火曜日が一番朝ラッシュが混んでいる気がするのは気のせいでしょうかね?どうでもいいですけど。
では少し前回から時間を巻き戻したところから、パパス目線で本編スタートです!
パパスとリュカがカールとカリンの姿を視界に捉えた時、カリンの左脹脛から鮮血が噴き出した。
「カリン!?」
カリンの悲鳴が響く。しかし、まだ生き残っていたとげぼうずがカールに向かって飛びかかっていた。そして、驚くべきことに、左足を貫かれたカリンが右足の力だけで立ち上がり、とげぼうずを阻止しようとしていた。
「リュカ!そこの影にセミモグラが1匹隠れている!」
そう叫ぶや否やパパスは自らの剣をとげぼうずに投げつけた。剣は過たずにとげぼうずの腹に突き刺さり、とげぼうずは大きく軌道を反らして墜落した。リュカも指示通りにセミモグラを倒した。
それに気づいたカリンはこちらを向いて安堵の笑みを浮かべると、緊張の糸が切れたのか意識を失って倒れ込んでしまった。
「カリン!」
パパスは慌てて駆け寄ってホイミをかけ、左足の傷口を塞いだ。リュカがカリンを抱え起こす。
「疲れているのだろう。寝かしてあげなさい。」
カリンを起こそうとしたリュカをそう言って止め、パパスは俯いているカールに向き直る。
「私はとんでも無いことをした。まだ7歳の女の子をこんな危険な目に合わせるなんて………。」
「カール殿…………」
「ああ、パパスさん、戻って来てたそうだね。挨拶が遅れて申し訳ないよ。だが、本当に罪深いことをしてしまったな。ユリーナに申し訳が立たんよ。」
「違うよ、カールさん。」
リュカが後悔するように言う。
「僕が悪いんだ。僕が洞窟に入ろうって言ったから。僕が悪いんだよ。」
「いや、それも違うな。」
パパスは2人を落ち着かせるように言う。
「カール殿が洞窟から出られなくなったことは仕方のないことだし、それを救おうとしたカリンとリュカの行為は勇敢で正しかったと言える。そして、この状況下になっても、リュカは私を呼ぶために必死で洞窟内を駆け抜け、カール殿はカリンとダンカンのために薬草をすり潰し続け、カリンは戦い続けた。それぞれが最善を尽くしたからこそ、誰1人死ぬことなく帰れるのだからな。」
「でも、やっぱりカリンには敵わないや。父さん。見てよ、ここの地面を。」
文字通り地面の至る所に魔物が落としたゴールドとカリンが放った矢が散らばっていた。
「よし、引き揚げるとしよう。リュカ、手近に落ちている矢を4、5本くれ。カール殿の足の添え木にする。それからここのゴールドと矢を回収しよう。全て、カリンの手柄だからな。」
すると、パパスが洞窟の奥へ駆け込んで行ったのを訝しんだサンチョが現れた。
「旦那さま!この金貨と矢の数はいったい………?」
「おお、サンチョか!丁度良い。少しカール殿の手当てをしてやってくれ。骨折をしている。事情もカール殿から聞くといい。私はリュカとこの矢とGを回収しよう。」
サンチョは手当てをしながらカールからあらかたの事情を聞いた。
「そうですか。カリンちゃんが………。本当に不思議な子ですな。料理もいとも簡単に作れば、誰かのために命を懸けて戦い抜き、こんなにも安らかな寝顔を見せるとは………。」
「本当にそうだな。私が駆けつけた時には鬼神のような形相で戦っていたというのに。それに、見ろ。魔物が怯えて全く近寄ってこない。」
岩陰や草陰に魔物がいることはわかるが、全く近づいてくる気配はない。
「本当だ!みんなカリンに怯えて岩陰に隠れちゃってるや。」
「よし、あらかた終わったな。では、戻るとしよう。」
「今日はカリンちゃんの誕生日だというのに、主役がこれでは………どうしましょう、旦那さま。」
「いや、主役を抜いてパーティーなどしたくはないし、後日に延期するのも筋が違うだろう。カリンが起きるのを待とう。リュカも昼飯を食っていないだろうが、今回の懲罰に丁度良いだろう。わはははは!」
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洞窟を出た時にはすでに夕暮れ時だった。まずパパスはカールを工場に送り届けた。
「本当に世話になったな。申し訳ない。」
「それはそうとこの後カリンが目を覚まし次第カリンの7歳の誕生日パーティーを開くのだが、お越しになるだろうか?」
「いや、私はそこに出席できる資格はありませんよ。なんせ、ダンカンさんのために超高速で薬草を作らなければならないのでね。明日の朝にはお届け出来ますよ。」
「それは招待する訳にはいかんな。ダンカンのため、よろしく頼む。」
「分かりました。」
