FE覚醒~誓いの剣と精霊の弓~   作:言語嫌い

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お久しぶりです。

いろいろと、あってなかなか書く時間が持てなかった言語嫌いです。
レポートが怖いです。テストが怖いです……




第十四話 聖王と暗愚王~仕掛けられた罠~

フェリアとの同盟が成立し、その報告をエメリナにおこなっていたクロムたちのところへ一つの凶報が届いた……

そう、それは――――

 

 

「失礼します! 西のテミス領にペレジア軍と思われる一団が侵入、テミス伯のご令嬢マリアベル様がペレジアに誘拐されました!」

 

 

 

 

――――新たな戦いの幕開け、終焉へとつながる序章の始まりの合図であった……

 

 

 

 

 

 

――――――――

 

 

 

 

自警団の仲間であるマリアベルが誘拐されたという知らせを受けた後、僕はすぐに自警団のみんなを集め出発の準備を整えた。その間、クロムはエメリナ様と今後の方針を決めるために会議をしていたはずなのだが、自警団の拠点に帰ってきたクロムは何か悩んでいるようだった。

そして――――

 

「クロム……」

「出発の準備はいいな? なら行くぞ。行先はペレジアとの国境がある西の山道だ」

「ああ、わかった」

 

クロムの指示に従い自警団のみんなを城門の外へと向かわせ、僕はクロムと共にその場に残る。その際に、ヴィオールにフラムさんに声をかけてもらうように指示もしておく。

 

「それで、クロム。何かあったのか? 何やら不満のありげな顔をしているけど……」

「……」

「それともう一つ、フレデリクはどうした? 何も言わずともお前やリズのそばにいるあいつがいないようだが、今回の件に関係あるのか?」

「歩きながら話す。時間も押しているからな」

 

クロムはそう言うと、クロムは城門へと歩き出し、僕がついてきているのを確かめると、静かに話し始めた。

 

「ペレジアが起こした今回の事件、解決するために姉さんが直接ギャンレル、今のペレジアの王と話をすることになった」

「それなら、何も問題ないように聞こえるけど?」

 

そう僕が返すと、クロムは首を振り、問題があるんだよ、と答えた。僕が疑問に思っていると、クロムはそのまま言葉を続ける。

 

「話し合いですむ相手じゃないんだ。記憶がないから知らないと思うが、ペレジアはここ数年、何度もイーリスに喧嘩を売るようなことをしてきている。戦争のきっかけを欲しがるかのように。それに今回の件もマリアベルがペレジアに不法侵入してきたから、賠償金を払えと要求してきてさえいる。向こうが勝手に侵入して、誘拐していったのにもかかわらずだ」

「……」

 

クロムはそこで言葉をいったん区切ると、足を止めこちらに向き直った。

 

「ビャクヤ、そんな相手に話し合いが通じると思うか?」

「……通じないだろうね。エメリナ様の主義は立派だけど、これは相手が悪い。むしろ、エメリナ様の性格を逆手にとって、暗殺する計画を立てていてもおかしくない」

 

ここまで説明を聞いて、ようやくクロムの苦悩がわかった。それと共に、そんな相手に対しても話し合いをしようというエメリナ様の姿勢に驚く。エメリナ様とて、一国の王である相手の人柄を知らないわけではないだろうに……

 

「ああ、俺もそう思う。だからビャクヤ、お前の力が必要だ。俺は姉さんを守りたい。手伝ってくれるか?」

「もちろん。僕は君の軍師だからね」

「そうだったな。さて、行くとするか」

 

そうクロムが言い、城門へと再び歩き始めようとしたとき、後ろからあわただしい足音とともに、少年が一人駆け寄ってきた。服装から魔導師であることがわかる。

少年は僕たちに追いつくと開口一番にこう言った。

 

「クロムさん! 僕も連れてって!」

「……」

「……クロム。この少年は?」

 

少年の登場に困った表情をしているクロムに尋ねると、クロムは僕に後で話す、と言った後にその少年と目を合わせて話し始める。

 

「リヒト、残念だが今回はだめだ。お前を連れて行くわけにはいかない」

「ねぇ、お願い! きっと僕の魔法も役に立つよ!」

 

なおも食い下がる少年にクロムは困った顔をするも、ため息とともに立ち上がる。そして、少年の頭に手を置き、しっかりと言い聞かせる。

 

