魔法少女リリカルなのは~絆紡ぎし神王となりしもの~   作:Aura

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前回に引き続き過去の物語です。

古代ベルカ編オリジナル設定やキャラ崩壊等を多く含んでいますので苦手な方はご遠慮ください。

それとジャンヌは既に前々世と前世の記憶を取り戻しています。


【前編】選定されし者は※※へと至る

~Side 赤き龍~

 

我はその日、起こった出来事を未来永劫忘れることはないだろう。

 

その日はいつもの様に鬱陶しい人間共を蹴散らし、自分を神の使徒だとか何とか言う馬鹿な天使共を我が自慢の炎でこんがりと焼いて喰らっていると突然莫大な魔力の波動を感じ、そちらの方角へと視線を向けると空が裂け、そこから強大な力を宿し、我が同胞達の波動をその身に宿した小さき者が裂けた空から降ってくるではないか!

 

「あれは....人間の子供か?」

 

思わずそう呟いてしまう程に余りにも不釣り合いな力を宿し、自称神の使徒である天使共など比較にならないず、偉大なる我ですらも平伏してしまいたくなるほどの力を感じて冷や汗が止まらない。

 

「そうか...。どうやら我が死ぬ時がようやく来たようだ」

 

自然と口角が吊り上がり、今まで溜め込んでいた物が一気になくなった事で陰鬱としていた想いの数々がなくなって行く。

 

「我が寿命による死期に醜く生き恥を晒すことなく死ねる日が来ようとは思わなかったぞ!!」

 

この世界の龍族は我も含めて例外なく寿命が尽き、死ぬ際にその身に溜め込んだ力が一気に膨れ上がっり、理性を失って完全に力が尽きるまで暴れまわる。

 

しかし大体の龍族は気高く、プライドが高いために死期を悟ると人間たちに討伐されたり、自ら命を絶ったりするなどして生き恥を晒す馬鹿はおらぬが我の場合は自殺しようにも今だに力が強すぎて万が一失敗した場合の周りへの被害が計り知れず、毎日の様に人間や天使共に挑まれるが一度の敗北もなく、こうして今日まで生き続けて来たのだが...。

 

「小さき希望よ!! まさか人間のそれも子供でありながら数多くの我が同胞達の加護と力を与えられた人間の枠組みから外し超越者と至りし者が我が元に現れてくれたことを嬉しく思うぞ!! しかし今のままではまだ、ちと弱い...そういえばあの天使共が自慢気に高々と掲げて隙だらけだったから思わず話の途中で殺して奪ったアレがあったな」

 

我は宝物殿へと歩みを進め天使共が何度も取り返そうとしてきた()()()を携えて彼の者が降り立ったであろう選定の丘へと飛び立つ。

 

「これが天使共が言う通りの代物だとしたらきっと我を殺してくれようぞ!!」

 

生まれてこの方数えるのが面倒なほど時間がたったが今日ほど嬉しかったことはないだろう。

 

「願わくば...我の希望の光となっておくれ」

 

僅かばかりの光明に想いを馳せながら彼の地へと飛び立った。

 

~Side Out~

 

~Side ジャンヌ~

 

それは突然でした。

 

私は両親と共に父方の故郷である欧州へと長期休暇が取れたので御祖母様と御祖父様へと顔見世ついでに久しぶりの里帰りをしようとお父さんの提案で飛行機に乗り、空港近くの広場で御祖父様のお迎えを待って居たのですが突如として私が立っていた地面が消えたかと思うと何とも言えない浮遊感と睡魔に襲われました。

 

そして現在私はどこだか分からない草原の小高い丘の頂上の()()()()()()()()の前で「そういえばお父様が好きな英雄譚の中に岩に突き刺さった剣を抜いたことで王となったお話があった気がする」とその内容のお話を思い出そうとしてふと、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()事に気がついた。

 

確かに聞いたはずなのに思い出せないのは不思議だけれど、それよりもここが私が居た世界ではない事は何となく魔力が多い事からも分かるし、何処かで戦闘をしている様で懐かしい物や人の焦げる匂いが風上なせいかただ寄ってくる。

 

「どうやら私はどこの世界か分からない世界に突然飛ばされただけでも危ないのに更に近場で戦闘中ですか」

 

もはや乾いた笑みしか出てこない状況に愚痴らずにはいられなかった。

 

「はぁ...記憶を取り戻す前なら今頃泣きわめいていられたんでしょうが残念ながら人生2度分の記憶があるせいでこのまま現実逃避していても戦闘に巻き込まれれば幼女の身体・魔術・魔法の鍛錬0・武器も防具もなしの三拍子揃った状況ではひとたまりもない事は分かっているのですけれど....せめてもう少し現実逃避したかったなぁ」

