FE覚醒~誓いの剣と精霊の弓~   作:言語嫌い

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ネクロス怖い、ネクロス怖い……

除外、EX殺し……やめて、もうスクラップのライフはゼロよ!

まあ、ダークロウさんがいないからいいやー

以上、先週のショップ大会でネクロスをぼこり、それ以上にやられた作者の愚痴でした

それでは本編どうぞ


第二十九話 間章 時の迷い子

「ここだね。突如現れたっていう謎の遺跡は……」

「そうみたいですね。屍兵が内部にいるそうなので気を付けて進みましょうか」

「ああ、そうだね」

 

フェリアの城を出てから北西の方角へ進んだところに、フェリア兵の言っていた遺跡はあった。ただ、予想していたものよりも大きく、また、どちらかといえば遺跡群といった方がよさげな広さがあるように見える。

 

「野営の準備をしておいてよかった。日も傾いてきているし、今日は野営に適した場所を探しながら内部を散策しようか」

「ええ」

 

本来ならこのまま遺跡に入らないといけない。日が暮れる前にとりあえず野営に適している場所を探さないといけないため、あまり悠長にしている時間が無いからだ。だが、さすがに、目の前で何か考えるように足を止め遺跡を見つめる彼女を放っておくわけにはいかない。

 

「……ルキナ、少しいいかな?」

「なんですか」

「この遺跡に見覚えがあるのかい?」

「…………わかりません」

 

僕の問いかけに対し、少しの逡巡の後、彼女は結局首を振りながら答えた。

 

「すみません、時間はあまりないですよね。行きましょうか」

「ああ、とりあえずは、手前の方から少しずつ見ていこう」

 

何かを振り切るように彼女は告げると、遺跡へと歩き出した。そんな彼女を見て僕は小さく呟いた。

 

「わからない……か」

「ビャクヤさん、どうかしましたか?」

「いや、何でもないよ」

 

ここで、結局、彼女が何を感じたのかはわかることはなかった。だけど、彼女が知らないということはこの遺跡は未来のものではないということ。ならば、僕はこの遺跡をこの世界でない、すなわち、元の世界で見たということになる。

 

「ここに、きっと、何かがある。ただ、そう思っただけだよ」

 

どこで見たかは知らない。いつ訪れたかもわからない。でも、きっと、ここに僕はいた。だから、ここには僕の失われた記憶を取り戻すカギとなるものがある。そんな感じがする。

 

不思議そうに僕を見る彼女に苦笑しながら、あの時のように(・・・・・・・)二人並んで遺跡へと踏み込んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

ため息とともに彼はつぶやいた。

 

「……間が悪いな」

 

会議が終わり、ビャクヤとルキナが遺跡へと向かった後、相変わらずいつもと同じようにクロムは暇を持て余していた。普段と違うところを挙げるならば、自室ではなくどこか疲れた様子で城内を歩き回っているところかもしれない。

 

「どうして、こうもあいつに会おうとするとことごとく失敗するんだ……」

 

いや、本当は暇ではない。彼にはすべきことがあるのだから、こんなところで止まっているわけにはいかなかった。自分の中にある何かの答えを見つけるために彼は彼女を探していた。そして、何度も見つけていた。

 

だが、その度に彼は彼女と話せずじまいだった。理由は先の彼の独り言にあるように、間が悪かったと言うしかないだろう。会議の後、彼は彼女を引き留めようとしたが、バジーリオとフラヴィアに捕まり、訓練をさせられた。

 

その後にすれ違ったルフレから彼女の居場所を聞きだし、その場所に向かおうとしたところで今度はヴィオールに捕まり従者の女性――セルジュの紹介と現在隣の大陸にて起こっていることについて聞かされた。この軍のトップである彼がこのような重要な情報を知らないというのもまずいだろうから、ヴィオールは珍しく前置きもなくクロムにその要件を告げたが、そのせいで最初にルフレに聞いた場所には彼女はいなかった。すれ違いになったらしい。

 

ならと、その人物に彼女の行先を聞き、彼女を追いかけたが、こんどは彼女に話しかけようとしたところでヴェイクが現れ用件を告げていき、そのせいでまた見失う……といった具合に、彼は彼女と話すことが出来ずにいた。

 

「……だれかが、俺とティアモと会話をさせないようにしているのか? だが、そんなことをして何のメリットがあるんだ?」

 