「危険な任務なんだ。わかってくれ。お前にはアジトの留守を任せる。頼んだぞ。さてと、ビャクヤ、行こう」

「わかった」

 

少年を説得したクロムは、少年の頭から手をどけると、少年の反応を見ずに僕に声をかけると、城門へと歩き出す。

 

 

その少年は僕らが立ち去った後もなお、その場で何かを言っていたが、独り言だったのだろう。僕らにはその内容が聞こえなかった。あの少年からある程度離れたところで、ようやく、クロムはあの少年について話し始めた。

 

クロムが言うには、才能はあるらしいが、年齢が年齢だから、まだ勉強中の身らしい。実力でいえば並みの魔導師にも勝るらしいのだが、師であるミリエルからは許しが出ておらず、もう少し修行しましょう、ということらしい。そのため、今回はお留守番。状況的に彼がいなければならないほど切羽詰まっているわけでもない、ということも理由に挙げられるが……

 

「さて、あの少年についてはこれでいいんだけど、結局フレデリクはどうしたの?」

「ん? ああ、言うのを忘れていたな。あいつなら今、姉さんの護衛についている。珍しく姉さんの命令に逆らってな」

「へぇー。あの堅物のフレデリクが、ね。主君の命令に逆らいそうにない印象ないんだけどな」

「そう、だな……。お前の言う通り、フレデリクが姉さんの命令に逆らったことは、今まで一度たりともなかった。今回も本当なら俺やリズの護衛に着くはずだったんだが、かたくななまでに自分の意思を変えようとせずに、姉さんの護衛をする、の一点張りでな。結局、姉さんが折れて、フレデリクが今回姉さんの護衛になった」

「そうか。なら、クロムたちの護衛は僕とルフレで行うとしようか。ルフレがクロム、僕がリズの護衛をするのはどうかな?」

「……ん? いや、俺の方の護衛は必要ない。リズについてやってくれ。それに、ルフレもお前が傍で守ったほうがいいんじゃないか?」

 

クロムの返事を聞いて僕はため息をついた。呆れて何も言う気にならなかった。なんというか、クロムには自覚が足りない。自分が王族だという自覚が。なるほど、フレデリクが常に傍に控えているのにはこういった事情があったからか。こんな状態なら常に控えていないと何をやらかすか分かったもんじゃない。僕に対するフレデリクの必要以上の警戒はこのクロムの自覚の無さが原因だったんだろうな……

 

とにかく、ここは今はいないフレデリクに変わり僕がきちんと言っておかないといけないな。

 

「……クロム」

「な、なんだ、ビャクヤ。どうかしたのか?」

「君は、王族としての自覚はあるかい? 自分がいずれ王位につく可能性がある人間だと自覚しているかい?」

 

その様に追及すると、クロムは、う……、と短くうめいたのちに僕から視線を逸らす。どうやら自覚がなかったようだ。そして、なんで僕が護衛を付けようとしたかもようやく理解できたようだ。

 

「わかってくれたと思うけど、一応説明しておこうかな。クロム、君は王族。エメリナ様が退位されたのちに即位することになる人物だ。さてと、そんな人をギャンレルが狙わないとでも思うのかい? もちろん、リズもだけど」

「……」

「はぁー。クロム、今回はルフレを君の護衛に着ける。彼女の風魔法の威力と錬度については今までの戦いでわかっているから問題はないよね。まあ、一応もう一組ソワレとソールにもついてもらうから安心して戦ってくれ」

「……わかった。そうする。それで、リズはどうするんだ?」

「先ほど言った通り僕が守るよ。こちらは、ヴェイク、ミリエルで固める。後は、エメリナ様の護衛にロンクーとフレデリクを付けて、ヴィオールとスミアには遊撃をしてもらう」

「そうか、なら、頼んだぞ」

「ああ、任せてくれ」

 

あえて、エメリナ様の説得が失敗したときのことについて、僕たちは触れなかった。クロムは自分の姉を信じたいから、その理想を自分も信じるために。そして僕も同じようにエメリナ様を信じたいから、そして何より、クロムの負担を減らしたかったから。だから僕は何も言わず、ただ、彼について行く。

 

前の方に視線を戻すと城門はもう目の前に迫っていて、その向こうでは自警団の一行がすでに準備を終えて待っていた。

 

さあ、行こう。仲間を取り戻すために、大切なものを失わぬために……

 

 

 

 

――――――――

 

 

 

