FE覚醒~誓いの剣と精霊の弓~   作:言語嫌い

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英語なんて大嫌いだーーーー!!

さて、開口一番いきなり愚痴ですみません。でも本当に嫌いなんです。僕には無理です。英語でスピーチとか、なんでそんなものを……

言っても仕方のない愚痴はこの辺にして、第4章、前篇(未定)をどうぞ


第十二話 神剣闘技場~二つのファルシオン~

そして、その日はやってきた。

この闘技大会は、両陣営ともに6人で編成されたチーム戦で行われ、闘技場内で戦い、先にリーダーを倒すかすべての敵を倒したら勝ちというものであった。ゆえに、個人の武より、集団の力が試されるものであったが、今回は少しルールが変わった。

 

今回の闘技大会は一対一で行うようだ。両チーム5人で編成し、その勝ち星の多さで勝敗をつけることになっている。下手に組むと、リーダーのような強い人に順番が回らない可能性もある。ゆえに、このメンバー選びと、順番決めは重要なものであり、この軍の軍師であるビャクヤの腕の見せ所であった。そして今回、彼の決めたメンバーと順番は以下の通り。

 

リーダーはクロム。これは決まっていて、リーダーは最後にすることになっているため、クロムは最後。次にヴィオール。遠距離、近距離の両方をこなすことのできるボウナイトであるのでもちろん採用。よっぽどのことがない限り、負けない。よって、勝敗を分けることとなる3戦目に。また、技術、経験の面からもフレデリクを採用。一戦目に。やはり初戦を抑えられるかどうかは重要だ。後は、二戦目にヴェイクを。ソールでもいいが、敵が重歩兵だと対応が出来ない。かといって、ルフレでは傭兵、剣士が厳しい。ヴェイクも剣士は厳しいが、まあ、大丈夫だろう。

 

そして、僕は4戦目に、このチームの二番手として……別にフレデリクでもいいけど、押し付けられてしまった。この二番手というのは、大会の勝敗自体には関係ないが、何やら賭けに関係しているらしく申告してほしいとのこと。この賭けは、リーダーと二番手のみで行われ、チームの勝敗とは関係ないため、チームの負けが決定していても戦いは行われる。そして、二番手は4戦目に固定されるため、必然的に僕は4戦目になる。

 

この決定に対し、ルフレには文句を言われた。なんで出さないのか、と。それと、他のメンバーから、ヴェイクを出して大丈夫なのか? とも。ヴェイクを出すことには不安が残るが、これが今の状況ではおそらく一番いい方法……のはずだ。たぶん。ルフレにも文句を言われた。ヴェイクの代わりに出場させて、と。一応、先程の理由で出れないことを伝えたら了承してくれたが、とても不満そうだった。それと、一番わからないのが、なぜかリズも不満そうにしている、ということだ。いったいなんでなんだ? わからな――――

 

「……ビャクヤ? 開始時刻になったぞ? 聞こえていたか?」

「ん? ああ、ごめん。考え事をしていた。じゃあ、行こうか」

 

考え事をしている間に、時間が来ていたらしい。クロムに言われて、そのことに気付いた僕は立ち上がると、皆にの前に立つ。大会前に言っておかないといけないことが一つあるので、それを伝える。

 

「みんな、今回の大会では勝つことが第一の目標であることは言うまでもないけど、勝てそうにない相手と当ったら、降参をするように」

「「「……!!」」」

 

それを聞いたメンバーはひどく驚いてこちらを見る。僕の言うことが理解できなかったようだ。それもそうだろう。勝つことが目的なのに、僕は降参を促したのだから。そんな彼らに僕は補足して説明をする。

 

「今回の戦いは大会だ。戦争じゃない。自分の命を賭してでも、相手を倒す必要はない。そのことを忘れないでくれ」

「それで、負けたらどうするんだ? イーリスの民は、誰が守るんだ!?」

「負けないよ。これは、今考えうる中で最強のメンバーだ。それに、負けた時のことを考えてどうするんだい? それにクロム。君は、勝つ……そう言ったよね?」

 

クロムにそう言うと、クロムは自分の言ったことを思い出したらしく、ふ、と笑った。

 

「そうだな。ビャクヤの言う通りだな。知らず知らずのうちに弱気になっていたようだ」

 

クロムは一人つぶやくと、表情を引き締めてこちらを向き、その後メンバー全員に向き直ると、力強く宣言した。

 

