DQ5 天空の花嫁と浪速の賢者   作:かいちゃんvb

45 / 67
どうも、かいちゃんです。
昨日、センター試験形式の模試が返却されたのですが、思った以上に成績が芳しくなく、不安になって現在大学一回生のクラブの先輩にラインでアドバイスを請うたところ、「センターは全国塗り絵大会やで〜〜」と冗談交じりに言ってたのが微妙にツボにはまってます。ちょっと救われました。
では、本編スタートです!


第45話 失われた古代魔法

8月3日、15日をかけて700キロを踏破したリュカ一行はルラフェンに到着した。

馬車の中にモモを含めた魔物たちを残した一行はとりあえず宿屋を目指そうとする。カリンはモモとあまり離れたく無かったが、モモの種族であるキラーパンサーはこの街周辺を縄張りとしていることもあって、街の人に迷惑をかけないという観点からも連れて入るのは厳しいものがあり、カリンもかなりの抵抗ののちに引き下がった。

しかし、このルラフェンという街はただ道が入り組んでいるだけでなく、階段や建物の屋上まで利用した立体的な迷路を構成している町並みを前に、早々に溜息が零れた。道行く人に声をかけても、旅人や商人は既に途方に暮れており、地元の人間が教える道順も複雑すぎて理解できない。それでもカリンが町民の道案内を死ぬ気でメモを取った結果、町に入って1時間かかって、町の入り口から徒歩10分の宿屋に入ることが出来た。

荷物を部屋に置き、馬車を預ける手続きをした後、カリンはゴールドがたんまり入った袋を担いで武器と防具を買いに出かけた。

 

「いやあ、この店は昼が俺が経営する武器屋、夜が弟が経営する防具屋なんだ。ちなみに他にこの類の店はない。」

 

(は?二度手間やん!うっざー!!)

 

30分かけてようやく辿り着いた武器屋で残酷な事実を告げられ、カリンは唖然とした。その苛立ちも相まって、二度にわたって繰り広げられた買い叩きは、武器屋と防具屋の財布と在庫を震撼させた。

 

翌日、まだ怒りが沈静化していないカリンを先頭に、一行はこの街で古代魔法の研究をしているというベネットという老人に会いに行く事になった。主としては情報収集が目的だが、単に興味が湧いたという側面も否定できない。一行は瞳に好奇の色をたたえながら、村に入る前から気づいていた、モクモクと紫色の煙を煙突から吐き出し続ける家の扉の前に立った。

 

「ごめんくださ〜〜い、ベネットさんはいらっしゃいませんか〜〜?」

 

人当たりの良いリュカが扉を叩く。しばらくすると、中から1人の老人が出てきた。

 

「ん?ワシがベネットじゃ。何の用じゃ?町の者に文句を言うて来いとでも言われたか?」

 

「いや、旅の途中にあなたの噂を聞いて単純に興味を覚えただけですよ。ポートセルミであなたが古代魔法の研究をしていると聞きましたが、具体的にはどんな魔法を研究してらっしゃるんですか?」

 

「ほー、お主らもなかなか物好きじゃのう。よかろう、上がって行くと良い。話は長くなるからのう。」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「昔、ルーラという呪文が存在した。多種多様な文献に登場しておるからそれは疑う余地はない。しかし、今からおよそ200年から150年ほど前に何故か急にルーラが文献から消えたのじゃ。一説には最近この人間界に勢力を伸ばしつつある魔族がルーラを伝えていた魔法使いを人知れず根絶やしにしたとも言われておる。まあ、伝説の勇者にそんなに世界中を飛び回られたら困ったことになるのは自明じゃな。じゃが、本当のところはサッパリ分からん。」

 

「魔族ってそんなに勢力拡張してるもんなん?」

 

「うむ、じっくりと、じゃが確実にな。近頃野良で現れる魔物も徐々に強くなっておるし、現にレヌール城が占拠されておったし、グランバニアの王妃が15年ほど前に連れ去られ、更にはラインハットも近頃まで魔物の支配下に入っていたと言うではないか。こんな事、500年前に導かれし勇者たちが魔族の王から世界を救って以来無かった事じゃ。噂によれば魔族は害となる導かれし勇者の血族を探し回っておるらしいが…………おっと、話が逸れたな。」

 

ベネットは茶で口を潤して再び話し始める。

 

「それでルーラという呪文は、一度行ったことのある場所に瞬時に飛んで行ける魔法なのじゃ。」

 

「キメラの翼の強化版、ということか。」

 

キメラの翼とは、直前まで立ち寄っていた町や村に一瞬で帰着する事の出来るマジックアイテムである。名前の通り、この道具はこの西の大陸の南部に生息するキメラという魔物の羽からできており、サラボナの大商人ルドマンがその権益を独占しているらしい。魔物が強くないサンタローズでも安価で購入出来るアイテムなのだが、カリン曰く、"楽は出来るけど村に戻るまでにも魔物と戦えるやん。キメラの翼如きに金払うより手間かけて帰った方がよっぽど経済的やん。"という論理により、一度も購入したことはない。

