FE覚醒~誓いの剣と精霊の弓~   作:言語嫌い

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さあ、年末が近づいてまいりました。

このルートの終わりまで残すところ10話前後の予定。

年末まで残り14日。一日一話投稿すれば終わります……厳しそう

とりあえず、目標が達成できるよう努力します。それでは本編をどうぞ


第三十話 間章 軍師の娘

 

目の前の少女――ソール・カティを背負った少女は先ほど僕のことを父さんと言ったまま黙して語らない。僕もまたあまりに予想外の事態に驚いてしまい、うまく目の前の事柄を飲み込めていなかった。そして、ルキナも僕と同じように呆然と目の前の少女を見つめていた。

 

「……君は、いったい――――」

 

僕の口から洩れたその疑問は、強烈な殺気と共に現れた複数の屍兵と、

 

「ミツケタ……、トキノコ……」

 

それらの中心にいる屍兵の長らしき固体から放たれた言葉により掻き消された。そして、平時であれば聞き逃すことのない重要な言葉を、僕は何気なく聞き流していたことに気付くことはなかった。

 

「ルキナ」

「はい、前衛はお任せください」

「ああ、頼む」

 

ルキナと簡単に言葉を交わすと僕は魔法の準備に、彼女は屍兵の注意を引くべく部屋の中に入ってきた屍兵へと向かう。そして、いつの間にか隣に立ち、背中に背負ったソール・カティを抜き放ちかまえている少女に問いかける。

 

「……君、名前は?」

「……マーク」

「いけるか?」

「うん……まかせて――――父さん」

 

静かに、それでいて確かな芯をもった声が彼女から届いた。彼女が何故僕のことを父さんと言うかはわからない。彼女が何者で、どうしてここにいたのかもわからない。でも、その刀を持ち、抜き放つことが出来たというのなら、それは精霊に認められたということ。あの時のリンのように精霊に認められたというのなら、彼女は大丈夫だろう。

 

君もそう思うだろう?

 

窓から入った柔らかな風が僕をやさしく撫でた。

 

「行くよ、マーク、ルキナ。目の前の敵を殲滅する!」

 

中央、僕の目の前に迫ってきていた屍兵の攻撃をよけながらそう告げると、その屍兵は振り向きざまにソール・カティを振るったマークにより切り伏せられた。そして、手のひらに魔力を収束させると手をつきだし構える。そして、驚いている僕を横目に彼女は淡々と言葉を紡ぐ。

 

「私も、手伝います……あの人には下がってもらってください」

「ああ、わかった――頼んだよ」

 

彼女はソール・カティを器用にくるりと回すと背中の鞘にしまう。そして、僕にとっては懐かしい、久々に他者の口から聞くことになった光魔法を彼女は唱えた。

 

「はい。行って、〈ライトニング〉」

 

その光はルキナの周囲にいた屍兵数体を吹き飛ばし、彼女に後退の時間を与えた。その時間を無駄にするつもりはもちろんない。僕も同じように光の矢を放ちながら、彼女に後退するように指示を出した。

 

「手伝う、と言ったということは君も持っているのかな? それとも使えるのかな?」

 

後退してきたルキナを視界に捉えつつ、彼女に問いかける。

 

「来て〈マーニ・フレチェ〉」

 

言葉少なに彼女は僕の問いに行動で返し、僕と同じように矢をつがえた。

 

「「セット」」

 

利き腕は違うのか……右手に構え、左手で弓を引くさまを見て場違いだと知りつつも僕はそう思った。

 

「行け」

「行って」

 

同じように引き絞り、同じ言葉を紡ぐ。

 

「「〈アルジローレ〉」」

 

ああ、この少女は僕の娘なんだな……彼女を見ながら何故か不思議とそう思えてきた。

 

 

……未来では結婚してないはずなんだけど。

 

 

ルキナから得た未来の知識との齟齬に疑問を持ちながら屍兵たちに炸裂した光魔法を眺めた。とりあえず、殲滅を確認したら僕の娘だという少女――マークに問いただしてみるとしよう。

 

 

 

 

 

 

――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

「……これで、ようやく三つ集まった」

 

