センター試験受けてきましたよ!僕は地理選択ではありませんが、ムーミン解けましたよ!世界史がちょっとわかれば、バイキング=ノルウェー、よってムーミンはフィンランド一択、メッセージカードの背景のトナカイ=サンタクロース=フィンランドで結び疲れるんですよね。
自慢ごめんなさい。
では、本編スタートです!
そして、9月10日がやって来た。雲一つない青空の中、ラインハット城中庭大広間に設けられた式場にはラインハット政府高官、海辺の修道院関係者、サンタローズ村の人々、そしてリュカと仲間の魔物達、さらにカボチ村のペッカとルラフェンのベネット爺さんが集結した。また、一般解放された口の字型の城の屋上にも抽選が当たった一般の参列者が詰めかけ、合計の参列者は2000人を数えた。
式の開始まで後1時間と迫った中、新郎のヘンリーは控え室でソワソワしていた。久々の王族の正装を着て緊張していることもあるが、もちろんそれだけではない。カリンのドレス姿への期待である。
その時、ドアが開いた。ヘンリーは背筋をピンと伸ばす。部屋に入ってきたのは………
「あ、ヘンリー、準備出来てるみたいだね。うん、似合ってるよ。」
紫ターバンを巻き、呑気な口調でヘンリーの格好を論評するリュカであった。
「なーんだ、お前かよ〜〜。」
「いや〜、ぜひやってみたくてね。新婦が来ると見せかけてからかうの。残念だったでしょ。」
リュカはクックッと笑いながら更に口撃を加える。
「テメ〜、喧嘩売ってんのか?そうだよ、物凄く残念だよ!これで満足か!?」
「まあキレんなって、せっかくの結婚式で新郎が仏頂面とか嫌やで、ウチは。」
ヘンリーが声のする方を向くと、純白のウエディングドレス姿のカリンがいつの間に入ってきたのか、ヘンリーの控え室の壁にもたれて腕を組んでニヤニヤやり取りを見守っていた。
「カ、カリン………。」
「どう?私の会心作のドレスは。」
見るとドアのところに今回のカリンのドレスを監修したルカがヘンリーにドヤ顔を向ける。ヘンリーは改めてカリンの姿を見る。あまり凝った装飾は見受けられない、シンプルな純白のウエディングドレス。シンプルだからこそ長身でスッキリした花嫁の美しさが際立っていた。
「すげぇ綺麗だよ。驚いた。」
「ありがとう。でも横で着付けてたマリアさんのドレスはヤバかったで。」
「そうそう。もう"手間暇掛けました〜〜"ってドレスが喋ってるっていうレベルで凝った装飾が散りばめられててね。それでもやっぱりマリアさんは綺麗だったわよ。カリンとは地のレベルが違うって感じ。あのドレスカリンが着たら完全に装飾に埋没してまうけど、マリアさんは逆に装飾が装飾らしく引き立て役になってたわ。」
「さぞデールも腰を抜かすだろうな。」
「しかしあんたの衣装も似合ってるやん。普段はチャラ男の癖にそのカッコしたら、曲がりなりにも王族やなって感じするわ。」
「どう考えても貶されてるようにしか聞こえないんだが?」
「当たり前やん、馬鹿にしてるんやもん。」
「ったく、カリンには緊張とか羞恥心とかってモンが無いのかよ。」
「ん〜〜、そう言えば前世からそうゆうやつとは無縁やったな。」
「それはそれで微妙に羨ましいぜ。」
2人は幸せそうに笑い合う。そこへモモもやって来た。
"うわ〜〜、美咲めっちゃ綺麗やん!"
「ありがとう桃華。」
"うんうん、ヘンリーもええ感じやし、文句無しやわ。"
「さて、そろそろ時間やし、最終打ち合わせしよか。」
「おう。」
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午前10時、ついに定刻通りに二組合同の結婚式が挙行された。まずはヘンリーとカリンのカップルからである。半分国王の結婚式の前座のような扱いであるにも関わらず、新郎新婦の入場の瞬間の拍手は凄まじかった。そのあまりにもの勢いに気圧され、神父役を務める海辺の修道院の院長が待つ祭壇に歩いていくのも忘れて言葉を交わす。
「すげーな。」
「わお、なんか場違いやわ。」
「この後にデールの式が控えてるっていうのに、デールの式がこれより白けてたら格好付かねーぞ。」
「てかウチらってこんなに人気あってんな。ヘンリーはともかく、ウチなんか全部リュカに擦りつけて名前出さんようにしてたのに。」
「知らねーのか?」
「何を?」
「配られてるパンフレットにカリンの素性全部書かれてたぞ。10年前の事も、俺と一緒にここに乗り込んだ事も、教育改革の事も。お陰で今カリンはバッチリラインハット英雄列伝の仲間入りだ。」
「………迂闊やった。おっと、そろそろ行かんとヤバイな。」
「ああ。」
2人はバージンロードをゆっくりと歩いていく。サンタローズの人々が座っているテーブルからは大きな声が飛び交った。
「カリン!お幸せに!」
「おい新郎!カリンを泣かしたらただじゃおかねーからな!」
「もし旅先で子供ができたら預かってあげるわよー!」
"美咲!おめでとう!"