 

「何それ、めっちゃ便利そうやん!」

 

先ほどまでは胡散臭げに話を聴いていたカリンだったが、すぐさまその有用性を認めて食いついてくる。

 

「そうか、便利そうか。そう言ってくれるとありがたいのう。それで、どうじゃ?ワシの研究を手伝ってみる気は無いか?あともう少しというところまでは漕ぎ着いたのじゃが、難題にぶち当たっておってのう。丁度助手を探していたのじゃが。」

 

「僕は乗ってもいいんじゃないかなって思うんだけど、ヘンリーとカリンはどう思う?」

 

「俺は同感だが。」

 

「………内容による。」

 

「うむ、実はキメラの翼に含まれておる魔力から"離れた場所へ飛ぶ"原理はわかったのじゃが、"一度行った事のある場所にどこでも"という原理が不明なのじゃ。ま、それがルーラ復活の最大の難点じゃった訳じゃが、20年掛かって様々な文献を読み漁っているうちに1つの可能性に思い至ってのう。」

 

ベネットは本棚から分厚い本を一冊取り出した。付箋の貼ってあるページを開いてリュカたちに指し示す。

 

「このルラムーン草という植物じゃ。」

 

「確かに名前似てるけど………」

 

「お嬢さん、実はこの植物を服用して得られる効用はのう、記憶喪失の患者に記憶を思い出させる事が出来るという代物なんじゃ。」

 

「「???」」

 

小首を傾げるリュカとヘンリーを他所に、カリンは合点がいった。

 

「なるほど、つまり"脳内の記憶を引っ張り出してくる"という要素とうまいこと結びつけば、両方の要件を満たすことになると。」

 

「その通りじゃ。いや、なかなか聡明な娘じゃのう。それで頼みというのは他でもない、そのルラムーン草を取って来て欲しいのじゃ。」

 

「ほう。で、場所は?」

 

「ワシも詳しいことは分からぬが、この大陸の西端に群生していたという記録が残っておる。何しろ用途が用途じゃから滅多に使うこともなくてのう。ほとんど栽培されておらん。その上、唯一の栽培地じゃったカボチのものも20年前の疫病で全滅してしまったそうじゃ。」

 

「つまり、あるかどうかは分からんけどあるとすればそこにしかないと。」

 

「うむ。頼まれてくれるかの?」

 

「良いでしょう。人質がわりにリュカを残して行くんで好きにこき使ってください。」

 

「えっ?」

 

「おお、そいつはありがたい。ルーラも研究自体は終わっておるし、ちょうど次の古代魔法の研究に取り掛かろうと思っとったとこじゃ。若いの、手伝ってもらえるかな?」

 

「えっ?えっ?僕置いてかれるの?」

 

「察しがええやないか。」

 

「ま、残るとしたらご老人の相手が上手いリュカだな。」

 

「え〜〜、2人でイチャつきたいだけじゃないの?」

 

「「それがどうした?」」

 

「…………。」

 

「おお、その2人はデキておったのか。うむうむ、若いっちゅうのはええのう。」

 

「ほんでや爺さん、地図かなんか無いんか?今までみたいに人の行き来のある場所じゃ無いやろうから、簡単にそこまでたどり着けるとも思わんねんけど。」

 

「おう、そうじゃな。ではこの地図を持って行くがよい。何が目的で旅をしておるかは分からんが、これがあれば役に立つじゃろう。」

 

そう言ってベネットは西の大陸全土が記された地図をカリンに渡した。群生地と思われる大陸の西端とルラフェンが丸で囲まれている。

 

「おっとそうじゃ、ルラムーン草は夜になるとぼんやり光る性質があるらしい。探すなら夜の方がええじゃろう。」

 

「何から何までありがとうな、爺さん。さ、ヘンリー。ウチらも準備せなあかんし、そろそろお暇しよか。もう昼飯食ったら出てまおう。」

 

「そうだな。」

 

2人は颯爽とベネット宅を辞した。後には少し切なげな目をしているリュカと喜色満面のベネットが残された。

 

「さて若いの、ちょっと資料の整理から手伝ってもらうとしよう。ほれ、そこの二段目の棚の緑色の本を取ってくれんか。」

 

「ハイハイ、ただいま。」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

宿屋で食事を済ませたカリンとヘンリーは早速村を出て西へ向かい始めた。夏の暑い陽射しが照りつける中、失われた古代魔法の復活に向けた、ベネットの20年間に渡る執念の研究の、最後の一歩のために………。




<次回予告>ついにルラムーン草を求めて西へ旅立ったカリンとヘンリーは、ルラムーン草群生地帯で幻想的な光景を目にすることとなる。その絶景が、二人の絆をより強固なものとした。
次回 12月22日金曜日午後9時3分投稿 第46話「地上の星」
賢者の歴史が、また1ページ。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。