DQ5 天空の花嫁と浪速の賢者   作:かいちゃんvb

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第55話 天空の盾との邂逅

新たにJPを加えて人間4人、元人間含めた魔物6匹、その魔物のうち1匹に乗った妖精1人の奇妙なパーティーが、ビッグアイ、ドロヌーバ、デススパーク、金髪赤服腐った死体・リビングデッド、翼を持った緑色のトカゲ・ヘビコウモリなどの魔物をなぎ倒してトンネルをぬけ、1日西へと進んで10月7日昼前ごろ、ついに目的地であるサラボナに到着した。

 

「ほー、ええ雰囲気の街やな〜〜。」

 

いつも通り、馬車の中に魔物たちを残してリュカ、カリン、ヘンリー、ヨシュアの4人がサラボナの街に入った。街の入り口は東側に位置しており、そこからは幅の広いメインストリートが続いている。メインストリートの北側には大きな宿屋が、南側は武器屋やその他の商店が建ち並んでいる。メインストリートは街の中心部に続いており、そこには巨大な噴水が水飛沫を上げている。噴水の北側にはこれまた大きな教会があり、南にはまた通りが続いていた。武器屋防具屋でいつも通りの買い叩きを済ませた一行は、早速ルドマンと面会するべく街の北東に位置するルドマンの巨大な屋敷を訪れた。

 

「ワンワンワン!!」

 

カリンが大きな玄関ドアをノックしようとしたその時、リュカ達に向かって1匹の巨大な白い犬が駆け寄って来た。犬はそのままリュカに飛びつき、尻尾をブンブンと振ってリュカの顔をベロベロと舐め回し始めた。

 

「あはははは!くすぐったいなあ。」

 

「おー、すげぇーくいつきじゃねぇか、リュカ。お前ってホントに人間以外の生き物に好かれるよな。」

 

「しかし、こいつはどこの犬なのだ?ここの屋敷のだろうか?」

 

「首輪付いてるから、野良ちゃうなぁ。犬種はセントバーナードやな。ウチもモフモフしたいわ〜。」

 

「す、すみませ〜〜ん!!」

 

すると、街の西側の方から蒼い髪の女性が駆けてきた。遠目から分かるほどの美人で、いかにも良家のお嬢様といった雰囲気が滲み出ている。その手にはリードが握られており、どうやらこの女性がこの白いセントバーナードの飼い主であるようだ。

 

「リリア〜〜ン!旅人さん困ってるでしょ!」

 

「へぇ〜〜、君、リリアンって言うんだ。おお〜、名前呼ばれてまた興奮しちゃったの?しょうがない子だなぁ。」

 

リリアンはリュカに名前を呼ばれたことが嬉しかったのか、もはや尻尾はもとより尻を盛大に振ってリュカに甘える。それを見て青い髪の女性は驚いたようだ。

 

「まあ!リリアンが私と姉さん以外に懐くなんて、初めてのことですわ!」

 

ここで、カリンが話を変える。

 

「失礼ですが、あなたは?」

 

「はっ!私ったら、お客様の前で自己紹介もしないなんて。私はフローラと言います。あなた方は?」

 

「このリリアンちゃんに懐かれてる紫ターバンの男がリュカ、槍持ってるこの人がヨシュア、ウチがカリンで、この緑頭がウチの旦那のヘンリー。あんたが結婚相手探してるっていうルドマンの娘?」

 

「はい、ルドマンは私の父ですが………あなた方も試練を受けに?」

 

「いや、ちょっとルドマンさんに聞きたいことがあってな。」

 

「そうでしたか。では私がご案内いたしますわ。どうぞ中へ。」

 

フローラはリリアンにリードをつけて犬小屋に繋ぎ、一行をルドマンの屋敷に迎え入れた。玄関ホールには侍女が2人おり、そのうちの年長の方が驚いてフローラを制止しようとする。

 

「フローラお嬢様!試練についての説明はお昼を過ぎてからでございますよ!」

 

「いえ、この方達は結婚希望者ではないようです。」

 

「そ、そうですか。旦那様なら居間にいらっしゃいましたわ。」

 

「はい。」

 

一行はそのスペースだけで家が一軒達そうな広いホールに通された。部屋の中心にある豪奢なソファーには頭頂部が禿げ上がった50歳くらいの男が紅茶を啜っていた。

 

「お父様、お父様にお会いしたいというお客様が見えられましたわ。」

 

「ん?結婚の申し込みなら昼からのつもりだが?」

 

「いえ、どうやら別件のようなのです。」

 

「そうか。まあ、取り敢えず話を聞こう。」

 

フローラは一礼してリビングを後にし、リビングにはルドマンとリュカ達の5人が残された。

 

