ハリー・ポッターと悪魔の双子   作:ボルヴェ

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やってきましたクィディッチです。
視点はハリー、ダンテ、バージルの三視点ですが基本的には毎回こうなると思います。固定できれば分かりやすいのですが…。


初戦の相手はラスボスでした

 sideハリー

 

 

 

 やあ皆、僕はハリー。

 今日は待ちに待ったクィディッチの試合なんだ。オリバーが張り切り過ぎて試合前なのに頭の血管ぶち切りそうなレベルになってるけど何の問題もないよね!

 ロンとハーマイオニーも僕がシーカーに選ばれた事を満面の笑みで喜んでくれた。……同時に初戦の相手がバージルって言ったらその笑顔が嘘のように消え去って必死に安否を確認された。大丈夫、ダンテだってバージルは相手選手に危害を加える奴じゃないって言ってたから。……ただ速すぎてスニッチ見つけた時の最高速度で真横に飛んでた選手が風圧によって少々吹き飛ばされただけだから。

 

 

 

 

 

 「……ハリー顔死んでるな」

 「ありゃヤベェな。これから戦場に駆り出される兵士の顔だ。死を悟ってやがる」

 「うおおぉぉおあああ! 行くぞグリフィンドール! 狙うは優勝だぁぁぁあ!」

 

 

 雨天中止? な訳ないだろ快晴だ。

 

 

 

 

 

 

『さぁ始まりますグリフィンドール対スリザリン! 今年もクィディッチの季節がやってきた! 注目すべきはグリフィンドールの新シーカー、ハリー・ポッター! 一年生でシーカーに抜擢されるという期待の新人だ! ……そんな彼と対するは"校内最速"シーカー、最高速度はプロ選手さえ凌駕するのではないかと囁かれる男ではあるがまあ……いけるぜハリー! 初戦でこれはちょっと……とか思ったけど行けるぜ!』

 

 

 「フォローになってないから」

 

 

 リーの身も蓋もない解説を聞きながらハリーは死んだ目で力のない突っ込みを入れていた。出だしは全力で無理してポジティブを気取っていたが、実際の彼の心はどんより雨模様である。こんな雲一つない空だけれども。

 

 しかし泣きべそばっかり言ってられない。男なら戦わなければならない時がある。それが今なんだ! ……多分ね。

 

 「そうだぜ、男なら一つ格好いい所見せろよハリー」

 「平然と心の声に返事しないでよ……」

 

 後ろでケラケラと笑うダンテをジト目で見やる。余裕綽々だ。慣れた表情であるグリフィンドールのエースはハリーの肩を軽く叩いて、

 

 「前にも言ったろ。緊張する必要なんかねぇ。寧ろ初戦でジャイアントキリングが出来るチャンスじゃねぇか。気張れ気張れ」

 「他人事みたいに……」

 「実際お前の問題だからな」

 

 確かに、とダンテの言葉にそれ以上反論する事は叶わなかった。その通りだ、シーカーは僕しかいないし、これはダンテの問題じゃない。僕がやるしかないんだ。

 箒に跨る。緊張はもうし過ぎて感覚が麻痺してきた。ダンテの言うジャイアントキリングなんて考えてられない。まずはチームの皆に迷惑が掛からないようにしないと。

 そんなお堅い事を考えているハリーに、ビーターのウィーズリーコンビがバン、とダンテに続くように背中を叩いた。

 

 「おうハリー、いっちょ前に緊張してるな?」

 「安心しな、スリザリンの奴らも暴れ球も、ハリーに掠りさえさせないぜ」

 「「だから全力で行ってこい」」

 「……突然のイケメン発言は控えてもらえると助かるよフレッド、ジョージ」

 「実際イケメンだから仕方ない」

 「んでハリー、準備はいいか?」

 

 試すような双子の顔に、僕も負けじと口角を上げてみせる。わざわざ僕の緊張を解してくれようとしている、根は優しい悪戯兄弟に。

 だから僕もそれに答えたいと思う。少し強がってみる事にしよう。

 

 

 「ジャイアントキリングの用意はバッチリ出来てるよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『試合開始!』

 

 

 

