いやあ、ついに大谷メジャー行き決定ですか!これからの活躍が非常に楽しみですね!その影でオリックスからメジャー行きを表明してる人もいますけどね。あれ?ウチに抑えで7敗する守護神なんていたっけ?ん?誰のことだったかな?(すっとぼけ)
では、本編スタートです!
ヘンリーはカリンが戻ってこなくなることを危惧したが、リュカの予想通りそんな事はなく、カリンは夕方には帰って来て全く無口ながら共に夕食を食べ、部屋に戻って早々に風呂を済ませた。気まずさはこの上なかったが。そして夜更け、カリンは旅立ちに先立ってルカに貰ったネグリジェを着てリュカとヘンリーの部屋に入って来た。
「お待たせ致しました。」
普段からは全く想像のできない慇懃さにヘンリーもリュカもやや慄く。
「や、やめろよカリン。頼むからいつも通りにしてくれ。こっちの調子が狂う。」
「そうだよ。別に吊るし上げようっていう気じゃないからね。 」
しかしカリンはそれを全く無視して急に土下座し、文字通りひれ伏して謝罪の言葉を述べた。
「私は、私に信頼を置いてくれている仲間を長きにわたって欺き続けていました。本当に申し訳ありませんでした。」
「おいおい、冗談は止めろよ。ま、らしいっちゃらしいけどな。」
「お前、半分バカにしてるやろ。ま、ええわ。まあその、隠してたことやねんけど………」
リュカもヘンリーも身を乗り出す。
「ウチ、これで人生2回目やねん。」
「「……………?」」
「簡単に言うたら、こことは全く別の世界に生まれて24年間生きてたんやけど、事故で死んでもうてな。気がついたらこの世界で母さんに抱かれて産声あげてた。」
カリンは閻魔のくだりは面倒臭いので端折って説明したが、リュカは思わぬ方向から突っ込んで来た。
「うん、カリンにしてはジョークのキレがないから本当のことなんだ。て言うかカリンならボケ突っ込んでくると思ってたよ。」
「俺も最初はボケだと思ったけどな。ボケにしては面白くなさ過ぎるだろ。とは言っても突拍子すぎてちょっと理解が追いついてないけどな。」
「…………あんたらウチのこと何やと思てんねん。」
「説明の必要あるか?」
「うん。まんまだよ。」
「………答えが想像通りすぎたわ。」
「で、これはあんまり根拠はないんだけど、モモも一緒の世界から来たんじゃないの?」
「………理由は?」
「妖精の村から帰って来てからカリンが意味不明なことをモモに喋りかけてて、それを完全にモモも理解してるように見えたし、逆にモモが何も言ってないのにカリンとモモの間で会話が成立してたんだよね。妖精の村で最後にポワンさんに何かして貰ったんじゃないの?盗み聞きしてたんだけど、二人とも特別な存在って言ってたし、その後にやっぱり魔法の力を感じたんだよ。
その時からそれまでたまにコソコソ庭の裏で何かしてたのに妖精の村から帰ってきてからそれが無くなったんだよね。それに野生のベビーパンサーにしては賢すぎだよ。僕の言葉を余裕で理解して頷いてたし、すぐに戦い方とかも覚えたよね。スラリン達でも形になるまで結構かかったじゃん。」
「ほんまにお前ようそんな細かいとこ気ぃ付くなあ〜〜。ほんまに脱帽やわ。もう大正解。あなたのおっしゃる通りです。前世からの親友やねん。あ〜〜、今頃どうしてるんやろか。元気してるかなあ。」
「きっと元気にしてるよ。」
「ありがと。んで、ヘンリーとリュカはウチを責める気とかはないん?幼馴染と恋人にこんな大事なことずっとだんまりしてたけど。」
「何を隠してたってカリンはカリンだよ。」
「俺は今お前に恋人って言って貰えたことの方が嬉しいけどな。」
「ま、そう言うわけだよ。それどころか逆に感謝してるよ。ずっとモヤモヤしっ放しで旅なんて続けたくないしね。それよりカリンとモモがいた世界ってどんな世界なの?」
「お、それは俺も気になるぜ。」
「もー、凄い世界。この世界とは比べものにならへんぐらい進んでるし。魔物なんかおらんし魔法もあらへん。離れた人と普通に会話できるし、馬の数倍早い乗り物もあるしな………」
カリンの現代日本についての話は尽きることなく、気づけばすでに東の空が白んでいた。特に桃華との思い出や高校と大学での弓道部の話、歌の話は盛り上がり、ヘンリーもリュカもぐいぐいだった。そしてまた時間が過ぎ、日が昇りきったタイミングでリュカが欠伸を一つした。カリンもさすがに丸半日ほど話して少し疲れを感じたためお開きとなり、ポートセルミでの情報収集は少し伸びることとなる。