 

僕らが国境のある西の峠に着いたとき、そこにはすでにギャンレルの姿があった。ギャンレルはエメリナ様がいるのを確認すると、胡散臭い礼をしながら、こちらに声をかけてくる。

 

「おおう、これはこれは。ご丁寧に、聖王様自らおいでとは」

「ペレジア王ギャンレル殿……。この度の件、ご説明いただけますか」

 

その礼に対しエメリナ様は軽く会釈をすると、本題を切り出した。そうすると、今度はギャンレルの後ろに控えていた妖艶な女性が前に出てくる。

 

「それについては、私から説明いたしますわ」

「あなたは?」

「インバースと申します。以後、お見知りおきを」

「……マリアベルは無事なのでしょうか?」

「んん~? こいつのことかい?」

 

そう言うとギャンレルは捕えていたマリアベルを部下に連れてこさせる。幸いなことにマリアベルには目立った外傷はなく、様子を見る限り元気そうではある。何かひどいことをされた様子はない。

 

「無礼者! 離しやがれですわ!」

「この者は、無断で国境を越えて我が国ペレジアに侵入し、その上それを止めようとした我が国の兵士に傷を負わせたため――」

「わたくし、そのようなことはしておりませんわ!いい歳こいてウソを言うのはやめやがれですわ! この年増!」

 

マリアベルの発言により、ピシリと空気が凍った。何やら、インバースの傍でマリアベルを拘束しているペレジア兵の顔が青い気がする……

マリアベル…………元気すぎるようで何よりだよ。でも、頼むから、敵をあまりあおらないでくれよ。気が変わっていつ君が殺されてもおかしくないんだからね……

 

「…………ふふ……とまぁ、このように騒ぎたてたので仕方なく捕まえた次第ですのよ」

 

一方、罵倒された女性は額に青筋を浮かべつつも、何とか感情を抑え、自らの役目をこなしている。その女性の説明を引き継ぐ形で今度はギャンレルがこちらを煽ってくる。

 

「うちの国に忍び込み、兵を傷つけた……こいつぁ許せねえ大罪だよなあ? しかも、だ。この女があんたらの国の密偵なら……さらにとんでもねえ問題になるぜ。そうなりゃエメリナさんよ、あんたにも誠意ある対応をしてもらわなきゃなあ?」

「嘘ですわ。わたくしは何もしておりません! この者たちはイーリスに侵入し、我が領内の村を焼き払ったのです。そして止めようとしたわたくしを捕え、ペレジアへ連れ去ったのですわ! 襲われた村の…あの惨いありさまを見ていただければわかります!」

「村? さぁて、知らねえなあ? どっかの山賊の仕業じゃねえのか。大勢殺されちまったんだって? おーおー、かわいそうになあ」

「エメリナ様……!」

 

ギャンレルはマリアベルの反論に対しこちらは全く関与していないと主張する。さらに言うに事欠いて、自分の国に彼女が侵入し兵を気付付けたと主張する。クロムの言っていたように、イーリスに喧嘩を売っていることはこの態度からも明白にわかる。だが、なぜこうもギャンレルはこの国を目の敵にするのか……

 

「マリアベル……大丈夫です。私は貴方を信じています。――ギャンレル殿。マリアベルを解放してあげてください。意見の相違があるのなら、話し合いで真実を明らかにしましょう」

「話し合いがしたいってんなら、まず詫びを入れて出すもん出せや。ごちゃごちゃ抜かすんなら、この女、今すぐ処刑したっていいんだぜ?」

「なんだと……! 悪いのはお前たちの方だろうが!」

「ガキは引っ込んでな」

「なに……!」

 

ギャンレルのあまりにも横暴な要求にクロムが怒り、口をはさむも、ギャンレルはそれに取り合わず、そのままエメリナ様に自らの要求をぶつける。

 

「エメリナさんよぉ。こいつを助けて欲しけりゃ、あれだ。《炎の台座》を持ってきな。あれとなら交換してやってもいい」

「炎の台座……。我がイーリスの至宝を……?」

「ああ。伝承じゃそいつの力を使えばどんな願いも叶うんだって? そいつはすげえや。ぜひ試してみてえもんだよなぁ」

「炎の台座の力は、世界が滅びを迎える時……。人々を救うという願いのために使われるべきものです。ギャンレル殿。あなたは炎の台座で何を為そうというのですか?」

「は……! そんなもん決まってんだろ! 俺の願いをかなえるため、憎きイーリスに復讐するためだろ!」

「……!」

「前の聖王……あんたの親父が昔、俺たちにしたことを忘れてねえよなぁ? 邪教の国ペレジアを倒す聖戦だと称して、ペレジアに攻め込み、大量に我が国の民を虐殺していったのを、忘れたわけじゃあないよな……」