その人物はそう呟くと転移の準備を始める。あまりのんびりしていると騒ぎを聞きつけたヴァルム兵(馬鹿)どもが来るためである。

 

「見つかったら面倒だし、さっさと帰ろうか」

 

だが、実際のところ、別に見つかったところで問題はない。その程度なら倒すのに指して労力を消費することはないからである。だが、今この人物はあまりペレジアの王であるギャンレルから目を放している時間を長くしたくは無いと思っている。

 

「さて、今、彼は何をしてるかな? そろそろ怪我の具合もよくなってきてるし、リハビリも済んでる。半年たってないけどこちらの準備は今回のこれでもう大丈夫だ。そろそろ、始めてもいいんだけど……」

 

この人物の言うようにペレジアの王であるギャンレルの傷はもう癒えており、リハビリと称した訓練でもだいぶ調子を取り戻しており、あと2,3日すれば本調子に戻ると思われる。だが、彼は全くと言っていいくらいにイーリスのことを放ったらかしにしている。

 

以前の彼ならこんなことはなかっただろう。

 

いや――――

 

「僕と出会った後の彼なら、間違いなく体を休める時間を惜しんでイーリスを滅ぼすことを考えていたはずだ。少なくともそうなるように(・・・・・・・)仕向けてきた」

 

だが、今の彼は時折思い出したように部下に対策を伝えるだけで、イーリスへの事柄にはほとんど当たってない。むしろ、心ここにあらずと言った感じである。この人物と話しているときも表面上は取り繕っているが内心ではほかのことを考えていることが読み取れていた。だが、さすがに何を考えているかまではわからないが。

 

「まったく、以前の君からするとずいぶんとずる賢くなったもんだよ。何かをこそこそと嗅ぎまわっているみたいだけど、それらを記録して残しておくこともなければ、報告書もその場で燃やしているみたいだし。そもそも報告書を出している人物が僕に特定できないというのも、驚きだ」

 

自分のあずかり知らぬところで暗躍するギャンレルの行動にこの人物は不快感を示すことはなく、むしろ楽しそうにつぶやく。もしかしたらギャンレルの行動によって自分の計画が崩れてしまう可能性があるというのに、一度崩れたら取り返しのつかなくなる計画だというのに、この人物はその状況すら楽しんでいた。

 

「……さあ、あがいてみるといい、僕のピエロさん(王様)。あの日、あの時、全てに絶望し、忌むべきはずの僕の力にすら縋ってしまった君が、僕の力に頼らず、独りでどこまでできるか見物だよ」

 

転移の陣が完成し、この人物は転移の魔法を使う。目指す場所は自分に与えられた一室。そして、その人物はこともなげにヴァルム大陸からペレジアの自室への転移を終える。通常ではありえない距離の移動をしたというのに、その人物に疲れは見えず、力の消耗も感じられなかった。そして、最近――休戦をしてから遠巻きに監視されるようになった部屋に堂々と転移し、その監視者をついでのように喰らった(・・・・)

 

「……少ないね。まあ、仕方ないか。彼も言ってたけど、そういう固体はめったにいないらしいから当然か」

「当然だな。そのような雑兵を食らったところで満ち足りるわけがなかろう」

 

誰も答えるはずのない独り言に闇は答えた。そして、何もないはずの空間が歪み、黒い影がゆらりと現れる。見た目はその人物と同じだが、決定的に影とその人物の間にあるのはその身長と体格。明らかに、その人物の方が大きかった。言ってみれば、大人と子供と言っても間違いではない。しかし、突如現れた影を見ながらその人物は茶化すように問いかける。

 

「へー、表に出てくるなんて珍しいね。足りなくなったのかい?」

「その通りだ。それと、そろそろ動くのだろう? その際の手駒が必要だからな。お前の言う通り、いろいろと足りなかったが、一体だけ簡単にではあるが作成させてもらった。使者にでも使うといい」

「そうかい。僕もそろそろ行こうと思ってたからありがたく使わせてもらうよ。それで、いつやる?」

「私の準備もあるし、それの最終調整もある…………明後日くらいが頃合いだろう」

「そうか。なら、そうしようかな。僕もそれに向けて準備を整えるよ」

 