 

溜息混じりに愚痴を吐き出し、遠い目になりながらこちらへと向かってくる赤い色のドラゴンへと意識を向ける。

 

「こんな事を淑女であり紳士だった私の口から言うのはどうかと思うんです!! でも、言わないと気が済みませし、やってられません!!」

 

大きく息を沢山吸い込み、このおふざけが過ぎる非情な現実への怒りを叫ぶ。

 

「これだから抑止力なんて大嫌いなんです!! ブワァァァァァカァァァァァァァッ!!」

 

散々私と僕の人生を良いように使われた恨みを込めて今頃ほくそ笑んでそうな者達へと怒りの声はドラゴンがこっちに向かってくるが、雲一つない黄昏色に染まりつつある空へと消えて行った。

 

~Side Out~

 

~Side 赤き龍~

 

「これだから抑止力なんて大嫌いなんです!! ブワァァァァァカァァァァァァァッ!!」

 

目的の少女が見えたのでなるべく怖がらせないようにゆっくりと少女が佇む丘の上へと近づいていると突然その少女の怒りに満ちた叫びとその叫びの内容もそうだが近寄ったことで初めてわかる少女から感じた力の正体とその異質さに思わず目を丸くし、驚きで固まってしまった。

 

(なんと!! なんなんだこの溢れんばかりの同胞たちの気配もそうだが精霊や神々だけじゃなくそれに巨人族までもの力をも感じる!!)

 

まるで反発するのではなく、共に寄り添い、支え合う様に力同士が引き合って少女の形をしている様な錯覚を覚える。

 

(それにこの者に宿る魂は今まで様々な英雄と呼ばれる物や天使達を見てきたが...ここまで強い輝きを放ち、清く、そして美しくも優しい慈愛に満ちた魂を持つ者を見たことがない!!)

 

肉体が規格外ならその身に宿る魂も共に規格外。

 

下手な天使や下級神共よりも明らかによっぽど目の前の少女の方が神々や天使にふさわしい。

 

(だからだろうな。世界は少女を認めず、恐らく世界から消えてしまった物語の修正ついでに邪魔者になりえるこの者に選ばれたとしても少女の魂の容量的に決してその力を我がものにすることが出来ない選定の剣を握らせ、魂事消し去るつもりなのだろう)

 

なんとも惜しい!!

 

素直にそう思った事に驚いたがそれよりもそんな事の為に幼いながらも既に英雄となり、様々な種族の加護と力の集合体と思えるほどの肉体を持つ事が示す物はただ一つ...

 

(比類なき未来永劫語り継がれる王の器。武と勇気によって従える覇王、恐怖によって従える冥王、願いと想いによって従える聖王等この世界にも王の器は数あれどこの少女を前にすれば何とも頼りないことか...)

 

それが分かっているのか遠い目で空の方を見ながら現実逃避する少女には見えていないようだが王を選ぶ選定の剣はこの少女と共に歩みたいと願う想いと自分に触れられてしまえば自分が認めた王を殺してしまう葛藤の板挟みに先程っから力が漏れ出て居るわ。

 

(その気持ちよく分かるわ!! この様な者など未来永劫二度とは現れぬだろう事は少し見ただけで分かるはずが世界はそれを受け入れる事どころか悪意を向けて消し去ろうとするなどふざけるなと叫びたいわ!!)

 

そんな我らの想いを感じとったのか天使共から奪い取った()()と呼ばれる天使共の話では魔術師共が作り上げようとしている紛い物ではなく、オリジナルの奇跡と神秘を起こす聖具とまで呼ばれる物がひとりでに我が手元から飛び立ち、我と聖剣からあふれ出る力と少女をまるで優しく抱擁する様に纏われていた様々な加護を吸い上げて今だに遠い目の少女の前へと飛んでいく。

 

「どうやら我は数多くの想像もつかない経験と絆と出会いの果てに神々をも従へ、王へと至る者の誕生の瞬間に立ち会えたのかもしれんな」

 

~Side Out~

 

~Side ジャンヌ~

 

それは突然私の目の前に現れました。

 

遠い目で現実逃避しながら今後どのように振る舞い、元の世界へと戻る方法を考えていたのですが突然私の身体を多分生まれた時から優しく包み込んでいた加護の温かみが消えた感覚がしたので、どこへ消えたのか気になって現実に意識を向けると目の前には黄金色に輝くゴブレットには並々と不思議な温かみを感じる無色透明の液体が入っており、まるで私に飲めと言ってるかのように目の前をふわふわと浮かび続けていました。

 

「....毒ではなさそうだけれど...大丈夫かな?」

 