当然、普段人を疑うということをしない彼がそのようなことを考えたところで答えにたどり着けるわけがないのだが、その推測は間違っていなかったりする。

 

「ここにも、いないのか……いったいどこに行ったんだ?」

 

すでに、城の中はほぼすべて回っており、また彼女の部屋も訪れていた。だが、肝心の彼女の姿を今は見つけることすらできていなかった。彼は疲れたようにため息をつくと、苦笑する。

 

「ため息をついた分だけ幸せが遠ざかる、か」

 

最近悩みが多いせいかため息をつく回数も増えてきたことに気付く。これでは自分はどんどん幸せから遠のいていっていることになるのかと、ぼんやりと考えながら自室へと向かった。

 

晩御飯には会えるだろうか……その視線の先に彼女を探しながら、彼は自室までの道をゆっくりと歩いた。自分の気持ちに向き合い、答えを探すきっかけをくれた彼女とのことを思い出しながら。

 

 

 

あの時、スミアが彼に告白した後のこと――

 

その場を支配した空気を破ったのは意外なことにクロムだった。彼女の突然の告白を受けて呆然としていた彼はふと急に思い出した記憶のことが気になり、気が付けば呟くように声に出していた。

 

「……スミア?」

 

その声はとても小さく、それこそ普段なら周りの喧騒にかき消されてしまうくらいのものだった。しかし、今、この時だけはそうならなかった。その声は彼と同じように呆然としたまま部屋に取り残された彼女に届いた。

 

そう、届いたのである。彼の言葉が……

 

そして、彼女はその言葉にびくりと反応を示した。彼女がおそるおそる振り返るとそこには先ほど告白したときと変わらぬ様子で、呆然とこちらを見る彼の姿があった。彼は彼女と目が合うとどこか視線の定まらないまま囁くように言葉を紡いでいく。

 

「スミア……お前なのか? 俺にこの道を示してくれたのは……」

 

紡がれた言葉はあまりに抽象的で要領を得ないものであった。彼が何を聞いているのかがわかるのは当事者である彼と彼女と……

 

「道……もしかして!」

 

それを知ることになった彼女だけである。だが、彼はそんな彼女の都合など知らない。彼女が反応を示したということの方が彼にとって重要だった。なぜなら、忘れていた大切な約束をした、彼にとって――――人なのだから。

 

「……知っているのか? なら、スミア、お前があの時の……」

 

今となっては思い出すことすらできない少女の顔。だが、何故か覚えていた彼女の見せた最後の笑顔。頭の片隅でずっとくすぶって消えることのないその顔が、自分の中にある何かと重なる。心から消え去ってくれない、この悩みの中にあるその笑顔とそれが何故か重なる。

 

「あの時、姉さんを助けようとして無茶ばかりしていた俺に、力のないことを嘆いてばかりだった俺に、守られてばかりだった俺に――――」

 

彼の心を占めているものは歓喜。思い出せたことへの、再び会えたことへの、そして、こんなにも近くにいてくれたことへの喜びだった。あの時から、ずっと彼女は自分の傍で約束を果たしていたことが彼にとってとても嬉しかった。

 

それ故に

 

その言葉が彼には理解できなかった

 

「違います」

 

彼女の否定が……彼にはわからなかった

 

「それは、私じゃ、ない、んです」

 

顔を俯け、胸の前で苦しげに手を重ねる彼女に彼は次第に覚めていく。そして、絞り出すように吐き出されたその言葉の先を

 

「私じゃ、ないんですよ。あなたを導いたのは……かつての約束に縛られて何もできなくなっちゃったのは……何より、その時からずっと、ずっとあなたのことを想い続けているのは」

 

「スミア?」

 

「思い出してください、彼女のことを。忘れないでください、彼女とした約束を。そして、気付いてください、あなた自身の気持ちと、彼女の気持ちに」

 

そう言いながら彼女はゆっくりと顔をあげた。泣かないように、彼を安心させるために必死に笑顔を作り、語りかける彼女を見て――――

 

――――なら、私を守ってよ!! 私に守られるのが嫌なら、そうすればいいじゃない!

できないなら、言わないで!! 