そして、影は出てきた時と同じように闇に溶け込むようにして消えた。その影を見送ったその人物は、口元に暗い笑みを浮かべながら思う。

 

そして、影は自室にて暗い笑みを浮かべながら思う。

 

「「ふ、利用されているとも知らずに……まあ、時が来るまで愉快に踊るといい」」

 

互いに譲れない目的のために両者は利用しあい、そして相手のもつ全てを狙う。

 

「お前の力は僕の/私のものだ」

 

三者三様の思惑が渦巻き、微妙なバランスにより保たれていた均衡を崩す。

 

「……お前らの好きにさせると思うなよ。ここからが、俺の反撃だ」

 

タイムリミットまで、後二日……ビャクヤたちが遺跡にてマークと出会った日のことであった。

 

 

 

 

 

 

――――――――――――

 

 

 

 

 

 

屍兵を退けた僕らはマークが出てきた階段の下――地下の書斎へと降り、入り口にとある騎士からもらった光の結界を施すと野営の準備を始めた。その書斎は僕の記憶通りの場所で、入り口はあの一か所しかなく、また、他にどこかに通じている様子もなく安全と言える場所であった。

 

簡単に野営の準備と食事を終えると、先ほど気になったことを目の前の少女に尋ねる。

 

「さて、マーク。君のことを教えてもらえるかな?」

 

そう僕は切りだし、そして、彼女の隣に横たえてある一振りの巨大な刀に目を向ける。

 

「もちろん、その刀――ソール・カティについても教えてくれるとうれしい」

 

その問いかけを受けた少女は顔を俯け、表情を悟られないようにするためか、はたまた、気まずいからなのかはわからないが、こちらから目を逸らす。そんな少女の様子を僕とルキナは静かに見つめ、答えを待つ。

 

そんな沈黙がしばらく続いた後、目の前の少女――マークはゆっくりと顔をあげると僕の方を見つめ、ぽつり、ぽつりと少しずつ語りはじめた。

 

「…………私は、マーク。最初に出会った時に言ったようにあなたの娘です」

「え!?」

 

この言葉に反応を示したのはやはりと言うべきか、未来の知識を持ち、目の前の少女を除き僕のことを一番知っているであろうルキナだった。まあ、それもそのはずだ。彼女は未来において僕の最も身近にいた家族(・・)だからだ。ある意味この少女と同じように僕の娘と言えるかもしれない。彼女の未来の知識を信じればだが。

 

「それは、あり得ません! 未来では彼は結婚していませんし、誰かの間に子をもうけていたとも聞いていません! そのような浮いた話が全くないせいで、そっちの人かと疑われるくらいだったんですよ!」

「うん、ルキナ。とりあえず最後のは余計じゃないかな? まあ、それはともかく、僕の知りうる未来の情報、すなわち滅びの未来から来たルキナの話では僕は結婚してないし、誰かの間に子をもうけたわけでもないみたいなんだけど?」

 

どういうことかな? と暗に僕には娘がいないと告げる僕らに対し、その少女は小さく、起動、とつぶやくと戦闘中に使ったマーニ・フレチェを出現させた。

 

「まず一つ。私は……ルキナ、さんの言っている未来とは違う未来から来た。そして、その未来で私は父さん――――シエルさんって言った方がわかりやすいかな? ともかく父さんに、この弓を譲ってもらった。これからの助けになるからって」

「私のいた未来とは違う未来? そんなものがあるの?」

「……二つ目。このマーニ・フレチェは本来一つしか存在しない武器。それが二つも同じ時空、時間軸にあるということ。それの本来の所有者が現在二人しか確認されていないこと。一人ははるか昔にこれを授けられた古の弓聖。そして、もう一人が父さん」

「すなわち、その僕が現在マーニ・フレチェを持っていて、君の持つマーニ・フレチェは僕から譲ってもらったものだから自分はこの時間軸とは別の時間軸から来たと言いたいのか。でも、それじゃあ、僕の娘だという証拠にはなりえないな」

「…………うん。わかってる」

 

