いよいよセンター試験まで50日あまりとなって余裕もなくなってきました。できる科目が日本史しか無い………。投稿ペース落ちるかもです。
では、本編スタートです!
6月30日午前、リュカ一行はカボチ村の住人、ペッカの案内でついにカボチ村に到着した。カリンは大きく伸びをして馬車の幌の中から出た。辺りを見回す。どうやらペッカの話通り、長閑な農村であるようだ。さらに視線を移す。すると、高台の上に体長3メートルほどの大きな魔物がいた。黄色の体に黒の斑点、赤い鬣…………まさか?
「モモ?」
向こうもこちらを驚いたような表情で見ている。すると、昔のように頭の中に懐かしい声が響いてきた。
"美咲?"
その瞬間、カリンの涙腺は決壊した。
「モモ!!!」
"美咲!!!"
魔物も駆け寄ってきた。そして思いっきり飛びかかって来る。カリンは魔物を受け止めた。
「…………重い。」
"あ、ごめん。"
「それにしてもえらいデカなったな〜。」
"いつの間にかデカなった。"
リュカもモモに歩み寄る。
「モモ、久しぶりだね。」
"いや〜、リュカもイケメンになって〜。"
そう言いながらモモはリュカの顔を舐め回す。
「あー、ごめんモモ。ウチらのことバラしたからもうええで、演技せんでも。」
"え、嘘マジ!?"
「マジマジ。こいつ昔からどうでもええとこで鼻効くやん。めっさふつーに怪しまれてた。」
"うわー、迂闊やったわ。"
すると、ペッカが寄って来た。
「いや〜、本当にあんたらのやったんやの〜。こりゃ驚いた。」
「はい。色々とありがとうございました。」
モフモフしてモモから離れようとしないカリンに代わってリュカがペッカに感謝の辞を述べる。
「いやいや、ええんや。こいつにとっても元のご主人様のところに戻れるのが一番やけの〜〜。いや、ほんにえがったえがった。」
「でもずっとこの村を守ってたんですよね。大丈夫ですか?モモが抜けても。」
「それは大丈夫じゃ。いつまでもモモに頼れるわけじゃないからのう、研鑽を積んどったんじゃ。」
「それにしても何でモモって呼び始めたんですか?」
「それがな、やけに桃と桃色の物に興味を示しましてな。」
(((あ、謀ったな)))
3人は同時に心の中で思った。
「村のことは心配せんでも大丈夫じゃ。わしらが勝手に預かってただけじゃからの。それに魔物の四、五匹くらいなら村の者が力を合わせれば優に追い返せる。モモが魔物の弱点を的確に攻撃しているのを見てな、あそこに鎌を突き立てれば勝てると教えてもろたくらいじゃ。ほんに感謝感謝じゃ。」
「いえいえ、感謝したいのはこっちですよ。」
「ははは、そりゃそうじゃ。」
「さて、これからどうしようかな………。」
「今日はここに泊まってけ。モモが急にこの村を離れたとあったら村のもんも驚くじゃろうからな。今夜は宴じゃ。モモの仲間さんが見つかった事を祝ってな。んで、オラは村長のとこに顔出して色々とせにゃならんし、モモのことも伝えにゃならんからな。紫ターバンのあんた、ついてきてくれ。他のもんとモモはオラの家で休むとええ。」
「何から何までありがとうございます。」
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「そうか、モモのはぐれとった仲間が見つかったんか。ええことじゃ。」
「んで、モモを連れて人探しの旅に出ると言うとるんじゃけんど……。」
「構わん。最近は魔物も襲って来んし、5匹くらいなら村の者たちでも防げるからの。何にせよえがった。今宵は宴じゃな。村の者たちに呼びかけて準備をせねばな。」
「んだ。」
「そこの紫の若いの。」
「はい、何でしょう。」
「何か困ったことがあったらいつでも戻って来るとええ。お主がモモの仲間というのであれば、無論儂らもお主らの仲間じゃからな。」
「………ありがとうございます。」
「うむ。では散会としようかのう。お主も休んで行くとええ。」
「はい。」
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リュカも充てがわれたペッカの家に入った。
カリンはリュカが村長の家にいる間もずっとその場でモフモフしており、ペッカの家に3人+1匹が同時に入る。
「えらく長いモフモフだったね。」
「そりゃなあ。デカくなっても毛並みはサラッサラのまんまやったし、つい気持ち良くてな。」
"てかさ、さっきからずっと気になっててんけど、"
「ん?何やモモ?」
"そこの緑頭誰なん?"
「あー、ヘンリーや。あんたがリュカと救いに行った王子の。」
"えっ?あの生意気でファザコンなクソ坊主!?"