「それで、話というのは?」

 

リュカが答える。

 

「実は僕たち、天空の勇者を探して旅をしてるんですよ。」

 

「ほう、天空の勇者を。」

 

「旅を続けるうちにあなたが天空の盾を持っているという噂を聞きつけまして、ここを訪ねたのですが。」

 

「天空の盾か。それならそこにかかっておるだろう。」

 

リュカ一行がルドマンの指し示す方向に顔を向けると、竜の装飾を施した見るからに美しい盾が壁に掛けられてた。

 

「もっとも、天空の盾かどうかは知らんがな。先祖代々から伝わる由緒あるものであるというのは確かなのだが。」

 

リュカはその盾に歩み寄りながら、馬車から持って来ていた包みを開けて天空の剣を取り出し、天空の盾にかざした。すると、二つの装備が共鳴して美しい光を放ち始めた。

 

「どうやらこれがビンゴやな。」

 

「みたいだね。」

 

「お、おいお前たち!」

 

「はい、なんでしょう?」

 

今度はヘンリーが応対する。

 

「その剣は………?」

 

「天空の剣です。」

 

「ふむ。天空の勇者を探しておるそうだな。」

 

「そうですが。」

 

「詳しく話を聞かせてくれ。」

 

ヘンリーはここに至るまでの経緯をざっと話した。

 

「よし、決めた!そこの紫ターバン、確かリュカとか言ったな。お主、フローラと結婚せんか?」

 

「は、はい?」

 

リュカが驚きのあまりに素っ頓狂な声を上げる。

 

「もし結婚するなら、その盾はお前に進呈しよう。」

 

「は、はあ。」

 

「どうだ、悪い話ではないだろう。」

 

「ちょっと待ってください。僕は流浪の身ですよ?フローラさん幸せにできないかもしれないですよ?」

 

「じ、実は今回の結婚相手を決めるのだってしたくはないんだ。だが、フローラが花嫁修行から帰ってきた途端にあちこちの王家やら貴族やら大商人やらから毎日のように縁談を持ちかけられてな。ワシはフローラには自由に生きて欲しいんだが、ついに商売に圧力がかかり始めてな。無理難題を出して煙に巻いてるというわけだ。」

 

「娘想いのいいお父さんだとは僕も思いますが、やはり僕はフローラさんを幸せにできる自信がありませんし、ここで僕なんかと結婚する方が、かえってフローラさんを不幸にすると思います。ですから………」

 

「そうだな。君の言う通りだ。済まなかったな。どちらにせよ、この盾は進呈する。これで伝説の勇者を探すといい。」

 

「いえ、今は所在がわかっただけで充分としておきます。また勇者を見つけたら取りに参上しますので、それまで預かっておいてください。」

 

「そうか、ではこのルドマン、責任を持って預からせていただこう。それに、何か困ったことがあったら何でもワシに言うといい。できる限り力を貸そう。」

 

「では我々は宿屋でしばらく英気を養っているので、何かあればお声掛けください。」

 

「うむ。」

 

2人は握手を交わしあった。この後に起こる事件のことなど想像もせず。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

リュカ一行はルドマンの邸宅を辞し、宿屋に逗留した。そこで少し遅めの昼食を摂りながらルドマン宅訪問を振り返っていた。

 

「いやあ、あのオッサンもなかなかええ奴やったな。娘想いのええ親父やし、懐も深いし。」

 

「やはり器が違うな。大商人というのは。」

 

「そういえばビアンカ見つからなかったね。」

 

「それにルラフェンでリュカが一目惚れしたって言う女もみつけてねーよな。」

 

「あー、それめちゃめちゃ気になる!ま、取り敢えず、これからのこと考えんとな。この大陸に一応用は無くなったし。」

 

「もう一回デールになんか情報集めるように頼むか。」

 

「せやなあ。」

 

「取り敢えずはここでゆっくり休もうではないか。せっかくこんないい街に来たんだ。焦ることもあるまい。」

 

「さて、ちょっと歩いてくるわ。ヘンリー、来る?」

 

「お、ちょっと待ってくれ、まだ食い終わってねーから。」

 

「はいはい。」

 

ヘンリーが食べ終わるのを待ってカリンとヘンリーは市街を散策した。リュカとヨシュアは部屋に戻ってゆっくりしている。2人が噴水の近くを歩いていると、屋敷の方からフローラが駆けてきた。

 

「ヘンリーさん、カリンさん!」

 

「あれ?フローラさんやん。またリリアン逃げたん?」

 

「いえ、そうではないんですけど、少し頼みがありまして………」

 

「頼み?」

 

「はい、実は………。」

 

こうして、リュカ一行の、サラボナでの大冒険が幕を開けることとなる。


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