僕の言葉にどこか寂しげにそれでいて懐かしそうに少女はつぶやいた。その口ぶりからすると、僕を説得できないことを分かっていたみたいな反応だった。けれど、口ではこのように彼女を否定しているが、心のどこかで彼女は自分の娘だと認める自分がいた。何故かはわからない。でも、本当はこんな問答なんていらないと訳も分からないのに確信していた。

 

「これ以上私にあなたの娘だと証明する手段は残されていない。私が提示できるのは私が父さん――あなたの知り合いで、この弓を譲ってもらい、あなたが生存している未来、ルキナさんとは違う未来から来た人物であるという証明しかできない」

「…………」

「だから、ありきたりな言葉だってわかってるけど、私にはこう言うことしかできない。お願い、信じて」

 

そんなマークの切実な懇願を僕は無下に扱うことは出来そうになかった。そして、隣で心配そうに見つめるルキナに確かめる意味で問いかけた。

 

「ルキナ……君は」

「私は――――」

 

どう思う? そう、彼女の意思がどんなものかわかったうえで、本当に確認の意味を込めての問いに、彼女は僕の予想していた答えを返した。

 

「私個人の意見で言わせてもらえれば、彼女が味方だということは信じられますし、信用できます」

「そうか、なら……」

「ですが、ビャクヤさんの娘だというのは少し信じれません。あなたの言う通り証拠が少ないというのもありますし、理由はほかにもあります。けれど、ここで私が何を言っても意味はないです」

 

半ばあきらめたような表情で彼女は語る。その言葉の所々にとげがあるのは気のせいだと思いたい。

 

「これはビャクヤさんの問題ですから。だから、決めるのは私ではありません。それに、血のつながりのない私を本当の家族のように扱ってくれたのはほかでもないビャクヤさんです。だからこそ、マークを娘として、家族として扱うかどうかはビャクヤさんの意思次第です」

 

ルキナは自分の意見を述べたうえで僕に決定権をゆだねてきた。だから僕は自分の答えを告げる。

 

「さて、マーク。彼女はああ言ってるけど、僕の答えはこんな問答をする前から実はもうすでに決まってる。だから、さっきのあれはいらないって言ったらいらなかったんだよね」

「知っていましたよ」

「うん、知ってたよ。父さん」

 

マークは特に表情を変えずに、ルキナはため息交じりに即答する。そんな二人の少女に僕は肩を落としながら聞いた。

 

「……そんなに僕の思考は読まれやすいのかい? これだと軍師失格なのだけど」

 

そんな風に落ち込む僕を見て二人の少女はくすりと笑みをこぼし、どれだけ一緒にいたと思ってるんですか? と告げる。少なくとも僕の考えがわかるくらいには一緒にいて、それでいて近くにいたことはわかった。そして、彼女たちに隠し事の類をするのがとても難しいこともよく理解できた。

 

「はあ、なんかしまらないけど、僕は君が娘だと信じるよ、マーク。何故かなんて理由はいらないし、どうしてそう思ったのかも説明できない。でも、僕は信じるよ。だから、これからよろしく、マーク」

「はい……ありがとう、父さん。こちらこそ、これからよろしくお願いします」

 

静かに頭を下げるマークに僕は手を差し伸べた。差し伸べられた手に少女は気恥ずかしそうに触れると、小さいけれど確かな笑顔と共にしっかりと握り返してきた。こうして、遺跡で出会った少女マークは僕の娘となった。それが彼女たちのとってよいことだったのか、悪いことだったのかは彼女達しか知らない。

 

 

 

――だが、少なくとも、この少女は幸せを感じていた。小さな、小さな幸せを……

 

そして、彼女は不安と共に、小さな希望を抱いていた。彼が消えてしまう不安と、彼と共にあることのできる希望を……

 

そして、そんな少女たちの内心を知ってか知らずか、彼は最後に特に何も考えず興味本位でこう目の前の少女マークに聞いた――

 

 

 

「ところで、君のお母さんは誰なんだい?」

 

その問いをした瞬間、場が凍ったのを悟った。それとともに、僕自身もこの質問は無いなと思った。これが僕の娘でないならまだしも、さすがに未来の僕が誰と共にあるかなんて聞くのはさすがに野暮だった。

