FE覚醒~誓いの剣と精霊の弓~   作:言語嫌い

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仏語の勉強をしてました。
確かにしていたはずなのです。
なのに、なぜか、関係のない小説が出来上がってしまいました。これが仏語の魔力。
勉強のモチベーションを下げ、その他のモチベーションを上げる……恐ろしい……

要するに現実逃避してたら出来ました。
それではどうぞ。




第十一話 戦士の王国

さて、道中いろいろあったが、フェリアに到着。

目の前にはフェリアの誇る長城がある。後はそこの代表と話し合い中に入れてもらえばいいだけなのだが……

 

「フレデリク。なんか殺気立ってないか? 僕らはイーリス聖王国の特使としてきているんだよね?」

 

目の前のフェリアの国境兵は、何やらヤル気満々である。話し合いが出来るのだろうか? と聞きたくなるほどに。それを聞いたフレデリクは渋い顔をして答えた。

 

「そうですね。なぜか彼らは臨戦態勢に入っています」

「敵対関係ではないんだよね?」

「そのはずです。ただ、近頃フェリアは他国への警戒を強めているそうです。誤解を生まないような慎重な話し合いが求められます。しかし……」

「話し合いで終わらない可能性も、まあ、あるだろうね」

「はい」

 

さて、ここでこのような推測をした要因の一つとして、クロムが政治関連は苦手、ということがある。あの様子では、並みの駆け引きでは、普通に戦闘に入ることになる。もしかしたら何事もなく終わることもあり得るが、備えあれば憂いなし。とりあえず指示を出しておこう。

 

「クロムには、このまま何も伝えずに交渉を行ってもらおう。たぶん知ったからと言ってなんとかできるわけではないだろうし。教えたせいで変な行動をとる可能性がないわけじゃないし」

「……」

「否定しないんだ……まあ、それ以外のメンバーでクロムを守れるようにしておくから、それでいいかな?」

「はい、それでいいでしょう。あ、私はクロム様の近くに控えておきますので――」

「リズの方は後方に下がらせておくから安心して。一応僕が見ておく。あと、クロムのそばにいる、ソールたちに今回のことを言っておいてくれ」

「わかりました」

 

これで、ここからの簡単な方針は決まった。あとは各自に指示を出せばいい。まあ、まずはリズたちだな。僕のコートにくるまっている二人組に話を付けておこう。あの二人、今戦闘が始まったら間違いなく、簡単にやられる。

 

吹き付けてくる風の冷たさに耐えつつ僕は指示を出しに後方に下がった。

 

 

 

 

―――――――――――――

 

 

 

 

「はぁ、やっぱりこうなったか……」

 

そう、ため息交じりにつぶやきながら僕は目の前のフェリア兵を倒す。殺す、ではなくあくまで倒すだけどね。余裕があるなら全員気絶させること、もしくは戦闘不能にすること、といったから死者は出てない。まあ、何人かは足を折られたりしてるから苦しそうに呻いているけど……

 

「〈ウィンド〉!!」

 

ルフレの風魔法がフェリア兵を襲う。風魔法により体勢を崩した彼らに向かって、僕は駆ける。

 

「ほら、仕事だよヴィオール」

「……私は弓兵なのだがね。なんで剣を使わないといけないのかな」

「ほらぼやいていないで手を動かす」

「はぁー」

 

ヴィオールはため息をつきながらも体勢を崩したフェリア兵を仕留めていく。同じく僕も仕留めていく。さて、なんで自称アーチャーであるヴィオールが剣を使っているかというと、彼がボウナイトとしての称号を得ていると自称していたからである(僕が眠っていた夜に、仲間内で自慢していたことを、リズが言っていた)。あくまで自称だが……剣が使えるので今回はこちらに回ってもらった。腕自体は並みの兵士といったところだが、十分役に立つレベルである。というより剣を使えることを吟味すると、フレデリクと並んで戦力になる。要するに、ほとんど完成されている。いまさらだけど、いい拾い物だったな。発言が残念なところに目をつむれば知識もあり、さらに頭の回転も速い。貴族というのもあながちウソではないかもしれないが、なんせ情報がない。はぁ、どこかに腕のいい密偵は落ちてないかな~

 

「あの~、ビャクヤさん? 終わりましたよ?」

 

