DQ5 天空の花嫁と浪速の賢者   作:かいちゃんvb

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どうも、かいちゃんです。この回を書く少し前に"クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶモーレツオトナ帝国の逆襲"を見て号泣しました。この回を書いていた時のBGMは上記作品より、"ひろしの回想"です。ヨウツベに上がっているので、聴きながら読むのも一興かと思います。
では、第4話、スタートです!


第4話 さらば、遠き日

翌日、全員の支度が整い次第、パパスら一行はダイアナとビアンカを連れてサンタローズへ引き返した。昼過ぎには帰ってこれたが、当のユリーナが昨晩に容態が急変し、危篤状態となっていた。それでも意識はあるということで、スコットから事態を聞いた一行はカリンの自宅へ駆け込んだ。

 

「ユリーナ!私だよ!ダイアナだよ!わかるかい!?」

 

「ダイアナ…………、来て…………くれた……のね。」

 

「私が来たんだから、まだくたばるんじゃないよ!」

 

「うん………、あり……がとう。」

 

まさに部屋に飛び込んだダイアナに続いて入って来たカリンはユリーナの手を握りしめた。その周りをパパス、サンチョ、リュカ、ビアンカが取り囲んでいる。さらにその周りには、多くの村人がいた。スコットの話では教会では彼女の完治を願って一部の村人がシスタールカと神父と共に祈りを捧げているという。おかげでいつもは生活感が溢れている村の中は静まり返っていた。

 

「 みんな………私なんかの為に………来てくれて………。案外………私も………人に………好かれてたんだね………」

 

「そうだよ。みんなあんたのことが大好きなんだ。だから、もっと生きてくれよ。昔みたいにまた遊ぼうよ。」

 

「ううん…………それは………叶わぬ願い…………だから……」

 

「弱音を吐くんじゃないよ!」

 

「弱音じゃ………ないわよ………。みんなに………囲まれて…………こんなに安らかな気持ちで…………成仏出来る幸せを…………噛み締めてるんだもの。」

 

「減らず口は相変わらずだね…………。」

 

ダイアナの涙混じりの返答にユリーナは消え入りそうな柔和な笑顔を見せた。普段の快活な彼女からは程遠いその儚さが、彼女の死期が迫っていることを悟らせる。

 

「カリン………。」

 

ユリーナは涙で顔をぐしゃぐしゃにしている娘の名を呼んだ。

 

「母さん………。」

 

「あなたに…………言いたいことは………、私のデスクの…………上から2番目の……………引き出しのメモに…………書いておいた…………から………。だって………、多すぎて…………全部言える気が…………しないんだもん……………。」

 

「母さん………。」

 

ユリーナは少し視線をあげてパパスを見る。

 

「パパスさん…………。」

 

「なんでしょう。」

 

「昨日…………申し上げた……………こと………、頼み…………ますね…………。」

 

「はい。」

 

言い終えると、ユリーナはゆっくりと目を閉じた。

 

「ごめん…………、ダイアナ…………。ごめん…………、カリン…………。ごめん…………、みんな……………。」

 

それが彼女の発した最後の言葉だった。徐々に呼吸が浅くなり、ついに胸が上下しなくなった。それから5分後、村の医療を担っている薬師が、ユリーナの臨終を告げた。カリンとダイアナは泣き崩れ、周りの村人も涙を流していた。本来は余所者のパパスとサンチョも姿勢を正して黙祷し、リュカとビアンカだけが、何が起こっているかわからずキョトンとしていた。

 

その夜、カリンは早速ユリーナが残した手紙を読むと、そこには驚きの内容が記されていた。というより、この世界ではカリンしか知らないはずの日本語で書かれていたのである。

 

<カリンへ。今まで気付かないフリをしていましたが、あなたもだったんですね。何がとは言いませんけど。普通に槇原歌うし、関西弁全開だし。

あなたはどうだかわかりませんが、私は1979年東京生まれ東京育ちの17歳でした。通学途中に駅のホームから落ちて電車に轢かれたと思ったらいつの間にかこのドラクエ5というゲームの世界に生まれてました。

あなたがパパスさんやリュカを見てもあまり目立った反応をしないので、多分ドラクエ5をご存知ないのでしょう。ネタバレされまくっても面白くないでしょうから、あんまり言いませんけど、リュカがドラクエ5の主人公です。初めて見た時は飛び上がりそうなほど嬉しかったですよ。パパスと話をした時は舞い上がって設定忘れて失礼なこと聞いちゃった。それは反省。ゲームの中の存在が、目の前にいるんですからだからリュカと一緒に旅をしたいな〜とか思ってたんですけど、叶わなくて残念です。

でもあなたは違う。リュカの旅はとても危険だし、辛い思いもたくさんするでしょうから無理について行けとは言いません。でも、あの子を支えてやってください。あの子は本当に壮絶な運命に晒されることになります。だから、リュカを陰ながら見守るだけでいいから、力になってあげてください。

