先日の北朝鮮によるミサイル発射ですが、実はめちゃめちゃ計算された軌道を描いていたみたいです。デタラメに打ったように見えますが、日本の陸地の上を通過しないようにピンポイントで津軽海峡を抜けてるんですよね。
では、本編スタートです!
ちょうどリュカ一行が川の関所で一悶着している頃、サンタローズの教会では安産のお祈りを終えたスコット=ルカ夫妻が一行について話していた。
「ねえ、あなた。」
「なんだい?」
「カリン、やっと笑うようになったね。」
「そうだな。リュカが生きて帰ってきてくれたおかげだ。カリンが明るくなってくれたおかげで村人たちも明るくなった。」
「カリンたち、大丈夫かなあ?」
「大丈夫じゃないか?一人じゃないんだし。身のこなしを見てると、二人とも強いよ。特にリュカはパパスさんを彷彿とさせるな。」
「パパスさんか…………。カッコよかったな〜。勇ましいのにどこか上品で。」
「昔はゾッコンだったもんな。ところでなんで俺と結婚したんだ?お前からプロポーズされておれが了承してからトントン調子で式まで挙げたからその辺がわからないんだけど。」
「バカね。パパスさんの次にあなたが好きだったからじゃないの。」
「……………男としては複雑だな。」
「ま、嘘ついても仕方ないしね。」
「まあいいや。ルカとこいつが俺の隣に居てくれたら。」
「ありがと。」
スコットとルカは大きく膨らんでいるルカのお腹をさすった。
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ラインハット城とサンタローズ村の中間にあるラインハット川を渡ったリュカ一行はラインハット城に向けて北東に進路をとった。トムの話通り、10年前にリュカがここを冒険した時とは現れる魔物が違っていた。ダンスニードル、白い毛むくじゃらの怪人・イエティ、アウルベアー、黄色いメラリザード・ドラゴンキッズなどを仲間になった魔物たちの手を借りて倒していく。その途中で、初めて遭遇しし、倒したスライムナイト(緑色のスライムの上に乗る、小柄で鎧を着た妖精の総称。)がむっくりと起き上がった。
「へ〜。こうやって仲間になるんや。」
「そうだよ。」
カリンが感心していると、スライムナイトが人の言葉でくぐもった声で話し始めた。
「見事な腕前、感服いたした。そなたこそ、我が仕える主。拙者をそなたの臣下としてお加えいただきたい。」
「そ、そんな……。僕は主なんかじゃないよ。君は僕たちの対等な仲間だ。よろしくね。ナイ………」「ストップゥ!!」
カリンが大声をあげて止めた。
「何!?そなたは拙者が加わるのを良しとせぬのか!?」
「ちゃうわ!!こいつのネーミングセンスは信用ならんからな!ウチがなんかええ名前つけたるわ。」
「え〜。僕そんなに酷い?」
「しばし待たれよ。」
「酷いっていうより安直過ぎんねん。」
「それは俺も思ってた。」
「ヘンリーまで………」
「あの………」
「スラりんとかドラッチとかブラウンとか魔物の種類の名前文字っただけやん!」
「さすがにドラッチは引いたぞ。思いつかなかった俺にも責任はあるが。」
「ううう」
「しばし拙者の話を聞け!!!」
痺れを切らしたスライムナイトが叫んだ。
「拙者にはピエールというちゃんとした名前がある!」
「「「………………。」」」
「どうした?何か不都合でもあったか?」
しばらく3人はフリーズしていたが、カリンが先にフリーズを解除した。
「よっしゃ、行こか。」
「そうだね。ピエールも行くよ。」
「ここからだとラインハットまであと1時間もすれば着くぞ。」
「…………さっきまでの話を無かったことにするな!というか人のを聞け!!」
「ん?話?なんの事?」
「ピエール、真っ先に名乗ってくれてありがとね。」
「よろしくな、ピエール!」
「……………。」
一行は引き続き北東に進路をとった。
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ヘンリーの予測通り小一時間ほどで一行はラインハットに到達した。スラリンらの魔物は馬車の中で留守番させて一行は城下街に入った。人々の顔はどことなく暗く、街のいたるところには国威発揚のための張り紙が見られた。
(まるで戦時中の日本やな。)
カリンはそんなことを思いながら街を見やる。
「さて、ここからどうやって城の中に入るかだよ。」
「ま、例えヘンリーがおっても簡単には入られへんやろ。いや、逆にヘンリーやとバレたら速攻でブラックリスト入りやな。」
「今の俺に権限なんて何一つ無いぞ。それでもか?」