「勝つぞ!」

「「「おう!」」」

「行くぞ、ビャクヤ!」

「ああ、行こうか、クロム。大会の始まりだ」

 

こうして、僕らは闘技場に入った。そして、僕はここで再び出会う。青き仮面の剣士と、

 

敵として……

 

 

 

 

―――――――――――

 

 

 

僕らが会場に入ったときにはすでに相手チームのメンバーはそろっていた。彼らは僕らと反対側の出口のところに並んで待機している。並び順からして、あの黒髪の剣士がリーダー。クロムの相手となる。そして僕の相手である二番手は……

 

「クロム……あいつは……」

「ああ、間違いない。あの夜に俺たちを助けてくれたマルスだ」

「マルスはフェリアの人間だったのか……、まあ、でも今のところ倒すべき敵であることには変わりない。リズの命の恩人ではあるけど、それで手を抜いて負けるようなことはいないから安心して。それに、こっちも聞きたいことがあるし」

「そこのところは信用している。それに、お前が負けるとも思えないしな……」

「ありがとう、クロム」

「おい、あんたたち。大会をおっぱじめるよ!! 一戦目は誰が出るんだい?」

 

僕らが話している間に、挨拶は終わったらしく、早くメンバーを出せとフラヴィア様がこちらをせかしてくる。

 

「フレデリク。一戦目は頼んだよ」

「お任せください。必ず勝利します」

 

フレデリクが槍をかまえ、闘技場の中央へと向かうと、向こうからは斧を構えた戦士が出てきた。両者は一定の距離を開けて中央で相対する。両者が所定の位置に着いたことを確認したバジーリオ様は、大きく息を吸い込み、始め!! と言った。その合図とともに、フレデリクと相手の戦士は駆け出す。

 

さて、ここで、武器の相性について話しておこう。近接武器には主に、剣、槍、斧の三種類の武器があり、一般的に剣は斧に強く、斧は槍に強く、そして槍は剣に強い、とされている。これらは武器の三すくみと言われ、軍略に携わるもんでなくとも、戦うものであれば全員知っている知識である。現在の状況は、この武器の面だけで見ればフレデリクが不利である。そのため敵の兵士もこの勝負はもらった、と思っているようだ。

 

また、敵の兵士がそう思っているのにはもう一つ理由がある。それは僕らがイーリスの兵士、ということだろう。現在イーリスは、ほとんど軍を持っていない。また、他国とのいさかいを避け、話し合いで解決するのが今の聖王の考えであることは周知の事実である。それもあって、平和ボケしているイーリスの軍は強くはないだろう、と思われているようだ。

 

まあ、けれどそんな風に思っているから、負けるんだよね。

 

「勝者、東の代表、フレデリク!!」

 

確かに、武器の面で彼は不利だったが、それでもその不利を覆せるくらいの腕があれば別。今回のように、不利な状況であっても、勝つことが可能である。また、平和ボケしていると思われているようだが、軍に関してはそんなことはない。何やら、歴戦の兵士らしき人たちが厳しくしごいていることや、軍の少なさから、比較的仕事が回ってきやすいこともあり、戦闘経験は全員ある。まあ、何が言いたいかというと、なめていると呆気なく負けてしまう、ということが言いたいわけだ。

 

先ほどの彼のように……

 

「お疲れ様、フレデリク。思ったより早く済んだね」

「そうですね。相手が油断していたので隙だらけでした。これなら初戦はルフレさんでもよかったのではありませんか? 次を私にして」

「それでもよかったけど、実際はどうなるかわからないからね。下手に博打をするよりは確実に勝をもらいに行った方がいい」

「それもそうですね……」

「まあ、いいじゃないか。勝ったんだし。後二勝すれば僕らの勝ちは決ま――――」

 

 

 

「勝者、西の代表――――!!」

 

「へ?」「はい?」

 

フレデリクの試合終了から、数分と経たないうちに、いつの間にかヴェイクの負けが決まっていた。いきなりのことに僕とフレデリクは理解が追いつかず顔を見合わせる。普通に考えて、次の準備が整う、両者が闘技場内に入る、バジーリオ様が合図をする。戦闘を始める。ここまでで一分くらいはかかる、はずだ。と、なると、ヴェイクは瞬殺されたことになる。にしてもヴェイクを瞬殺できるほどの相手がいたとはね。予想外だったよ。誰なのかな?

