FE覚醒~誓いの剣と精霊の弓~   作:言語嫌い

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皆さんお久しぶりです。

ようやく書き上げた言語嫌いです。だいぶ遅くなりましたが、結局間章です。次で三章……のはず。

それでは本編どうぞ。


第十話 間章 クロムの受難~勘違い編~

朝、俺は昨日の夜に合流したミリエルを連れてビャクヤのいる天幕に向かっていた。昨日の夜、不幸にも倒れてしまったビャクヤに、彼女を紹介することが出来なかったからである。

 

「すまないな、ミリエル。出来れば昨日のうちに紹介を済ませるはずだったのが、今日になってしまって」

「いえ、お気になさらないでください。倒れている人はしっかりと休養を取るべきなので、クロム様の配慮は正しいかと。それに、野宿ではなく、しっかりとした天幕が与えられているのですから、彼の体調もよくなっているでしょう」

「そうだな。俺や、リズが使うはずだった天幕を一人で使えているのだから、しっかり回復しているだろうな」

 

今回、この隊には天幕が支給されていた。このような少人数の移動で、数人で一つとはいえしっかりとした天幕が使えるのはやはり、新たに加わった輸送隊の存在が大きいと言わざるを得ない。また、皆より早く眠らされた彼は、起こすのも忍びないということで、クロム用の天幕を利用している。

 

「さて、着いたな。おい、ビャクヤ。起きているか?」

「へ? ……え!? あ、あぁ。うん。起きてい――」

「そうか。ならよかった。少し用事がある。入らせてもらうぞ」

「――る、って、え! ちょ、ちょっと待って! できれば後で――」

 

どうやら、すでに起きているようなのでミリエルを促して天幕の中へと入ると、そこにはベッドから半身を起こし、ひきつった笑みを浮かべたビャクヤの姿があった。

 

「……」

「……」

「お、おはよう、クロム。それで、用事というのは? 何か不測の事態でも起こったのか?」

「いや、そうじゃない。昨日の行軍中にも聞いたと思うが、今回の行軍に加わる最後のメンバーの紹介を――――」

 

とりあえず話を進めようと用件を切り出したとき――

 

「……バクヤしゃん――」

 

――と、声が聞こえた。

 

「「……」」

 

 

突如、沈黙が場を支配した。

 

……何か、聞こえなかったか? こう、こいつの天幕に居たらおかしい女性、いや、少女特有の高い声が。ビャクヤの顔を見ると、先ほどよりもひどい顔になっており、何やら冷や汗まで書き始める始末。ここまでくれば誰が見てもわかる。こいつは何かやましいことを隠している、と。

そう考えた俺は、あいつが必死に止めようとするのを無視して、大股でベッドに近づくと、その不自然に盛り上がっている、天幕の壁側――すなわちビャクヤの陰に隠れて俺からは見えない位置の布団をめくった。すると――――

 

「ん…………すぅ……」

「あ……」「……」

 

そこには、ビャクヤの服をしっかりとつかんで眠っているルフレの姿があった。初めて見た時と同じように、あの無骨なコートを脱いで、楽な服装でいることがわかる。要するに、完全に薄着である。そのせいか、布団をはぎ取られて寒かったらしく、近場の熱源に引っ付く。そう、ビャクヤに。その際に、今まで布団の中に隠れていた彼女のきれいな足が……!!

 

それが目に入ったかと思うとすぐさま、ビャクヤが布団を引き上げ、彼女の体にかぶせる。気まずい沈黙が流れ、どちらからともなく顔を見合わせる。奴の顔は相変わらずひきつっていて、彼女の寝顔は幸せそうであった。いや、今は関係ないか……とりあえず、これを裁かねば…………

 

「……ビャクヤ」

「クロム。僕は何もしていないし、何も知らない」

「一度ならず二度もその子を襲うとは、いい度胸だな――――覚悟はいいな」

「ふにゅ……?」

 

俺はゆっくりと剣を腰から外す。一応鞘はつけてある。それを見たビャクヤは、ふぅ、とため息をつくとこちらを見てこう言った。

 

「話せばわかる」

「問答無用!!」

 

奴を裁くために、俺は剣を勢い良く振りかぶり――――

 

「だめ!!」

 

俺の振り上げた剣は、そのまままっすぐに奴へと伸びていき、突如視界いっぱいに広がった銀に驚き、その勢いを止める。

 

「な!?」

 

その剣の先では、ビャクヤを守るように抱きかかえるルフレの姿があった。その小さな体で必死にビャクヤを隠し、次に襲ってくるであろう痛みに震えていた。だが、痛みを恐れてもなお、彼女はあいつを守るために、その身を楯にした。その身を――自分ではない、誰かのために、差し出した……

 

ルフレ? と、そうつぶやくあいつの言葉も今は耳に入らない。ただ、目の前にある己の剣と、彼女と彼女に守られているビャクヤから目が離せなかった。

そう、それはまるで――――――

 