 一斉に飛び上がる。

 スニッチを掴むことの出来るシーカーという立場はどう考えても最も敵チームから狙われやすい存在であり、フィールドど真ん中でつっ飛んでたりでもすれば一瞬でブラッジャーの餌食になるだろう。その為現在ハリーはフィールドの端でスニッチの出現を待っていた。下ではウィーズリー兄弟がこちらに突撃してきたブラッジャーを跳ね返している。

 

 いざ飛んでみると緊張なんて吹き飛んでしまった。そんな事を考えている暇があればブラッジャーとスニッチを警戒しなければ。

 相手方のバージルもそうしているだ……と思いきや彼は堂々とフィールドの右真ん中辺りを占領し、挙句瞑想の如く目を瞑ってつっ飛んでいる。ブラッジャーとクアッフルの飛び交う中そんなことをするなんて銃撃戦の戦場でお昼寝するようなものだ。何を考えているのだあの人は。

 ハリーの悲痛な胸の内など届くわけがなく、言わんこっちゃないとブラッジャーがバージルの顔面目掛けて飛んでいく。思わず目を瞑ろうとしたが、

 バージルは少し首を横に傾けただけでブラッジャーの襲撃を避けてしまった。

 

 「ええ……」

 

 もうそういう驚きはダンテで十分なのだ。なんなんだこの双子は。若干呆れ混じりの視線を送っていた。その瞬間、

 

 自身の下方、グリフィンドール側のゴール付近から投げられた一つの超スピードクアッフルが、スリザリン側のゴールに突き刺さった。

 

 実況も、応援席も、選手も全員が静まり返った。

 

 このような理不尽極まりない行為をする輩など最早確認を取らずとも分かる。もう驚かないからね、とその張本人、ボールを投げたであろう赤いローブを纏った銀髪を見やる。

 

 「……悪ぃなバージル。今日はウチの新人シーカーの初陣なんだわ。全力で行くぜ」

 

 緑のローブを纏った銀髪に不敵な笑みを浮かべて宣戦布告をしているダンテの姿があった。

 

 

 

『グ、グリフィンドール先制!!10-0!開始早々、目の覚める一発が飛び出たァー!』

 

 

 

 歓声が上がる。叫び声の響き渡るフィールドで、挑発を受けたバージルは青筋を浮かべ───る事無く、ダンテに答えるように笑みを浮かべた。恐らく彼をよく知っている人物なら凍りつき驚愕するだろう。あのバージルが笑っただと、と。

 

 「……たまにはお前の遊びに付き合ってやろう」

 

 

 ハリーは確かに見た。ダンテとバージルの笑みの内に、人間では遊びで済まされないような(悪魔のような)狂った闘争心を。

 

 

 何で僕はさっき、勢いに任せてジャイアントキリングやってくるなんて言ったのさ。あれは流れが悪かった。つまりフレッドとジョージのせいだ。

 などとどこか冷静に考えているハリー・ポッター11歳は悟った。

 

 彼等に巻き込まれる、それ即ち、死。

 

 

 

 

 

 しかしそれ以前に、ハリーの今日最大の危機が訪れてしまった。

 

 「…うわっ、え!?」

 

 杖が、暴れだした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 sideバージル

 

 

 新しいシーカーに興味が無いわけではなかった。

 一年生でマクゴナガルの推薦で選ばれるような存在。一体どのくらいやれるのか。だから、貴様の挑発に乗ってやろう。そのつもりで口角を上げて答えてやった。

 どうやら自身の行動が予想外だったらしいダンテは引き攣った顔でこちらを見ている。大体はこの表情が逆な場合が多い為気分は悪くなかった。

 

 手始めに奴が再び投げ込んできたクアッフルを箒を回転させて穂先で上に弾き、味方のチェイサーに放り投げながら相手の出方を窺う。

 遊びに付き合うとは言ったが、今回は新シーカーの実力を測りたいというのが本音であった。相手の実力も分からないままさっさと試合を終わらせてしまうのは何ともつまらない。

 

 だが肝心の新シーカーは箒に振り落とされる一歩手前の状態となっているのを見て、バージルは思わず怪訝な表情となった。所詮は箒の扱いもろくにできないただの一年生なのか。しかし何か妙な雰囲気に、表情はそのままで目を細める。