 

とりあえず、どうなったかを見たくて視線を移すと……

 

「は?」

 

ヴェイクは両手を上げて降参の意思を示している。そして対戦相手の剣士は、呆れた顔でそれを見ている。両者の間には結構な距離がある。位置は動いているが、これは間合いを計っていただけとも考えられる。いや、おそらくそうなんだろう。敵を見る限り。となると何で負けたんだ?

 

その疑問を解決してくれたのは頭を押さえながらその様子を見ているクロムだった。

 

「あいつは、武器を忘れていた。それで戦えないから、降参をした。それだけだ」

 

ヴェイク……、またやらかすとはね。今後は監視としてミリエルと組ませようかな? おそらく、一人では無理だろう。ミリエルには申し訳ないけど、あれの面倒を見てもらえるように頼もう。

さて、次はヴィオールだったか……

 

「……ヴィオール。次、頼んだよ」

「ああ、わかっているとも。華麗に勝利して見せよう」

「負けたら……」

「さて、私は行くとしよう」

 

ヴィオールは僕の言葉を最後まで聞かずに、対戦相手のもとへと向かう。微妙にその顔が引きつっていたが、誰も気にしてはいないはずだ。さて、そんな彼の対戦相手は、がたいの良い戦士で、馬に乗っているヴィオールと同じくらいの身長がある。その手には、その体にふさわしい大きな斧が握られており、当たればただでは済まない。

 

しかし、その対戦相手はヴィオールを見て非常に驚いていた。その理由は、彼――ヴィオールの装備にある。馬に乗っていてかつ、剣と弓を持っていたからである。これだけの情報で相手は悟る。敵が上位職になれるほどの実力を持っていることを。対戦相手は気を引き締め、先ほどまでの油断を消し、相手を見据える。

 

「……どうやらフレデリクの時みたいなバカじゃないようだね」

 

補足しておくと、フレデリクも上位職である。相手は気付かずなめ腐っていたが。

 

「その様だな。あいつ、ヴィオールが上位職と分かった瞬間に空気が変わった。おそらく、先ほどのヴェイクの試合で抜けてしまった気を引き締め直したんだろう。最初の二戦のように、簡単に決着はつきそうにないな」

 

クロムの言葉にうなずくと僕は前を見て、彼らの試合の開始を待つ。両者の準備が整ったのを確認したところで、バジーリオ様が開始の合図を告げる。

 

「始め!!」

 

 

 

 

合図と同時にヴィオールは矢をつがえると相手に向かって放ち、そのまま相手の側面に移動しもう一度射かける。相手は一度目の矢を体をそらして交わしたが、回避した先に矢が飛んできたため、もう一度回避をする。すると、今度はその位置に矢が飛んでくる。体勢を立て直す時間もないまま飛んできた三本目の矢を、姿勢を崩しながらよけると目の前に剣を構えてこちらに向かってきているヴィオールの姿があった。

 

「う、うぉおおおおーーー!」

 

相手は雄たけびを上げながら、そのまま体制をさらに崩し、自ら倒れこむように動く。その反動を利用して、手に持つ斧をヴィオールめがけて振り上げる。

 

「な!?」

 

予想外の行動に驚くも、ヴィオールは斧が降りあがるのと反対側に馬首を向け、相手を飛び越えてその向こう側へと駆け抜ける。駆け抜けたヴィオールが振り向いたときには、相手選手はすでに片膝をついて立ち上がろうとしていた。そして相手もヴィオールが振り返ったのを見て行動を止める。しばしの間にらみ合いが続くが、相手を見据えながらヴィオールはその場で静かに矢をつがえ、狙いを定める。相手もそれを見て、いつでも動き出せるように四肢に力を込める。湧いていた観客もこの二人の空気に充てられてか、静かに様子を見守る。

 

そんな張りつめた空気の中、ヴィオールは馬の腹を蹴り、駆けだすとともに、矢を敵に向かって放つ。放たれた矢は敵の頭部へと向かうが、敵は斧を振り上げる動作とともにそれを斧の腹で防ぎ、自身もその勢いで立ち上がり斧を構える。

 

構え終えてところで続いて二射連続で自らに矢が飛んでくる。それらを体をひねってかわすと、そのままヴィオールに向かって突っ込んでいく。それに対しヴィオールは、矢をもう一度つがえ、射る。それを斧を振り上げて防ぐと、敵はそのまま上段からヴィオールめがけて斧をふりおろ――――

 

「これで終わりだよ」

 