「そうそう。ちなみに………ウチの彼氏。」
そう言ってカリンは顔を赤らめる。
"え〜〜!!!嘘マジ!?うわ〜〜なんか嬉しいような腹立つような………。"
2人の会話?を見てリュカとヘンリーがヒソヒソと話す。
「本当にカリンとモモって意思疎通できてるんだね。」
「ああ。あんな感じなんだな。でもさっきからモモに凄い俺が見下されてるような気がするんだが………。」
「そりゃモモは子供の頃のヘンリーの事しか見てないからね。まあ、今でもあんまり変わってないけど。ワガママなところとか。」
「てめぇ、俺のどこがワガママなんだ!?」
「え?違った?」
「ちげーよ!」
「おい、何コソコソしとんねん。」
そこへ顔を赤らめたままのカリンが乱入して来た。照れ隠しである。
「いや、ヘンリーが絶対モモにバカにされてるよねって話してただけだよ。」
「お、よう分かったな。ワガママとかファザコンとか泣き虫とか散々言われとったで。」
「マジだったのかよ………。」
"なあ〜、美咲何でこの緑頭好きになったん?教えて〜〜!てかあんたまともな恋愛した事あったっけ?"
「なかった。ま、ええやん。恥ずかしいから2人きりになったときな。」
"うわー、一丁前に恋する乙女になりやがって……"
「お褒めに預かり光栄や。」
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夜。宴も終わり、皆床についていた。宴は盛大なものとなり、カボチの食材を使った料理が振る舞われ、村人全員がモモとの別れを惜しんだ。カリンはとにかく料理を平らげ、ヘンリーと地酒の杯を重ねながら駄弁っていた。このカップルは成立してからも以前とさほど変わらず、どちらかと言うと友達の延長線上の恋愛といった風情であった。まだ体はもちろんのこと、唇すら重ねていない。今時の中学生の方がもっとませているだろう。もっとも、当事者2人はそれで満足していたが。カリンが蝋燭の僅かな光の中で弓の手入れをしていると、モモが近寄って来た。
"なー。"
「何〜?」
"あんたら2人の馴れ初めってどんなんなん?"
「向こうが勝手に惚れてて、告られて、保留して、一緒に過ごしてたら"あ、こいつええ奴や。"って思って、そんな感じ。」
"あ〜〜、語り手にやる気が無さ過ぎて凄い淡白に聞こえるけど、なんか意外やわ。"
「どこが?」
"だってあんた前世でまともな恋愛したこと無いやろ。"
「ま、まあ。なんかこいつや!っていうやつがおらんかった。弓道にのめり込んでたしな。」
"せっかくモテてたのに?"
「ええやん、別に。何か関係あんの?」
"なんや、素っ気ない。せっかく心配したったのに。でも良かったわ。あんたとヘンリー、なかなかお似合いやで。互いに完全に気を許して付き合えてる。"
「なんか恋人要素が欠落してるってリュカにはせっつかれんねんけど。」
"ま、ラブラブでは無いわな。でもええんちゃう?それで。よう考えたらあんたまだ17歳やろ。前世やったらピッチピチの女子高生やで。それでも健全すぎるけどな。でもお互いそれで幸せそうやし、楽しいんやったら十分やろ。"
「精神年齢はもう41歳やけどな………。立派なアラフォーやな。」
"ふぅ〜〜。あ、そうや。今までの10年間のこと教えてーや。私何も知らんねん。"
カリンは10年間の事を話してやった。サンタローズ防衛戦のこと、灰色の10年間のこと、リュカとヘンリーの地獄の10年間のこと。ラインハット革命のこと、そして旅の目的のこと………。
モモもこの10年間のことを話した。地獄の放浪生活。それとは裏腹に楽しくもどこか悲しさを拭えなかった村での生活………。
「互いに苦労人すぎん?」
"それな。"
「あ、あんたパパスさんの剣持ってるんちゃうん?ペッカが剣持って来たって言うてたけど。」
"この場にはない。"
「どこにあんの?」
"ここから西に3日くらい歩いたとこに洞窟あんねんけどな、そこが涼しくて非常食とか保管してるからそこに置いてる。なんせ使うこと無いしな。魔物もまあ出るけど非常食の周りには魔除けが厳重に張られてるから、そこの方が保管には向いてるかなって思って。"
「分かった。明日取りに行こか。」
"美咲とどっか行くんはあの妖精の村の時以来か……。"
「あの時植えた桜、もう立派に花咲かせとんで。」
"ほんま?"
「しかもめっちゃ綺麗。」
"はあ〜。サンタローズに帰りたいな〜〜。"
「ま、我慢しぃ。この大陸散策せな戻られへんやろ、どっちにしろ。」
"分かっとるわ。ボヤいただけやん。"
2人は長く語り合った。今までの時間を埋め合わせるように…………。
<次回予告>かつての稀代の英傑、パパスが愛用した剣。モモとともにこの西の大陸に持ち込まれた逸品を取り出すため、リュカ一行は西の洞窟へ向かう。しかし、そこで一行は予想外の敵と対峙することとなる。
次回 12月1日金曜日午後9時3分投稿 第43話「怪我の功名」
賢者の歴史が、また1ページ。