 

「……父さん。それは禁則事項です」

 

そんな中、尋ねられたマークは人差し指を軽く自身の口に当ててそう返した。マークの機転のおかげで場の空気は何とか穏やかなものになったが、微妙にルキナの視線が痛い。

 

「ビャクヤさん……」

 

ルキナがそんな底冷えするような声で僕の名前を呼んでくるはずがない。だから、呼ばれてなんてないはずだ……軽く冷や汗をかきながら不思議そうに僕らを見てくるマークを何とか笑ってごまかす。

 

「はあ、大丈夫ですよね? 信じてますから」

 

そう言いながらも寝るときにはちゃっかり僕とマークの間に入る当たり信頼されているのかされてないのかわからない。普通は離れるよね? その疑問は口にしない方がいいだろうから僕の心の中でつぶやくにとどめておいた。

 

「私にもまだチャンスあるのかな?」

 

そう隣から聞こえてきたが、眠気の方が勝っていた僕は無視した。なにか、考えたらいけない気がしたので……

 

そして、マークの持つソール・カティについて全く聞けてなかったことにルキナも僕も全く気付くことはなく、マークは人知れずあの父親相手にごまかすことが出来たことを助かったと安堵していた。

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

遠い、遠い地の異なる場所で、二人の人物はそれぞれの場所で静かに伏していた。

 

一人はヴァルムの地の玉座にて、一人はソンシンの一室にて彼らは共に倒れていた。しかし、死が近いわけではなかった。確かに、このままいれば間違いなく死んでしまうだろう。だが、すでに司祭が呼び集められているため、じきに彼らの傷は癒され、休養の後に復帰が可能であった。

 

そう、彼らは生きていた。あれを相手に彼らは生き残ることが出来ていた。

 

故に――

 

「これが、師が勝てなかったという邪龍の力の片鱗か……我ではまだ遠く及ばぬな。師よ、あなたとの約束はまだ果たせそうにない……」

 

どこか悔しそうに王はつぶやく。

 

「……ふ、まだ私も未熟だな。これでは妹を守ることなど到底無理だ」

 

どこか諦めたように王はつぶやいた。

 

「だが……!」

「しかし……!」

 

けれど、二人の心は折れていなかった

 

「「だからこそ」」

 

いや、むしろより強く今まで以上に闘志を燃やしていた。そして、新たな決意と共に鋭く言葉を放つ。

 

「打ち砕く!!」

「貫き通す!!」

 

己の武器を握りしめながら確かに彼らは誓う。その瞳にそれぞれの守るべき約束を思い描きながら、互いに同じ敵を見据えて彼らは叫ぶ。

 

「届かぬなら届かせよう!」

「足りぬなら、補おう!」

 

呼応するように同じ時刻に違う土地で紡がれる言葉は確かな力を持って世界に響く。

 

「我は……」

「私は……」

 

「負けてはいない!!」

 

立ち上がり、その先を見つめる彼らは二人同時に踏み出し、怪我を無視して歩き始める

 

 

 

はずであった……

 

「ヴァルハルト様!!」

「兄者!!」

 

そして、慌てて駆け付けたそれぞれの身近なものに止められる。二人の王は杖で、鞘で殴られるとその場に頭を抱えてうずくまり、何とも言えない空気の中駆けつけてきた司祭たちに傷をいやされるのであった。

 

ヴァルムとソンシンの地に少なくとも、久々に平和な日々が訪れそうであった。

 

余談ではあるが、二人の王は駆けつけた身近な者たちに武器を取り上げられ、一室にてその者に監視されながら療養することになる。隙を見て抜け出そうとして取り押さえられるのもいつものことであったとか、なかったとか……

 




原作でも謎の存在であるマークの登場です。そして、この作品でも謎の存在になってもらいます。マークはほんと何者なんでしょうね。考えるのはとても楽しいですけど。

前書きにある通り、終わりまで10話前後になると思っています。プロットも出来たので後は書くだけです。それが一番苦労するんですけど……

なるべく早く更新できるように努力します

それでは次の更新で会いましょう。

レポートから目を背けつつあとがきを記す作者でした

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