 

 そして気付く、あの一年の箒から感じる彼のものではない他人の魔力に。

 

 第三者からの干渉を受けているなど明らかだった。余計な事をしてくれる。一体誰がと顔を上げて全方向を、フィールド観客席全てを睨みつけるように見渡した。そして悪魔(バージル)の眼はある二点を導き出す。

 教師用とされる観客席。そこで一心不乱に呪文を唱える、二人の人間を。

 

 

 

 

 

 

 

 sideダンテ

 

 

 

 実に楽しそうな表情をした我が兄鬼がこちらを見て笑っている。もう一度言おう、笑っている。

 笑っているのだ。バージルが笑う?吉兆の筈がない。挑発したのはこちらだ。だがまさか乗ってくるとは思ってなかった。いつものちょっとコツいてやろうレベルだ。

 

 挙句こちらの二撃目をいとも簡単に防いでチェイサーにボールを回してしまった。おかしい、今のは結構力を込めて投げ込んだはずだ。箒の穂先で受け止めて流せるような威力ではなかったが。

 そのような疑問も結局、相手がバージルだからで済ませられてしまうところ恐ろしい兄だと、自分の事を棚に上げたような思考をせずにはいられなかった。

 

 これはもしや面倒な事をやらかしてしまったのかもしれない。悪いハリー。骨は拾ってやる……。

 

 などとそのハリーを見ると、何故かさっきまで安定した飛行を見せていた彼が今や腕のみで箒に縋り、落下寸前で振り回されていた。

 初めは錯乱しているのかと思い、しっかりしろと言いそうになったが直ぐに口を閉じた。妙な箒の動きだ。そしてダンテは確かに、ハリーの箒から発される彼のものとは違う魔力の影を見た。

 

 しかし誰が?このフィールドと観客の生徒数を考えると即急に犯人探しをするのは難しいが、

 

 「ダンテ!」

 「!」

 

 聞き慣れた声のする方に視線を向ける。やはりバージルだった。兄はさっきと打って変わり険しい表情を自身に向けると、クイッと何処かを顎で示した。

 その先は教員用の席な筈だ。何故今、と疑問に思いつつ言われた通りに目線を移し思わず眉を顰める。視線に先にいたのは、何やら忙しく呪文を紡ぐ二人の姿だった。

 ああ成程。どちらかが元凶か。彼等の口の動きの一部を切り取る限り、あのデカ蝙蝠男、スネイプの方は呪文妨害の詠唱の様に見える。消去法で言わば犯人はもう一人の奴なのだが、如何せんクィディッチの選手である双子が止めに行くことは難しい。どうする、試合を中止させてハリーを助けに行くか。

 

 そんな悩むダンテの視界に、己の方に殺人級のスピードで接近する一つのボールが入った。ブラッジャーだ。

 ふと閃く。大分乱暴な手段であり危険な行為であるが、他に方法がなかった。仕方がない。その目に迷いはなかった。そして、

 

 「悪いな、止めろよ!」

 

 迫るブラッジャーを箒に乗ったまま、まるでサッカーボールの様に教員席、呪文を唱える男目掛けて蹴りつけた。

 

 歓声と騒めきが上がる。同時に教員席から小さな悲鳴が上がり、そのままボールが突っ込みそうに…なる前に、マクゴナガル先生の盾の魔法によって防がれた。

 流石センセーと心の中で拍手を送るが、本人は杖を握りしめたまま信じられないという顔でこちらを見ていた。これはまずい、随分怒っていらっしゃる。

 

 「ダンテッ! 何ということをするんですか!」

 「悪い、狙い先が狂ったんだよ。わざとじゃないしセンセーが止めてくれたから結果オーライな」

 

 ブラッジャーを蹴って追い払うという前代未聞の行為と、その後気の緩むようなマクゴナガル先生とダンテのコントじみたやり取りに、何が起きたのかわからないリーはやっとの事で意識を戻して興奮気味に実況を再開する。

 

 

『ダ、ダンテがブラッジャーをキックで追い払った! 流石獅子寮のイレギュラー! 我々が予想し得なかった事を息をするようにやってみせた!』

 