――――したが、その先には誰もいなかった。振り下ろした斧は地面にめり込んでおり、目の前には赤い血だまりが出来ていた。そのことを疑問に思う間もなく彼の意識は突然襲ってきた激しい痛みによって消えていく。

 

その一部始終を見ていたヴィオールは相手が倒れたのを確認すると剣をふって血を落とす。それを合図に観客席から大きく観声が上がり、それに合わせてバジーリオ様がそれに負けないくらい大きな声で結果を告げる。

 

「勝者、東の代表、ヴィオール!!」

 

 

 

 

―――――――――

 

 

 

 

試合が終わり戻ってきたヴィオールにねぎらいの言葉をかけると、彼はいつも通りの口調で返してくる。まあ、今回は彼も頑張ってくれたのでむげにはせず、適当に相槌を打って答える。クロムや、そのほかのメンバーはそれを見てため息をつく。おそらく思っていることは僕も一緒だと思う。そう、このめんどくさい性格がなければ完璧なのにな……と。天は二物を与えない、というが彼を見ていると何となく納得できる気がする。それくらい今の彼は残念だ。

 

「ところでビャクヤ君。次は君の出番ではないのかね? 対戦相手はすでに待っているようだが……」

「へ?」

 

ヴィオールに促され闘技場の中央に目を向けると、対戦相手はすでに出てきていて、静かにこちらを見ている。その対戦相手は、最初の予想通り、仮面の剣士――マルスであった。

 

「やはりマルスが相手か……」

「いけそうか?」

「正直わからない。剣だけだと厳しいかもしれない。けれど、勝てないこともないと思う」

「そうか……勝てよ」

「もちろん」

 

そのつぶやきにクロムが反応した。勝て、という言葉に対し、もちろん、と答えはしたが、先ほども言ったように正直どうなるかわからない。時の運、ということになってくる。だけど今はそんなことを考えていても仕方ない。勝てるかどうか、ではなく勝たないといけないのだから。

 

「じゃあ、行くか」

 

軽く自分に喝を入れて、相手のいる場所に向かう。

 

 

 

 

僕が所定の位置に着くと、僕はマルスに声をかけた。

 

「先日はありがとう。君のおかげでリズが助かった。今ここで改めて礼を言わせてもらうよ」

「気にしないでくれ。僕は、僕にできることをしただけだ」

「それでもだよ。それに、まだ、お礼もしていない。この戦いが終わったらイーリスに来ないか? あ、客人としてだよ。軍に誘っているわけじゃないから」

 

とりあえず誤解を生まないように、慌てて訂正をすると、マルスはあきれたようにこちらを見てくる。仮面をしているのに呆れていることがわかるとは……僕はそんなにやらかしてしまったのだろうか?

 

「……。戦いの前に何を話しているんですか? そういうのは終わってからするものだよ。それとも、僕は眼中にない、そうとらえていいのかな?」

「まさか、僕は君に勝てるかどうかも怪しいっていうのに……」

「……そう」

 

その言葉とともにマルスは腰にある剣を抜く。それを見て僕も剣を抜こうとして止まる。

 

「マルス。一ついいかい? その剣はどうしたんだ?」

「……」

「……それは、イーリスの国宝であるファルシオンのはずだ。何故君が持っている?」

「……今は、関係ない」

「そうだな。まあいい。始めよう」

 

マルスの持つ剣はクロムの持つファルシオンに酷似している。それゆえに尋ねたが、答えはなかった。マルスの言う通り、今は関係ない。今、答える気はないのであるならば、とりあえず終わってからでも聞くとしよう。僕も腰に差してある剣を抜く。

 

「お? もういいか? なら、始め!!」

 

僕らの様子を見ていたバジーリオ様は、会話が終わったのを確かめるとそのまま開始の合図をする。

 

 

 

合図とともにマルスは駆け出し、僕に向けて剣を振ってきた。対する僕は剣をよけるとともにマルスの懐に入り、横に小さく早く剣を振る。それを後ろに飛ぶことでよけ、着地と同時に僕に向かって飛び出し、突きを放つ。それをよけ再び同じように切りかかると、マルスは左側に回り込み、攻撃を仕掛けてくる。それを剣を使い受け流すと、僕はいったんマルスと距離を取る。

 

マルスは距離を取った僕を見ると、再び剣を構え直して僕に相対する。どちらともなく動きだし、また剣を交える。何度も、何度も。

 

しだいに、剣戟の音がこの闘技場を支配した。

 

 

 

 