「当たり前やん。そこら中に転がってる不平分子に担がれて革命を起こす恐れがある王族なんて放置できるかいな。ウチがカタリナの立場やったらあんたの首に100万かけるで。ま、そんなことになる前に善政敷くけどな。」
「手紙をくれたイワンさんは城下街にはいないの?」
「おるんちゃう?知らんけど。てかヘンリー、抜け道かなんか無いん?」
「俺は知らないな。それを知るには俺は幼過ぎたんだろう。まだ7歳だからな。」
「とにかくイワンさん探すしかないか。」
聞き込みの結果、すぐにイワンの自宅は判明した。教えてもらった一軒家に赴き、ドアをノックする。
「すんませーん。イワンさんいます〜〜?」
すると初老のガッチリした体型の男が現れた。
「私だが………!そなたは!?」
「会うのは10年ぶりですね。ちょっと白髪増えました?」
「10年も経てばそうなるさ。そなたも美しく成長したものだな。それにしてもよく関所を通れたな。許可証を手に入れるのになかなか苦労していたのだが……。」
「ま、いろいろありましてね。」
「立ち話もなんだ。お連れ様も入りなさい。」
4人は椅子に座った。
「どうですか?隠棲ライフは?」
「悪いものではないな。元々の身分のおかげで城へもかなり自由に出入りできた。」
「ところで、この緑頭に見覚えありませんか?」
「そういえばどこかで見た覚えが…………!まさか!?」
「お気づきになられましたか。そうです。この人がヘンリー王子ですよ。魔物に連れ去られて10年ほどセントベレス山頂で楽しい奴隷ライフを満喫していたのですが、里心がついて帰って来ちゃったんですよ。ほら、ヘンリー、挨拶しなさい。」
「なんか凄い語弊があるけど………。私がラインハット第一王子ヘンリーだ。長い間のスパイ生活、ご苦労であった。早速だが、城の中の様子について知りたい。」
「はっ!最近は傭兵を称してかなりの数の魔物が城内をうろついております。さらに太后陛下は経済の要、オラクルベリーへの侵攻をお考えのご様子。デール国王は一切国政に関与できず、適当に謁見者をあしらうだけでかなりの気落ちもあるご様子。最近は自室に引きこもっておられるそうです。」
「チッ、えげつないな。それでイワン。誰にも見つからずに城内に入る方法を知りたい。裏口か何かを知らないか?」
イワンはしばらく考え込んでいたが、何かを思い出したようだ。
「そうだそうだ。一つ隠し通路がございます。」
「本当か!?」
「城を囲む堀を進んでいただくと、ちょうど正門に至る橋の真下に緊急用のシェルターへの入り口がございます。」
「ああ、訓練に使ったあそこか。外にも出れたんだな。知らなかったや。」
「しかし、太后陛下が侵入者よけのために魔物を放っているかもしれません。十分お気をつけなさいますよう。」
そこでカリンが手を叩いた。
「よっしゃ決まり!イワンさん、色々とありがとうな。ほんま助かりました。後は若いもんに任せてください。一朝一夕にとはいかないでしょうが、必ず何とかして来ます。」
「頼んだぞ。」
そして、一行はイワン宅を辞した。
「侵入は夜になるな。」
「無理だ。あの橋は夜の間は上がってしまう。つまり、夜は堀を渡ることができない。」
「なら早速行くしかないな。」
既に日は大きく傾いていた。午後四時ごろといったところだろうか。
「さて、ほんなら買い物やな。」
「所持金は3162ゴールドだよ。」
「よっしゃ!」
しかし、いい武器防具は全て城に流れてしまったらしく、目ぼしいものはカリンの銀の髪飾りくらいだった。仕方ないので、魔物達の装備を揃えておく。もちろん値切りは苛立ちもあって強烈を極めていた。
「リュカが言ってた通りのえげつなさだな。店主の顔が真っ赤だ。」
「こんなん折れた方の負けやからな。」
そして3人はラインハットの正門と城下街を繋ぐ跳ね橋を渡りきり、そのまま正門には入らずに城の外を反時計回りに回るように進む。そして、ボートがある桟橋についた。
「懐かしいなあ。ここらかヘンリーが連れ去られたんだよね。」
「ああ。さて、行くか。」
3人はボートに乗って来た道を引き返すかのように進み、ついに跳ね橋の下へ到達した。そこには中に入れるようになっており、奥には船着場が見えた。ボートをそこにつけ、3人は通路に降り立った。
ラインハット城潜入作戦が始まった。
<次回予告>城内への侵入を果たしたリュカ一行は現国王デールとの会談を実現する。デールは事態解決のためにある伝説の宝物の使用を提案した。
次回 第31話「真夜中の会談」
賢者の歴史が、また1ページ。