とか、どうでもいいことを考えているうちに、目の前の敵を倒し終えていた。とりあえず、気絶している兵士の一人からカギを奪い、扉を開け、目の前の重歩兵をルフレと、ヴィオールに無力化してもらう。反対側からはすでにクロムたちが攻め込んでいたらしく、こちら側の兵士の視線はむこう側を向いている。とりあえず、隙だらけだったのでルフレに頼んで吹き飛ばしてもらう。

 

「〈エルウィンド〉!!」

「「「うあああぁぁぁぁぁーーーー!」」」

「さて、受け身も取れてるみたいだし、死んじゃいないだろう。あ、ヴィオールとソールで、確認しといて」

「え、あ、うん。わかったよ」「ま、任せたまえ」

「さて、代表は……まあ、クロムたちなら問題なさそうだね。とりあえずルフレ、お疲れ様」

「は、はい。ありがとうございます。あ、それとビャクヤさんもお疲れ様です」

「ありがとう、ルフレ」

 

そんな僕らの前では、クロムたちにより、この長城の代表が倒され、何やらクロムたちと交渉をしている。

 

「終わったみたいだし行こうか」

「はい」

 

 

 

 

――――――――

 

 

 

 

僕らがクロムたちのところへ近づくと、気が付いたクロムが話しかけてきた。

 

「ん? ああ、ようやく来たか、ビャクヤ。とりあえず、フェリア王への謁見を許されたぞ。これから移動するらしい」

「うん、わかった。じゃあ、移動しようか……じゃなくて、その異様に存在感のないアーマーナイトは誰?」

 

そう僕が尋ねると、クロムを含めた全員が僕の視線の先を追い、その存在を見つけて驚く。おい、味方じゃないのか? そう思っているとクロムがばつが悪そうにしながら答えた。

 

「ああ、ええと、こいつはカラム。自警団の一員なんだが……すまない。いつからいたんだ、カラム」

「この砦にクロム様たちが戦闘を始めた時には居たよ。その後もクロム様についていたけど」

「悪い、気が付かなかった」

「ううん。別に気にしてないよ。僕の影が薄いの事実だから」

 

この異様に影の薄くて、でかいアーマーナイトはカラムというらしい。……僕も存在を忘れないように気を付けよう。

 

「カラム、だね。よろしく。僕はクロムの軍師をしているビャクヤだ」

「うん、よろしく。僕がいることを忘れないでね」

「ああ、努力する」

「お待たせしました。準備が出来たので、これから王のもとへと案内します」

 

カラムとの自己紹介が終わったところで、先ほどの代表が現れ準備が出来たことを伝えてきた。クロムはそれを聞くと、全員を集めて、彼女の後に従い、開け放たれた城門より、内部へと入り、フェリア王のいる王城へと向かった。

 

 

 

 

――――――――――――

 

 

 

 

城に着くと、クロム、リズ、フレデリクが謁見の間へと招待されるが、軍師と軍師補佐ということで僕とルフレも入れてもらう。僕の存在はまだ他国には知られていないらしく、普通に無視されていた。そういえば、代表である彼女には自分のことを言ってなかったな。

まあ、それより、

 

「王は留守か……」

 

そう僕が言うと、それに反応してリズがクロムに尋ねる。

 

「ねえ、お兄ちゃん。王様はどうしたんだろうね?」

「政治より戦いが好きな人だと聞いている。おそらく訓練場にでも行っているのだろう」

「戦い好きの王ね……」

「なんだい、その間は。何か失礼なことでも考えているんじゃないだろうね」

 

いえ、滅相もございません。何も、筋骨隆々のごつい脳筋だとは考えておりません。って、なんで僕だけ突っ込まれるんだよ! 

 

「あんたがフェリア王か? ……いや、王なのでしょうか?」

「ああ、東の王フラヴィアさ。遠路はるばるようこそ、クロム王子。国境では、うちの連中が失礼したね」

「いや……あ、いいえ。先ほど、イーリスを騙る賊が出没していると聞きましたが……」

 

先ほどのやり取りはなかったかのように二人は話を進める。まあ、その方が僕としてもうれしいんだけど……

 

「ああ、国境沿いの村々を荒らしている。どうやらペレジアが仕組んでいるようだね。フェリアやイーリス、両国を敵対させよう……ってところじゃないかねぇ」

「くそ! あいつら……! ……あ、し、失礼しました。王の御前で……」

「はぁー。クロム王子……しゃべり方無理をしているんだろ? いいんだよ、いつもの調子で話してみなよ」

「あっ……き、気付かれていたか」

 

