FE覚醒~誓いの剣と精霊の弓~   作:言語嫌い

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第1章 陽光の聖女編~紡がれた約束の物語~
プロローグ 


遠い――

 

何もかもが遠い。

体の感覚も、世界とのつながりも、大切な記憶も、その何もかもが遠くに感じる。

 

消える。何もかもが薄れて消えていく。

仲間との出会いや敵との別れ、師との旅や駆け抜けた戦いもすべて。

どんなに手を伸ばしても、どんなに掴んでも、この手から零れ落ちていく。

 

それでも

 

「気が付いた……?」

 

それでも……

 

「――っていうの。不思議な響き。でも、悪くないと思う」

 

それでも絶対に、これだけは……

 

「――強く、なりたいの」

 

これだけは……

 

「いいの!? ありがとう! すごく、うれしい!! ぜったい1人より、2人のほうが心強いって思ってたの。あなたは一人前の軍師! 私は一人前の剣士!! がんばろう! ね?」

 

忘れたくない――

 

この出会いだけは、絶対に……

 

僕を変えてくれたこの出会いだけは、絶対に忘れたくない。

 

消さないでくれ

 

消えないでくれ――

 

頼む……、どう……か、こ……れ、だけ……は、この……で……だけ……は――

 

 

 

 

***

 

 

 

夢を……

 

夢を見ている。

 

いつかの夢を。起こってしまった誰かの夢を。

 

 

 

「俺たちの最後の戦いだ! 大丈夫だ、ルフレ。この絆は……運命なんかよりもずっと強い。お前が共にいてくれる限り……負けはしない。行くぞ、ルフレ! ここで必ず奴を倒す!」

 

隣にいる彼の言葉に、うなずく。そう、これでようやく終わる。だからこそ――

 

「   」

 

ここで負けるわけにはいかない。

 

その言葉とともにクロムと最後の敵に挑む。そして、戦いの末、彼の剣が奴を貫いた。

 

でも……

 

 

 

わからない――

 

わからない。なんで、こうなっているんだ……?

 

わからない。本当に、なぜ……?

 

なぜ彼が倒れるのか、なぜ彼が敵に見えたのか。なぜ彼を攻撃したのかがわからない。

 

「お前のせいじゃない……お前だけでも逃げろ……」

 

「ク……ロム……、な……んで……、あ……ああ……ああああああああああぁ!!」

 

 

その言葉を最後に、僕の意識は闇に落ちた。

 

 

そして、ここでこの夢も終わり、またいつかのように薄れ、消えていく。

 

 

 

***

 

 

風が……

 

風が優しく吹いた――

 

 

朦朧とした意識の中、近くに人の気配を感じた。

 

「おにいちゃん……ねぇ、大丈夫かなぁ……?」

「だめかもしれんな」

「そ、そんなぁ」

 

声が聞こえる。

聞きなれない/聞きなれた……声が。

もうろうとしていた意識が次第にはっきりと覚醒していく。

 

動く。

動かせる。

とてつもなく体は重い。だが、動かせる。

 

意識を集中してようやく目を開けた。

 

 

「あ……」

「気がついたか?」

「平気?」

 

目を開けた僕に二人の人物が声をかけてくる。

あの時と同じように……、あの時のような……、優しい声を。

その声に応えるように僕はうなずく。目の前の少女は安心したように笑い。隣の青年も同じように笑う。

 

「こんなところで寝ていると風邪をひくぞ。立てるか?」

 

苦笑交じりに差し出された彼の手をつかみ立ち上がる。

 

そして、これが彼との最初の/二度目の出会いだった。

 

 

 

***

 

 

 

ここに物語は始まった。

 

神龍と邪龍の住むこの世界において、二つの運命が絡み合い、二人の英雄がここで出会った。仲間を導き、戦いを終わらせた聖王クロムと、彼を支え、世界を相手に戦った神軍師。

 

 

そう、これは神へと抗った彼の物語

 

 

一つは、約束の物語

 

一つは、時間の物語

 

一つは、運命の物語

 

一つは、想いの物語

 

 

そう、そして彼は出会い、選択した。己の未来を……

 