 

ギャンレルは先ほどまでのふざけた雰囲気を消して、こちらに淡々と言葉を紡いでくる。言葉の節々に怒りという名の感情をにじませながら……

それにしても、ギャンレルの望みが炎の台座と呼ばれる願いをかなえると言われているイーリスの宝を手にし、それを使いイーリスに復讐をすることだとはね……

それに、過去にイーリスがそのような戦をしていたとは……今の国の状況を見る限り信じられないけど、エメリナ様の反応を見る限り嘘ではなさそうだ。

 

 

「……イーリスの過去の過ちは認めます。その過ちを繰り返さぬため、イーリスは

平和の国になることを誓ったのです」

「んな御託はいいんだよ! とっとと炎の台座をよこせっつってんだ!」

「エメリナ様! わたくしのことなら構いません! 聖王たるあなたが、こんな下衆の

言いなりにならないでくださいませ!」

「……マリアベル……」

「ちっ! あー、めんどくせえなあ! ならエメリナさんよ! てめーをぶっ殺して

ゆっくりもらい受けてやるよ! やれ!」

「……! リヒト! ロンクー!!」

 

ギャンレルの命令を受けたペレジア兵は、エメリナ様に向かって駆け出しその武器を振るう。それに合わせて、傍に控えていたクロムとルフレがエメリナ様へと向かってきたペレジア兵を迎撃しそれを打ち倒す。また、僕も迂回してマリアベルの近くに近寄っている二人に指示をだす。敵は彼らの移動に気付いていなかったらしく、リヒトの繰る風魔法による奇襲は成功し、ロンクーがその場を鎮圧する間にマリアベルを救出できた。これで、戦いの最中に人質をとられる心配も無くなった――が、

 

「姉さんに手出しはさせん!」

「おーおー、やってくれたなぁ。こいつぁ、戦争の意思ありとみなすぜ。出てきな!!」

 

そのギャンレルの一言を待っていたかのように近くの砦から彼が隠していたペレジアの兵士が出てくる。

 

「ビャクヤ!!」

「わかってる! みんな! 言っておいた通りだ。各々の役目を忘れないで!」

「ははは! 準備はいいみてえだなぁ。さぁて、イーリスの屑ども……お待ちかねの、戦争の時間だ! 血が枯れ果てるまで終わることのない、ドロドロの戦いを始ようぜぇ!」

 

 

 

 

―――――――――

 

 

 

 

ようやくだ……/あきらめない……

 

 

ようやく、叶えられる――――/絶対に、あきらめない――――

 

 

君と僕の願いを/あなたと私の願いを

 

 

やっと、ここまで来た。ここまで来ることが出来た。

あと少し……あと、もう少しで届く――――

 

 

君との約束に……/あなたとの約束に……

 

 

 

もう少しで……

 

 

だから、望んでもいいですか? 願ってもいいですか? 

 

 

――――その先にある、君/あなたとの明日を――――

 

 

 

 

 

―――――――――

 

 

 

 

 

 

ここに二つの物語は交差した。

終わり(バッドエンド)を迎えたが故に始まったこの物語――――行き着く先にあるのは深淵の淵、底見えぬ暗闇の世界……

 

 

 

王よ……

 

すでに壊れてしまった約束を胸に抱き、壊れたことに気付かぬまま進む王よ…………

 

汝の願いは、今、叶う――――

 

 

 

故に――――

 

 

 

「踊るがいい、暗愚王(ピエロ)よ、我が手の上で。舞台は整った。さあ、戦争(サーカス)を始めよう」

 

 

 

――さあ、始めよう

 

さあ、終わらせよう……

 

 

 

――――壊れた約束の物語を――――

 

 

 




さて、今回でようやくペレジアとの戦争がはじまりました。
そして、ここからは、ギャンレルとエメリナ中心の話になる予定。主に過去話になります……少しずつ、彼らの過去を明かしていきます。
お楽しみに

それでは次回でまた会いましょう。書く時間がほしいと嘆いている作者でした。

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