気付かれないと思っていたのはクロムだけだと思うよ。同じことをリズも思っていたらしく、リズとルフレが後ろでこそこそ話している。はぁ、今更ながらフラヴィア様が気さくな方でよかったよ、本当に。

 

「……さて、本題に入ろうか。……さっそくで悪いんだが、いま、うちの兵をイーリスに貸し出すことが出来ないんだよ」

「え? そんな……どうして?」

「こういった事柄を決定する実権が今の私にはないんだよ」

 

リズの問いに対して、少し困ったようにフラヴィア様は答える。

 

「どういうことだ?」

「うちの国では古来のしきたりで数年に一度、東西の王の闘技大会が開催される。その戦いに勝った方が東西の両方の王になるって寸法なのさ。よその国との同盟を結ぶ決定は、その王様がすることになっている」

「……ということは、今は同盟を結んでもらえないということか」

 

要するに、その闘技大会でフラヴィア様が勝てば、同盟が成立する……しかし、それが終わるまでは同盟を結ぶことが出来ない、ということになる。どのみち今回は不可能、のはずだけど、フラヴィア様が笑っているのが気になる。何を考えているのか……

 

「そう決めつけたもんでもないよ。闘技大会はもうすぐだ。大会であんたたちが勝てば、願いを聞いてやれる」

「俺たちが?」

「報告は聞いてるよ。あんたたちの腕は大したもんだ。東軍の代表として、あんたたちが西軍に勝てばいい。そうすりゃ私が王様になって、同盟を結ぶことができる」

「フェリアのしきたりに、よその国の俺たちが出て良いのか?」

「ああ。王が選んだ戦士ならね。この大会、王が出るのは禁止なのさ。何代も昔…王が大会で殺されちまってから、血で血を洗う大戦争になったもんでねえ。代理戦争で手打ちにするには、うちと縁のない奴を選んだ方が良い。それが他国の王子ってのは初めてだが、どうする?」

 

大戦争にまでなったのか、この闘技大会がきっかけで……誰が考えたんだ、この決まり……

本当に力を重要視している国なんだな。とはいえ、大会と名がついていても、これは立派な戦争。あまり安全な方法ではないけれど……

 

「……イーリスでは戦う力を持たない人たちがフェリアの助けを待っている。いつ化け物たちに襲われるかもしれない人たちのためにももっとも短時間で話がつく方法を選びたい」

「決まりだね。大会は闘技場で行われる。向こうは腕利きの剣士を用意してるそうだよ」

「相手が誰だろうと、やるからには必ず勝つ」

「良い顔だ。気に入ったよ。よっしゃ! じゃあ暴れておいで!」

 

クロムならこうすると思っていたよ。まあ、これが手っ取り早いからね。それに、出なかったことで同盟を結べなくても困る……というより、こうしないとおそらく同盟の話はなかったことになったんだろうな。ふぅ、乗せられたね。まあ、勝てばいいか。

 

 

 

 

こうして、イーリスとフェリアの同盟は二日後にある闘技大会の結果で決まることになった。

 

 

 

 

――――――

 

 

 

大会前日。

フェリア、西の王城の訓練場。ここには、王宮の兵士だけでなく、城下からも腕の立つものが相手を求めて日々修行に来ている。そんな訓練場に、西の王バジーリオは様子を見にやってきた。彼は目的の人物を見つけると声をかける。

 

「お、やってるな。ロンクー、調子はどうだ?」

「問題ない」

 

ロンクーと呼ばれた青年は振り返ると、不愛想に答える。

 

「それより俺以外はどうするんだ。そろそろ決めた方がいい」

「うーん。そうだな。ちょっと待ってろ、今決める」

 

そういうと、バジーリオは訓練場を歩いて、何人かを指名してこちらに連れてきた。

 

「こいつらでいいだろう。それと、今回は今までとは違って個人戦になる。お前ら全員、気を抜くなよ」

 

バジーリオは集めた者たちにそう釘を指す。それに対し、ロンクーを含む集められた者たちは一様にうなずいた。それを確認した後、満足したバジーリオは彼らに解散を促すが、その途中で、横から声がかけられる。

 

「少しいいかな? 西の王バジーリオ殿。あなたに頼みがある」

 

そう声をかけてきたのは、蒼い服に身を包んだ仮面の剣士だった。その立ち居振る舞いからして、相当な強者であることがわかる。それ故に、バジーリオはその者に答えることにした。

 

「おう、なんだ。用件を言ってみな」

「此度の闘技大会に僕も参加させてほしい」

 