そして、何より幸せになってくださいね。それが、本当の母ではないけど、あなたを5年間見てきた私からの、最後の願いです。

精神年齢38歳の母より

p.s.この家はパパスさん達に譲ります。あなたの面倒も見てくれるそうなので、そのつもりで。>

 

そうか、母さんも転生者やったんや。どうりで臨終の言葉どっかで聞いた覚えあると思った。あれ○河○○伝説のヤ○の臨終のセリフやんけ。しかも私の名前も登場人物から取ってるし。それにしてもリュカが主人公か。確かに閻魔の言う通り、なかなか近いポジに生まれてきたな。

 

母さん…………こんな私を5年間も面倒見てくれて、ありがとう………。そして、さようなら…………。

 

カリンは手紙を抱きしめ、静かに泣き続けた。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

翌日、雲ひとつない晴天の下、村を挙げての葬儀が執り行われた。村の全員が、ユリーナの死を悼んだ。

 

「しかし、こんな日に似つかわしくない天気だな。」

 

パパスが今は誰もいない村の丘で陽光を仰ぎながら言う。すると、カリンが近づいてきてその独り言に答えた。

 

「いいえ、母さんにどんよりした天気の葬式なんて似合いませんよ。自分が死んだくらいでそんなに悲しんどらんと、子供は元気に遊んで、大人はさっさと仕事しろっていうことですよ、多分。」

 

「そうかもしれんな。それにしてもカリン、お前は本当に5歳なのか?話しているとつくづく疑問に思うのだが。」

 

「あまり驚かずに聞いて欲しいんですけど、私、実は一回死んで生まれ変わったんです。今まで合わせて29年生きてます。」

 

「……………!私と1歳しか変わらんのか!」

 

「その外見で30歳と言うのもちょっと驚きですが、この事は他言無用でお願いしますね。パパスさんだから話したんですから。」

 

「一昨日、宿屋で自分の歌ってる歌は誰も知らないというのは、生まれ変わる前から知っていた、ということなのだな。」

 

「そういうことです。てか盗み聞きは良くないですよ。それにしても案外驚かないんですね。」

 

「まあな。実は今探しているのは私の妻なのだが、その妻も不思議でな。生まれ変わりなどではないのだが、魔物を改心させて友誼を結ぶことができるのだ。他にも様々な力を持っているらしく、そのせいで魔物に攫われてしまったのだが、妻の能力のお陰で、どうやら耐性がついてしまったらしい。」

 

「早く見つかると良いですね。」

 

「済まないな。気を遣わせてしまって。」

 

「いえいえ。では、私はリュカとビアンカと遊んできますね。本当なら既に大人なんですけど、子供と遊ぶのもなかなか楽しいのでね。」

 

カリンはリュカ達の方へ向けて駆け出していった。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

そして、数日後にビアンカとダイアナはアルカパに帰った。さらに、季節が変わって夏が始まる頃、パパスは妻を探す鍵となる伝説の勇者についての情報を得たため、リュカを連れて旅立っていった。ユリーナが残した家では、サンチョとカリンの2人が、慎ましく暮らしていた。

 

 

それから2度冬を越した。

ある船の上では、近づいてくる陸にキラキラとした目を向ける、紫のターバンを巻いた可愛らしい男の子がいた。そこに、父親らしい無骨な男が声をかける。

 

「リュカ、サンタローズを覚えているか?もう2年近くも前になるから、忘れていても無理もないが……。」

 

「うん、分かんないや。」

 

「ではカリンは覚えてはいないか?」

 

「あ、カリンなら覚えてるよ。<上を向いて歩こう>と<掌を太陽に>を教えてくれたんだ。僕この歌大好きなんだよ!」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

3月13日、カリンの7回目の誕生日を前日に控えたこの日、ダイアナとビアンカがダンカンの病気を癒す薬を求めてこのサンタローズにやって来ていた。

 

「カリン!久しぶりね!あたしのこと覚えてる?」

 

「忘れるわけないやん、ビアンカ。んじゃ、何する?」

 

「またお歌を教えてよ。あの時は結局パパスさん達の引越しで忙しくて一曲も教えてくれなかったからね。」

 

「わかった。とりあえず水汲んで行かなあかんから待っといて。すぐ終わるけど。」

 

 

既にこの時、遠くの方から2人の旅人がサンタローズに向かって歩みを進めていた。

ついに、親子三代に渡る魂の物語が始まる…………!

 




やっと前置きが終わりました。次回からゲーム上での本編がスタートです。引き続き誤字脱字、感想意見等ありましたら、どしどし送ってきてください。それよりも女子バレー迫田選手の引退が悲しい筆者でありますが。
<次回予告>サンタローズにパパスとリュカが帰還した。村人たちは皆彼らの帰還を褒め称える。そして、カリンの家でも帰還を祝う会が開かれた………。
次回 第5話「パパスの凱旋」
賢者の歴史が、また1ページ。

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