 

 

 

――――その後、いつの間にか消えていたミリエルがフレデリクたちと来るまで、俺たちはそのまま動くことも出来ずにいた。

 

 

 

 

―――――――

 

 

 

 

日が昇り、やわらかな風がふわりとなでてくる中、彼女の繰るペガサスの背の上で僕はポツリとつぶやいた。なお、彼女のペガサスは怪我のことも考えて昨日と同じように地上を歩いている。昨日と違うのは、リズの代わりに僕とルフレが一緒に乗っていることくらいか……

まあ、それはともかく――――

 

「朝から、ひどい目にあった……」

 

とりあえずこれは言いたかった。そんな僕の声に反応して、彼女がすまなそうにこちらを向いた。

 

「……すみません、ビャクヤさん。私のせいでまた迷惑をかけてしまって……」

「いや、気にしないで……クロムの早とちりが悪いだけだから」

 

そう彼女に返し、クロムをジトっとにらむ。するとクロムは、はははと笑ってごまかし、あさっての方向を向いた――が、その方向にはこれまたジト目でにらんでくるリズ、フレデリクの姿が……

わかってないかもしれないけど、クロム、今回に関して君に味方はいないよ。

そう思っていると、おもむろにフレデリクが口を開く。

 

「……クロム様。現実から目をそむけてはいけません。あれはクロム様が悪いです。そもそも、昨夜のことも早とちりではありあせんでしたか?」

「うぐ……」

 

フレデリクの攻撃。クロムに小ダメージ。

 

「そうだね、クロム君。今朝のは君の早とちり――それと、昨日のことは君も聞いていたはずではなかったかね? ビャクヤ君の看病をするために、ルフレ君が同じ天幕で寝ると言っていたはずだよ」

「その場にいなかった俺様も知っていたぞ? まったく、俺様のライバルは何をやってんだか」

「ぐお……」

 

ヴィオール、ヴェイクによるデュアルアタック。クロムに中ダメージ。クロムは瀕死になった。

 

「お兄ちゃん……私も知ってたよ? ルフレさんとビャクヤさんが同じ天幕で寝てるの」

「……ごめんなさい、クロム様」

「ぐはっ……!」

 

リズの攻撃。クロムにクリティカル。

スミアによる追撃(自覚なし)。クロムにこれまたクリティカル。

クロム撃沈…………まあ、当然だな。

これというのもクロムが僕の話を聞いてくれなかったから悪いんだし、仕方ないな……とは思ったけど、よく考えたら、僕が疑われるようなことしていたからか。なんというか、僕はとことん間が悪いな……はぁー

世の理不尽を嘆き、つい、ため息が出てしまう。

 

「……ビャクヤさん……………」

 

それを聞き、前に座るルフレが心配そうに見てくるので、問題ないよ、と苦笑しながら返事をする。彼女は、そうですか、と返すと前を向いてペガサスを繰る。納得してなさそうだけど、肉体的にではなく精神的に疲れているので、すぐにどうにかできるものではない。ごめんね、と心の中でつぶやきそのままペガサスに揺られながら周りの警戒をする。

 

「すみません。ビャクヤさんでよろしいんですよね?」

「ん? そうだけど、どうかした?」

 

僕がそうして周りの警戒に移ろうとしたところで、魔導師の格好をした女性が話しかけてきた。頭に三角帽を乗せ、黒のローブに身を包んでいるのでそうかと思っただけど。その女性は、目がよくないのか、メガネをかけている――けど、あれ? 名前が思い出せない。メガネという、特徴的なものを付けている女性がいるのは知っている。なのに名前を覚えていないはずがないんだけど。

なかなか思い出せず、う~ん、と首をひねっているのを、目の前の女性は不思議そうに見てくる。そのまましばらくすると、僕のこの行動を見かねてか、彼女が再び口を開く。

 

「何を考えておられるかはわかりませんけど、話を進めます。私はミリエルと言います。この自警団に所属する魔導師です。これからは私も戦力といてカウントしてください。よろしくお願いします」

 

目の前の女性―――ミリエルはそう自己紹介すると、丁寧にお辞儀をしてくる。こちらもお辞儀を返したところで、ようやく目の前の人物のことを思い出した。そう、昨日遅れてく合流すると伝えられていた人で、今朝方、クロムが僕の天幕に連れてきた人だ! 頭の中にあったもやもやがすっきりしたので、ミリエルさんナイス! とそう思っていると、彼女はさらに言葉を続ける。

 

「昨日の夜、あなたが倒れておられると聞いたので、今朝方、自分の紹介のために挨拶に行く予定だったんですが、クロム様の早とちりでいろいろあったため、出来なかったんです。すみません」

「ミ、ミリエル……」

「どうかなさいましたか? 朝のあの騒ぎのせいでできなかったのは事実です。それと、夜の騒動のせいで伸びたのも事実です」

 

