

「攻撃を始めたのって、ついさっきじゃ……」

「な、何を言っているのかなリズ君。あれは少し考察をしていただけさ、決して呆然となんか――」

「もうなんでもいいから、援護してくれ」

 

こんな時でもとてもマイペースなヴィオールを見て、どこか疲れたようにクロムはつぶやいた。

 

 

 

***

 

 

 

同時刻、仮面の剣士も硬直から立ち直るとすぐに目の前の異形の者たちに切りかかっていった。しかし、その動きはどこかぎこちない。それはほんの些細な違い。だが、見るものが見れば容易にわかるもの。その違いとは、何かを抑えようとしているため思うように動けない……そんな感じである。

 

(あの光はあの人の……。じゃあ、やっぱり、あれは……彼は……間違いなく――)

 

その様に思考していたためだろうか、気が付くと目の前に斧が迫っていた。よけれない。仮面の人物は剣を前に出し、斧による一撃を受け止める。

 

「え……」

 

そして、受け止めた斧は力なく地面へと落下した。斧を持っていた異形は上半身抉られ、消滅を始める。

 

剣士の横を過ぎ去ったのは一筋の光。それは、彼の援護。

 

「少し、いいかな。出来ればこちらと協力してくれると助かるんだけど……話だけでも聞いてくれないかな?」

 

その言葉に、仮面の剣士はゆっくりと振り返り、頷いた。

 

 

 

***

 

 

 

燃え盛る炎の中、仮面の剣士はただ目の前の異形を切り続けていた。

迫りくる異形の者たちの攻撃をかわし、攻撃後にできたすきを確実に仕留めていっている。

 

しかし、ビャクヤにとってその光景は異様だった。

まず明らかに慣れていることがわかる。普通の戦いにではなく、異形の者たちとの戦闘。フレデリクはこのような者たちを見たことがなく、初めて見たというし、動きも独特なものがある。生身の人間のようでいて、それとは違う誤差がわずかだが生じている。

そして、彼がこう思った一番の理由は、仮面の剣士が異形の消滅を見ても全く驚いていなかったことである。いや、正しくはそれを当然のものとして行動していることである。頭でどんなに理解していても、倒したばかりの異形の倒れているところに移動するということはそうできるものではない。意図していなくともそこを避けるように動くはずである、その場所に何もないことを目視できるまでは。

ビャクヤは迫りくる異形の者たちを適当に切り捨てながら、思考を続ける。

 

――どうしてこんなに慣れている? こいつらがこの近辺では見られないだけという存在でもないはずだ。こんな奴らが出てきたら何らかの噂になるし、国単位で問題になる。そうなれば、この周辺に詳しいというフレデリクの耳にも入るはずだ。そうでないとすると、あの人物が召喚者か、それに近しいものになる。そう考えれば同じ魔方陣から出てきたのもわかる。まあでも、あれを倒しているから今は味方だろう。とりあえず、これ以上は合流して話を聞かないことにはわからない。

 

なら――

 

彼は答えの出すことのできない問いに対する思考を切り上げると、本来の目的を遂行するために動き始める。

 

「数は多いけれど、とっとと終わらせて話を聞こうか。気になることは多いし――さてと、いこうか」

 

彼は一度異形たちと距離を取ったのち、小さくつぶやく。

 

「――――」

 

その直後、幾条もの光が空へとのぼり、それらは一筋の光の矢となって再び空から彼のもとへと降り注ぎ、彼の周囲のモノを吹き飛ばす。

そうして、彼は近場にいた異形を一度に吹き飛ばしたのち、仮面の剣士のもとへとさらに進む速度を上げる。

 

その時、彼の剣を持っていない左手には、青いきれいな弓が握られていた。

 

 

 

***

 

 

 

また、会えた。もう二度と会えないと思っていたのに――――

 

違う。本当は二度と会えないってわかっている。だって同じだけど、違うから。わかっていたことなのに――なのに、なんで……私はこんなにうれしいんだろう。

 

ねえ、なんでですか?

 

そう聞いたら、あなたは教えてくれますか?

 

そう聞いたら、あなたは応えてくれますか?

 

そう聞いたら、あなたは私にまた(・・)微笑んでくれますか?

 

 

その人は、誰にも気づかれないようにそっと白い首飾りに触れる。

白い剣の形をしたその首飾りに……




この作品を読んでくださっている皆さんお久しぶりです。
明日テストなのに設定考えながら、書き上げてしまいました。
何やってんでしょうね、ほんと。

今回で一章終わりませんでした。しかし次では……言わないことにします。
原作とは少し違ったお話になりました。赤いあの人は次も出ない予定です。

それではテストが終わり次第また書いていこうと思います。


2018/4/26 修正

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