 

ゆっくりと、何かを紐解くような彼女の言葉を聞いて、

 

――――強くなってよ……守られなくてもいいくらいに、誰かを守ることが出来るくらいに、強く、何よりも強くなって……

 

そのはかなげな笑顔を見て……

 

「……騎士……守るための剣……」

 

あの時の笑顔と、記憶の彼女の笑顔が重なり

 

「そうか……だから、お前は俺の騎士でいてくれるんだな。自警団としてではなく、俺の騎士としてあるために」

 

ここに、全てがつながった。

 

「……ティアモ」

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――――

 

 

 

 

 

「妙だね……」

「ビャクヤさんもそう思われますか?」

「ああ、屍兵の行動がおかしい」

 

先ほどから遺跡の中で遭遇する屍兵の錬度は、フェリア周辺やイーリスによく出てきている奴らに比べて高かった。まあ、苦戦するほど強いわけではないけど。そして、問題なのはそこではなく、何かを探しているのか僕らを見つけても全員では襲ってこず、必ず1、2体はどこか別の場所に去っていくことであった。

 

「私の世界でもあのように行動する屍兵を見たことがありません。普通なら私たちを見つけるとそこにいる屍兵はすべて襲ってきていたので」

「向こうの僕からこういうことも聞いたことはない、っていうことでいいかな?」

「はい」

「そうか……とりあえずは探索を続けよう。何か分かるかもしれないから」

 

彼女自身はそれ以上何か疑問に思ったことはないようだが、僕は屍兵の行動以外に気になったことが一つあった。そう、それはこの遺跡そのものについてだ。先ほどから小さな遺跡の中をいくつか散策したが、そのどれもがこの一つの場所に集まっていることに何故か違和感を覚えた。

 

遺跡の装飾や内部の状況を見て判断したわけじゃない。むしろ僕に気付けるのなら彼女も同じように違和感を感じているはずである。だけど、彼女は感じていないし、僕もそれらを見て違和感を覚えたわけじゃなかった。

 

「……あれは」

「あの建物がどうかしましたか?」

「……とりあえず、あの中を探そうか。規模もそこそこあるし、今日の野営場所も見つかるかもしれない」

「わかりました」

 

遺跡の内部に入るたびに感じる懐かしさと、それらがここに集まっていることへの違和感。そして、目の前の遺跡から感じる強烈な何か。

 

「ですが、どうしてあの場所から?」

「勘」

「……そうですか」

 

ごめん、ルキナと心の中で謝りながらも、僕は彼女に本当のことを告げないでいた。

この遺跡から向かう理由は彼女に答えたように勘でしかないが、それはただの勘じゃない。僕の失った何かがあの場所の重要性を訴えていた。あの場所に何かあると、あの場所は大切な場所だと、そう教えていた。

 

そして、遺跡に入った時にその予感は確かなものへと変わった。

 

「…………」

「ビャクヤさん? どうしたんですか、急に立ち止まって」

「力……」

 

僕はそう呟くと、はじかれたようにその場を後にして内部のある場所を目指して走り出した。何かに導かれるように、ただ知らないはずのその場所だけを心に描いて走り出していた。

 

――――ここには、人竜戦役時代の闇魔道使いが住んでいたようですね

 

そうだ、ここには古い時代、そう、僕らの時代よりも千年ほど昔にとある闇魔道使いが暮らしていた場所だ。あいつはここには興味深い古文書が多々あると言っていた。闇魔道の研究のすえにここにいたものがどうなったかは知らない。だが、あいつはここでそれを欲した。

 

――――何故、力が欲しくなるか、ですか……そんなこと私に聞かなくてもあなたならわかるはずですよ? たとえ、何かと引き換えにしてでも力が欲しいと思ったこと……それは誰にでもあると思います。もちろん、私にも……

 

あいつは僕に一つの道を示した。その生きざまを見せることで……

 

――――もちろん、あなたにも。そうですよね。我らを殺すべく力を欲する剣士よ

 

そう、最初の出会いはあの遺跡の入り口で、そして別れはこの最奥部にある玉座の間で。彼は自分に突き立てられた剣を見て静かにこぼした。

 

――――こんな時に……思うのですよ。もっと、力があれば、と

 

僕がたどり着いた玉座の間の近くには赤黒い跡がいまだに残っていた。そう、ここであいつは倒れ、僕はそれを看取った。最後にどうしても知りたいことがあったから。

 

――――ふ、そのようなことを知りたいのですか? ですが、それを語る時間はもう、残されていません。なので、先達者から一言だけ、アドバイスをしましょう

 