さりげなくクロムに悪態をつくミリエル。一度ならず、二度も挨拶を妨害されたせいで思うところがあったのだろうか? クロムはミリエルにそう言われまたもダメージを受けたようで、うなだれている。その後、ふらふらとダメージから立ち直り周りを見るも、味方はおらず、クロムに対し現在何も言っていない二人――ソワレとソールは極力クロムを見ないように視界から外しているため、味方にはならないだろう。完全に四面楚歌な状態なクロムに、最後の味方が彼のもとへと向かう。

 

「クロム様……」

「……お前は、フラムか」

 

そう、彼の現在の状況を見かねたフラムさんがクロムの肩に慰めるように優しく手を置いた。地獄に仏、周り全てが敵である今のクロムにとって彼の優しさはまさにそうというにふさわしいものだった――――が

 

彼は見る人の心を温めるような柔らかな笑みを浮かべてこう言った。

 

「貴重な薬を味方同士の争いに治療に使うのは避けたかったですね。薬は無限にあるものではありません。以後気を付けてください。それと、私もクロム様が悪いかと……」

「お前もか!!」

「さて、何のことですかな?」

 

クロムは最後の味方? に裏切られ声を張り上げる。フラムさんはそれをふらりと流し、再び後方へと下がる。

それにしても甘いね、クロム。最初から彼は僕ら側の味方だよ。ちらと後ろを確認すると、フラムさんはにこりと微笑み手をふってくる。僕は其れに対し軽く会釈し、前を向き、フェリアへと向かうペガサスに揺られながら、無駄に溜まった疲れをゆっくりと癒すことにした。

 

こうして、フェリア到着前日の穏やかな午後は平和に過ぎていった。

 

 

 

 

――――――――――

 

 

 

 

時同じくして、某国某所。あるさびれた小屋の中で一人の女性が目を覚ました。女性は目を覚ますと、しばらく呆然と天井を見つめていた。少しすると、あたりを見るために彼女はゆっくりと体を起こした。まず彼女の目に入るのは木。それらは木製の壁、木製の机などであり、このことからこの建物がすべて木でできていることがうかがえる。また、窓の外にはうっそうと木々が生い茂っている。先ほどと同じように彼女はそのまま外の景色をぼんやりと眺めていた。

 

そうしてどれくらい経っただろうか、後ろでドアの開く音が聞こえたため、女性は振り返る。見るとそこには、杖を持った白い服の男性がドアの前で佇んでいた。その男性は女性の意識があるのを見て、少し驚いたような表情をしたが、すぐに元の表情に戻りそのまま女性へと近づいた。男性は女性のベッドの脇まで来ると、椅子を引き寄せ座ると、彼女を見て口を開いた。

 

「君は三日前にこの近くで倒れていたため、私が連れて帰って治療をさせてもらった。そしてその後は君をここに寝かせて意識が戻るのを待っていた。これが今の君の置かれている状況で、君の意識のないうちに起きた出来事だ」

「そう、ですか。その、ありがとうございました。ところであなたは誰ですか? できれば名前を教えてくださいませんか?」

 

女性がそう切り出そうとしたとき、あたりの空気が突然冷たく、重くなる。その状況に目の前の男性はやれやれと肩をすくめると、ため息をついてゆっくりと立ち上がり、服の中から小さな円盤を取り出し、それを女性に渡した。その後、不思議に思っている女性を無視し小さく何かをつぶやくと、彼女を起点に、光る魔方陣が地に描かれる。術式が発動したのを確認すると男性はそのままドアを開けて出ていこうとするので女性はあわてて声をかける。すると男性はそのまま少し振り向いてこう言った。

 

「それは、光の結界。結界の中と外を完全に分断する結界で、いかなる攻撃も通さない。このごたごたが終わるまではその中から出ないように」

「え、ええと、わかりました――――じゃなくて、あの、あなたは大丈夫なんですか? 今外に出るのは危ないと……」

「問題ない」

 

男性は女性の問いに短く答えるとドアに手をかける。そのまま出ていこうとするが、ふと、何を思ったのか手を止めた。彼は女性に背を向けたまま先ほど答えられなかった問いに答えた。

 

「そういえば、私が何者か、だったな。私は、そうだな――かつて不死身と言われたしがない傭兵、といったところか」

 

そう答えると、今度こそ彼は扉の向こうへと消えていく。その女性は扉が閉じられた後もそこを眺めていた。

 

 

数刻の後、どこか疲れと様子の男性が手に温かいスープを持って入ってくるまで、彼女はぼうっと、そのドアを眺めていた。

 




今回はクロムの受難でした。
次回は、ヴィオールの受難です……



嘘です。
次回は三章、もしくは、三章,四章となるのかな?

不定期とはいえ、出来れば次回はもう少し早めにあげれるよう努力します。

さて、それでは次回でまた。

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