「すごいな……ビャクヤの奴、こんなに強かったとは。我ながら言い拾い物をしたな、本当に」

「おや、私も結構優良物件ですよ。拾い物としては」

 

いまだ続く剣舞を見て、ポツリと漏らしたクロムにヴィオールが反応した。それにクロムは苦笑しながら、そうだな、と返す。そして再び彼らの剣舞に目を向ける。ヴィオールもそれにならい剣舞を見る。

 

「どちらが勝つと思う?」

「このまま何もしなければ、マルス君の勝ちだろうね? けれど、ビャクヤ君が適切なタイミングで魔法を放てば、彼の勝ちだ。彼とマルスの違いは、魔法を扱えるかの有無にある」

「そうか。なら――――」

 

大丈夫だなと、クロムが言いかけたところでひときわ高い金属音が鳴り響く。剣舞に目を戻すと、マルスの剣がビャクヤの雷魔法によって弾き飛ばされていた。そのまま彼は決着をつけようと剣を振りかぶり、下ろした――――

 

「な!?」

「あれは、まさか?」

 

――――その刃は、マルスの手に突如現れた白い剣に防がれた。

 

「その、刀は……」

「……」

 

突如マルスの手に現れた剣を見てビャクヤは驚き、剣に込めている力がわずかばかり緩む。マルスはその隙をついてビャクヤの剣を押し戻し、数度切り結んだ後に再び距離を取る。距離を取ったマルスは剣を構えるも、対するビャクヤはその剣を見たまま動きを止めている。

 

「ヴィオール」

「なんだね? クロム君」

「あの白い剣はビャクヤの持つ剣に似ていないか? 遠めではっきりとはわからんが、色が白と黒で全く逆ということ以外は、その作りがあまりに似ているように思える」

 

そうクロムが尋ねると、ヴィオールもそれに同意する。その剣は色の違いを除くと本当にビャクヤの剣に似ていた。その剣がどこから現れたかは知らない。しかし、こうも似た剣を持っているのだから、何かしらビャクヤと関係があるだろう。

 

それに、そう思ったのは何も剣のことだけが理由じゃない。もう一つはマルスの剣技。最初、マルスの動きは俺の剣に似ていると思っていたが、違和感が消えなかった。しかし、ファルシオンを飛ばされマルスが白い剣を使い始めてからその違和感の正体を見つけた。基礎の部分が俺とマルスでは違う。あいつの根底にある動きはビャクヤと同じ剣の動きだ。要するに、あいつの剣はビャクヤに似ている。それを考えると、ビャクヤとマルスは同じところで剣を教わった可能性がある。けれど、それでも、ファルシオンを持っている理由がわからない。

 

「……あいつはいったい何者なんだ? 俺やビャクヤの剣を持っているだけでなく、剣技まで似ている」

「さあ、何者なのだろうね? だけど、それをビャクヤ君は知らないようだね。いや、思い出せないようだよ。――と、なると、その答えを知っているのは――――」

 

そこまで言ってヴィオールは急に口を閉ざすと、視線を彼らに移す。見るとビャクヤが剣を下ろし、そのままマルスへと歩み寄っていた。それを見たクロムはつい声を上げそうになるも、ヴィオールに止められる。そのクロムに対し、静かに見ていよう、とそう伝えるとクロムも渋々とそれに従い、彼らの様子をじっと眺める。

 

何の構えもせずに間合いに入ってきたビャクヤに対し、意外なことにマルスは何もしなかった。そうして彼はマルスと向かい合うと、手に持っていた剣を消した。そう、鞘にしまった、のではなく、剣は霧散するように消えたのである。それを見たマルスは特に顔色を変えることなく自然に構えを解いた。お互いに剣を下ろした後に、ビャクヤは静かに口を開く。

 

「――――」

 

しかし、その声は小さくここまで届くことはなかった。

だが、おそらくビャクヤはこういったのだろう、なぜその剣を持っているのか、と。

 

「――――――」

 

そして、それに対するマルスの答えもまた、ここまで届くことはなかった。

 




さて、サブタイトルは二つのファルシオンです。この話題に何行使ったでしょうね

いや、数えないでくださいね。自分でもこれはなかったかもしれない、って思っていますし。でも、これしか思いつかなかったので、これで行きます。

今後もこのように、サブタイトルと中身があまり一致しないことがあると思われます。すべては作者の力量不足なのですが、それでもいい方は今後ともよろしくお願いします。

それでは、次回でまた会いましょう。
語彙不足を深刻に悩んでいる作者でした。

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