「何を馬鹿な事を! その中に注がれているモノはお主が今さっきまで纏っていた加護に加え、我とそこに鎮座している聖剣の力が合わさったものだ。()()()()()には毒でしかないかもしれんがお主なら問題なく飲み干せるだろう」

 

と、敢えて視界に入れずに(その大きさから無理なんですけど気分的な問題で)触れなかった赤いドラゴンが私に話しかけてきました。

 

「えっと...初対面でいきなりそんな事言われても困惑しかしないんですけどドラゴンにそんな事を言ったところで多分無駄ですよねぇ」

 

遠い目になりながら過去に出会ったファフニールとかニーズヘッグとかドラゴンではないですけどヨルムンガルドとかこっちの話を一切聞かずに勝手に話を進めてきましたしねぇ。

 

「.....過去に我が同胞関係で何かあったようだが確かに我らは正直なところ矮小な人間共の事など例えば仮にアリが意思疎通でき、人間たちに何かを話しかけられたとしても余程のモノ好き以外は聞くわけがない。しかし中にはお主のような例外がおる! 世の中には高貴な血筋だとか我こそが勇者だとか英雄だとか抜かす阿呆が一人、二人だけならともかく、揃いも揃って同じことしか言わない馬鹿ばかりだがお主はそんな者達とは違い、本当の意味での英雄の素質だけじゃなく、王となるべき資格を持っている存在なら話は違ってくる」

 

突然現れたドラゴンは深紅の巨体と私が知る中では上位に位置するであろうことが想像できるドラゴン特有のオーラと威圧感を放っていたがその黄金に輝く、縦長の瞳はまるで欲しい物を買って貰えた子供の様にキラキラと輝き、声が弾んでいる所から上機嫌であることと邪龍ではない処か少しの会話で懐の深さとドラゴンにしては珍しい程の優しさを持っているのが分かった。

 

「...私にはその素質はあると思います」

 

だからだろう...色々と今まで溜まりに溜まった私の二度の人生においての黒い感情が溢れ、言葉となり、口からこぼれだしてしまった。

 

「...ほぉ...うぬぼれとかではないようだ。 それにお主は何かを抱えておるようだな?」

 

「私はもう、英雄になることだけはやめたんです! 確かに多くの人を助けられ、想像も出来ない高みへと至れますけど同時に誰にも理解されない! 段々と大切な人や仲間だと思って居た者達が一人また一人とどんどん私の傍からいなくなって最終的には裏切られる.....だから私は英雄になんてなりたくない!! ましてや王様なんてろくでなしの塊で保身に走り、民衆をお金を絞る道具としか見ずに女や権力ばかり欲する人間の皮を被った欲そのモノになんて英雄よりもなりたくありません!!」

 

一度こぼれ出てしまった黒い感情は止まるどころか次から次へとこぼれ落ちる。

 

「.....確かにそうじゃ。じゃが中には賢王や善王と呼ばれる者もおる」

 

「はい、そうですね。でも、そういう優しい人達は例外なく最悪の形で終わりが訪れます。例えば最愛の家族を人質に取られたり、暗殺され、ある事ない事を吹っかけて一族全てを不幸に陥れるなんて事を平然とされる王様なんてなったら最後、自分の大切な者を失う事が目に見えているので絶対になりたくありません!!」

 

「......」

 

溜め込んだものを全て吐き出すように大声で自分の思いを吐き出す。

 

「私は私の大切な者をもう、失いたくない!! 二度とあんな孤独と悪意渦巻く世界になんて行きたくないの!! でも、本当は分かってるよ。世界は何時だって残酷で思い通りになんてならずに全てを奪っていく....ここできっと私がこれを飲まなければ私自身が殺されるだけじゃなくて二度とあの暖かい場所には戻れない。それどころか私の代わりを仕立て上げられてしまう。そうなったら私と同じような辛い目にあってしまうから私は...だから...!?」

 

そう、ゴブレットに入っているモノを飲み干さなければきっと私は愛すべき今世の両親の元へと変えることが出来ないどころか私以上に絶望し、もっと酷い目に合う人が出てくる。

 

今まで考えないようにしていた....だけど...目の前に浮かぶゴブレットを見た時から確信していたから...だから...私は...