それを聞いて、バジーリオは運がいいと思った。なかなかお目にかかることのできない様な強者が参加してくれるのなら、文句はない。だから――

 

「おう、いいぜ――と、言いたいところだが、その前にお前さんの実力を見せてはくれないか? 俺は納得したが、これだと他の奴が納得しない。つうことで、ロンクーと摸擬戦をしてくれ。こいつの腕はあんたと同じくらい、のはずだ。こいつと打ち合うところを見りゃたいていの奴は納得する。だから、ちょいとばかし頼むぜ、二人とも」

「わかった。ロンクーとは?」

「俺だ。とりあえず始めようか。バジーリオ、合図を頼む」

「おうよ」

 

短く言葉を交わすと二人は相対し、その合図を待つ。二人が対峙したことにより生まれた空気に誰もが息をのんだ。対峙すること数秒、バジーリオの合図がかかり、両社は同時に地をける。

そして――――

 

 

 

 

一瞬の交錯の後、キン、と澄んだ金属音とともにロンクーの剣は弾き飛ばされており、剣が地に落ちた時には、もう終わっていた。

 

「おいおい……まじかよ」

 

バジーリオのつぶやきに周りも騒がしくなる。今彼らの目の前には剣を向けられ身動きのできないロンクーと、彼に剣を向けている仮面の剣士の姿があった。勝敗の結果は明白。彼らの代表は今ここで倒された。

我に返ったバジーリオは試合の終了を告げると、試合をしていた二人に近づく。

 

「見事な腕前だな。お前、名前は?」

「……マルス」

「そうか、ならマルス。お前、この軍の代表として参加してくれないか? お前の強さなら文句なしで代表にできる」

 

そうバジーリオが告げると、マルスからは意外な言葉が伝えられた。

 

「いや、僕は参加できればいい。だから、代表は彼のままにしてくれ」

「へ……? おいおい、普通代表に選ばれて辞退するか?」

「頼む。僕には戦いたい人がいる。その人が向こうの軍の二番手として登場するんだ。僕はその人と戦いたい。だから、代表にはなれない」

「は? まて、お前、相手がわかっているのか? どういう事だ」

「僕は彼の消息を探していた、その彼の情報をここで見つけた。ただそれだけ」

「見つけたって、おい……」

 

どうやって、と問おうとして彼はやめた。おそらくこの条件以外ではマルスは参加しないだろう、そう思ったからだ。いろいろ聞きたいこともあるが、ここは目をつむろう。

 

「よし、わかった。お前の言う通り、二番手で参加させてやる。その代り、勝てよ」

「わかっている」

 

その答えを聞いて、鷹揚にバジーリオはうなずいた。

 

「よし! それはそうと、なんでそいつと戦いたいんだ?」

「あなたには関係ない」

「全部聞こうってんじゃあない。教えれる部分だけでも教えてくれはしないか? こっちが先に譲ったんだ。そっちも少しくらい、なあ」

 

そうバジーリオが聞くと、マルスは少し考えたのち、口を開いた。

 

「あの人に見せたいから。……僕はここまでできると。ただ、それだけだ」

 

マルスはそれだけ言うと口を閉ざした。バジーリオもこれ以上聞き出せないと思ったためそれ以上は聞かず、部屋を指定し近くの兵士に案内するように指示をだし、マルスを見送る。

 

「あの人に見せたい……ね。誰なんだろうな、あのマルスがそこまでいう人は」

 

その姿を見送ったバジーリオはその場でそうつぶやいた。その問いの答えを知る者はこの場にはいなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――

 

 

 

 

時は流れる。

いつものように、ただ、流れていく。

しかし、少しずつ、その未来/過去を変えながら。静かに紡がれていく。

彼というイレギュラーにより変えられたこの世界のたどる先にあるものは……

 

その答えは今もなお、紡がれ続けている。彼によって。

 




さて、ヴィオールの意外な設定。彼は、この軍内では結構強い設定なんですよ! 最初だけは……
まあ、貴族だし。それに、あのお方もいるからきっとある程度鍛えられているだろう、と思うことにしました。

次回は、原作とは違った形式で大会が進められます。ついでに原作ではちょっとしか出番のなかったロンクーはしっかり出番がある予定。あくまで予定です。出したいですね……
いつになるかはわかりませんが、また次回で会いましょう。

〈ボウナイト〉
剣と弓を使う騎兵です。下級職アーチャーからなることが可能な上位職。
烈火、封印でいう遊牧騎兵

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