 褒められた行為ではない分妙に煽られている気分になるが、今はどうでも良かった。ハリーに目を戻すとその箒に掛かっていた魔力は無くなっている。呪文が解けたのだ。

 制御の利き始めた箒に無事乗り戻ったハリーの姿に安堵し、バージルへと顔を向ける。即座に魔力の元を見つける辺りさすが我が兄である。だが目利きが過ぎているとも思う。何故あの短時間で元を割り出せるのだ。

 しかしまさか相手方のシーカーの為にスニッチ探しを中断してまで元凶を探してくれるとは。普段冷徹な雰囲気を持つ男とは思えない行動が少し面白い。

 

 などとダンテが考えているのか分かっているのか、バージルは小さく溜息を落として自身に背を向けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 sideハリー

 

 

 箒の暴走が止まった。

 チャンスだと、一心不乱に体を持ち上げて箒に跨る。本当に一度は死ぬかと思って肝を冷やした。三途の川を11歳で渡るなんて絶対に嫌だ。

 

 しかしこれでやっと試合に参加できる。ホッとしてスニッチを探す為に顔を上げると、金の残像が視界の中央を通り過ぎた。

 硬直する。そしてもう一度金色が映りこんだ。今度は残像なんかじゃない。目の前に本当に本物の、スニッチが。向こうから現れるなんて運が良すぎると、条件反射で素早く手を伸ばしたが嘲笑うようにするりと避けられた。

 どうやら姿を現しただけで捕まる気は無いらしい。

 

 「ッ! そんな簡単に行くわけないか!」

 

 まるでついてこいとでも言うように自身の右方向へと消えていくスニッチを見失わないように目を凝らして、もう暴れることの無くなった箒を強く握りスニッチの後を追う。視界の端で、銀髪と靡く緑のローブが見えたのも殆ど同時だった。どうやらもバージルも動き出したらしい。

 

 さあ、恐らく人生最大に並ぶかもしれない試練の始まりだ。

 

 

 

 

 

 

 

 箒で全速力を出すというのは変な感覚だと、目の先で疾行するスニッチを追いながら思う。

 まず自分の足で走るのとは全然違った。純粋なスタミナが減るだとか心拍数が上昇して呼吸回数が多くなるとか、そんな事は全くない。精神力という意味では疲労するだろうが。

 だからこういう、もっと早く飛びたい時に疲れる事もなく、しかし手段のない瞬間というのはとてももどかしかった。

 

 そんな僕の葛藤を知ってか知らずか、スニッチは高速飛行の反動などものともせずに直角に左折する。一瞬で視界から消えた標的に思わず驚いて息が詰まったが、歯を食いしばって勢いを流しながら同じく左に曲がった。

 

 ブレた視界に映ったのは、先程直角に曲がったスニッチにまるで進路を予測していたかのように手を伸ばすバージルの姿だった。思わず目を見開く。

 早すぎるのだ。スニッチに気付いたのは確かにハリーの方が先だ。その上直ぐに離れたとはいえ距離も自身の方が近かった。それから数十秒と経っていない。なのに何故先に動き出した自身よりも先にスニッチとの距離を縮められているのか。

 最早"バージルだから"、としか言いようがない。

 

 しかし今回のスニッチはしぶといようで。伸ばされたバージルの手をひらりと躱すと、再び方向を変えて一気に下降した。空振った指先を睨みつけたバージルの舌打ちが聞こえる。それに構わず一気に高度を下げた。

 下手をしたら地面に激突して死を見るような行為であるが、相手が相手なので構ってもいられない。この時点でハリーは、ダンテが言っていた無茶をするなという忠告など完全に忘れてしまっていた。

 

 地面のギリギリを滑るように飛行しながら目の前のスニッチを視界に捉える。同時に自身より少し先、上の方でバージルだと推測できる影も確かにいる。恐らくスニッチが上昇する方向を予測して捕獲を試みようとしているのだろうが、ふと冷静になって彼の行動に違和感を感じた。

 あの速度なら、またダンテが言うような飛行技術であるならこんな低空飛行など簡単に実行してスニッチを捕まえる事が出来そうだと。

 自分、つまりは敵シーカーもスニッチを視認しているというのに、まるで彼はこちらの次の行動を窺うように後手に回る。勿論容赦は無いのだが。

 