そう、どこか空虚な目で僕を見るそいつは口にした。

 

――――強大な力を求めるのなら、何かを犠牲にすることになります。これは闇魔法に限った話ではないのですよ……覚えておきなさい、我らにはむかう白き牙よ

 

後ろからルキナが僕の後を必死に追ってきているのか、慌てて走る音が聞こえる。そう時間もかからずにここまでたどり着くだろう。

 

「……テオドル。お前の言ったことを僕はどうとらえたのだろうか。僕はここで何を思ったのだろうか」

 

誰もいない玉座に向かって僕は問いかけた。もちろん答えはなく、すべては闇の中にのめれて静かに消えていった。だが、彼がここにいれば間違いなく、またその引き込まれそうな暗い瞳で僕に告げたのだろう。

 

「お前はそれすらもきっと見透かしていたんだろうな」

 

全てを見透かしたうえで、きっと問いかけるように僕にその答えを示していたのだと思う。

 

「ビャクヤさん!!」

 

慌てた様子で彼女はこの部屋にたどり着くと、走っていた勢いのまま僕に抱きついてきた。

 

「ちょ、ル、ルキナ!? いきなり、どうし――――」

「どうしたの? はこちらのセリフです! いきなり私を置いて走り出したので何事かと思ったんですよ! それにここぞとばかりに直線では魔法を使って加速するせいで全く追いつけませんでしたし。そもそも、私がいるのに――――」

 

彼女は僕に抱きついたまま、僕を責める。顔を伏せたまま、彼女の手に握られていた剣はいつしか地面に落ち、弱弱しい拳が僕の体を撃った。

 

「ルキナ……ごめん」

「どうして、ですか……どうして、あなたはいつも私を置いていくのですか。どうして、隣には立たせてくれないのですか……?」

「…………」

 

彼女の言葉からはいつしか激しい濁流から今にも消えてしまいそうな感情の波へと変わっていた。彼女が僕に伝えたいことは、きっと、あの時から変わっていはいない。彼女が向こうの僕とともにいた、その時から、きっと、変わってはいないのだと思う。

 

「お願いです……一人は、嫌です。おいて行かないでよ……シエルさん」

「……ごめん。約束したばかりなのに――」

 

彼女が一人だったことはないと思う。でも、彼女はきっと独りだったんだろう。そんな、彼女の心中を分かっていたはずなのに、何をしているんだろうな。

 

泣き出してしまった彼女を宥めながら、静かに考えていた。

 

でも――――それは、長くは続かない。突如としてこの部屋に響いた声によって、僕らの意識はそちらへと向いたから。

 

「……え、父さん? どうして……っ!」

 

声のした方向には身の丈ほどもある刀を背負った一人の少女が、僕らを見て驚いたような顔をして立っていた。そして、その少女は背負っているその刀は僕にとってはとても懐かしく、思い出を揺さぶるものだった……

 

だから、僕はその少女の言った言葉について問いただすよりもその疑問が先に出た。

 

「……【ソール・カティ】。どうして、その武器がここに?」

 

【マーニ・カティ】と対になる精霊の宿った刀、【ソール・カティ】

 

かつて、リンが――――の時に使用していた刀だった。

 




今回もあまり話が進みませんでした……いえ、もう少し書こうと思ったんですけど、切りがよかったのでここら辺で切りました。

出す、出す、と言っていた彼女がようやく出てきました。ほんとうに、ようやくですけどね。そして、知っている人は知っていると思われる懐かしいキャラも出しました。

このキャラは結構好きですね……敵だけど。味方にして支援会話を聞きたいとすごく思う人物でした。

なお、原作においてこの章に出てくる遺跡は元からあるものですが、今回は諸事情ありご都合主義的な何かによって存在を書き換えました。理屈云々についてはまた、あとで……

……うまいこと書けないな。書きたいことはあるのですが、うまく織り交ぜられず、悩んでいる作者です。しかし、このルートの終了のめども立ってきたので、頑張らないと。目指せ、年内完結!! 

去年も似たようなこと言った気がする。

さて、次回の投稿がいつになるかはわかりませんがここらで終わります。次回で会いましょう

12/3 11:41 やらかしたー! 伏せるはずのとこの文字を書いたままにしてた。見てしまった読者の方は出来れば忘れてくれるとうれしいです。は、はは、ははは……
まあ、見られても問題ないっちゃないけど……次からは気を付けます 

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