サンチョとカリンとリュカとは別れてパパスはダイアナとビアンカが滞在する宿屋へ向かい、ダイアナに事の次第を説明した。
「カリンはやっぱりユリーナそっくりだね。昔、あたしが風邪を引いて、まだ若手だったカールが丁度留守にしてて薬がなかった時に、あいつったら1人で洞窟に潜って薬草を取って帰ってきたことがあったんだよ。」
(それはたまたまユリーナとカリンの性格がよく似ていたためであるのだが、それでもやはりこの親子には不思議な縁を感じざるを得ないな。)
そして、そのままダイアナとビアンカを連れてカリンとパパス一行の自宅へと帰った。
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カリンが目を覚ますと、いつの間にか自分のベッドで寝ていた。窓の外を見ると、日は完全に落ちていたが、まだ西の空がぼんやりと赤かった。カリンは自分の置かれている状況を推測し、概ね正しい答えを導き出すと、階下から漂ってくる食べ物の匂いに釣られて階段を降りた。
「「カリン、7歳の誕生日おめでとう!!」
「えっ、あ、そういえば今日か。ウチの誕生日。」
「わはははは。カリン、そんなことも忘れていたのか?お前の弓は武器屋の店主が手入れをしておいてくれるそうだ。これで一気に村の英雄だな。カリン。」
「カリン、あんたは他人の為に無茶し過ぎだよ!心配する方の身にもなってみな。まったく、そんなところまでユリーナに似なくてもいいのに。」
「カリン、あのフロアでカリンがやっつけた魔物が落としたGと使えそうな矢だよ。Gにはそれまでにやっつけた分の半分も入ってるから、合わせて137Gだよ。」
「カリン、今度はあたしも混ぜなさいよね。カリンに襲いかかる魔物は全部あたしがやっつけちゃうんだからね!」
「カリンちゃん、今宵はこのサンチョが腕によりを懸けてご馳走をご用意しましたから、心行くまで食べてくださいね。お昼ご飯を食べてないからお腹も空いているでしょうし。」
「みんな、心配懸けてごめんなさい。じゃあ、無事にダンカンさんの薬が調合できそうなのと、私の7歳の誕生日を祝ってくれるみんなに感謝の気持ちを込めて、手を合わせて!」
今日は全員が合掌した。
「いただきます!」
「「いただきます!」」
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その頃、死者の国では、また閻魔がへいこら頭を下げていた。
「いや、ほんまにごめんなさい。」
「いや、いきなり謝られても意味不明なんでゆっくり事情を説明してくれませんか?」
「いや、あなた、本当はあと15年は生きるはずだったんですよ。」
「それでも46歳かい!」
「そう、46歳で自分の子供を庇って事故死するはずだったんですよ。でもね、さすがにストレス性の病気に罹られるとそうなってまうんですわ。何もあなたを責めてる訳じゃありませんよ。何の罪もないあなたを営業成績が良いからって勝手に妬んで社内で虐めてた連中が全て悪いんですからね。あそこまでやられるとどんな人間でも限界が来ますわ。失敗の責任は全て押し付けられ、犯罪者にされかかれ、ホームからも一回落とされてるでしょ。」
「確かに、客観的に見ると私よく耐えましたよね。」
「それに弱音を吐かずに頑張ったけど過労による栄養失調。安心してください。あの会社、あなたの件が世間にバレて今ヤバいことなってますから。」
「…………。」
「話を戻しましょう。ちょっと確認しますね。
武田
「どうかしました?」
「あのですね、湯川美咲さんってご存知?」
「ええ。高校時代は親友でした。でも7年くらい前に事故で………。」
「実はですね、彼女、別世界で人生やり直してるんですよ。」
「えっ…………。」
「会いたく、ありませんか?」
「…………はい。」
こうして、歴史には残らない新たな異分子が、伝説を築くピースとして、現代日本から送られて来たのである……。
転生者追加です。風化してきてますけど、電○の事件、やばかったですよね。修学旅行で東京に行った時に「あの○通の本社や!」って皆んな盛り上がってたのが印象的です。就職先選ぶのは慎重にならないと………。ちなみに中小企業は今人手不足らしいです。
<次回予告>ドラゴンクエスト5の世界に転生を果たした桃華は、驚きの姿になっていた。一方でカリンはダイアナとビアンカを送り届けるために人生で2度目のアルカパ訪問を実現させていた。果たして2人はこの異世界で再会できるのか?
次回 第9話「時空を超えた再会」
賢者の歴史がまた1ページ