上から順にリュカ、スコット、カイルを抱いたルカ、そしてモモである。魔物たちも主人たるリュカと共にいる仲間が幸せそうな表情をしていることが嬉しそうだ。その中でヨシュアは次のデールとマリアの登場に備えて沈黙を保っている。
2人は壇上に上がり、院長の言葉を待つ。
「ヘンリー、あなたがボロボロの状態で修道院に流れ着いて来た事が昨日のことのように思い出されます。とは言っても、まだ半年も経っていませんが。」
「はい。」
「さて、説法を始めましょうか。
人生はよく旅に例えられます。山あり谷あり、思わぬところに落とし穴だってあるかも知れません。ですが、愛する人と2人寄り添って力を合わせれば、例え険しい山道も、それほど苦しいものでは無くなり、落とし穴も2人ならば見破って回避できるはずです。これからも幸せな家庭を築かれんことを。
さて、夫ヘンリーよ、貴方は妻であるカリンを、健やかなる時も病める時も共にあり、幸せな家庭を築いていくことを誓いますか?」
「誓います。」
「妻カリンよ、貴女は夫であるヘンリーを、健やかなる時も病める時も共にあり、幸せな家庭を築いていくことを誓いますか?」
「誓います。」
「では指輪の交換と誓いのキスを。」
2人は予め用意していた指輪を交換する。そして、ヘンリーがカリンのヴェールをめくった。
「なあ。」
「何だ、急に。」
「ウチ多分この先恥ずかし過ぎて二度と言わんと思うから耳の穴かっぽじってよう聞いといて。」
「ああ。」
「愛してるで、ヘンリー。」
「俺もだ、カリン。愛してる。」
そのやり取りを聞いて苦笑する院長の目の前で2人の唇は重なった。一際大きな歓声が広間に木霊した。
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2人はそのまま場をはけて少し離れた席に座る。次はデールとマリアが入場してくる。顔も整っており、正装もバッチリ決まっているデールと豪勢なドレスに全く見劣りしないどころか、逆にドレスが引き立てられるほどの美しさのマリアの美男美女の組み合わせは、それ自体が一枚の名画のようだった。カリンとヘンリーの懸念はある意味当たった。会場にいる皆がその美しさに見惚れて暫く声を出せなかったのである。しかし直ぐに前の2人の時を超える、腹の底に響くような歓声が会場に木霊した。
デールとマリアが祭壇の上に立った。それを確認して院長が説法を始める。
「デール陛下は他の者たちとは違って、国という大きなものを背負っていらっしゃいます。その重責は我々のような一般市民には推し量り得ないほどのものでしょう。しかし、隣にマリアさんのような聡明で純真な奥様の存在が陛下の助けとなり、ラインハットにさらなる繁栄をもたらすでしょう。
では、新郎デールよ、貴方は妻であるマリアを、健やかなる時も病める時も共にあり、幸せな家庭を築いていくことを誓いますか?」
「誓います。」
「新婦マリアよ、貴女は夫であるデールを、健やかなる時も病める時も共にあり、幸せな家庭を築いていくことを誓いますか?」
「誓います。」
「それでは指輪の交換と誓いのキスを。」
2人は指輪を交換してお互いの指にはめ、キスのためにデールがマリアのヴェールをめくる。
「マリア。」
「はい。」
「私はまだ15歳という若干の身です。人間的にもまだまだ未熟なのはわかっています。時には誤謬を犯すこともあるでしょう。そんな時には、私を叱りつけて、貴女が私を正しい道に正して欲しいのです。」
「そういう私もまだ18歳ですよ。」
「そうでしたね。とにかく、これからもよろしくお願いします。あ、それと………愛してます。」
「はい。微力ながら私も愛する夫のために尽くさせていただきます。」
2人の唇は触れ合った。歓声が起こった。
こうしてラインハット新暦11年9月10日、ラインハット史上最大規模となったこの結婚式において、二組の夫婦が誕生した。
<次回予告>メインイベントである式も終わり、ラインハット城中庭では、2組のロイヤルファミリーの結婚を祝って宴が開催されていた。そこではさまざまな人々の思いが交錯する中、次の旅への扉が開かれていく。
次回 1月26日金曜日午後9時3分投稿 第50話「史上最大の儀式 後編」
賢者の歴史が、また1ページ。