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ポートセルミに到着してから丸3日が経ち、この大陸についての情報を集め終え、そろそろここを発とうかと言うタイミングであった。午前中に教会で魔力を見てもらい、カリンが相手の魔力を任意で吸収するマホトラ、相手からの呪文を弾き返すマホカンタを、ヘンリーはイオの上位呪文であるイオラ、リュカは相手が放った呪文の魔力を受動的に吸収するマホキテを習得していた。
そしてこの日、ポートセルミの南にあるカボチ村から輸出用の農産物が運ばれて来た。西のルラフェンやサラボナのルドマンの話はよく聞いたのだが、カボチについての情報は少なかったため、一行は馬車を引かせて農産物を運んで来た農民の男に話を聞いてみた。
「すみません、カボチ村の方で間違いないですか?」
「ん、そだが?」
「あの、僕たちはこの度この大陸に初めて渡って来たので少しこの街でこの大陸の情報を集め回っているところなんですけど、なかなかカボチ村についての情報が集まらなかったところでちょうどあなたを見かけたので、お声がけしたのですが………」
「どうやら探しもんの旅みてーだな。んだ。オラはカボチ村のペッカっちゅうモンじゃ。別にあんたらの探しもんがあるとも思えんが、おらたちの村について教えてやる。」
その後、数分間に渡ってカボチの住民構成や地形、特産物についての情報を聞いた。暮らしぶりは悪くはなさそうで、その語り口から自分たちの村に大いに自信を持っていることが伺えた。
「何かお困りのこととかはございませんか?」
「困ったも何も、あいつが来てから魔物も寄り付かんかなったしなあ。」
「あいつ?」
「んだ。もう10年ほど前やったか。村に随分痩せこけたキラーパンサーの子供が紛れ込んで来たんだ。村のみんなは警戒しとったんじゃが、余りにもその姿が哀れでなあ。人も襲わんようじゃったから野菜をやったら居着いたんだ。そいつがめっぽう強くて、魔物が襲って来んようになっただ。」
それを聞くとカリンの目の色が変わった。
「なんやて!?キラーパンサーの子供!?モモちゃうん!?」
「んだ。何でその名前を知っとるかは知らんが、モモっちゅうキラーパンサーだ。そう言えば今でもこっちに来た時から持っとる刀みたいなもんを大事にしとるなあ。確か柄が紫色じゃったか。」
今度はリュカが目を見開く。
「それ多分父さんの剣だよ!モモだ!生きてたんだ!!」
「おっさん!村まで案内して!そいつ多分ウチらの知ってる子やねん!」
「な〜んだって!そりゃええ事だ。あいつずっと何かを待っとる感じやったけのお。明日オラも村へ帰るから、ついてくるとええ。」
「「ありがとうございます!!」」
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翌日、一行は早速ペッカに同行してペッカが農産物を積んで来た馬車とリュカ一行の馬車が2台並んで南へ向かった。本来はペッカはポートセルミで護衛を雇って危険な道中を行き来するのだが、リュカ達ががタダで護衛代わりを務めているので、ペッカとしても大助かりであった。しかし、カリンもリュカもモモが生きているかも知れないと聞いてからそわそわして落ち着きがなく、馭者台に乗っているペッカとヘンリーだけが平常運転だった。
しかし、基本的にせっかちなヘンリーとのほほんとしているペッカの話は全く噛み合わないため、二人ともだんまりしたまま旅は続き、この時のことを後にヘンリーは"今までで最も気まずかった。"と表現した。
浮き足立って使い物にならないカリンとリュカを幌の中に押し込めて、基本的にヘンリーが魔物との戦闘の指揮を執った。魔法使い、ドラゴンキッズ、二足歩行をし、サーベルを持った狼・山賊ウルフ、紫色のアウルベアー・モーザ、スライム部分がメタルスライムになっているスライムナイト・メタルライダー、さまようよろいなどの魔物を、スラリンとドラッチの補助呪文とブラウンとピエールの連携攻撃で退けながら南下を続けること8日、ついに一行はカボチ村に到着した。
<次回予告>10年前、1匹のベビーパンサーが北の大陸から毛皮商人の手によって運ばれて来た。やがてベビーパンサーは毛皮商人から逃れて南へ向かうこととなる。想像を超える苦難を乗り越えながら………。
次回 11月17日金曜日午後9時3分投稿 第41話「とある魔物の回顧録」
賢者の歴史が、また1ページ。