 

そう、それは、陽光の公女との出会い

 

そう、それは、蒼き剣姫との出会い

 

そう、それは、白銀の聖女との出会い

 

そう、それは、蒼穹の少女との出会い

 

 

こうして、物語は語られる。彼と、彼女によって。

 

しかし、その未来を知るものは今はいない。

 

 

だから、どうか、彼らの旅路に幸多からんことを……

 

 

 

***

 

 

 

夢を…‥

 

夢を見ていた。

 

ある日の夢を……

 

 

 

 

出発をする前、彼女は白と黒の二つの剣を持ってきた。色が異なること以外、まったく同じ形をした剣を大切に抱えている。

 

「これを、あなたに……」

 

彼女はそう言って、持ってきた剣のうちの黒いほうを僕に差し出す。

 

「この剣は? 形とかを見る限り二つで一つのようだけど。双剣として使うものじゃないのか?」

 

そういうと彼女は視線を落とし、静かに語り始めた。

 

「これは、ビャクヤ・カティ。あなたの言うように、二つで一つの剣よ。私たち――に伝わる宝剣で、父さんの形見。私は知らないけど、伝承とかもあるみたい。そして、私が――の長である証。でも、私にはまだ重すぎる。だからといって、これを手放すわけにはいかないの。父さんの形見で、父さんの守ってきたものの存在の証だから。だから……」

「片方を僕に。もう片方は――が。君にはその白い剣を、父親の形見として。僕にはこの黒い剣を、――があった証として。君が受け取れるようになるその時まで、僕が預かっておくよ」

 

彼女が紡ぐはずだった言葉を、僕が代わりに繋げた。

そして、遠慮がちに差し出されていた剣を僕は受け取る。

重さは感じなかった。初めて手にするはずなのに、不思議と手になじむ。

 

「それに、僕らはまだ半人前だ。だから、僕らは二人で一つ。いつか一人前になるその時まで、お互いに支えあっていく、そうだろう?」

 

僕はそう言って彼女に微笑みかける。

そうすると、彼女は驚いたように顔をあげて――

 

「……えぇ、そうね」

 

僕に優しい顔で微笑んだ。

 

「私、さっき言ったばかりなのにもう忘れてた……じゃあ、改めてこれをあなたに。そして、私はここに誓うわ。私たちが一人前になるその時まで私はあなたを支えていく」

「僕も互いに一人前になるその時まで、君を支えていくことをここに誓おう。

この剣に懸けて。これからもよろしく、――」

「えぇ、これからもよろしくね。――」

 

 

 

***

 

 

 

そうして、彼らの旅は始まった。

 

これは、彼の記憶――失う前にこれだけは……と願った、はじまりの記憶。

 

薄れ、消えていく中、最後まで抱き続けた大切な記憶。

 

そして、それは形となって今もなお、彼のそばにあり続けている。あの約束の時から今まで変わらずに……その黒き剣は、ただ静かにそこにある。

 

大切なものとともにそこにある。

 

 

 




~あとがき~

読んでくださった皆さんどうもありがとうございます。
この作品はこんな感じで描かれていきます。
まだプロローグのみなので何とも言えないと思いますが……
注意事項にあったように、思いつきで書いたので、更新は不定期です。
そして初めて書いたので短く、ひどい文章です。書いていくうちに腕が上がればなぁ、と思っています。
努力もします。載せてる意味がなくなりそうですので……
また、感想、アドバイス、批評批判、誤字脱字等ございましたらお願いします。
なお、軍師さんの世界移動については、つじつまを合わせれたら、合わせようかなという感じですので。
こんな作品でもよければどうか皆さん最後までお付き合いお願いします。

*作中にでたオリジナル武器
 ビャクヤ・カティ
 干将莫邪(改)のことです。ググったら画像が出てきます。
 本編では、ファルシオンのように刃こぼれのない武器として扱います。ついでに精霊さんにも厄介になる予定です。マーニ・カティみたいな、意思のある武器と なる予定です。まぁ、それ以外は切れ味のいい武器ということでお願いします。


**2017/11/10 若干修正

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