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。だからそんな思いをするのは私だけで十分!! こんな世界に踊らされるなんてもう嫌だ!! 散々躍らせてくれたよね? ....とても...滑稽だったでしょ? 必死に足掻く姿を嘲笑い、折角訪れた...努力で勝ち取った平穏も平和も何もかも台無しにし、あらゆる手段で苦しめて死に追いやるゲームだとか思っているんでしょ? 一時的にぬか喜びさせて最後の最後で一気に叩き落として絶望する姿を見るのが楽しくて仕方ないんだよね?」

 

今までの2度の人生を振り返り、やり場のない怒りや悔しさを吐き出すたびに頬を涙が伝う。

 

「私は知っている!! ノルンの三柱と共に原因を探し、見つけたモノ....カウンターガーディアン...集合無意識によって作られた、世界の安全装置と呼ばれるモノがある事を!! 人類の持つ破滅回避の祈りである()()()によって選ばれ、力を与えられた英雄は破滅を導く存在を倒すと待っているのは個が力を持ち過ぎ、星に被害が及ぶかもしれないって理由で星が思う生命延長の祈りである()()()によって因果を捻じ曲げられてもっとも被害の少ない...その者にとっては最悪の形での破滅へと導かれるって事を!!」

 

「ッ!?」

 

慈愛に満ちた目でそっと私を見つめていたドラゴンの瞳が大きく見開かられ、驚愕する気配が漂ってくる。

 

「でも...もしも...その事を知っていて...足掻く術があるとすれば? もしも...抑止力が及ぶ事が出来ない...そんな場所へと辿りつく事方法があればどうなるかな?」

 

「ま、まさか!? お主は何か知っているのか!?」

 

「神を騙し、世界すら手玉に取って全てを欺くトリックスターのロキ兄さんと共に見つけた最初で最後のトリックショーを見せてあげる!!」

 

(見ててください!! 私は皆の想いを形に変えて見せますから!!)

 

「散々世界と言うシステムで生まれたバグを人類に押し付けるだけに飽き足らず! そのバグを排除した者へ与える絶望に叩き落とすと言う最低最悪な抑止力などと偉そうに言われている貴様らの長年積み重ねた英霊たちの負の感情を清算する時が来た!」

 

2~3m当たりに恐らく守護者とか呼ばれる存在を呼んだみたいだけれどもう、遅い!

 

浮かび続けていたゴブレットを乱暴に掴み、中の液体を煽る。

 

私に向って様々な攻撃が飛んでくるけれど突然全てが止まり、色を失ったモノクロ世界へと様変わりする。

 

この世界は今だに歴史の修正が追いついておらず、あっちこっちで綻びがあるのにも関わらずに今まで確実に殺せると思っていた存在が本当は最大の脅威だと気がつき抹殺しようと抑止力が守護者を呼び寄せてしまったことによって正常な状態ではない世界に負荷がかかり、世界はまるで処理が出来ずにフリーズしてしまったパソコンの様に制止する。

 

(やっぱり...皆...凄いよ)

 

今までの経験から私は殺され、世界の象徴である世界樹を壊されることは分かっていた。

 

それでも最後まで私は人間の良心を信じ、結局は私の我が儘で最終戦争の引き金を引いてしまった。

 

(本当だったら私が殺される前にもう一つ見えていた人間達が自分たちの行いを見直し、少しずつ変わって行く未来の方が確率は圧倒的に高かったはずだったのに不自然に悪意が伝染していった。その時点でオーディン父さんが気がつき、ノルンが運命に介入した不自然な痕跡を見つけたことで抑止力の存在を見つけたんだよね)

 

だから皆で抑止力に察知されずらい次元の狭間でアイデアを出し合って最後はもしも私が死んでしまって転生した私を異物として排除しようとしたのならその時になって初めて思い出し、考えないようにしつつもどこか引っ掛かりを覚えるように記憶を封印し、抑止力を欺けそうなタイミングが揃い、その封印を解除するパスワードをロキ兄さんは私に教えずに設定し、感情に任せて「()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。」とダルキアンの時に真っ黒な感情に飲まれた時に散々自傷する様に言っていた言葉を言葉にした時に封印が解除されるように設定してくれた。

 

(そして皆の力で作られた私の肉体は神秘その物! 私の魂の器は既にいっぱいだけれど私の新しいこの皆の絆と想いと願いの結晶で出来た肉体はこの時の為に存在するのだから例え人間をやめる結果になってしまったとしてもこれ以上せめてこの世界では悲劇に巻き込まれる英雄が出ないようにする!)

 

意を決して止まった世界の中でこの肉体に宿る神秘であるほんの僅かの時間全ての理から外れる概念が発動し、代償として2つの英雄と今世の私の魂にひびが入り、もう少しすればこのままではすぐに砕けてしまうだろう。

 

(ッ~~~~!? 物凄...く...痛いけど...だけど!)

 

力強く痛みに耐える様に目を閉じ、一滴残らずゴブレットの中身を飲み干すとゴブレットはその色を純白へと変わり、光の粒子となって私の中へと消えて行った。




かなり無茶苦茶な内容になっていると思いますが後々にどうしても抑止力相手に必要な事だったので書かせて頂きました。

不快に感じる方など居ると思いますが大目に見てくださると幸いです。

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