 しかし自分にバージルの考えなど予測立てる余裕など無い。がむしゃらに先の金色を追う。何の根拠もないのだが、もしこの機会を逃してしまったら、次の瞬間にバージルが掴んでしまう気がして、───この程度かと見切りをつけられてしまいそうな訳の分からない感覚が過ぎって、何故だか分からないけれど、それだけは嫌で仕方が無かった。

 もう少し、箒にしがみついているだけじゃ届かない。先の事なんてどうでも良かった。箒に足をかけて、ゆっくりと体を持ち上げる。何とか体のバランスを保って綱渡りのように立ち上がった。観客席もフィールド内も一層騒がしくなったような気がするが、まるで水の中に入ったかのように何処か遠い。

 あと、もう少し。僕は指の先にも伝わるように力を込めて手を伸ばし、

 

 箒から、転げるように落ちた。

 

 

 

 

 

 

 sideダンテ

 

 

 

 「やっぱ無茶するよな……」

 

 一瞬であったが、凄まじいシーカー対決であったと言える。やはりというかホッとしたと言うか、バージルはまるでハリーの実力を試すが如く後手に回っていた。今ハリーが見せた箒の上に立ってみせるなんて常人じゃ危険過ぎる行動を見せる前も、恐らくあの場面で気概を見せなければ次の場面でバージルにスニッチを奪われていた事だろう。そう何度もチャンスを与えるような兄ではない事はよく分かっている。

 それより、クィディッチの説明をした時に無茶をするなと重ねて言ったはずだがやはりハリーには効かなかったようだ。殆ど予想通りではあるが、まさか箒に足をかけて立ち上がるとは思わなかった。どう思えばそんな発想に至るのか。

 

 そして案の定箒から転がり落ちたハリーの元へ急降下する。勿論彼がスニッチを持っているかの判別がつかない以上箒からは降りることが出来ないのだが。

 しかし突然、ハリーが嘔吐き始める。まさか転落した当たりどころが悪かったのか。流石にもう構ってられずに彼の近くに降り立ち、口元を抑えるハリーの背に手を回しながら表情を確認しようとして、

 

 「っ、」

 

 その口の中から金色のボールが吐き出されたのを見た。

 

 思わず目を見開いた。初めは何が起きたのか分からなかったが、どうやら彼は転落直前にスニッチを手に収めるどころか飲み込んでしまったらしい。とんでもない奇跡である。というかラッキーボーイ過ぎる。

 同じく呆気に取られたハリーの顔を見て、ダンテは彼と同時に笑い、叫び。11歳の、今力強い飛行を見せていたとは思えない小柄な体を抱き上げて歓喜した。

 

 「ダンテ!」

 「良くやった、ハリー!」

 

 

 観客席の声が、爆発したかのように上がった。

 

 

『ハ、ハリー・ポッター、スニッチを掴みました! 初戦にしてあのスリザリンのバージルを相手取り、200-30! グリフィンドールの勝利です!』

 

 

 興奮半分放心状態のハリーを下ろしてバージルを見やる。箒に跨ったままこちらの様子を眺めるその表情は相変わらず無愛想だったが何となく満足そうではあるような、気がする。

 どうやら本当にハリーを試していたらしい。あの様子なら御眼鏡に適ったみたいだ。これからが大変かもな、とハリーの今後のクィディッチ生活が少々不安になるが、今はまだ今日の勝利に浸ろう。

 

 そうダンテは、続々と降りてくるチームメイト達と共に歓喜を上げる生徒達へスニッチを掲げながら満面の笑みを浮かべるハリーに視線を戻し、いつもの通り頭に手を置いて、その黒い髪をくしゃりとかき混ぜ乱暴に撫でた。

 

 

 

 

 

 こうして、ハリーのクィディッチ初陣は幕を下ろしたのだった。

 




普通にバージルが勝つと面白くなかったのでハードルを下げることでハリーの初勝利を! ということにしました。
原作を考えるとバージルが人に勝ちを譲るとかまず有り得ないですからね。書いた自分も誰だこいつとはなりました。

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